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0.8秒と衝撃。

音楽界のマッドサイエンティストと慈悲深き狂気の女神による超弩級のアンサンブル

185_08秒と衝撃音楽界のマッドサイエンティスト・塔山忠臣(唄とソングライター)と慈悲深き狂気の女神・J.M.(唄とモデル)による0.8秒と衝撃。。常に我々の先頭に立って闘い続けてきた彼らが、今年2月に3枚目となるアルバム『【電子音楽の守護神】』をリリースした。昨年6月に前作『バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP』をリリースして以来、自身のツアーやフェス、イベントなどで命を削るかのごとくステージを重ねてきた彼らは、たくさんのオーディエンスの前で至福の瞬間を生み出し続けてきた。東名阪ワンマンツアーが迫る今月号では、ART-SCHOOL presents「KINOSHITA NIGHT 2013」(2013/3/20)のライブを終えたばかりの塔山に迫り、現在の心境を訊いた。

「作り手としてはそれがいちばんご褒美ですよ。そいつの人生の一瞬なり、ほんの1ページだけでもそっと俺たちの音楽が色を塗ってくれている感じがする」

●ライブの直後にすみませんね。射精した後みたいにぼーっとしてますけど。

塔山:いや、今はビールが飲みたいだけです。だって今日はライブ前にレコーディングもしてきてますからね。だからやり切った感がハンパないんです。

●体力を全部使い切ったと。

塔山:まだ3億匹くらいはいますけどね。

●久々にライブを観たんですけど、いい意味で板についてきたというか、煽らなくても会場が盛り上がっていましたね。2月にリリースした3rdアルバム『【電子音楽の守護神】』の曲も2曲(「シエロ・ドライブ 10050」「鈴木アルビニくん」)もやっていましたけど、メンバーのグルーヴもすごくいい感じで。

塔山:今日のイベントは初見の人もいたでしょうけど、でもそんな中で“ここでこそ暴れるべきやろう”という人たちは前に出てきてそれを見せてくれているから、それに俺も応える。そういうコール&レスポンスができてきた感じはありますね。

●気持ちのコール&レスポンスができていますよね。気持ちのセックスといいますか、ライブでセックスといいますか。

塔山:2分間だけ死んでもらっていいですか。

●あ、すみません。

塔山:物理的に何かを言い合うとかじゃなくて、呼吸感みたいなやり取りがあるんですよ。全然動かなくて相手を見ているだけで暴れてくれるし、向こうが止まっていても興奮しているのはわかるから俺は暴れたくなるし。

●そういう感覚は、ライブを重ねていくに従って強くなってきている?

塔山:最近思うのが、自分のライブするときの感覚が変わってきたんです。前とかだと準備万端で臨んで、そこで勝負してみて「どう?」みたいに結果を見ていたんです。でも最近は遠征とかもそうだけど、やることも話すことも寸前まで一切考えずに、セトリもリハスタで1回か2回くらいしか確認せずに。そういう追い詰められている緊張感の必要性というか。新譜の歌詞も覚えてないですからね。こないだ九州に遠征に行ったとき、30分前に聴いて歌詞を覚えたんです。

●あら。

塔山:それで入るんですよ。緊張感があると覚えるんですよね。歌詞が飛んだらかっこわるいのは俺じゃないですか。そういうのがあるからかわかんないですけど、スイスイ入るんです。それはすごくわかりやすい例ですけど、最近のライブはあまり準備していかないっていうか。気持ちも。それは気合いが抜けているわけじゃなくて、普通の状態で行くっていうか。なんかこうね、真っ白な状態というか、無色透明で行くと、その方がそのときの現場の状況が見えるんですよね。

●はいはい。

塔山:見えるから何かを変えるわけではないですけど、見えるから気持ちのコール&レスポンスがしやすいんです。だからライブが楽しくなってくるんですよ。その空気感の楽しさを自分で感じるために、最近はあまり用意しないようにしたんです。そうすると自然な感じでライブができるというか、客とのやり取りのグルーヴ感が出てくるんです。

●今までは机上で考えてきたことを現場で試していたわけだから、それがハマるかどうかは終わってからでしか判断つかなかったんでしょうね。

塔山:うんうん。おもしろいもので、そういうライブって盛り上がらないんですよ。用意していくと、プランがちょっとでもズレたら“次どうしよう?”って感じで応用が効かないんですけど、もともと用意してないと、その場でパーッと感じてやるわけだから“これちょっと違うな”と思ったら別のことができるんですよね。そのライブ感が最近は楽しくて、そこにちょっとハマってますね。

●確かにライブを観ていてそんな印象を受けました。

塔山:さっき言ってくれたみたいに、最近は演奏隊が締まってきているんです。そこの説得力に集中してくれているから。それって音で客とコミュニケーションしてるわけじゃないですか。だから俺とやっていることは変わんないんですよ。例えば何かしゃべってお客さんを和ませるのと、彼らが音でお客さんを興奮させるのは同じことだと思うんです。

●演奏じゃなくて表現というか、コミュニケーションというか。

塔山:だから今は本当に楽しいんですよ。本当にすごく。

●人生は全然楽しくないけどライブは楽しいと。

塔山:うるさい!

●1つ訊きたかったんですが、ライブの日でもバイトして後から1人で合流することがよくあるじゃないですか。

塔山:本当はしたくないんですよ。でもおもしろいですよ。遠征とかだと現地にメンバーを置いて、下手したらメンバーは現地で泊まっているじゃないですか。俺はライブが終わったら東京に戻って、また次の日にライブしに行って。極端な話、リハも出なくて、歌詞も覚えなくて本番の15分前に会場に入って、みんなと同じテンションで結構結果を出したライブができたときの解放感はすごいんです。全盛期のツービートですよね。舞台の上でしか顔を合わさないという。

●ビートたけしとビートきよしのツービートね。

塔山:ああいう感覚って好きなんですよ。立川談志とかもそうですけど“その瞬間でやる”みたいな。でも普通の概念で考えたら「不真面目だ」と捉えることもできるじゃないですか。「客は金出してるのにリハもせずにナメてんのか」と思う人もいるかもしれないけど、別にリハがあったらいいライブができるかどうかもわからないじゃないですか。「だから結果見てくれ」っていう。ちょっと喧嘩を売っている感も楽しいんですよね。

●バイト休んだりできないんですか?

塔山:あの〜、クビになっちゃうんですよ。平日の9時5時のバイトだから。

●そういうことか(笑)。

塔山:だからやむを得ずなんですけど、昔は「リハやりたいな」とか、あかんライブやったら「やっぱりリハやらへんかったからかな」とか考えていたんですけど、最近は全然そんなこと思わないです。そこでやってこそだろうと。条件が人より劣っていたとしても、それでやってこそ今からがんばれるんとちゃうんかなって思えるんです。

●塔山くんっぽいですね。

塔山:そこをやりたいんですよ。「俺らはしょうもない条件に飲まれるようなバンドじゃないやろ」って思いながらやりたいんです。

●なるほど。訊きたかったんですよね。ずーっとそういうスタイルでやってるから、敢えてやってるのかなと。

塔山:全然。クビになっちゃうんだよ。

●クビになっちゃうのか。ところで今更ながら3rdアルバム『【電子音楽の守護神】』の感想なんですけど、前作『バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP』(2012年6月)のインタビューのとき、塔山くんは「せっかく味方が増えてきたんだから、俺も諸先輩方のような強さを持ちたいんだ」と言っていて。

塔山:うんうん。言ってましたね。

●そういう意味での“強さ”を今作から感じるんですよね。現実はどうか知りませんけど、今作の塔山くんは今まで以上にかっこいいし、今作のJ.M.さんは今までよりもキュートで女性らしいんですよね。

塔山:マジですか。嬉しいな。

●今までの作品でも、毎回塔山くんは闘ってきたと思うんです。でも今作は闘っている先が明確に見えているというか、「俺はこれからも闘っていくんだ」と宣言しているようにも思える。“強くなりたい”という意志が見えるというか。

塔山:“強くなりたい”という積極性のない感じではなくて、感覚的には“強くありたい”と思っていますね。自分の強さを知っているので、大変なことや嫌なことがあっても、ここでこうちゃんと勝負すれば強くあれるということはわかっているので。結局は“逃げない”ということなんですよね。だから“強くありたい”と思いますね。ライブとかでも、前までは防御するために用意していたんですけど、そんなのも要らなくなってきた。自分の中でのライブに対するテンションにブレがなければ、どんな状況でも勝負ができると思うんです。そういうライブ観に対する考え方がすごく変わったので、それが色濃く出た作品ではありますね。

●そして今作のJ.M.さんがなぜ今まで以上にキュートで女性らしく感じるかというと、おそらく塔山くんが書いた歌詞なんでしょうけど、今作の彼女は自分の言葉で、自分の想いとして歌っていると思うんですよね。

塔山:最初の頃は、彼女は渡した歌詞をいい声で入れることに集中していたんですよ。でも最近は、歌詞の内容を「これは好きだな」とか強く言ってくるんです。

●お。

塔山:「ここの歌詞すごく好き」とか言ってくれながらレコーディングしたり。そういうのが嬉しくもあり、照れくさくもあり。作っている立場やから制作者としてお互いを見ているじゃないですか。でも最初に聴いているのはJ.M.なのでリスナーでもあるわけですよ。

●いちばん近い客観性ですもんね。

塔山:そこで聴いて「この歌詞、私本当に好きだな〜」と言いながら歌っている。だから最初に歌詞を見せるとき、前よりも緊張するようになりました。

●ハハハ(笑)。

塔山:好きか嫌いかっていう感情が出てきますからね。「これ嫌だな〜」と言うときもありますし。だからそういう部分が、彼女が歌うときに感情とリンクして、自分の言葉っぽくソウルが入っているのかもしれないです。歌詞に対しての、彼女の想い入れは今までよりも強いです。

●今まで意識的に曲の中で重要な部分をJ.M.さんに歌ってもらってきたから、その相乗効果で彼女も気持ちを乗せるようになったのかもしれないですね。

塔山:そう。自分の好き嫌いっていう感情の部分を乗せてくるようになりましたよね。そういうのが伝わっているのは嬉しいです。

●そして4月は東名阪でのワンマンが控えていますが、今日の話を聞く限り、ライブがどんどん充実しているということで、楽しみですね。

塔山:最近のライブは本当に楽しいですね。例えば制作とバイトの繰り返しで苦しいときとかに「苦しいけど絶対に俺はやるから」とかTwitterで書いたりすると、受験で毎日勉強やっている子とかが勝手に勇気づけられてくれているんですよ。

●それはわかる。必死でやっている人の姿は美しいもん。

塔山:それで俺も勇気づけられるんですよ。奴らなんて家に帰っても勉強やし、酒を飲んだりもできないわけじゃないですか。そう考えたら大人なんかの方がほぐせる部分いっぱいありますよ。そんな中でライブに来てくれたり、「今は行けないけど僕の目標は合格して0.8秒と衝撃。のライブに行くことです」ってメールくれて、それで合格してこないだ来てくれた子とかいたり。

●それは嬉しいな。

塔山:あと、前のライブのときにお父さんが病気で入院してて結構ヤバい状態だっていう子がいたんですけど、「塔山さん元気ください」って言うからサイン書いて背中をバーン! って叩いてやったんですよ。その後、お父さんが回復して、今はもう普通に仕事できるようになったらしいんです。それで「これからもライブずっと行きます」と言ってくれたり。

●うわっ、そんなのめっちゃ嬉しいじゃないですか。

塔山:それって向こうが嬉しいから報告してくれてるんだけど、どっちかと言うと俺の方が嬉しいんです。その感じがめっちゃ楽しいんですよ。「こいつなんでこんなに俺を喜ばせてくれるねん」って。ちょっとね、感動しますよ。それを直接伝えるためだけにインストアに来てくれたりするんです。「今日はこれを言いに来ました」って。

●いい話だな。

塔山:そのライブでJ.M.に「おっぱい!」と叫ばせているわけですからね。「おっぱい!」と叫んだ後で、「父親が回復しました」って。本当に嬉しかった。作り手としてはそれがいちばんご褒美ですよ。そいつの人生の一瞬なり、ほんの1ページだけでもそっと俺たちの音楽が色を塗ってくれている感じがする。だから今回のツアーは本当に意味があることなんです。新曲は色んなライブでちょこちょこと試しているんですけど、また全部いいんですよ。全部大砲なんです。いちばんの大砲は俺ですけど。

●いやいや、いちばんの大砲は僕ですけどね。

塔山:だから今回のツアーは楽しみで仕方がない。今までのライブでいちばん楽しみです。

Interview:Takeshi.Yamanaka