エモロック/ライブハウス・シーンで今最も勢いがあるバンドと言っても過言ではないBLUE ENCOUNTが、遂にメジャーデビューを果たす。そこまでの活動の集大成的作品となった1stフルアルバム『BAND OF DESTINATION』をリリースしたのは、今年2月のこと。6月のレコ発ツアーでは東名阪福のワンマンを全て即日SOLD OUTし、その勢いが本物であることを証明してきた。今作ではバンドの芯はブレないまま、もう1つ先の世界への扉を開くかのような新機軸も見せている。『TIMELESS ROOKIE』というタイトル通り、初心を忘れず全力疾走を続ける4人の未来に、確かな光を感じさせる最高のデビュー作だ。
●先日、“SUMMER SONIC 2014”に2年連続での出演を果たしたわけですが。
江口:去年の“SUMMER SONIC”では僕らの出番がももいろクローバーZさんの前っていうこともあって、そっちを目当てに来ているお客さんがやっぱり多かったと思うんですよ。でも今年はオープニングアクトではなく自分たちの力で戻ってこられたし、それで“これだけの人が集まってくれたんだ”っていうのは嬉しかったですね。
高村:ある意味、1年の集大成が結果として見えたというか。
田邊:ステージ上から見えた景色が、とてつもなくすごかったんですよ。パンパンに詰まっていたわけではなかったんですけど、逆に後ろの余白っていうのは僕らの伸びしろだと考えていて。それがこれからの1年の課題にもなるし、次回はそこまで埋められたら僕らの1年というものが肯定されたんだなと思えるから。
●良い意味で、次の課題を見つけられた。
田邊:僕らは“試練”としてフェスに出させて頂いていると思っていて。今年は夢だった“MONSTER baSH”にも出演が決まって、メインステージのオープニングアクトをやらせて頂くんです。でもそういうことについて周りの人たちから「階段を登っているね」と見られてしまったら、僕らは終わりだと思うんですよ。僕らにとっては試練だし、それを乗り越えてやっと階段なんだと思ってもらわないと、みんなで頑張ってここまで来た意味がないから。入り口のドアを必死で開けるっていうことが今年の夏フェスのキーワードで、その向こうにいる人たちがビックリするくらいの勢いで入っていきたいなという気持ちがありますね。
●フェスに出ることがゴールじゃなくて、また新たな扉を開くキッカケになっている。それはメジャーデビューに関しても同じなんじゃないですか?
田邊:まさにそうですね。あくまでメジャーデビューというのは、もっとデカい夢を実現するために必要不可欠な協力の形というか。これまでに特別傷ついてきた4人だから、みんながそれをわかった上で細心の注意を払って動いてくれているのがすごくありがたいことで。だからこそ僕らはもっとやらなきゃいけないなって思うし、曲作りのペースがさらに速くなったんですよね。
●メジャーデビューしたことで、より覚悟が増した?
辻村:そうですね。SUMMER SONICでも、去年とはステージに向かう時の意識が全然違っていて。その時、昔から夢見ていたメジャーに対しても、実際にデビューしたことでまた考え方が変わっているんだなと気付いたんです。だからこそ自分たちは今まで以上に進化していかなきゃいけないんだろうなって思うし、日々勉強ですね。これからは自分たちが今まで以上に発信して、それをお客さんに受け取ってもらわないとダメなんだっていう立場になったことをより実感しています。
●そういう意識を持ちながらの今作『TIMELESS ROOKIE』なわけですね。特にM-1「MEMENTO」は今までのBLUE ENCOUNTらしさもありつつ、そのもう一歩先を見せるような曲だと思います。
田邊:今までは(ライブで自分たちを)観てもらう時期っていうのがあったんですよ。でも今年の夏のライブやフェスを経て、“観てもらう側”から“見せる側”にならないといけないなと思って。それが今回メジャーのドアをくぐるとなった時に、推し曲に「MEMENTO」を持ってきた意味ですね。“聴いてもらう”よりも“聴け!”というものになっているし、BLUE ENCOUNTの10年分の自信をやっと形にできた曲になっているから。
●積み重ねてきた自信があるからこそ、“聴け!”というものも今なら発信できるというか。
田邊:今回は“嫌い”っていう言葉を多用しているんですけど、実際はどんどん年をとるにつれて言えなくなっている言葉で。言わないことで「大人になったね」とか「丸くなったね」と言われるんですよね。でも実際に言いたい局面で言えないのも、“大人”じゃないなと。どの世代にも共通して言えることなんですけど、どんどん人に自分の気持ちをストレートに伝えるっていうのができなくなってきているんじゃないかなと思うんですよ。だから今回、このネガティブワードをメインに据えたんです。
●言葉自体はネガティブですよね。
田邊:「“嫌い”っていう言葉で大丈夫なの?」とは色んな人に言われたんですけど、「これでいかせて下さい」と言ったんです。相手に物事を発するにはそれ相応の責任もありますし、その度量がないと言葉を発せられない。たとえば意地汚いヤツがただ「嫌い」と言ったら、周りの集中砲火を浴びるだけで。“だったら自分がどんな人間になるべきか”というのを、この曲では伝えているというか。お客さんの目線に立ち返った上で、僕から言える最大級のポジティブソングなんですよ。「こうなろうぜ!」っていう感じで、みんなで未来を見れる1曲になったと思います。まさにBLUE ENCOUNTらしいメッセージが込もっている曲ですね。
●メッセージにらしさはありつつ、サウンド的にはかなり挑戦的なこともしている気が…。
田邊:テーマは「10年分の僕らの音楽性をミックスしたら、どんなものが生まれるのか?」ということだったので、絶対に超大作になるだろうなと思っていたんですよ。5分くらいの曲にはなるだろうなと思っていたんですけど、意外と3分台に収まって。そこに僕らが10年間やってきた経験やソングライティングの力が詰まっているというか。昔は5分以上の超大作もザラにあったのに、この曲が3分以内に収まったのはどこかで引き算をする力を身に付けたからかなと。
高村:自然とそういうことができるようになったんですよね。ようやくこういう曲をちゃんと自分たちで望んで形にできるようになったというのは、10年間があってこそだと思っています。
辻村:ちゃんと空気を読んで、攻めるところは攻めて、引くところは引けている。この曲の長さでこの濃厚さって、昔だったらできないと思うんですよね。昔だったら5〜6分になるか、不完全燃焼のまま終わっちゃっていたと思う。だからこのタイミングでできたっていうのが、何か運命を感じる曲というか。
●このタイミングだから、形にできた。
田邊:今までの曲の中で一番…(お客さんが)正座して聴いている感じがするんですよね。今までの曲が剣で切っているようなものだとしたら、この曲はいきなり魔法を出したような感覚で、お客さんも戸惑っているんですよ。ノッてはいるんですけど、どこか聴いている感じで。
辻村:ちゃんと曲を聴こうっていう姿勢が見えるというか。今までの曲は人によって聴き方が分かれたりしていたんですけど、「MEMENTO」に関してはみんな一緒な気がするんですよね。
●みんなが聴こうとしてくれている。
田邊:MVが先に公開されていたので少しずつ浸透しているのか、フェスでは(どういう曲か)わかって聴いてくれている人も増えてきて。それを見ると「聴けよ!」って提示したことが、ちゃんと功を奏しているなと思います。こういう曲をやるのか、それとも僕らの代表曲に近い感じを引き継いでやるのかですごく迷ったんですけど、本当にこれで良かったなと思いましたね。
辻村:ライブのセットリストを組む時に、最初はこの曲が浮きすぎちゃうんじゃないかと思っていたんです。でも剣みたいな曲たちの中に1曲だけ魔法が入っていることで、すごく良いスパイスになって。そこの前後が締まるんですよ。
江口:これまでの僕らを知っている人が急にこの曲を聴いたらビックリしちゃうかもしれないんですけど、芯は僕らのままなので聴いていくうちに絶対好きになってくれるんじゃないかなと思っています。
高村:お客さんと一緒に共有して、成長していくともっとすごい曲になるんじゃないかっていう手応えもあって。今後がますます楽しみですね。
●この曲以外の収録曲も、どれがリード曲になってもおかしくない感じがします。
江口:まさにその通りで、全部リード曲のつもりで僕たちも作ったんです。
田邊:今後シングルにしようかなと考えていた曲の中でも、主力選手になるようなものが入っているから。今回は相当数の曲を作ったので選ぶ時はかなり難航したんですけど、今だから出せるものや今だから受け入れられるものをしっかり考えた上で選びました。
辻村:「もっと入れたいね」という話もしたんですけど、選んだ4曲があまりに濃厚すぎたので、これでむしろお腹いっぱいだろうという感じで。
●確かに4曲だけど満足感がある。
江口:僕らの中ではフルアルバムですね。
田邊:お腹いっぱいという意味での“フルアルバム”なんですけど、もう一周行けちゃいそうな感覚もあって。そこもしっかりとライブのままなんですよね。満たされているんだけど、また来たいっていう気持ちにもなる。まさにBLUE ENCOUNTのやりたい芯の部分が提示できているところがあるんです。
●ライブで表現しているバンドの芯が、今作にも表れていると。
田邊:結局、BLUE ENCOUNTは誰かの力がないと生きていけないバンドなので、それをこれからもずっと言い続けたいなって。「誰かが頑張れているのは、あなたが観ているからだよ」って言いたいんです。やっぱり知ってくれる絶対数が増えると「私なんか、俺なんかもういい」って言う人も出てきて、離れていく人も少なからずいると思うんです。僕らは今まで出会ってきた人との別れも経験したし、裏切られたこともあったし、信じるキッカケをくれた人もいて…と考えた時に、やっぱり出会うことに最大の意味があると思うんですよ。だから新たに出会ってくれても昔から知っていても、今の僕らを受け入れてくれればそれが一番良い応援の仕方というか。
●新たに出会った人も昔から知っている人も一緒にバンドと進んでいく。
高村:僕らは一緒にやるライブを大前提にして行きたいと思っていますから。
江口:単純にそういう光景が好きだし、楽しいっていうのもありますね。
田邊:みんなで何か一つのことをやるのが好きだから、この4人が集まっているわけで。それを好きって言ってくれる人たちがみんなで盛り上げようとしてくれて、今はその人数が単純に増えているだけなんですよね。昔と全然変わらない気持ちで今もやれているというのが、僕らの財産の一つなんです。変わらずに変えていくことが大事だから。芯さえ変わらなければ何をやったとしても、目には見えない僕らの印鑑が押されていることを耳で聴き取った時にすぐわかると思うんですよ。
●11月からはワンマンツアーも予定されていますが、それをライブでも実感できるわけですよね。
田邊:ライブは音源に対しての僕らの気持ちだったり、そこに至るまでの経緯をちゃんと提示できる場所だから。僕は自分がライブで話していることをカッコ悪いと言われても、いつまでも言い続けないといけないんだなと思っていて。だから僕はいつまで経ってもカッコ良くないんだけど、それが誰かにとっての“カッコ良い”になればいいんだなって思えるようになってきたというか。僕はそれを一生やっていかなきゃいけない。ライブがあった上で今も話していますし、ライブがあったから今回の作品も生まれたんですよね。
辻村:ツアーで気付くこともたくさんあるでしょうからね。今は出てきていない言葉も出てくるだろうし、1本1本重ねるごとに成長していきたいなと思います。
江口:メジャーデビュー後初のワンマンツアーなので、お客さんにも僕らにとっても特別なもので。より良いツアーにするためにはそれ相応のものを、それ相応以上に提示していかなきゃいけないと思っているんです。
高村:言ってしまえばメジャーデビューって、これからは2度と失敗できないというステージだと思うんですよ。その一発目のワンマンツアーということで、“ここは本当に外せない”っていう気持ちで臨んでいて。これまで以上にガチンコでぶつかっていこうと思っているので、その姿をひと目観に来て下さい。
Interview:IMAI
Assistant:馬渡司