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溺れたエビの検死報告書

ワシャワシャ!! グギャギャギャギャ!!! 怪人“溺れたエビ”ここに出現!

185_ebi怪人【溺れたエビ・総帥】と総合演出担当の【山本 - 慶】率いるアート集団、溺れたエビの検死報告書(通称“エビ”)。派手なパフォーマンスや幅広いジャンルを表現しうる音楽的技術、そして客席やフロアを全面的に利用した演出が話題を呼び、各方面から高い評価を得ている。ライブ中は常にエビのマスクを装着し正体が謎に包まれている彼らだが、今回取材班は山本監督と、“029号”寺田氏への接触に成功! 溺れたエビを徹底解剖する!

 

●素朴な疑問なんですが、何でエビマスクを付けているんですか?

山本:今から11年前に、京都の某ライブハウスの店長から「ブッキングに穴が空いたから、何かやってくれ」って電話がかかってきて。それなら、前から興味があった被り物のバンドをやろうと思ったのがキッカケです。

●なるほど。でも、なぜモチーフをエビに?

山本:ありがちなのじゃ面白くないと思って。当時たまたま僕の部屋で小さいエビを飼っていたんですよ。何を被ろうか考えている時に、エビと目が合って閃いたんです。“エビを被ってる奴はおらへんやろ!”と。

●確かにいないと思います(笑)。

山本:初めは一度きりのつもりでしたけど、意外と人気が出てもうて。気がついたら10年越えてました(笑)。

●今作は10年以上もの期間を経てようやく完成したわけですが、これまでにも音源を出したいという気持ちがあったのでは?

山本:ずっと出したかったんですけど、基本的に僕と溺れたエビ総帥は完璧主義で(笑)。なかなか納得のいくものが録れなかったんですよ。イメージは明確にあったんですけど、そこに行き着くまでに時間がかかりました。

●その“イメージ”とは?

山本:映画的な雰囲気ですね。僕は映画やパフォーマンスアートに大きく影響を受けているので、今作は“映画館で鳴らしても成立するような音”にしたかったんです。それはジャケ画にも現れています。あの絵を描けるスキルの兒玉 旬さんに出会うまでに時間が掛かったのもあります。全体的に劇盤的な要素が色濃く出ている初期の曲が多く入ってますね。世間一般が言う「プログレ」的要素が強いかも。

●例えばM-1「外骨格」はいつごろからある曲なんですか?

山本:結成当初から骨組みはありました。逆にM-2「Psychedelic Under Water」はここ3年くらいの曲ですね。もともとは映画監督である島田角栄さんの『デストロイ ヴィシャス』という映画の劇中曲として依頼された曲なんですよ。ちなみに、エビもキャストとして出演しています。

●この曲って、所どころワープ音や水泡みたいな音が入っているのが面白いですね。

山本:この曲は、ほとんど総帥が単独で作ったんですよ。管楽器以外は、溺れたエビ基地(アトリエ兼 作曲スタジオ)でちまちま作業しながら作りましたね。生楽器だけは、エビ専属エンジニアの自宅スタジオに合宿をして録って、編集は基地で行いました。

寺田:合宿は3回くらいしましたよね。2曲目のトランペットに関しては曲の最後にちょっとだけアドリブを入れたんですけど、結構さっくり録れました。

●デジタルな音の中にひとつ生音が入るだけで、曲の印象が変わりますね。M-3「アルテミア・ノープリウスが泳いでいる。」は、タイトルからして印象的です。

山本:“アルテミア・ノープリウス”といのは、いわゆる「シーモンキー」みたいなちっちゃいエビ生き物ですね。それがピヨピヨ動いているイメージの曲。

寺田:自分で言うのもなんですけど、トランペットパートが絶品なんですよ(笑)。しかもこれ、一発取りなんです。トランペット要員の2人が、打ち合わせなしでアドリブを同時に入れて生まれた奇跡のアレンジです。ほんまに完璧だったと自信を持って言えますね。

山本:「アルテミア・ノープリウス〜」とM-4「ワシャワシャ!! グギャギャギャギャ!!!」は、左右のスピーカーと自分の耳の位置が正三角形もしくは綺麗な二等辺三角形になるよう配置すると、部分的に疑似サラウンドになるんですよ。音がスピーカーからじゃなくて、ありえへんところから聴こえる仕掛けになっているんです。だからモノラルで再生されると、(位相を弄ってる為)音が消えてまうんですけど…。(笑)イヤホンやヘッドホンで聴くと、ドラッギーな音が頭の中で鳴っているみたいになりますよ。

●細部までこだわりを感じます。「ワシャワシャ!! グギャギャギャギャ!!!」はライブ映えしそうな曲ですね。

寺田:最近のライブではだいたい1曲目に持ってくることが多い曲ですね。激しい分、ライブではかなりしんどいです(笑)。

●確かに大変そう(笑)。最後がM-5「アノマロカリス」ですが、どことなく特撮っぽいというか、『ゴジラ』のBGMで流れてそうな曲だと思いました。

山本:作曲家の故 伊福部 昭氏へのリスペクト曲でもあるんです。これは、テレビで観たアノマロカリスの映像にインスパイアされて作ったんですよ。後から調べたんですが、「アノマロカリス」は日本語に訳すと“奇妙なエビ”という意味だったので、意味的にもぴったりだなと。

●すごい偶然! リリースにともなって5月からツアーが始まりますが、ライブの見どころはズバリ何ですか?

山本:うちはバンドというより総合的なアート集団なんです。優れたパフォーマンスとリアルな音楽が混在したステージが楽しめると思います。

●具体的には、どんなことをされているんですか?

山本:未見の人達にあまりネタバレさせたくないので、具体的には言えませんが立体的なパフォーマンスでエビとお客さんとがスゴく近い位置で楽しめるステージングです。時にはお客さんも触れる舞台装飾と一体化したオリジナル楽器も登場したりします。センサーを取り付けたボールを叩いたら“ビヨヨ〜ン!”ってゲームっぽい音が出るような電子パーカッションとか。エビは楽器屋に行くよりホームセンターに行くことの方が多いんです(笑)。想像を絶するようなとんでもない方が絶対に面白いですしね。僕は「芸術=サプライズ」だと思ってます。

●おぉ〜、楽しそう! 本当に独創的ですね(笑)。

寺田:あと実は、既に2ndの録音も少しずつ進んでいるんですよ。まだプリプロ段階ですけど、聴きますか?

●はい!(試聴中…)かなりポップな曲が多いですね。

山本:2ndは完全にファンクやエレクトロなダンス系なんです。まったく別のバンドかっていうくらい違いますね。今回のアルバムでは見られなかった、よりライブの雰囲気に近いエビらしさが表現できると思います。

Interview:森下恭子

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