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小籔千豊(ビッグポルノ)

コヤブソニック2014ファイナル

ビッグポルノ

bigporno

レイザーラモンRG、小籔千豊、レイザーラモンHG

これからが本番のビッグポルノ。やっと見えてきた“KOYABU SONIC”の未来!! 反骨精神と剥き出しの闘争心が創りだした“リアルなラップ”は、自然体で押しつけもなくカッコいい。
潔く最後を決断した、“この男”だから、次にやらかす仕掛けが待ち遠しい。
FINALと、STARTは同義語なのだから!!

 

 

 

 

 

 

芸人が調子こいて野外フェスやってるんや!! ものまねラップでお茶を濁してる!? 上等・上等!! オノレの五感で確かめてみ。何にせよ、世の中の真ん中に出てくる人間の、“ブレない魂と志”は、感動と共感を連れてくる。単なるフェスの主催者へのインタビューではなく、小籔千豊という“男”の話を記録した。(JUNGLE☆LIFE発行人 PJ)

●先日行われた“コヤブソニック2014ファイナル”(以下コヤソニ)会見で、小籔さんの話を聞いて共感できることが2つあって。小籔さんがおっしゃっていた「どうすれば自分たちが浮上していけるかを考えた結果、選択肢のひとつとしてバンド結成があった」というところが、僕自身は正解だなと思ったし、もうひとつは、あえて「音楽が好きなわけじゃない」と言い切られたのがすごく潔く感じたんです。そこで、ビッグポルノは解散するんですけど、あえて今、バンドを作った動機などを訊かせてもらいたいと思いました。

小籔:新喜劇で下っ端の時に、僕は全然セリフがなかったんです。普通のお笑いやったら、若手でも「1分間好きなことをやっていい時間」っていうのがあるんですけど、新喜劇って下っ端は渡された台本のこと以外はしゃべっちゃダメなんですよ。なので「ありがとう」とか「ごちそうさん」しかセリフがないんですよ。嫁はんに早よビッグマネーをパスせなアカンのに。“こんなんではアカン”って焦りますよね。

●ビッグマネー、ですか?

小籔:僕が新喜劇に入ったのは、ちょうど9年付き合っていた彼女と結婚した時だったんですよ。人生でいちばん貧乏な時に結婚したんですよね。嫁はんに金渡さなアカンし“はよボケれるとこをくれ!”って思っていたのに、セリフがないとチャンスもないじゃないですか。「ありがとう」って100万回言っても誰もおもろいと思わへんし、どんどんストレスが溜まっていったから「俺ひとりでしゃべれるイベントをしよう」ってなったんです。その時にレイザーラモンが新喜劇に来たんで、ほんなら3人でやろうと。最初はどギツイ映画やコントを録って流していたんですよ。新喜劇がお年寄りから子供まで愛されるものだとしたら、逆に“○○ポルノ”っていう名前にして、お年寄りも子供も嫌がりそうなことをやろうと思って。新喜劇と真逆のことをすることで、心のバランスを取ろうと思ったんです。

●心のバランス(笑)。

小籔:“くそーっ!”って思いながらやっている時に、同期の2丁拳銃がオールナイトの歌のライブをやることになって、「漫談でもカラオケでも弾き語りでもなんでもいいから、15分間なにかやってくれへんか」って言われたんです。その時はちょっとでもお客さんを引っ張ってこれるよう「僕ら3人でやってます」っていう広報活動ができたらいいなと。最初はネタとかコントをやろうと思ったんですけど、他はFUJIWARAさんとか人気者ばっかり出るところに、僕みたいな全然知られていないやつがお笑いライブをやっても、寝て起きたら忘れてるやろと思ったんです。おもろいおもんないより、みんなの脳に傷を付けなアカン。なら普通のネタではヤバい。じゃあどうするってなった時に、僕が「ペニスを100回くらい歌ったら、覚えてもらえるんちゃうか」と思って。そこからラップで下ネタの歌を作り出したんです。

●すごい発想だ(笑)。

小籔:それをイベントでやったら、そういうのを面白がってくれるお客さんしか来てへんから「新曲はないんですか?」って声も出てきて。5曲ぐらい溜まってきたら“いつも決まったお客さんの前でやってるから、よそのライブに出たいな”ってなって。でも、当たり前ですけど誰もミュージシャンとして呼んでくれへんし、僕も全然音楽のことがわからんかったんで“どないしたら他のとこに出れるんかな”って探っていた時に、“SUMMER SONIC”(以下サマソニ)は大阪でもやってるんやって知ったんです。吉本から、キョードー大阪から、ABCから、いろんな業界の人に「出たいです」って言ったんですけど、ことごとく「アカン」って言われて。今なら“そらそうだろうな”と思うんですけど、その時は「なんやねん、ケチやな。俺らの方が笑かすやんけ」と思ってました。

●アハハ(笑)。

小籔:それでRG(レイザーラモンRG)と酒を飲みながら「サマソニはケチや。横でコヤソニやって潰したろうか」みたいなボケを言っていたら、RGが「できるんじゃないですか」って言って、そっから始まったんですよね。なので、僕らの広報活動の手段として下ネタラップをやり始めたっていうのがキッカケですね。音楽に詳しくないなりに、うっすらスチャダラパーさんが好きだったんで、“音楽好きな人がおもろい歌を歌っているなら、芸人が歌を歌うっていうアプローチもあるんちゃうか”と思ったんですよね。世の中のおもろい人が歌っているより、芸人が歌詞を考えた方がもっとおもろいやろうっていう発想ですね。そんなラップがあってもええんちゃうかって20歳くらいの時に思ってたんで、それが繋がって“広報活動”でやらせていただくことになりました。

●普通下ネタというのは、例え“ウケるだろう”と思っても、なかなか実行し難いと思うんです。それについては抵抗はありませんでしたか?

小籔:確かに僕は芸として下ネタに走ったりする方ではなかったんです。でも新喜劇とは真逆のことをやらんと、僕らみたいな知名度のないやつが普通のネタをやったって誰も来ないですよね。だから「なんやこれ? とりあえず小籔とかレイザーラモンとか知ってる名前があるし、行こか」って思われないと、成立しないじゃないですか。そんなに下ネタを意識したわけじゃなかったですけど、たくさんイベントがある中で“それぐらいやらんと目立たへん”と思って。なんとかイベントにたくさん人を呼ぼうっていう工夫ですね。もう活動歴は10年くらいになります。

●ビッグポルノをやって意味があったな、と思う?

小籔:僕の中では、新喜劇より大切にしていたものなんです。当時僕とレイザーラモンの3人が金のない時にイベントをやるっていったら、社員の人が「イベントやるのはええけど、客入るんかい。まあ吉本が損さえせえへんかったらええねんけどな」って言われて。その時に、“100人程度のキャパも埋められへんと思ってんのか”って、めっちゃ腹が立ったんですよ。“いつか見とけよ。この3人でいつか1000人くらいのところでイベントをやるからな”って。もちろん新喜劇も頑張るけど、腹立ったことを一生忘れへんぞと思ってやってきたんです。今から4年前くらいのことですかね、マネージャーに僕がスケジュールがパンパンの時に「今度3ヶ月後にビッグポルノでイベントやるから、スケジュール取っといて」って伝えた時に「え? 今はビッグポルノより、テレビに出た方がいいんじゃないですか」って言われたことがあったんですよ。でもビッグポルノは僕にとって地元みたいなものやから。大切にするし、1年に1本は絶対にやるって決めているんです。今はテレビにも当たり前に出させてもらって、新喜劇の座長にもなってるけど、下ネタラップを歌っていると心の中で“あの時は金がなかったな。アルバイトをして、嫁はんも働いていて…”なんてことを思い出したりして。だから下ネタを歌いながらも半泣きというか“よかったな”という気持ちが込み上げてくるんです。

●感慨深いものがあるんですね。

小籔:1回目のコヤソニをやった時もほんまに感動したというか“ほら見てみい!”ってなったし、ビッグポルノをやった次の日は改めて今の仕事のありがたみを感じるので、現場での「おはようございます」っていう挨拶の声も大きくなるというか。僕の中では意味があったのかなと。それに音楽もそんなに詳しいわけではないし、コード進行の知識もなければラップのこともわからない。なので、お笑いよりもいちばん真面目に取り組みましたね。適当な気持ちじゃプロの人に失礼やと思って、これだけはちゃんとしようと。曲を作る時は、新喜劇の台本を作る時よりも真面目に。イベントに呼んでもらった時も、「僕らみたいな芸人がこういう音楽活動をさせていただいてますが、こういう素晴らしい舞台を汚すようですみません。でも僕らはプロに対してリスペクトしてまして、真剣に真面目にやらせていただいてますんで、宜しくお願い致します」って言ってからやるんですよ。

●でも、あの記者会見でビッグポルノの音に興味を持ったんですよ。楽曲はかなり作り込まれてますよね。

小籔:曲はspeedometer.さんっていうプロの方が作ってくださっていて、僕らは歌詞だけ作っているんです。やっと最近「BLOOD JAPAN TEAR」っていう曲で「こんな感じの音にしてください」って伝えられるようになったんですけど、その答えが出たタイミングで解散になったのは、僕としてはすごく残念でもあります。

●真面目にブラジャーとパンティーの話をしながら“解散とは”って語られても…JUNGLE☆LIFE始まって以来の濃い内容になりそうです(笑)。でも歌詞についても、結構練られていると思うんですけど。

小籔:ペニスの歌の頃はなにも考えずに“こんな感じかな”って適当に作ったんですよね。そこから人に「もっと韻を踏まなアカン」とか言われて。でも韻を踏めば踏む程、言葉を重ねるだけになっておもんなくなるんですよ。音楽要素を取るか、お笑いを取るかで悩んだんですけど、“俺らはウケる方に言った方がええから、そんな韻は踏まんでええ”と。ラップだと一度聴いただけではなにを言っているかわかんないじゃないですか。だからCDを買うて歌詞カードを見た時に笑けるようにしようと思って、だんだんそっちに重きを置いていきました。まさかこんなに売れると思ってへんかったから、個人名とかきわどい下ネタとかをバンバンやっていたんですけど(笑)、ラジオとかに出してもらうようになった時「ちょっとヴァギナとかこういう曲を流すのはムリですわ」っことてなって。そんならちょっとライトにいこかっていうて、「La buffo」(ラブホ)とか「Tea! Tea! No! oh,,,喫茶?」(乳の大きさ)とか「BLOOD JAPAN TEAR」(ブラジャーとパンティー)でメッセージ性を持たせるようになってきたんです。だから「CLICK TRUTH」以降の最近の曲は、割とおとなしめな曲ですね。ラブホの歌もブラジャーとパンティーの歌も別に公にできますし、“乳の大きさは関係ないよ”なんていうのは、“確かに大きかったら見るけど、男は乳の大きさで女の子を選んでいるわけじゃないよ”っていうメッセージを乗っけて歌ったんですよね。たまに女の子から「嬉しかったです」とか「感動しました」っていう声もあるくらい。

●なるほど(笑)。でも、歌詞もPVもそうですけど、押し付けない自然な流れができているように感じました。そういったものはすべて小籔さんのアイディア?

小籔:PVとかは大体そうですね。最近のものはプロの人に「こんな感じにしてください」って伝えたり、「Tea! Tea! No! oh,,,喫茶?」はネットで乳の写真を募集してPVにしたり、あとはHGが書いている漫画のやつもあるんですよね。「珍言Oh!名言」や「AH! AUTO-CAMP」はHGの絵なんですよ。

●あぁ、あれは彼が書いているんや。でも正直、下ネタにストレートに触れる人ってあんまりいないじゃないですか。

小籔:途中でだんだん売れてきた時に“やっぱり下ネタってどうなんやろう”って思ってずっと考えたことがあったんですけど、なんでアカンのかが段々わからなくなってきたんですよ。もちろん一応世間的には下ネタってアカンじゃないですか。じゃあなんでアカンかっていうと、“子どもに見せられへんから”っていうのがあるんですよ。でも今世に溢れているものって、子どもに見せていいものばっかりなのかっていうとそうじゃない。

●確かに。

小籔:しかもお祭りで鳥居の中に神輿が入って行くっていうのは、男性と女性の営みを現しているらしいんですよ。ヒドいところになったら、ちんこの形をした御神輿を担いでいるところもあるし。よう考えたら下ネタなんてみんなやってるし、あれはよくてなんでお笑いになったらアカンのかっていうのをずっと突き詰めて考えたら、線引きがないような気がしてきて。やらない方がいいっていうのもわかるけど、僕ら芸人はアホのふりをしてみんなを笑かしているわけなんですよ。お笑いならアルバイトのやつが社長に向かって「頑張れよ」なんていうネタがあって、お客さんもそれで笑ったりするけど、そんなやつが実際におったらダメじゃないですか。子どもに見せたら真似するかもわからんし。でもそれはお笑いとして確かに存在するんやから、下ネタはなにがアカンのかなと考え出して。

●下ネタってトータルに、同じように計れるものやなくて、人に異存するんちゃいます? 僕もあまり好きな方ではないですけど、小籔さんのそれは全然嫌らしさを感じないですね。

小籔:元は下ネタが好きなわけでもないですからね。なので、下ネタに対して真面目に向き合うというか。直接的に言うのではなく、もっともらしいことをオブラートに包むことによって聴き手もそんなに嫌らしく感じないんじゃないかと思うんです。なんせ真面目にやってりゃ絶対に大丈夫だという確信があったので。ビッグポルノのライブでは、前から5列目くらいまでの若い女の子は口ずさみながらノッてますからね。

●そうなんや! どんな光景(笑)。

小籔:全ての曲を覚えてる子も結構いてますもんね。

●そういえば、ビッグポルノってラップやから伝わるというか、ラップでなかったらアカンかったようなイメージはあるんですけど。

小籔:音楽の形態は他に選ぶことはなかったですね。基本的に歌が上手くないので、聴き手がラップというものにまだ慣れてない分、下手さがわからんからごまかせるというか。ゴリゴリのヒップホップ好きのところに言ったら「なんやコイツ」ってなると思うんですけど…言うても来てるのはお笑いのお客さんやったんで、最初の方はまだいけたんかなと思います。でもスチャダラパーさんとかTOKYO No.1 SOUL SETさんとかいろんなミュージシャンさんとお話した時に、「どうやったら上手くなるんですか」っていうのを訊いたりして。俺らみたいに音楽の才能のないものが1年に2、3回しかせえへんのはアカンっていうことで、去年1年はビッグポルノの活動を増やして三重や名古屋、広島の小さなライブハウスでもやってました。福岡の“SUNSET LIVE”や静岡のフェス、サマソニに2回くらい出させてもらったりもして。

●結果的にサマソニにも出演されているんですよね。

小籔:はい。スティーヴィー・ワンダーとかと同じオーシャンステージです。

●ビッグポルノの活動をしていて、お笑いにプラスになったところはありますか?

小籔:ビックポルノをやっている時は、それこそオナニーで“自分らであの時悔しかったことを思い返す場所”みたいな感じで。普通バイトをせえへんでも食っていけるようになったら、ガッツがなくなるところですけど、ビッグポルノをやっていると“あの時ほんまに腹立ったもんな”とか“挨拶しても無視するやつ多かったな”みたいなことを思い返す場所として大切やったんです。コヤソニをやらせてもらうようになって、いろんなライブを観ることが多くなって、ステージに出ていく前の姿を見られるようになって。音楽をしている人ほどカッコよくはないですけど、舞台の上からお客さんを喜ばせる仕事という意味では、お笑いも音楽も変わらへんと思ったんですよね。例えば斉藤和義さんからはアホなメールが来たりするんですけど、音楽の話になった時とか、ステージに出る前の姿とかを観ていたら“やっぱりこの人は音楽に対して真面目だな”って思うし、スチャダラパーさんも普段「適当でええんよ」とか言ってますけど、ワンマンを観させてもらうと、すごく真面目な顔をされているんですよ。やっぱりプロだなと。僕自身もヒップホップをやらせてもらうようになって“あ、この人は自分らと全然ちゃうな”って力の差が判るようになったし、自分を基準にした時に“この人らは、こんな高いとこにおるんや”って思ったら、プロのミュージシャンに対してリスペクト感が高まりました。向こうからも、お笑いの舞台を見てもらった時に“すごいな”と思われるように、僕らも刺激をもらえるし、いろいろプラスにはなりましたね。

●そういう面で言えば、“あえて解散する必要があるのか”っていう疑問もありますが。

小籔:僕は歳を取ってもやりたかったんですけど、去年の11月に「みんな忙しくなってきてるから、今回は曲を早めに作ろうか」っていう話をしていたんですよ。それでまずは曲のテーマを決めようってなった時に、RGが「嫁と話し合ったんですけど、子どもがいじめられる可能性があるから下ネタの新曲を作りたくないんです」って言って、なら解散しようかってRGは「解散はせんでもいいんです」って言ったんですけど、「今後おもろい歌にしていったとしても、俺はこのグループ組んでる時点で売れようとするで。それでもしMステに出たりしたら“ビッグポルノってなんやろう”って検索されるわけやん。そしたらPVが上がってくるだろうし、結果いじめられることになるんちゃうか」って言って。RGはたぶんなんの気なしにお笑いの歌にしたいって言い出したんでしょうけど、活動を止めて抹殺せん限りビッグポルノの子どもやってことでいじめられる可能性がある。子どもがいじめられるって言われた時点で言い返すこともできないですし、ムリやり続けたって「うちの子いじめられましたわ。やっぱり辞めた方がよかった」って言われたらそれで終わりですから。うちの嫁はんにその話をしたら「えー? 別にうちは大丈夫やけど」みたいな感じでしたけどね。音楽業界始まって以来の、子育ての方向性の違いでバンド解散ということです。

●そうなんや。

小籔:普通は音楽の方向性の違いとかですけど、教育性の違いで解散っていうのはたぶん音楽史上初めてやと思いますよ(笑)。

●別に休止でええんちゃうかと思っていましたけど、最大の理由はそこなんですね。

小籔:休止にしてもRGの子どもが小3ですから、いじめられへんようになる年齢を20歳くらいまでと考えても10年以上かかりますし。やっと一個一個積み上げてPVも取れるようになったし、CDを出すだけでもだいぶ戦ったんですよ。コヤソニをやってだいぶ知られてきたし、東京のテレビにビッグポルノで出たし、“よっしゃっ!”てなった時にストップになったんで、なんかもうポカンとなりましたね。

●ただ僕ら一般視聴者から見ると、小籔さんは大阪の有名人じゃないですか。その人が音楽活動をするにも、メディアに取り上げてもらうのは至難の業なんですかね。

小籔:テレビに出られるようになったのは最近ですから。ビッグポルノは座長になる前からやっていたので、最初の頃はライブをするのも大変でした。曲はちょっとご飯をご馳走するくらいで、ほとんどタダで作ってもらったりしていて。CDを出す時も、吉本から「この曲はうちでは出されへん」って言われたんですよ。「じゃあ!! よそから出してもいいですか」って返したら「よそからはアカン」って言う。それで言い合ったんですけど、最終的に「今回のアルバムだけよそから1000枚限定で作っていいよ」って話になって、インディーズレーベルで作ったんですよ。でも、しばらくその形で続けていたら、もうあそこから作ったらアカンってなって。

●と、いうのは?

小籔:それまでは僕と2人のマネージャーとでコヤソニを運営していたんですけど、3回目からイベントが大きくなったからか、急に吉本が関わってきたんですよ。突然うちのマネージャーが「音楽班の○○さんから“会ってほしい”という話が来てるんですよ」って言って、初めは「会えへんっていうとけ」みたいな感じで取り合わなかったんですけど、相手はお偉いさんやったからもう1回言われたんですよ。マネージャーが泣きそうな顔をして「1回だけ会ってください」って言うから、「これは相手の顔を立てるんやなくて、いつも頑張ってくれてるあんたを守るっていうことで行くわ」ってことで行ったんですよ。そしたら見たこともないアホみたいな取締役の社員が座っとって「社長からコヤブソニックを助けろと言われて来ました」なんてことを言うんですよ。“今更なに言っとんねん”って気持ちもありつつ、今までしんどかった部分が解消されるかなと思って、おそるおそる近付いていったんですよ。そしたら打ち合わせの席の端っこにCDを作る班のやつが座っとって“俺らのCDを出すのが嫌やって言ってるやつが、俺らのフェスを手伝うとかどういうことやねん!”と思って。だから「これはこれは、よしもとアール・アンド・シーの○○さん。ビッグポルノのCDを出されへんって言うてたのに、ビッグポルノのやってたフェスが大きくなってきたら間に入ってくるんですか。オイシイ話になったからかんできまんのか。ビッグポルノを広めるためのフェスにかんでくるんやったら、CD出すくらいのことせなアカンのちゃいますん」って言うたったんですよ。そしたら、なんのこっちゃわからへんけどみんな「小籔の言う通りや」って拍手が起こって(笑)。それ以降吉本のレーベルからCDをリリースするようになったんです。

●そうだったんですね。小籔さんは、反骨精神が上昇のエネルギーになっているんでしょうか。

小籔:僕の座右の銘は“義理と恨みは忘れない”っていうことなんです。実はずっとやっていた“ビリジアン”という漫才コンビが解散した瞬間、9年間付き合ってた彼女に「普通の仕事に就くから結婚しようぜ」プロポーズしようと思っていたんです。でも漫才師のみんなに「辞めんな」って言ってもらってこの世界に残ることになって。あの時止めてもらったからこそ今があるので、“小籔を止めてよかったな”と思ってもらえるように頑張ろうと決めたんです。なおかつ、その時に1/3くらいの社員が無視するようになったんですよ。新喜劇の下っ端になったから、芸人として価値がなくなったんでしょうね。だから反骨精神だけじゃなく、お世話になった人たちがいる新喜劇にお返ししたいっていう気持ちで。コヤソニもミュージシャンの方々に恩返しという意味もありますし、あの時ナメくさった社員に“見とけよ”ってのもあるし。そのバランスですかね。

●小籔さんの話を訊いていると、奥さんが本当に素敵な人やなという感じがします。

小籔:僕は“幸せな家庭を築くこと”と、“お笑いの世界で売れること”の2つが欲しかったんです。だからずっと「あと10万ギャラが上がったら結婚しようぜ」って言ってて、9年引っ張ったんですよ。それが相方がお笑いを辞めることになって“こうなった以上、幸せな家庭を築くという夢を確実にしたい”と思って。でも「普通の仕事をするから結婚しよう」って話したら、嫁はんに「ほんまにそれでええんかいな」って言ってくれて、僕もこの世界に入ることになったから。その頃は月給も2万しかないような、人生でいちばん貧乏な時だったから“新妻にも関わらず、こんなド貧乏と結婚したコイツは可哀想やな”と思ったから、それがトラウマにもなりました。新喜劇に入って最初の2年は、地獄のように辛かったです。それもあって今は、なんとしても金の苦労もなく生活だけは安定させたい、というのが僕の中で思うことですね。それがすべての原動力。

●うんうん。

小籔:あとは、やっぱり止めてくれた人たちへの恩返し。この間六本木で新喜劇の公演をやったんですよ。5年くらいずっとやらしてくれって言っていたけど、なかなか実現できなくて。それが最近テレビに出るようになったからか、これくらいなら客が入るやろうなって判断したんでしょうか、ついにOKしてもらったんです。そこに桑原師匠にも来てもらったんですが、打ち上げの時に「小籔くんのおかげで、憧れの舞台である六本木の俳優座に来れた。ありがとう」って言われて、1/3くらいは役目が果たせたかなと思いましたね。あと2回くらいそういうことができたら嬉しい。

●バンドマンにも聞かせなアカン話ですね、本当に。ビッグポルノはいよいよ8月に解散ライブが決定していますが、どんなライブになりそうでしょうか?

小籔:大阪はたぶん1回目から来てくれているお客さんもいっぱいおるんで、どっちかといったらファンサービスというか、媚び媚びのライブにして。東京の方は去年もやった“フリースタイルラップバトル”をやろうと思っています。

●“フリースタイルラップバトル”とは?

小籔:『BAZOOKA!!!』というテレビ番組で『高校生RAP選手権』っていうのをやっているんですけど、“これって芸人でやった方がおもろいんちゃう?”ってことで始めた企画です。もちろんラップ経験のない芸人がやったらあんなに上手くは歌えないですけど、そのぶん出てくる言葉は面白いから、これは絶対にイケるなと思って。去年東京でやった時もすごくウケたんで、今回もそれをやりたいと思っています。

●どちらもファンサービスが主やと。ではコヤソニのことも訊かせていただきたいんですが、今までで心に残るエピソードとか、コヤソニだからできたことを教えていただけますか。

小籔:コヤソニならではと思うのは、“誰のために集まってきてくれているのかがすごくわかりやすい”ということですね。スチャダラパーさんには「お客さんもすごくピースフルな雰囲気」って言ってもらえたし、釣瓶師匠にも「コヤソニのお客さんは上品でええお客さんや」って言って頂いたんですよ。それはすごいミュージシャンが出てくるのに、“小籔のためにこの人ら来てんのか。ええ人やな”って感じてくれたら、お客さんもええ人になると思うんですよ。それにすごく助けられているところがあって。もうひとつ、芸人さんとミュージシャンが半々なのもウリですね。去年だったらスチャダラパーさんの「今夜はブギーバック」をロバートが歌ったり、池乃めだかさんも毎年課題曲をやるんです。コヤソニでは演奏が終わった後に僕がアーティストさんに絡みに行くんですけど、そこにめだかさんが出てきて新喜劇っぽいコントをするのがお約束なんですよ。「誰に断って勝手なことやっとんねん。ショバ代払わんかい…よう見たら、お前斉藤和義やんか」「ジジイが斉藤和義を知っとんのかい」「俺めっちゃファンや。俺に斉藤和義の曲をここで歌わせてくれたらチャラにしたらぁ」みたいな寸劇をして。

●面白いな(笑)。

小籔:「アホかお前! この人ら凄い人なのに。ダメですよね?」「いいですよ」「ええんかい!」みたいな(笑)。それで「歩いて帰ろう」をめだかさんが歌う、みたいな。前にチャットモンチーさんの「シャングリラ」でめだかさんがコラボした時に「おじいさんがきっと難しいであろうその歌を一生懸命歌ってる姿は、泣きそうになった」って言ってくれた人もいて。僕は面白いかなと思ってやったんですけど、みんな感動してくれたりもしましたね。あとはチャットモンチーさんのドラムが抜けるってなった時、「ファンはあなたたちのベースやギターを聴きたいでしょうから、コヤブソニックでもし僕がドラムを練習して叩けるようになったら、一緒にやってもらっていいですか?」って言ったんですよ。向こうは半信半疑やったらしいんですけど、ドラムスクールでレッスンを受けて、当日ライブでやらせてもらったんです。レッスンは今も続けているんですけど。

●なるほど。フェスを続けるにはすごくモチベーションがいると思うんですが、それを支えているものとは?

小籔:最初はビッグポルノを広めたいということだけで始めたんですけど、来ているお客さんらに“小籔みたいなアホみたいな顔して住之江を歩いていたやつが、こんなすごい人らを呼んでできるんか。じゃあ俺もなんかできるかな。頑張ろう”って思ってもらえたら嬉しいです。“強く思って、かつ頑張ったらすごいことができるよ”って。それから、僕は人との繋がりだけでやってますんで、繋がりの大切さ。そして、地元を大切にする心が伝わったらええなと思っています。ただ、このイベントそんなにしんどくはないんですよ。当日は2日間やっていても全然疲れない。なので1年間の垢落としというか、これをやることで“また頑張ろう”ってなるんで、苦になることはないですね。ただ、毎年お願いするのも悪いなと思っていて。“こんなフェス出るの嫌やと思ってる人がいるんちゃうか”とか、社員の人も“コヤソニがなかったら簡単な業務で帰れるのに、フェスのせいで朝から晩までおらされて”とか考えている人がおるんちゃうかと思ったらね、やっぱり重圧になってきていたのが正直なところで。10年やりたかったんで残念やなとも思うんですけど、同時に誰かが喜んでるのかなと思ったりもします。

●こんなバラバラなメンバーが集まるフェスって、日本ではそうそうないですもんね。今年はどんなフェスになりそうでしょうか?

小籔:毎年僕がオススメするすごいミュージシャンさんと、僕が心の底から尊敬する芸人しか呼んでませんので“この人知らんな”って思っても来て頂いたらきっと好きになってもらえる自信がありますね。生の音楽やお笑いを見たことがない人も、来て頂けたら値段分は絶対に得をするようにはなっていると思います。

●今回は3日間ですけど、どうせなら3日間来てくれっていう感じですよね。

小籔:そうですね。日によってカラーが違うようになっているんで、せめて2日は来て頂けたらなと思います。

●では最後に、読者にコメントをお願いします!

小籔:こんなアホみたいな芸人がフェスというものに足を踏み入れさせてもらって、各所にご迷惑をかけた部分もあるし、“イキッとんな”と思ってるだけの人もおったと思うんです。けど他のフェスをリスペクトしながら、他のフェスにないところを探さないといけないと思いながらやっていましたし、知らんなりにそういう想いで真面目にやらせていただいていました。今年で一応コヤソニは一旦最後にさせてもらいますんで、今まで調子乗ってスミマセンでした。中には日程が被ってご迷惑をかけたところもあると思うんですよ。でも音楽とお笑い、全然違うけど似たところもいっぱいあると思うんで、どっちも好きなお客さんが増えたらいいなと。

●むしろ、そういうこともやっていかないといけない時代だと思うんですよね。音楽層は音楽層である程度決まってしまっているので、お笑いと重なることによって新しいシェアを作れると思います。

小籔:音楽好きの人がお笑い好きになってくれたらいいし、お笑い好きの人が音楽を好きになってくれたいいなと思ってやらせてもらいます。

Interview:PJ / Edit:森下恭子

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“KOYABU SONIC 2014 FINAL supported by uP!!!”

2014/9/13(土)、14(日)、15(月祝)
各公演共10:00 open / 11:00 start 会場:インテックス大阪5号館

【アーティスト】AFRA / EGO-WRAPPIN'AND THE GOSSIP OF JAXX / カジヒデキ / サニーデイ・サービス / スガ シカオ / スチャダラパー / スモールポルノ(宇都宮まき、今別府直之、男前) / 田島貴男(オリジナル・ラブ) / TOKYO No.1 SOUL SET / 野宮真貴 / ハナレグミ with U-Zhaan / ビッグポルノ(小籔千豊、レイザーラモン) / ホフディラン / 盆地で一位 / MIGHTY JAM ROCK With ANADDA REBEL BAND / 憂歌団 / レキシ / N'夙川BOYS and more...! ※50音順

【芸人】浅越ゴエ​ / アンガールズ / 桂三度 / 麒麟 / サバンナ八木​ / 島田一の介 / シャンプーハット / ずん / ダイアン / 千鳥 / 椿鬼奴 / 天竺鼠 / 土肥ポン太 / 友近 / 中川家 / なかやまきんに君 / 博多華丸・大吉 / バッファロー吾郎 / 藤井隆 / フットボールアワー / 平成ノブシコブシ / 野性爆弾 / ヤナギブソン / 矢野・兵動 / ロバート / 笑い飯 and more...! ※50音順

http://www.koyabusonic.com/