全国15万部を誇る日本最大級のミュージックフリーマガジン on Web!!

twitter instagram

陰陽座

新たな世界の幕開けを告げるアルバム第十一弾と 創世を確信させるアルバム第十二弾が同時発売!!!

AP_陰陽座陰陽座、待望のニューアルバムはまさかの2作同時発売…!! オリジナル・スタジオ・アルバムとしては10thアルバム『鬼子母神』(2011年12月)から2年9ヶ月ぶりの新作となるが、まさか11作目と12作目が同時に放たれるとは誰も予想し得なかっただろう。『風神界逅』と『雷神創世』という、対を為すタイトルを名付けられた今回の新作。それぞれが独立した作品として眩い輝きを放ちながら、いずれも陰陽座の“今”を象徴する勢いと創造性に溢れた空前絶後の超強力な2枚となっている。その豊穣にして底知れぬ世界へと迫る、メンバー全員でのスペシャル・ロングインタビュー。
※本インタビューは別冊JUNGLE☆LIFEに掲載されたものと同内容になります。

 

 

●昨年末、ベストアルバムの『龍凰珠玉』が発表されて。そこに収録されていた新曲「吹けよ風、轟けよ雷」は、ビックリするほど次のアルバムを照らしている楽曲だと前々からおっしゃってましたけれど、まさか“風”と“雷”をモチーフにしたアルバムの2枚同時発売とは予想もしていませんでした。

瞬火:そうでしょうね。僕としては9thアルバム『金剛九尾』制作前の時点で、11枚目と12枚目は2枚同時発売にすること、そのタイトルは『風神界逅』と『雷神創世』であることまで決めていたんですが、普通は予想できませんよね(笑)。

招鬼:『龍凰珠玉』の新曲にアルバム2作のタイトルが組み込まれると瞬火から聞かされたとき、僕ら自身“おーっ!”と驚いたんですよ。ましてやリスナーはもっと焦らされるわけで、全貌を知ったときの“これか!”っていうリアクションが楽しみで仕方なかったから、微塵も悟られてなるものか! と思ってましたね。

狩姦:メンバー全員すごく言いたいけど、いやいや! って。だから僕らとしては、その伏線プランを聞かされた時点で、まず1ワクワク。そこから楽曲が集まり、デモを聴かせてもらった段階で2ワクワク。そして、これをライブでやるんだなと思うと、超ワクワク!

招鬼:1、2って来たのに3じゃないんだ(笑)。

狩姦:いやいや、そこは飛び抜けないと!

●さすが(笑)。そもそも、今回なぜ2枚同時にリリースすることに?

瞬火:いや、“なぜ”と聞かれても、戦略的な意図は一切ないですね。ただ、2枚作りたかっただけです。強いて言うならば、10枚目の『鬼子母神』が完全なるコンセプト作だったので、どんなに良いアイディアでもストーリーに沿った楽曲でなければストックに回る楽曲も相応に出てきますし、『鬼子母神』の後にも新たな曲が生まれてくるとなると、9枚目の『金剛九尾』から11枚目までの間に発表したい楽曲が大量に溜まって渋滞を起こすであろうってことが、あらかじめ僕の中で予想できていたんですよ。おまけにレコード会社も、僕の2枚同時リリースという希望を受け入れてくれたので、これは絶対に出すべきだなと。

黒猫:実際『鬼子母神』の制作中にストックに回されて、“もったいないな”と思っていた曲もあったんです。そういった曲が2枚同時ならば収録される可能性も高まりますし、例えば『風神界逅』の「八百比丘尼」は初めて聴いたときから好きだったので、今回入ってすごく嬉しいですね。瞬火の想像通り、結果的には曲があふれて厳選に厳選を重ねざるをえなくなったので、ホントに嬉しい悲鳴でした。もう、3枚でも良かったくらい(笑)。

●では、そこで2枚のアルバムに、風神と雷神というモチーフを据えた理由は?

瞬火:2枚組ではなく2つの独立したアルバムを作るという明確な意図があったとはいえ、あまりにも関連性のないテーマを設けると、作り手も聴き手もさすがに意識がバラけるなと。そこで対を為す2つのものを考えたら、“風神雷神”以外に無いだろうという、シンプルな流れですね。

●それでジャケットを2枚並べると、俵屋宗達の屏風画で有名な“風神雷神図”を反転させた形になっているんですね。

瞬火:そうです。11枚目が風神、12枚目が雷神という順番なので本物の“風神雷神図”とはそれぞれの配置が逆になってはいますが、あれを“実写化する”という意図の写真です。それで風神に黒猫が、雷神に僕が扮したわけですが、毎回お願いしているカメラマンの野波浩さん、メイクの内田百合香さんのお力を借りて、あの有名な“風神雷神図”を陰陽座の世界で描いてもらえただけでも、とても有意義なことですね。と同時に、このジャケットに相応しい素晴らしい作品が作れたという手応えもあります。

●ただ、その風神/雷神もあくまでモチーフであって、全ての曲がそこにリンクしているわけではないですよね。

瞬火:ないですね。風神/雷神というモチーフは、むしろ自由奔放に楽曲を書いて集める中でのホンのささやかな味付けというか、方向づけというか。どちらかというとイメージを広げるためのキーワードなので、それぞれ半分近くは風/雷なりにリンクしそうな楽曲ですけど、残り半分はそうではない。ただ、『風神界逅』と『雷神創世』には一つ明確な違いがあって、前者はレギュラーチューニング、後者は『鬼子母神』から取り入れたダウンチューニングになっているんです。これは別に制約というわけではなく、せっかく2枚作るのなら現状、陰陽座に存在する2つのチューニングを綺麗に分けてみようという1つの試みですね。なので、3月に発表したシングル「青天の三日月」も、最初から『雷神創世』に入ることが決まっていたんですよ。

●故に、あらかじめ“紫電”という雷にまつわるワードを歌詞に組み込んでいたと。

瞬火:いや、違います。そういうことを作為的にやることも多いですけれど、作為的じゃなくても導かれてしまうのが、“持っている”というところでしょう(笑)。あえて言いますが(笑)。

●なんと(笑)。いや、スゴい。

瞬火:もう1つ、2枚で決定的に違うのが、サウンドの元となるドラムを別のエンジニアが録っていることですね。『雷神創世』のほうはメジャーデビュー以来お世話になっている増田エンジニア。対する『風神界逅』のほうは長年陰陽座の現場で増田さんとコンビでやってくださっていた吉越さんにお願いしました。吉越さんは当初、セカンドエンジニアという立場でしたが、今やメインを張れる方なので、彼に陰陽座を録ってもらったらどうなるかを僕が聴きたかったんです。実際やってみると、2枚とも同じ土橋誠さんが同じドラムセットで叩いて、エンジニアのお二方も同じスタジオの同じ卓で録っているにもかかわらず、やっぱり音が違うんですね。ミックスも各エンジニアと相談しながら、それぞれ別のやり方で完成させているので、24曲をガーッと録って2枚に分けたんじゃなく、名実共に12曲入りのアルバムを2枚別々に作ったという形になっています。

●そういった種々の違いもあってか、聴いてみて『風神界逅』はシンフォニックで壮大な、『雷神創世』はエネルギッシュで力強い印象を受けましたね。

瞬火:確かにその印象は間違っていないと思いますが、そういうコンセプトで作ったわけではありませんし、それぞれそういう曲ばかりが入っているということもありません。例えば『風神界逅』がシンフォニックに聴こえるのは、冒頭のSEと聴き終える直前の位置にシンフォニックな楽曲が配されていることが大きいのではないかと。

招鬼:シンフォニックなアレンジが比率として多いわけじゃなく、要するにツボを押さえているんですよね。印象に残るポイントでの使いどころが上手くて、特にピアノの使い方が良い。ピンポイントで効いている。

瞬火:それは弾いてくださった阿部(雅宏)さんのタッチというか、持ち味に起因しているところが多分にありますね。僕がデモ段階で入れてるピアノは所詮打ち込みなので味気ないものですが、例えば『雷神創世』に入っている「天獄の厳霊」のオーラスでピアノがパーッと駆け上がっていくところとか、デモでは全然別のフレーズだったんですよ。それを阿部さんが“もうちょっとピアノっぽい感じにしたいな”と言って、“うーん……”と悩みながら、アドリブでパーン! とアレを弾いてくださったんです。

一同:さすが!

●それにしたって『風神界逅』の幕明けとなる「風神」には驚きましたよ。素晴らしく壮大なSEで、これからRPGが始まるのか!? と思ったほど。

瞬火:それ……ほとんどの人に言われました。

招鬼:僕も言いました(笑)。

黒猫:私は前半のメロトロンとかの音に、むしろ映画とかプログレッシブロックを思い浮かべたんですけどね。

瞬火:そう。僕自身は別にゲームは意識してなくて、むしろプログレか映画のつもりで作ったんですよ。今回のアルバム2枚を手にした方は、恐らく皆さん『風神界逅』から聴くでしょうし、となると『鬼子母神』から2年9ヶ月ぶりのアルバム冒頭になるので、ここから何かが始まる……という想いを表現したかったんです。

●そこから陰陽座の王道メタルチューンとも言える「神風」に雪崩れ込んでのギターソロが、また素晴らしくて! ギリギリまで引き伸ばされるロングトーンで、一気にブースターがかかるのがたまらない。

狩姦:うん。たまらん!

招鬼:デモに瞬火が入れていたソロで既に完成してたんですけど、僕が弾くことを想定して作ったフレーズらしかったので、一度弾いてみろということでアレは僕が弾きました。

●ちなみに、今回は陰陽座の信念だったり、現在の忌憚なき心境を表している曲が多くありません? 『風神界逅』の中でもタイトル通りに疾走する「飆」然り、この「神風」も然り。

瞬火:そうですね。“神風”というのは神が吹かせる風のことで、どちらかというと他力本願なものですが、それを待っているというのでは都合が良すぎる。神風の如き威力のある風を吹かせたいなら己の中で吹かせるしかないという、これはまさに陰陽座の進むべき道を重ねた楽曲ですね。逆に7曲目の「無風忍法帖」で歌っている“無風”とは影響を及ぼさない、もしくは及ぼされないという意味なんですが、これまた陰陽座そのものなんですよ。現在の音楽シーンの中で他者に微塵も影響を及ぼさず、いてもいなくても一切関係ない存在であると同時に、シーンの動きからも影響を一切受けない! そんな完全無風状態を歌っているんです。

●ちょっと自嘲的にも感じますが……要するに唯一無二ということですよね。

黒猫:そういった陰陽座の信念や理念を歌った曲だと、そこに自分の意思も含まれるわけですから、歌うにあたっても燃えますし。中でも久しぶりに自分が作曲した10曲目の「雲は龍に舞い、風は鳳に歌う」は、実は私自身の気持ちを歌った曲なんです。前回の“鬼子母神”ツアーでは、私だけが皆と反対側からステージに出て行く演出になっていたので、1人でステージ袖にスタンバイしていたんですけど、それがものすごく心細くて! やっぱり私はこのメンバーがいるから歌えてるんだなぁ……というのを身体で感じたので、そんな想いと今まで歌ってきたこと、これから歌っていくことをココに籠めたいと思いながら書いた曲なんです。その話を瞬火さんにしたら、私よりも私の気持ちを言い当てた歌詞を書いてくれましたし、オーケストラアレンジとCメロは瞬火の力によるものなので、クレジットは私ですが、ほぼ共作のようなものなんですよ。結果的に私が私の想いを歌っていると同時に、皆の想いも籠められている曲にもなったので、皆の力を感じながら歌えた気がします。

●『風神界逅』の中でも随一のシンフォニック楽曲ですが、勇壮なサウンドに寄り添うファルセットから凛とした決意が伝わってきて、本当に胸に迫りましたね。続く11曲目「故に其の疾きこと風の如く」もクワイアでの幕明けが神聖なメタルチューンということで、シンフォニックな印象を強めていますが、対する『雷神創世』の11曲目のタイトルが「而して動くこと雷霆の如し」となると、もしやこの2曲って何か関連があります?

瞬火:はい。今回、それぞれを独立したアルバムとして成立させるという意図があったので、アルバムを超えて楽曲をリンクさせることは基本的にはしていないのですが、唯一繋がっているのがこの2曲ですね。だから「而して動くこと雷霆の如し」の歌詞は、「故に其の疾きこと風の如く」で歌われている内容を受けるように始まっていますし、そもそも「故に〜」は極めて前向きな曲なんですよ。

●“嘆かふ 諦む 恨みる”等、一見するとネガティブな印象のある言葉も散りばめられていますが、では、その真意は?

瞬火:まず、タイトルの“疾きこと風の如く”とは、風の如き速いものということで、それって人生だと僕は思うんですね。人生って本当に速い。気づいたら10年経っていたりして、もう、腹が立つレベルなんですけど、もし、この速さに意味があるとしたら何だろう? と考えた結果……あの、楽しい時間ってあっという間に過ぎるじゃないですか。逆に地獄のような時間って、1秒が1年に感じるほど遅い。つまり人生が速いと感じるということは良き人生を送っている証であり、“あっという間だったな”と感じるくらい充実した人生を送って逝けるとしたら、それはとても素敵なことだなと。なので「故に疾きこと風の如く」というタイトルには、素晴らしい人生だからこそ風のように速く、そう考えれば速さそのものに感謝できるという僕の考えが表れているんです。

●なるほど。じゃあ『風神界逅』を聴いていて、風の儚さに命の儚さを重ねているように私が感じたのも、あながち間違ってはいない?

瞬火:そうですね。“風”という言葉には良い意味もありますけど、何かをかき消したり、どこかに運んでいってしまうようなイメージもある。そこに陰陽座で常に歌ってきた死生観を乗せると、儚さが前面に出てしまうんでしょうね。対して“雷”というのはエネルギーそのものであり、生命力の漲りを感じさせるもの。そして、そんな風のように速い人生の中でいざ動くのであれば、雷霆の如き勢いを持ってやらねばならない……というメッセージが、「而して動くこと雷霆の如し」のほうには籠められているんです。“而して”は“そして”と同義です。

●幕開けの雷の音といい、“而して 踏み出す一足 揺らぎは 無い”という歌詞といい、実に雄々しく陰陽座の信念を訴える楽曲をクライマックスに据える『雷神創世』に、血潮香る力強さが際立つ理由が、それで納得できました。雷鳴とヘヴィなベースで始まり、シンセや大正琴の音色も交えた「雷神」での幕開けから神々しくて、瞬火さんの艶やかなボーカルも秀逸。

瞬火:ありがとうございます。「雷神」はある朝、まさに雷のように僕の中にピシャーッ! と降ってきた曲なんですよ。

狩姦:力強さという点で言うと、僕は4曲目の「人首丸」を初めて聴いたときに、衝撃を受けましたね。今までの陰陽座の曲で、ここまでブルータルな曲は無かったんじゃないかな。もう、これ洋楽でしょ!? って言いたくなるくらいカッコいい!

●歌は瞬火さんを中心に、オール・デスボイスですもんね。系統的には「悪路王」に通ずるものがあるなと思ったら、なんとモチーフも同じという。

瞬火:一説によると人首丸は悪路王、つまり阿弖流為の息子だと言われていますからね。実を言えば人首丸には、それだけでアルバム1枚作れるくらいドラマティックな物語があるんですけど、あまり広げるのではなく、あえて凝縮した形でやりたかったんです。となると、やっぱり「悪路王」の息子みたいな曲だろうと。

狩姦:対照的に5曲目の「夜歩き骨牡丹」は、すごく和風な音階を使っていて、これはこれで陰陽座らしい情景が見えて良いなぁと。

黒猫:うん。大好き!

瞬火:これはものすごく面白い曲ですよ。自分の醜さを儚み、死んで骨になった後で骨の形が美しいことに気づいた骨女が、私の美しい骨を見てほしい……と夜な夜な骨を見せて歩く話なんですから。そんなのメチャクチャ気持ち悪くて、メチャクチャ滑稽で、一周してメチャクチャセクシーじゃないですか!

●あら。タイトルからして、てっきり「牡丹燈篭」が元かと思っていました。

瞬火:そう思わせておいて、実はマイナーなほうの“骨女”の曲です。綺麗な花の名前を“骨”の後に入れたくて、歌詞にもある通り芍薬か牡丹か百合にしようとハメてみたら、牡丹が一番語呂が良かったおかげで生まれたトラップですね。

●黒猫さんのこぶしも効いたコミカルで、なおかつ切ない曲ですよね。7曲目の「天狗笑い」もかなりコミカルな楽曲ですが、これは招鬼さんの曲。

招鬼:これ、元ネタは7年前の大晦日に作った曲なんですよ。今回の曲出しにあたり、昔にメモとして録っていたデータをなんとなく聴いていて、“今、膨らましたら良くなりそうな曲だなぁ”と思ってファイルの作成日を見たら、12月31日だったんです。大晦日にエラい渋いもの思いついたな! と、我ながらビックリしました(笑)。

●ギターソロもブルージーで確かに渋いですが、歌詞は可愛いですよね。

瞬火:でしょう? 招鬼の曲は天狗に関係したものにしたいという僕の希望があり、今回は天狗の中では一番身分が低いとされている狗賓という天狗を題材にしたんですが、そのコミカルな感じが骨太なサウンドと相まって、すごく良いものになったと思います。何と言っても“犬じゃなくて狗”とか、漢字を口で説明するときの苛々を歌詞にした曲なんて、たぶん他には無い!

黒猫:こういう曲は歌うのが楽しいですよね。ちょっと天狗になりきって、前代未聞の歌詞も面白くて、しかも瞬火さんが遠吠えしてたりもするんですよ。

瞬火:そう。“犬じゃない”と言いつつ、メッチャ犬やん! って(笑)。招鬼の持ち味がよく出ている曲ですし、『雷神創世』の中で少し跳ねた感じの曲というのは貴重なファクターだったので、これは即採用でしたね。今回は僕以外の3人の曲も1曲ずつ入っているんですが、この「天狗笑い」が招鬼、「雲は龍に舞い、風は鳳に歌う」が黒猫、そして『風神界逅』の9曲目「眼指」が狩姦の曲なんです。

狩姦:これ、実は10年前にデモを瞬火に渡していた曲で、その時点でタイトルも決めてもらってましたよね?

瞬火:うん。狩姦曲のタイトルには絶対に人間の身体から出る、もしくは起因して起こる何かの熟語という縛りがあるんです。歌詞的にはとってもシンプルに悲しくて救いの無い曲なんですが、その10年間ずっと僕は発表する機会を窺っていたんですよ。当時、狩姦に貰ったデモはメモ録り的なシンプルで簡素なものでしたが、メロディや曲の雰囲気から“これは良い曲になる”と確信していたので、そのデモを僕は10年間たまに一人で聴いていたんです。それで今回ようやく『風神界逅』という作品に合うなと判断して、満を持して収録することができたという流れですね。

狩姦:10年前なんて録ってる機材も今より劣るのに、良い曲になると判断して10年間たまに聴いててくれたなんて、すごく嬉しい!

●ちなみに今回、ギタープレイの面で何か新しい試みってあります?

招鬼:今まで何となくのイメージで僕がギターソロを弾きそうな曲調、狩姦がソロを弾きそうな曲調っていう区別があったんですけど、あえて逆になっていたりしますね。それは2枚に共通した話で、例えば『風神界逅』の「一目連」は狩姦ソロが来そうなヘヴィチューンなのに僕が。続く「蛇蠱」は僕が弾きそうなエモいミドルチューンなのに、狩姦がソロを弾いているんです。

瞬火:それはソロの担当箇所を指定する僕の親心ですよ(笑)。あえて互いの立ち位置を入れ替えることで、パターン化を避けて新たなソロを引き出したいという。

狩姦:なるほど! 『風神界逅』の後半に入っている「八百比丘尼」のソロも、ミディアムな前半が僕、変拍子になる後半が招鬼と、普段のイメージとは逆になっているんですよ。だから僕らしさも出しつつ、招鬼らしさも意識したというか。僕が招鬼に乗り移るような感じで挑んだソロなので本当に新鮮でしたし、出来上がってから手応えも感じてますね。ま、それはこの曲全体がそうですけど。

●“乗り移る”というのは歌詞の物語でも重要なファクターですが、ここで描かれているのは手塚治虫の「火の鳥」に登場する八百比丘尼ですよね。

黒猫:そうです。素晴らしい!

瞬火:人魚の肉を食べて不死身になったと言われる八百比丘尼伝説の八百比丘尼ではなく、「火の鳥・異形編」の八百比丘尼、その中編1本をそのまま曲にしたのがコレです。もちろん「火の鳥」は全編死ぬほど好きですが、中でも八百比丘尼という伝承を一ひねりして中編にまとめた神の偉業を体験できる「異形編」を個人的にものすごく愛していて、この物語は絶対に音楽にしたいと考えていたので、今回収録することができて計り知れない手応えがあります。分数もキッカリ8秒00にしたんですよ。“八百”比丘尼だから。

一同:おお!

●素晴らしい! まるで火の鳥の飛翔が見えるような壮大な物語曲で、人魚に引っかけて“呪言”、つまり“ジュゴン”という音を歌詞に入れているのもお見事。

瞬火:それも意図したというよりは結果的に“そう聞こえればなお面白い”と思った、という感じですね。欲しかったのは“ジュゴン”という音とその意味です。そもそも、人魚のモデルはジュゴンなのかマナティなのかがはっきりしないですし(笑)。

●そうですね(笑)。では『雷神創世』の3曲目「千早振る」の“馬手を”は? 流星にちなんで“メテオ”という音を入れたのかと思っていたんですけれど。

瞬火:それは完全に確信を持って放った“メテオ”ですね。もちろんかの人気ゲーム「ファイナルファンタジー」のメテオということですが、そもそも遡るとD&Dのメテオスウォームから語ることになりますがそれは置いておいて(笑)、とにかく“火球(流星)”と来たから“馬手を”で“メテオ”、というのを思いついたときに大声あげましたよ。“来た、コレ!”って(笑)。

●ようやく意図的な引っかけを発見できて安心しました。話戻って、『雷神創世』にも「累」なる物語曲が収められていますが、こちらは怪談「累ヶ淵」を歌った13分に迫る大作ですね。

瞬火:「累ヶ淵」とその元になった殺人事件について詳細に語るとすると時間がまったく足りないのであえて要点だけ述べますが、とにかくこの曲を作るにあたって僕の根底にあったのは“凶悪殺人犯「与右衛門」と「谷五郎」を絶対に許さない”ということでした。与右衛門は助(すけ)という小さい娘を、谷五郎は累(るい)という献身的な妻を、どちらも“顔が醜いということを疎ましんで”殺害しています。そして与右衛門は罪を問われることもなく大往生し、谷五郎は累が化けて出たものの、祐天上人というお坊さんに除霊してもらってめでたしめでたし。乱暴なまとめ方ですが、それが「累ヶ淵」というお話です。そんな“殺った者勝ち”を許せると思いますか? だから僕は、それをこの曲で糾弾し、最後に除霊しようとする祐天上人を累が「すっこんでろ!」と押しのけるということを描ききりたかったんです。

●なるほど。こんな救いようのない物語を楽曲にした理由はそこ?

瞬火:むしろこれが“救い”ですね。少なくとも助と累にとっては。陰陽座を始めて間もないときから、いずれ「累ヶ淵」を題材に凄い楽曲を作ってやろうと考えていて、だから自分たちの技量が伴って機が満ちるまで温めていたんですよ。その間に他の人にやられないかと心配だったんですが……まぁ、「累ヶ淵」をエッセンスとして取り上げる人はいたとしても、完全にそれを“音楽化する”というのはあまり選択肢としてないようで、まったくの杞憂でした(笑)。

黒猫:この物語をこれだけの楽曲に仕上げるなんて、本当に瞬火は凄いな! と心の底から感心しましたし、こんな曲を歌えるなんて歌い手冥利に尽きるというか、改めて陰陽座の一員で良かったなぁと思えましたね。実話が元になっているせいか、とても生々しくて、ファンタジーでは済まされないところが多々あるんですよ。たくさんの人間の怨念が渦巻いている物語ですから、とにかくそれを一回自分の中で咀嚼して、また吐き出して。それによって彼女らに成仏してもらおうと、自分なりに物語を整理して歌いました。

●いや、生前の一途に谷五郎を愛する姿と、理不尽に命を奪われた哀しみの対比が歌声からも表れていて、とにかく圧倒的でした。

黒猫:ありがとうございます。少女に乗り移った累が話し始める幕開けは特に大事だろうと、最初の第一声は本当に怨霊が喋っているような形にしたくて、静かに淡々と、でも、だんだん怒りが増してくる感じになるように心がけましたね。あとは曲と歌詞に導かれるままに歌っていったんですが、そしたら自分でもビックリするくらいどんどん怒りが増していって! 最後に念仏のような声が聞こえてきて怒りが爆発する場面なんかは、自分で聴いても“コワっ!”と思うほど凄い声が録れて、これは本当に助や累が導いてくれたんじゃないかなぁと。歌い終わってOKが出たときは、ちょっとへたり込むくらい入り込んでました。

●本当に降りてきてくれたのかもしれませんね。陰陽座特有のドラマティックでダイナミックな、間違いなく今作のハイライトですよ。

招鬼:この「累」からの後半の流れが、僕はたまらんです。全体的にヘヴィな楽曲が多い『雷神創世』で、こんな大作の次に「蜩」っていうしっとりした曲が入ってくるのも良いし、その後の「而して動くこと雷霆の如し」も、クライマックスにしか在り得ないストレートなヘヴィチューンになっている。で、最後はライブでもアンコールに披露しそうな明るい方言曲「雷舞」という流れが、とても良い!

●「雷舞」は黒猫さんが1曲通して低音キーなのが珍しいですね。

瞬火:どう考えてもライブでお客さんも一緒になってワーッ! と歌いたい曲なので、“男も女も一緒になって歌う”という意味でちょうど良いところにキーを設定した結果ですね。結果、CDにはお客さんの声は全く入っていなくとも既に合唱しているような光景が浮かぶ、そこがミソですね。

黒猫:基本的に瞬火の声と寄り添って歌っているので、混ざりの良さを意識したら、上手く一体感が出て。聴いていても、ものすごく気持ちいいです。

●一方、『風神界逅』のラストを締め括る「春爛漫に式の舞う也」ではファンへの感謝が綴られていますが、正直、こんなにストレートでわかりやすい口語体で瞬火さんが想いを訴えることに驚きました。

瞬火:自分でもビックリ…と言いたいところですが、今までもあったような方言というフィルターで照れ隠しをしたり、古語というオブラートで包んだり…というギミックの一切が、この曲で歌うべき感謝の気持ちに対して必要ないと判断したので、気持ちをそのまま歌詞にしました。もちろんその結果“瞬火、どうした?”と思われるんだろうけども、という予想をしているということも歌詞に盛り込むことで、何か変な意図があって分かりやすい歌詞を書いたのではないと理解してもらえると思います。

●大丈夫ですよ。言いたいことは臆せず、すぐに言わないと、人生なんて風のように過ぎ去ってしまいますから。

瞬火:そうですよ! よく、照れくさくて“ありがとう”とか“好き”なんて言えないっていう人がいますけど、僕にはわからない。今は言えないけど明日言う、今度言うって…誰だって、絶対明日が来る保証なんてないんですから。バンドだって同じですよ。明日、何か不測の事態が起こって陰陽座が消滅するかもしれないんだから、やりたいことは出来得るかぎりのスピードで作品にしておかないと間に合わない。だって30年、40年したら、僕らこの世にいませんからね。なので今回も急いで、気持ちの赴くまま制作に臨みました。

●なるほど。2枚同時リリースの真意が、今、ようやくわかりました。

瞬火:そういうことです。さらに言うと『風神界逅』の“界逅”は邂逅、つまり“出会い”の意であり、『雷神創世』の“創世”はそのまま“作る”という意味ですよね。要するに、これは10枚目を超えて11、12枚目という新しい“1、2”を迎えた陰陽座の世界に出会い、そこに雷が落ちて新たな世界を作り上げるという意志の表れなんです。

●となると、今までに無かった聴き心地や新たな試みを体感できる2作になったのも当然ですね。さらに全国ツアーも11月からの“風神”と、来年1月スタートの“雷神”という2本立て。

瞬火:やはりアルバム2枚を同時に引っ提げてツアーしてしまうと、この24曲だけでライブが終わってしまいますから。その点、アルバムごとにツアーを分ければ半分は従来の曲が出来るわけで、だから極限までツアータイトルをシンプルにしたんですよ。アルバムからの新曲という意味では前者は『風神界逅』の曲、後者は『雷神創世』の曲しかやらないツアーだということが、ハッキリ伝わるように。

狩姦:2本立てのツアーは初めての体験ですが、今は新しい曲を早く皆と一緒に楽しみたいという想いだけなので、もう、期待しか無いです!

招鬼:うん。皆とライブをするために、後はキチンと準備するだけ。

黒猫:私も今回の2枚では魂籠めて歌が歌えたなぁと思っているので、それを引っ提げて2本の濃いライブツアーを出来るのが本当に有り難いですね。皆さんに楽しんでいただける歌が歌えるように、しっかり準備して会いに行きたいです。

瞬火:……と、ここまで2時間話してきましたが、正直まだまだ語り足りませんね。でも、仕方ないんです。陰陽座というバンドは2枚出すからといって掲載ページやラジオで掛かる曲数が増えたりはしない存在ですからね。受け皿がないという。

●いやいや、そんなことないですって!

瞬火:いや、あります。そんな中で、こんな特集号を出してくださる「JUNGLE☆LIFE」さんは、ホントに男気溢れる存在ですよ。要するに、受け皿があるから2枚出したのではなく、無いのがわかっているのに“出したいんだから出したんだ”という、この漲り。そこに僕は一番の手応えを感じていますし、ゾクゾクするんですよ。無風の陰陽座で、僕は本当に良かったです!

Interview:清水素子

banner_228 new_umbro banner-umbloi•ÒW—pj