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Kidori Kidori

音楽シーンのアウトサイドからド真ん中に叩き込まれる会心の一撃

Kidori_Kidori_A_main大阪から東京へと拠点を移して、バンドとしての動きをより活発化させていく。そんな矢先に起きたメンバーの脱退という、Kidori Kidoriにとって過去最大の苦難。地元の幼なじみ同士で結成して今まで共に戦ってきた3人が、突如2人になるというのは外部が想像する以上に衝撃的なことだっただろう。だが、彼らはそこでも立ち止まることなく、突き進み続けた。藤原寛(andymori)をサポートベーシストに迎えて、脱退の3週間後には新木場STUDIO COASTでのイベント出演を成功させたのだ。その後も次々と開催した自主企画はいずれも大盛況に終わる。誰が見てもわかる逆境をまるでチャンスに変換したかのように、バンドの状態を好転させていった。そして夏フェスへの出演も続々と決まる中で、前作ミニアルバム『El Blanco』から約1年が経った8月。ヒップランドミュージックにレーベル移籍を果たして、前作からの連作となる『El Blanco 2』をリリースする。困難と直面しながらも深刻になりすぎることなく、常にポジティブな姿勢で音楽と向き合ってきた結晶とも言える今作。持ち味であるホラー感やユーモアセンスはさらに研ぎ澄まされ、オリジナリティをより増しながらも、歌とメロディを軸に置いた楽曲では普遍性をも獲得しようとしている。豊穣な音楽的背景と類まれなポップネスを武器にKidori Kidoriが今、音楽シーンのアウトサイドからド真ん中へと会心の一撃を叩き込む。

マッシュ(Vo./G.) INTERVIEW #1
「病気に屈したみたいな感じになってしまうのがすごく嫌で。自分がずっと好きで聴いてきた音楽が、そういうネガティブなものに左右されて敗北するということになってしまうんじゃないかって。僕が音楽を好きだった理由はそういうものじゃないなと思った」

●大阪から上京してきて、今は東京に住んでいるんですよね。

マッシュ:当初は3人で暮らす予定だったんですけど、ンヌゥ(Ba./Cho.)が病気のために脱退することになって。東京に出てきて最初の1週間はずっとライブが入っていたんですよ。その最後だった北海道での公演から帰ってきてすぐに、ンヌゥがいなくなったんです。何とか見つけ出して病院で診察を受けさせたら、病状的に活動を続けるのは厳しいということで脱退が決まりました。

●決意を固めて上京してきた矢先だったわけで、ショックも大きかったのでは?

マッシュ:3人で腹を括って「東京に行こう」という話になって、そこで病気とはいえ1人がすぐに脱退してしまったというのはすごくショッキングなことではありましたね。元々が幼なじみで一緒にやっているバンドだったから、「誰かが抜けるなら解散だろうな」とは3人でよく話していたんですよ。もしバンドの状態が悪くなって、誰かが「このままじゃきついから仕事に専念するわ」と言い出した時はバンドを解散するタイミングなんだろうなと。生活のことを考えた結果がそうなるのは、ある意味で前向きだと思うんですよ。

●自分で将来のことを考えて、別の道を選択しているという意味では前向きというか。

マッシュ:でもメンバーが病気で辞めざるを得ないというのは半ば強制的なもので、「ここでバンドを止めてしまうのは嫌だな」と思ったんですよ。病気に屈したみたいな感じになってしまうのがすごく嫌で。自分がずっと好きで聴いてきた音楽が、そういうネガティブなものに左右されて敗北するということになってしまうんじゃないかって。僕が音楽を好きだった理由はそういうものじゃないなと思ったので、「じゃあ、やろう!」という話をして活動継続に至りました。

●大きな出来事はありつつ、気持ちを切り替えることができた。

マッシュ:続けると決めたからには、ウジウジしていてもしょうがないから。ンヌゥと話し合った時も「2人はこれからもしっかり活動を続けて欲しい」と言ってくれたし、本当は一緒にやりたいんだろうなというのはすごく伝わってきたんですよ。そのぶん自分たちは頑張らなきゃいけないと思ったので、頭をバシッと切り替えました。

●2人になったことで、川元(Dr./Cho.)くんにも変化があったんでしょうか?

マッシュ:2人になってから、川元にも「俺がしっかりしないとアカン」みたいな意識が生まれてきていて。相変わらず頼りないけど(笑)、自分なりの意見を出すようになってきたんです。

●今まではあまり自分の意見を出さなかった?

マッシュ:今までは僕が歌詞と曲を書いてアレンジも中心になって考えて、そこにンヌゥがちょっと面白いアイデアを出したものが採用されて…という流れで曲ができていたんです。川元は「そこについてきていただけだった」と自分でも言っていて、「このままじゃ本当にまずい」という危機感を感じるようになったんですよね。元からハングリーなところはありながらもどこか田舎者でボーっとしている部分があるので(笑)、“危機感”というものが薄かったのかなと。それゆえに以前よりも、口論が増えたんですけど。

●川元くんも自分の意見をちゃんとぶつけるようになった。

マッシュ:一方的に言われっぱなしじゃなくて、自分なりの意見があって言い返してくるようになりました。でも根本はバカだから、浅はかなところがあって(笑)。川元はバカゆえにピュアなんです。1つのものを好きになると、ずっとそれだけが好きなんですよ。

●すぐ何か1つにハマってしまう。

マッシュ:一度「自己啓発本を読んでみたらどうか」という話をしたら、そういう本の内容を真に受けてしまっていて…。だから「こういう本は斜め上から見て鼻で笑いながら読むくらいじゃないと、真意は伝わってこないんやで」という話をしたんです。その時くらいから感化されるところがあったのか、わりとまともなことを言うようになってきたんですよ。そうなったのも結局は、危機感が出てきたからだと思いますね。言ってしまえば「いつ転んでもおかしくない」ような見方をされている状況の中で、僕らは意地でも転んじゃイカンと思っているので。

●メンバーも抜けて、周りから見れば危機的状況に見えるわけですよね。

マッシュ:でも実際は2人になったことで、世間で思われているよりも“良い”環境になっているというか。あらゆる部分で「前よりも絶対に良くしなきゃいけない!」という、自分なりの危機感やプレッシャーと闘いながら活動しているから。絶対に今のほうがバンドの状態としては面白いというのは間違いないと思います。

●とはいえ、ベーシストがいなくなった状態ではライブを続けるのが難しいですよね?

マッシュ:だからまず「ベースをどうしようか?」というところから考え始めました。ライブは既にたくさん決まっていたので何とかしなきゃいけないというところで必死になって、最初の1〜2ヶ月はバタバタしていましたね。

●現在は藤原寛(andymori)さんがサポートでベースを弾いているわけですが。

マッシュ:サポートを探すとなった時にまず第一候補で浮かんだのが藤原さんだったんですけど、まさか弾いてもらえるとは思っていなかったですね。元々andymoriも好きだったし、そういう人と一緒にできるのは光栄やなと。

●ンヌゥくんは個性的なベーシストなので、代わりを見つけるとなると大変だったのでは?

マッシュ:そうなんですよね。でもサポートメンバーを探す上でまず考えていたのは、大きな舞台でライブをすることに慣れている人が良いなというところで。脱退の直後に、新木場STUDIO COASTでのライブも決まっていたんですよ。ベースを弾けるだけの人ならすぐに見つかると思うんですけど、そういう場所でも浮足立ってしまわないくらい場数を踏んできた人で、かつ年上のほうが良いだろうなと。さらに3ピースにも理解があって…ということを考えていくと候補がどんどん絞られていって、やっぱり藤原さんが良いなということになったんです。本当に素晴らしい人と運良く一緒にやらせてもらっている感じですね。

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マッシュ(Vo./G.) INTERVIEW #2
「世間的にはバンドが良くない状況にあると思われているはずなので、それを見事に払いのけられるくらいのものを作らないといけないという意識が強くあって。作ってはボツにしてというのを繰り返した結果、残ったものが今作には入っています」

●脱退から約5ヶ月での新譜リリースというのも、状態の良さを表しているのかなと。

マッシュ:何よりも“止まりたくない”という気持ちがあったんです。次の音源を出す時期もある程度見えていたので、(脱退があったからといって)それを取りやめたくもない。だから意地でもやってやろうとしている内に、フェスへの出演も次々に決まってきて…。今年は出られないだろうなと思っていたんです。

●それはなぜ?

マッシュ:去年はわりと出させて頂いたので連続して呼ばれることはないだろうし、出られたとしても本数は減ると思っていたんですよ。でも実際はそんなこともなく、去年よりも多いくらいになって。それによって、当初は9月にリリース予定だったものを1ヶ月早めるしかないということになったんです。

●あ、元々は今作を9月に出す予定だったんですね。

マッシュ:そうなんです。だからサポートメンバーが見つかって一段落かというと、そんなことは全くなくて。とにかく曲を早く書かないといけないっていう…。

●ストックはなかったんですか?

マッシュ:M-4「99%」は先にアナログ7inchで出していて、M-2「Mass Murder」も会場限定のCDで発表していて。今回のリード曲のM-3「Come Together」も含めた3曲はできていたんですけど、他の3曲はかなり新しいですね。M-5「El Blanco」に関しては母体になるものはありつつ、まだ世の中に発表できるような形ではなかったから。とにかく急いで曲を作らなくてはいけないという状況でした。

●曲作りに苦戦したりもした?

マッシュ:曲を書くのは早いほうだと思うんですけど、すごくバタバタしましたね。世間的にはバンドが良くない状況にあると思われているはずなので、それを払いのけられるくらいのものを作らないといけないという意識が強くあって。作ってはボツにしてというのを繰り返した結果、残ったものが今作には入っています。

●ボリューム的にミニアルバムにするというのは、最初から決まっていたんでしょうか?

マッシュ:そうですね。今回は去年リリースしたミニアルバム『El Blanco』との連作になっていて、次はもう1枚ミニアルバムを出したいとは思っていたんです。それをどういうものにすれば面白いかなというところで、構想を練っていて。ロバート・グラスパーの『BLACK RADIO』というアルバムがあるんですけど、その続編の『BLACK RADIO 2』というのが去年出たのを見て「これや!」と(笑)。

●ロバート・グラスパーにインスパイアされて、連作というアイデアを思いついた。

マッシュ:そう来るとは誰も予想していないだろうなというのがあって。僕らは1枚目の音源がスペイン語で“The 1st”の男性型を意味する『El Primero』で、2枚目が同じ意味で女性型の『La Primera』だったんですよ。それをいったん白紙に戻してのゼロスタート的な意味で、前作の『El Blanco(スペイン語で“白”)』というものができた。今作はそれを踏まえて「じゃあ、“白”とはどういうものなのか?」っていうところを自分なりに考えていった中で「これはもう連作や!」ということになり、『El Blanco 2』にしたんです。

●リスナーの予想を裏切りたかったというのもあると。

マッシュ:次は“白”の反対で“黒”をタイトルにしようかなと何となく思ってはいたんですけど、きっとそれは予想されていると思って。予想や期待どおりのものを出すのも気持ち良いと思うんですけど、どうせならそれを塗り替えてやりたいなと。だから先に出した会場限定CDのタイトルを(“黒”を意味する)『El Negro』にしたんです。それによって次に何が来るのか予測できないようにして、『El Blanco 2』を出したら面白いんじゃないかということでしたね(笑)。

●そこの発想ありきであって、最初から二部作を意識して作っていたわけではない。

マッシュ:でも気付いてみたら、そういう感じになっていて。1作またいでの表題曲(「El Blanco」)が入っていたりとか、2作で全てという感じは多少あるかな。「El Blanco」はリード曲ではないものの、この2作品での「“白”って何なんだろうな?」という問いに対する僕の中での結論というか。“白”って汚れがなくて、無垢な感じがする。でも白い部屋には虚無感があるというか、すごく拒絶されているような感じもするんですよね。

●色んな面を持っている色というか。

マッシュ:純潔なのに拒絶しているっていう2つの面が同居しているっていうところで、すごく変わった色だなと。1日1日をただ繰り返していくような毎日の中で、それに色を付けるなら“白”だろうなと思って。“白”というものと自分の生活を考えていく中で、歌詞ができていったんです。今作の中で歌っている内容を総括してみると、結局はここに帰ってくるなと考えたら表題曲らしい気がしたんですよ。

●「1日1日をただ繰り返していくような毎日」というのは、上京前から思っていたことなんですか?

マッシュ:そういうことを考える時間が、今まではあまりなかったんです。でも上京してから1人でいる時間がすごく増えて、物事をすごく考えるようになったんですよね。ずっと考えている内に、良く言えば哲学的な感じになってきて。フロイトが「上から自分の姿を見下ろして、失敗も笑えたりするのがユーモアだ」ということを言っていたのを思い出して、ちょっと上から自分の生活を見下ろしてみた時に、日常の繰り返しというのがすごく“白”っぽいなと気付いたんですよ。

●上京して考える時間が増えたことで、そういう視点を持てるようにもなった。

マッシュ:1人でものを考える時間が増えたことで、そういう思考に至ったという感じかな。そういう意味では、上京したからというのが正しいかもしれないですね。

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マッシュ(Vo./G.) INTERVIEW #3
「ほどよく力を抜くことも大事だという考えは、昔から自分の中にあるんですよ。今の状況で僕らのシリアスな気持ちをそのまま込めたような作品を出すことで、“真面目になりくさった”みたいに思われるのは嫌やなと(笑)」

●「Come Together」は上京を決意した際に書いたそうですね。

マッシュ:上京に至るまでの心境と、上京した後に「今後はどうなっていきたいのか?」というところを意識した歌詞になっていると思います。「色々あったけど、これからもよろしく」という意味合いが強かったりもしますね。

●歌詞中の“one and one and one is three (1+1+1は3だ)”というのは、メンバーが3人だったことにかかっている?

マッシュ:それ以外にも色んな意味がかかっています。そもそもこの歌詞はビートルズの「Come Together」のパロディなんですよ(笑)。

●確かにビートルズの同名曲にも同じフレーズがありますね。そこもある種の遊び心というか。

マッシュ:やっぱり遊びがないと、面白くないから。もちろん今は一生懸命にやらなアカン状況やっていうのはわかっているけど、そこで肩にすごく力を入れて頑張ったところで空回りしそうやなと思っていて。ほどよく力を抜くことも大事だという考えは、昔から自分の中にあるんですよ。今の状況で僕らのシリアスな気持ちをそのまま込めたような作品を出すことで、“真面目になりくさった”みたいに思われるのは嫌やなと(笑)。それでちょっと気の抜けた曲を作ろうということでできたのがM-6「テキーラと熱帯夜」だったんです。一番最後に作ったのが、これですね。

●70年代フォークっぽい…というか、はっぴいえんどの影響をモロに感じさせる曲ですよね。

マッシュ:はっぴいえんどっぽいですよね(笑)。僕はその時代の音楽がすごく好きなので、そこからの影響はかなり出ていると思います。僕はバンドアンサンブルを重視して作曲することが多いんですけど、この曲に関しては歌詞とメロディを軸に考えていて。

●確かに今作で唯一の日本語詞なのもあってか、歌もの感が強い。

マッシュ:「いつもは英語で歌っているバンドがたまに日本語で“みんなのうた”みたいな曲をやるとすごくハマるよね」という話をしていたことがあって。「“みんなのうた”か!」っていうアイデアがまずそこで浮かんだんです。あと、曲作りで煮詰まっている時にサポートメンバーの藤原さんに「どうやったら面白いですかね?」と相談してみたら、「弾き語りでやれる名曲を目指してみたら」と言われたんですよ。その2つが自分の中でガチっとハマって、コードと歌詞とメロディだけがあれば成り立つようなものを作ろうと思ったんですよね。

●意識的に、歌を軸にした曲を作ったと。

マッシュ:これまではバンドアンサンブルでカッコ良く聴かせることを目指していたけど、それとは違うメロディ至上主義の曲がようやく1曲できたのかなって。これだけは異質と言えば異質な曲ですね。

●ちょっとボーナストラックっぽい立ち位置ですよね。5曲目までがいわゆる今までのKidori Kidoriらしい曲になっていて。

マッシュ:そのへんを裏切ってやろうという気持ちもありました。でもやっぱり根本はとぼけているから、決してこの曲だけが浮いているわけではないと思うんです。今までやってきていなかっただけで、元々あるものというか。歌詞についても、ただただ僕の生活を切り取っただけだから。

●“朝、目が覚めたら 何だか体がガタガタ言うので ああ、ここまでかと 覚悟を決めるもただの二日酔い”という歌い出しですが、こういう日常を送っている?

マッシュ:そうですね。たまに打ち上げがヘヴィだと、お酒が翌日に残っていたりして(笑)。僕は病気がすごく怖いんですよ。ちょっとした病気になるだけで、すごく気分が落ち込むんです。だから単なる二日酔いでも、朝起きた時にめちゃくちゃ気分が悪いと「あっ、俺は死ぬんや!」と…(笑)。

●ハハハ(笑)。前夜の行動を振り返ってみたら、すぐに二日酔いだとわかるでしょう?

マッシュ:でも朝起きた時に一番最初に頭に浮かぶのは「昨日は楽しかったな」よりも、今の気分じゃないですか。だから気分が悪いと、「あっ、死ぬ!」ってなる(笑)。そこから「ヤバい! 何でや?」と考えて、「あっ、二日酔いか〜」と気付いてトイレに行くんです(笑)。

●まさに生活そのままの歌詞ということで(笑)。

マッシュ:そのままなんです(笑)。本当に日常を描いた感じですね。

●「99%」は暗いテーマを明るく歌っている感じなんですよね?

マッシュ:暗いことだからこそ明るく歌うしかないというか。暗いことをそのまま暗く歌っても面白みに欠けるので、この曲はあえてポップな曲調にしているんです。ラモーンズも決して明るいとは言えない歌を明るくやっているところがあって、僕はそこがすごく好きなんですよね。その影響を受けているのが出た感じかな。

●歌詞では、いなくなった友だちのことを歌っているんですよね。

マッシュ:この歌詞も暗いけど、どこかとぼけているところがあって。人がいなくなったのに、1%は心のどこかで「何とかなるだろう」と思っているんです。この1%というのが、すごく大事なんですよね。曲名は「99%」なんですけど、どちらかと言えば言いたいことは1%のほうなんですよ。1%のほうにフォーカスすると、この曲調はすごく合っているなと思います。やっぱり僕たちはおとぼけですからね(笑)。

●曲調で言えば、メタル感全開の前半2曲にも遊び心を感じます。

マッシュ:今作は真面目な部分はすごく真面目にやったんですけど、遊びたいところは徹底的に遊ぶっていう2つの面が同居しているんです。たとえばM-1「Zombie Shooting」は1人で考えごとをしている時に、「映画の中ではゾンビがバタバタ殺されたりするけど、あれってどうなのかな?」というところから作っていったんです。

●ゾンビも元々は人間のはずなのに、容赦なく殺されていくことに疑問を感じた。

マッシュ:それを考えている時にパッと頭に浮かんだのが、フェラ・クティの「Zombie」という曲だったんです。そこからどうしてもホラーな感じがイメージされたのでうめき声から曲に入ろうとすると、どんどんメタルチックなアレンジになっていって。しかも最終的にはバッド・レリジョンみたいな曲調になるっていう(笑)。

●途中でガラッと曲調が変わる展開も面白い。

マッシュ:こういうのはやったことがなかったんですけど、いわゆる“大サビ”みたいなものを初めて取り入れてみて。1曲目にそういうスケールのある曲を持ってくるのも面白いなと思ったんです。そして2曲目が「Mass Murder」で“大量虐殺“っていう(笑)。

●そういえば「Zombie Shooting」の歌詞にも同じ“Mass Murder"という言葉が出てきますね。

マッシュ:ゾンビを殺しているシーンを思い返して、あれって“Mass Murder"やなと思ったんです。そこから自分の考えていることが、色々とリンクしてきて。一貫しているわけじゃないけど、自分の考えていることのパターンが見えてきたんですよ。だから、ここにこの歌詞を入れても違和感はないだろうなということでした。

●この曲は、後半のマッチョなコーラス部分も面白かったです。

マッシュ:ああいうことを今時やっているバンドは他にいないだろうし、面白いんじゃないかと(笑)。4つ打ちのビートが流行っているけど、メタルと合体させるというのは誰もやっていないはずだということでやってみたんですよ。メタルっぽいギターと歌をレスポンスさせたり、スタジアム・ロックっぽいことをやってみたりして。そういう音楽もあるんだということを、僕らよりもっと若い世代の子たちに伝えられたら良いなとも思っているんです。

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マッシュ(Vo./G.) INTERVIEW #4
「僕らは今の自分たちがいるシーンの中で、一番隅っこのコースを走っているなと思っていて。一番外側から内側に向けて投げかけるようなカウンター的音楽性なので、僕は今作のことを“遠距離攻撃型ミニアルバム”だと思っているんです」

●今作を完成させた今、自分たちの中ではどんな位置づけにある作品になったと思いますか?

マッシュ:1stアルバムは「よろしくお願いします」という名刺的な作品で、2ndアルバムはもっとちゃんとした名刺だったというか。でも名刺ばっかりの自分たちが嫌になって、納得がいくように前作のミニアルバムを作ったんです。そして腹を括って上京した矢先にメンバーが抜けることになったことで、その腹を括る気持ちがより一層強くなって…。という流れがあった上での、“決意のミニアルバム”ですね。

●逆境を乗り越えて、より決意が固まったことを示している。

マッシュ:そう言うと固いものに聞こえちゃうんですけど、わりと遊び心には富んでいて。「こんなシリアスな状況やからこそ、ちょっと面白いことを言うだけですごく笑えたりするんじゃないか?」というアホな考えがしっかり詰まっているんです(笑)。何より今のシーンに対して、圧倒的にアウトサイダーな音楽を僕らはやっているから。

●アウトサイダーというのは?

マッシュ:シーンを完全に外れてしまうと、「こういうバンドがいても良い」というだけのバンドになってしまうんですよね。僕らは今の自分たちがいるシーンの中で、一番隅っこのコースを走っているなと思っていて。一番外側から内側に向けて投げかけるようなカウンター的音楽性なので、僕は今作のことを“遠距離攻撃型ミニアルバム”だと思っているんです。

●外側から中央に向けて、遠距離攻撃を仕掛けるような作品になっている。

マッシュ:隅っこからものを投げることでこっちを振り向かせて、色んなものの見方があるということに気付いて欲しいんです。流行りのものをただ流行っているからという理由で食い尽くして、また次のものに行くっていう繰り返しも別に悪くないと思うんですよ。自分だって、カップラーメンが好きだったりするから。ただ、その先にそれ以外のものもあるんだということをしっかり主張したくて。それができるミニアルバムになったと思います。

●簡単でわかりやすいものも良いけど、もっと豊かで複雑な良さを持った音楽もあることを知って欲しい。

マッシュ:自分たちが音楽活動を続けていく上では、音楽という土壌そのものが豊かになっていかないとダメだと思っているんです。せっかく今はTVをつけたら「夏フェスに行こう」みたいなCMが流れていたりして、ある意味では音楽が広がってきている状況なわけだから。そう考えると「ここからどれだけ深化させて、深いところまで来させられるか」というところで、向こう30年の音楽のあり方が変わってくると思うんですよ。

●リスナーをもっと深いところまで誘えるような作品を作りたいと。

マッシュ:みんながカップラーメンを欲しがっているからといって、カップラーメンばかりを出す世の中ではアカンと思うんですよ。ちょっとでも面白いものを出して、ちょっとでも深くしようという努力を特にアーティストは今やらないといけない。もちろん僕なんかの知識ではまだまだやと思うんですけど、それなりにはあるから。みんなを“それなり”まで持ってくるのが、僕らの仕事なのかなと。そういう認識があるから遠距離攻撃を僕らはやめないんです。…いわば最強のらっきょであるというか。

●ん? …らっきょ??

マッシュ:カレーライスにたとえるとKidori Kidoriは何なのかと考えたら、米じゃない。そんな普遍的なものではないから。カレーソースなのかといったら、そんなメインでもない。その中に入っている肉や野菜なのかといったら、それも違う。「じゃあ、自分たちは何でありたいのか?」と考えたら、らっきょだなと。もちろん好き嫌いはあるけど、カレーライスを追求していくと、らっきょに行き当たると思うんですよ。「何で、こいつはここにおるんやろう?」と。でもそういうところにこそ、面白みがあるというか。そこまで来られるように、我々がしないといけないと思うんです。だから僕らの立ち位置は、らっきょで良い。…というのをこの間、自分でもバカっぽいなと思いながらも考えていて(笑)。

●らっきょについて、随分と熱弁しましたね(笑)。

マッシュ:でもずっと、らっきょでいるわけにもいかないと思うんですよ。「俺はらっきょだからいいや」じゃなくて、「俺はすごいらっきょだぞ!」と言いたいというか。

●本来は隅っこにいるような、らっきょをメインストリームに持って行ってやると。

マッシュ:そうなんですよ。今、僕らと同世代のバンドはちょっと変わっている人たちが多いんです。そういう“らっきょ感”のあるヤツらで、1つのシーンを作れば面白いんじゃないかなって。みんながそこで頑張ればシーンになるわけで、今後はその人たちともっと積極的に関わっていきたいなと思っています。

●「こんなに面白いものがあるんですよ」ということを世の中にもっと知らせたい。

マッシュ:音楽をしっかり世の中に伝えるというか。単にニコニコ動画やYouTubeにアップするだけでは広がらないと思うんですよ。余計なものはもちろん淘汰されたほうが良いんですけど、ちゃんとしたものはちゃんと残しつつ、良いものを発信できる形を保つためにはやっぱりみんなにもある程度は深化してもらわないとやっていけない。だから、そういうふうに僕らができたらいいな…という意味で、僕らはらっきょなんです(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

Interview:IMAI

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