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国吉亜耶子and西川真吾Duo

ピアノと歌とドラムというシンプルな音を絵筆にし、 聴く者の心に未だ見たことのない神聖な景色を描き出す“Duo”

185_国吉“国吉亜耶子and西川真吾Duo”という名前は、ライブハウスによく行く人ならどこかで見かけたことがあるのではないだろうか? そのくらい頻繁に、かつ様々なイベントにこのDuoは出演しているのだ。ギターロックなど普通のバンドスタイルはもちろんのこと、カオティックハードコアに至るまで多岐にわたる対バンの数々。そして、それこそが2人の生み出す音がジャンルを問わず、多種多様な人々の心を打っていることの証明でもある。通算5枚目のフルアルバム『RECORD』のリリースを機に、その音の根源にある2人が生きてきたルーツに迫るスペシャル・インタビュー第1弾。

 

●国吉さんは沖縄出身なんですよね。

国吉:私は地元の沖縄から、音楽に携わることがしたくて東京に出てきたんです。別に福岡でも大阪でも良かったんですけど、たまたま兄が東京にいたというのもあって。でも私と同じ時期に出てきた人はもう大体、地元に帰りましたね。学校を卒業したりして地元に帰る人がほとんどで、残っている人のほうが少ないです。

●そんな中で東京に残るという決断をした理由とは?

国吉:在学中からバンド活動をしていたのでその流れでもあったんですけど、帰る理由がなかったというのが一番大きいかなと思います。沖縄に帰りたいと思ったことはあまりなかったし、今でもあまりないですね。

●東京の生活に馴染めたんでしょうね。

国吉:東京のほうが楽でしたね。良くも悪くもなんでしょうけど、誰も何も言ってくれない冷たさが逆に優しく感じたというか。放っといてくれるのが一番良かった。

●そういう環境のほうが居心地が良かったと。

国吉:全然、良いですね。東京に出てきて初めて、自分の新たな面に気付いたところもあって。田舎で家族や親戚やらに囲まれてみんなでワイワイ楽しく過ごしていたり、友だちが近くにいてすぐ遊びに行ける環境だったら気付かなかった、自分の裏側みたいな…。

●自分の裏側?

国吉:東京に出てきて、やたらと独りごとが多くなったんですよ。話し相手がいなかったからかもしれないけど、たとえば電子レンジに何かを入れる時にでも独りごとを言っている自分に気付いて。そういう孤独感だったり、裏側にあるちょっとネガティブな部分は、おそらく東京に出て来ないと出会えなかった“自分”なんだろうなと。そう思うと、来て良かったなって思います。

●嫌でも1人の自分に向き合わなくてはいけない環境だから、気付けたことがあった。

国吉:本当に「ここに来て良かったな」と思うようなことが多くて。嫌なこともいっぱいあるけど、その分、良いことが100倍くらい良いと感じられたりするから。ちょっとした優しさに触れた時とかもそうですね。色んなことを含めて、結果的に「良い街だな」と思っています。

●西川さんは東京についてどう思っているんですか?

西川:僕も東京が大好きというか、自分には合うような気がしますね。高校を卒業したら東京に出たかったんですけど、色んなところからの反対があって出られなくて。それで専門学校を卒業した時に、アルバイトでお金を貯めて出てきたんです。

●中学・高校と野球をやっていたという西川さんが、音楽をやりたいと思うようになったキッカケとは?

西川:僕は1つのことに対して突き詰めないと、気が済まないタイプなんですよ。野球に関しても、他の人よりも努力して真剣にやっていて。そういう中でたまたま誘われてコピーバンドをやってみたら、すごく楽しかったんです。負けず嫌いなので誰よりも上手くなりたくて、そこから一気に音楽をやろうと思ったところはありますね。

●そこで音楽に目覚めたと。

西川:あと、僕は身体のバネがすごくあったので、「このまま大学や社会人まで行けば150km/hの球とかも投げられるようになるから野球を続けろ」と言われて。その時に、自分の中で「すごくつまらないな」と思ってしまったんです。

●つまらない?

西川:「これでもし150km/hの球が投げられるようになったら、何かつまらないな」と思って、冷めた瞬間があって。そこからドラムや音楽のほうに行った感じですね。

●その後に上京してきて、国吉さんとバンドを組むことになるわけですね。

西川:国吉の元々やっていたバンドが、メンバー募集の貼り紙を楽器屋に出していて。それを大阪から上京してきた僕が見つけて、連絡した感じですね。

●2回目に会った時にケンカしたそうですが…。

西川:国吉がやっていたバンドに応募して初めて一緒にスタジオへ入った時に、彼女のピアノがすごく上手くて歌もすごく良いと思ったんです。でも国吉に比べると、他のメンバーのクオリティがすごく低いと僕は感じてしまって。「違うメンバーでやったほうがいいんじゃない?」と言っちゃったんですよね。

国吉:それに対して私が怒ったんです。私もスタジオで合わせてみて良いと感じたので、好きな音楽や本人の感想も含めてちゃんと話を聴いておきたいなと思って2人で喫茶店に入ったんですよ。そこで西川の第一声が「バンドやめたら?」だったので、私はわけがわからなくなって(笑)。

●この人はいきなり何を言っているんだと(笑)。

国吉:こっちからすると「自分からバンドに入りたいと言って来たんじゃないの?」みたいな感じで。話を聞いてみたら、西川はスタジオミュージシャンになりたかったらしくて、バンドになんてハナから入る気がなかったんです。「力試しで来た」くらいの感じだったので、こっちも「スタジオミュージシャンなんて、絶対無理だよ」とか言って(笑)。

●売り言葉に買い言葉だと(笑)。でも西川さんは国吉さんを評価しているからこその発言だったんですよね。

国吉:でもその時は腹が立っちゃって(笑)。

西川:僕がもしバンドをやるなら、周りで一番上手いヤツと一緒にやりたいという気持ちがあって。「もっと上手い人と一緒にやれば有名になれるのに」っていうくらいの感覚でしたね。

●それはバンドというものに対する考え方の違いですよね。上手い人ばかりを集めたからといって、最高のバンドになるとは限らないわけで。

西川:そうなんですよ。そのバンドが解散してから、「バンドってそういうものなんだ」と気付きましたね。

●国吉さんはバンドを解散した後に一度、ソロ作品をリリースしていますよね。

国吉:ソロと言っても音源を作っただけで、活動はほとんどしていなかったんですけどね。

●そこから再び、この2人で活動を始めたのは?

西川:解散した後に僕は色んな音楽を聴いて勉強したんですけど、その中でもアフリカの音楽をすごく聴いていたんですよ。そこでベースやギターなんていらないし、「リズムがあって、歌があればいいや」とすごく思った瞬間があって。そういう時に国吉が吉祥寺の街で歌っているところに出くわしたんです。

国吉:“吉祥寺音楽祭”というイベントで、駅前のロータリーのところで歌っていたんです。

●そこに偶然、通りかかったと。

西川:ちょうど休みの日で買い物にでも行こうかと吉祥寺へ自転車で向かっていたら、すごく良い歌が聞こえてきて。「何だろう?」と思って近づいていったら、国吉が歌っていたんです。それを見て「やっぱり一緒にやりたい」と思ったので、僕から誘いました。

国吉:誘われた時は最初、「2人で何をやるんだ?」っていう感じでしたけどね。でも最初に入ったスタジオで録った音を聴いてみると、やりようがあるかもと思って。「音数が減った分、やれることが増えたな」と感じて、何か面白そうだなという興味が湧いたんですよ。

●最初から2人だけでやるつもりだった?

西川:最初に2人でスタジオに入って録った音がすごく良かったので、これでいいかなと。もしベースやギターの音が欲しくなれば、後から入れたらいいじゃないかというくらいの感じで始めましたね。

国吉:最初から「絶対に2人で」という、こだわりはなくて。一緒にやりたいと思える人に出会うまでは、とりあえず2人でやれることをやろうという感じでした。

●ちなみに先ほどおっしゃったアフリカの音楽と、国吉さんの歌に何か通じるものがあったんですか?

西川:僕が聴いていたCDは、曲名が「お葬式の歌」とか「出産の時の歌」みたいな感じで(笑)。10人くらいが打楽器を叩いている上でオバちゃんたちが歌っているような音源を聴いた時に、原始的なものだけでやっているのにすごいなと思って。そういうものを自分のドラムでやるにはどうしたらいいかと考えていた時に、ちょうど吉祥寺音楽祭で国吉の歌を見て「やれるかも」と思ったんです。

●国吉さんの歌に、アフリカ音楽に通じるパワーを感じたということ?

西川:そうかもしれないですね。

国吉:でも「ちょっと聴いてみて」と言われてCDを聴いたんですけど、5秒くらいで止めましたね。私には全然わからなかった(笑)。

●ハハハ(笑)。音楽的な好みは違うけど、西川さんと一緒にやろうと思えたのはなぜ?

国吉:ピアノの弾き語りに対して、こんなに全力でドラムを叩いてくる人は他にいないだろうなと思うんですよ。度を越えたドラムの音量で来るので、半分ケンカみたいになっていますけど(笑)。

西川:でもこっちがドラムをガッと叩いたら、国吉もガッと向かってきてくれるのが気持ち良いというか。「やっぱりこうじゃないと」って思うし、こっちも全力でぶつかっていかなきゃいけないとは思いますね。

●お互いに全力でぶつかれる相手というか。

西川:逆に小さい音で叩いたりすると、「ダメダメ! 全然気持ち良くない」とか言われるので…。

国吉:「やるなら全力でやれ!」っていう気持ちですね。「サラッとやってるんじゃないよ!」っていう(笑)。ドラムが上手い人は他にいくらでもいると思うんですけど、西川真吾っていうドラマーをこの世で一番活かせているのは自分だという自信だけはあります。逆に言えば、それしかないんですけど(笑)。

●西川さんも、国吉さんの歌とピアノを自分が最大限に活かせていると思いますか?

西川:それはどうかわからないけど(笑)、やっぱりピアノの弾き語りの後ろでこれだけドラムを叩ける人は自分以外にいないだろうなと思います。これだけ全力で叩くと、普通は相手の音が消えちゃいますからね。他の男性ボーカルや女性ボーカルと比べても、国吉は音の抜けてくる感覚が別格で違うんですよ。ピアノの音もそうなんですけど、それがすごく気持ち良いんですよね。
(次回5月号・後編に続く)

Interview:IMAI