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NoGoD

真髄を極め、色彩豊かな音の幅を広げた先に切り拓く新世界

AP_NoGoD昨年12月に赤坂BLITZでバンド史上最高の動員を記録したのに続いて、今年5月には最初にして最後のSHIBUYA-AXワンマン公演も大盛況。7月にはフランスでの“Japan Expo 2014”でも喝采を浴びるなど、認知度と勢いを増し続けているNoGoDがフルアルバムとしては約1年半ぶりとなる新作を完成させた。軸は全くブレないままで幅をさらに広げた今作は、ヘヴィネスと攻撃性を強めながらポピュラリティをも高めている。いかなるシーンにおいても比類なき存在感を放つバンドが、まだ誰も見たことのない新世界を切り拓いていく。

 

「俺らは色んな音楽を高水準に自分たちなりに表現するっていうスタンスなので、そこは昔から変わっていないんです。10周年を目前にして、現状のNoGoDの振り幅はここで示せたんじゃないかなと。1つの集大成というか、今できる限りの高水準がこれだというものは出せたと思います」

●今回の『Make A New World』はフルアルバムとしては『V』(2013年2月)以来の新作となりますが、制作にあたってのイメージはあったんですか?

Kyrie:全くなかったに近いですね。自分の中でぼんやりとはあったんですけど、それをみんなにちゃんと伝えることもなく。“こういうふうにするぞ”という意思統一のないまま作り始めました。

団長:前作『V』の時はテーマとして“みんながやりたいことをやろう”っていう共通認識があったんですよ。だからそれぞれがやりたい曲を持ち寄って作ったんですけど、今回は本当に何もなかったんです。出たとこ勝負というか。

●曲自体はまたみんなで作ったんですか?

Kyrie:『四季彩』(2014年3月)のリリース・ツアー中に今回の制作がスタートして、また4月下旬にワンマン・ツアーが始まる前までにはある程度の選曲を済まさなきゃいけなかったんですよ。だから僕がとりあえず土台として“こんな感じで行こうかな”みたいなものを12〜3曲ポンと出したら、それがそのまま行きましたね。

●曲が出揃って、アルバムのイメージも固まった?

Kyrie:“勢いがある曲を作りたいな”とか“そのためにこのパートはこういうアレンジにしよう”という感じで曲単位のイメージはあったんですよ。最初はそれしかなくて、結局は最後までそのまま行きましたね。そこから何かが生まれるわけではなく、何となくのイメージのままプリプロをして、レコーディングに入り、マスタリングまで終わりました。

●それで何とかなったのがすごい…。

団長:そのまま行くしかなかったんですよ。今までみたいにアルバムの構想がまずあって、そこに合う曲を選んでいけるような状況じゃなかったから。だからどんな曲でも完成度をものすごく上げることで、アルバムの中にピースとしてハメていくっていう力技の作業でしたね。でも逆にここまで思い切ったプランになったのは、自分たちのバンド力を試せるチャンスだなと思って。

●バンド力に自信があるからこそやれたのでは?

団長:“今の俺たちだったら、それでも良いアルバムができちゃうんじゃないか”っていう謎の自信はありましたね(苦笑)。でもやっつけ仕事にはもちろんできないので、1つ1つに意味を持たせて“景色”を付けていくような作業はやりました。それも短期間にガッとやる感じだったから、勢いやアグレッシヴさというものは今までのどの作品よりもパッケージングできたかなと。

●短期間で密度の濃い作業をしたからこその勢いが作品にも反映されている。

団長:『V』ってどこかモダンな感じがしたんですけど、今回は“モダン”というよりも80年代後半〜90年代初頭のスラッシュメタルバンドのアルバムのような勢いと殺気というか、荒々しさがあって。それが上手くパッケージングできたかなという気はします。

●『V』とは異なる雰囲気の作品になったと。

Kyrie:基本的にどの作品もやることは一緒で、“どういうふうにやるか”とか取り組む上での認識が毎回違うだけなんですよ。今回も“この曲はこういうイメージで”というのはあって。それをいかに今の自分たちがやりたいものに近付けられるか、今の自分たちらしくするかというところをどこまで突き詰められるかという感じでしたね。そこに関してはいつも以上にこだわって作り込んでいったかな。

●アレンジは時間をかけて作り込んでいった?

Kyrie:ワンマンツアー中にアレンジに入って、6月頭くらいから録り始めたんですけど、その時点ではまだ半分も終わっていなかったですね。だから極端な話、「こういう曲を録ります」と他のメンバーが知らされるのは録音の前々日くらいだったりすることもわりとあって。そこから「じゃあ歌詞をお願いします」「曲覚えて!」みたいな感じでした(笑)。

●制作中にもツアーやライヴがあるから、スケジュール的にもきつかったのでは?

団長:死にそうなレベルでしたね(笑)。

Kyrie:それでも6〜7月は、普段よりはライヴも少ないほうで。今回4つくらいにセクションを分けてレコーディングしたんですけど、どうしても1セクション録るのに6日間くらいはまとめて必要なので、準備に専念する期間がなかなか取れなかったんです。だからアルバム全体のことを考える余裕がないし、考えなかったので全体像がいつまで経っても見えないんですよ。どんな作品になるか自分でもわからないまま、アルバムを作っているというか。

●そこに不安はなかったんですか?

Kyrie:ありますよ。メッチャ不安でした(笑)。でもNoGoDというバンドは過去にアルバムを5枚作っているわけで。もちろん今までも全てが万全な状態で録音できたわけじゃないし、それでも作れているんだから大丈夫だろうと。アルバム制作に集中できる万全な状況ではないけど、今しかできないものが作れるだろうとは思っていましたね。

●その結果がこういう挑戦的な部分もあって、幅の広さも見せられるアルバムになったわけですね。

団長:『四季彩』でポップスに寄った作品を出したと思えば、今作では去年の『神髄 』シリーズで広げた方向性からもっとNoGoDとしてのヘヴィネスを提示した感じになっていて。とことん振り幅の大きいバンドだから、何かの曲のどこかで必ず誰かは引っかかると思うんですよ。1つのものに特化したバンドからすると「ブレている」って言われるのかもしれないけど、俺らは色んな音楽を高水準に自分たちなりに表現するっていうスタンスなので、そこは昔から変わっていないんです。10周年を目前にして、現状のNoGoDの振り幅はここで示せたんじゃないかなと。1つの集大成というか、今できる限りの高水準がこれだというものは出せたと思います。

●“色んな音楽を高水準に表現する”というバンドの基本スタンスを体現したものになっている。

団長:NoGoDの作品って、今まで出した中で1つもハズレがないし、1つも同じことをやっていないんです。だから今作は、海外志向の音を求めている人にも評価して頂けるだろうし、J-POPが好きな人にも受け入れてもらえるだろうなって。ヴィジュアル系を好まない人にも納得してもらえるものだろうし、バンギャにも新鮮に感じてもらえるものだし、キッズたちには聴いたことがないサウンドになっていると思うんですよ。どこに行ってもハズレのないアルバムだなと。

Kyrie:逆に、どこに行っても当たらないアルバムかもしれないけどね(笑)。

●ハハハ(笑)

Kyrie:今までの作品はどこか自分の中で、“借りもの”っぽさみたいなのがあって。唯一無二の音楽なんてものはほとんどないし、自分だって誰かの音楽にインスパイアされたものをアウトプットして作っている。それが良いか悪いかじゃなくて僕にとっての音楽とはそういうものなんですけど、ただどこか借りものっぽく感じてしまうところがあったんですよ。それは『四季彩』もそうだし、『神髄』シリーズなんかは特にコンセプトの上でそういう雰囲気があったんです。でも不思議と今作はそういう感じがしなかったというか。単純に「NoGoDです」と言えるような、いつも以上に自分たちらしいものになったのかなと思いますね。

●“〜っぽいもの”にはなっていない。

Kyrie:1曲1曲で言えば“こういう音楽にしていこう”とか“こういうビジョンで”というのは、いつも以上に強くあったはずなんですよ。でも最終的にできたものは、借りものっぽくない感じになったなという印象があって。

団長:少なくとも世界中にNoGoDの代わりになるバンドはいない、っていう自信はありますからね。

●M-4「pendulum」あたりはNoGoDとして今までになかったタイプの曲かなと。

団長:今回はこういう早口だったりラップっぽい曲が結構あるんですよね。M-6「BANZAI!!!」やM-9「EZ L1F3」もそうだったんですけど、俺は早口がすごく苦手なんですよ。

Kyrie:録る時もブーブー言っていましたもん(笑)。歌詞を書く時もずっとブーブー言っていましたね。

●早口が苦手なんだ(笑)。

団長:日本人に受け継がれている歌謡のメロディって、演歌も民謡も基本的にヴァースが長いものなんですよ。SURFACEさんやJanne Da Arcさんの曲も好きだったけど、言葉が早すぎて当時の自分には歌いきれなかった。そういう中で今回チャレンジしてみて、…やっぱり得意じゃなかったですね(笑)。ツアーを重ねる中で、得意にしていこうと思います。

●Kyrieさん的には、どういう意図で取り入れたんですか?

Kyrie:ヴォーカルの言葉数の多さっていうのは、そのままサウンドの勢いとか曲の勢いにも直結して影響するんですよ。だから激しい曲でもゆったりした歌だったら、ゆったりとした曲調に聞こえてしまう。「pendulum」みたいにエモーショナルな曲は、ゆったり歌い上げるとロック・バラードになっちゃうんです。でも今回はそうしたくなかったので、スピード感を出すために言葉数がどうしても必要になってきて。アルバム全体を通しての緩急をつけるのに、言葉数を多く利用したっていうのはありますね。

●アルバムに緩急をつけるためだったと。

Kyrie:実際、団長は言葉数が少ないほうが歌いやすいのも知っているけど、だからこそあまり歌いやすいような曲にしなかった部分もあるのかなと。そこを変えた時に今までのNoGoDとはまた違う新しいものを出してくれるかなというのはあって。だから団長が得意か苦手かは知らないけど、やろうっていう。できないならできるようになればいいじゃないと(笑)。

●ドSだ…(笑)。

Kyrie:団長以外もウチのメンバーはみんな器用なので、やってできないことはないんです。それが自分の本質かどうかは別として、できないならできるようになればいい。そういうことができるバンドだというのも強みだと思います。

団長:だから可能性は無限ですよね。ひょっとすると、本当に俺がガチのヒップホップなラップをする日が来るかもしれない(笑)。

●インタビューでも当然、韻を踏むわけですよね?

団長:俺のライヴが お前のハートに 火をつける♪

●全く韻を踏めていない!

一同:ハハハハハ(笑)。

●歌詞に関しては、作品全体を通じて伝えたいことはあったんですか?

団長:言いたいことはどんどん溜まっていたので、それが今回で一気に出ましたね。特にM-11「HATE THIS WOЯLD」なんかはスラッシーなサウンドなので、あえて汚くて尖っていてダサい言葉をどんどん使っていこうと思ったんです。きれいな言葉を使うというのはオブラートに包むことに近くて、それだと本質が伝わりづらくなるんですよ。自分としてはハッキリ、キッパリとわかりやすく言ってあげたい。ダサいと思われるかもしれないけど、そこの狭間を行きたいんですよね。なるべくダサく、でも胸に刺さる言葉で歌いたいなっていうのはあって。それが今回は如実に出ているかなと思います。

●アルバムタイトルが『Make A New World』だったり、1曲目が「WORLD ENDER」で最後が「HATE THIS WOЯLD」になっていたりと、“世界”というのが今作のキーワードになっている?

団長:世界っていうのは自分自身だと思っているので、“人”のことでもあるんですよ。人っていうのは1つの世界だから、人と人が集まるとある意味で“宇宙”になるというか。だから結局、自分自身と向き合えるかというのは、“その世界をどうしていきたいのか”っていうことであって。M-8「讃美歌」でも歌っていることなんですけど、結局全ては人だっていう。自分自身であり、他人であり、人という存在が絶対だっていうのを意識したアルバムになったかもしれないですね。

●来年は10周年を迎えますが、そこへ向けて今作が良い弾みにもなったのでは?

団長:“出たとこ勝負でNoGoDに何ができるか?”、“9年間蓄積したものだけで何が出せる?”ということに挑んだ結果、“NoGoDはできるんだ”ということがわかったアルバムですね。毎回“力試し”をしているんですけど、今回が10周年に向けて最後の力試しというか。節目の年を迎えて、次からは新しいことを…。

Kyrie:でも“新しいこと”っていうのは、どの作品でも常にやっていることなんですよ。だから節目の年も力試しだし、いつもと変わらないんです。いつもと変わらず、ただいつも以上に、今までもより良いものを作っていくだけですね。

Interview:IMAI
Assistant:馬渡司

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