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0.8秒と衝撃。

音の錬金術師と美しき叫ぶ女神が遂に覚醒した

PHOTO_08秒と衝撃作品ごとに実験的かつ破壊的なアプローチで我々の度肝を抜いてきた0.8秒と衝撃。。襲い来るリズムで見事な造形美を作り上げたと同時に、J.M.が初めて楽曲にその感性を注ぎ込んでバンドとして大きく前進した前作『NEW GERMAN WAVE 4』を経て、彼らは新レーベル“HAGATA”に移籍後初となる新作『いなり寿司ガールの涙、、、EP』を完成させた。バンドのフォーメーションを一新させ、タフなマインドをより強固なものへとアップデートし、有機的に機能する共同体へと成長を遂げた0.8秒と衝撃。。音の錬金術師と美しき叫ぶ女神が、遂に覚醒した。

 

●オナニーするときもラーガシャツ着ているんですか?
塔山:オナニーするときは素っ裸ですよ。

●前作『NEW GERMAN WAVE 4』(2013年11月)ではシーケンサーを導入したり、0.8秒と衝撃。が誇るカワイコちゃんが初めて曲を作ったりしていましたよね。

塔山:いやあ、俺そんなに褒められても何も出せないですよ。

●いや、カワイコちゃんというのは塔山さんのことじゃなくてJ.M.さんのことです。

塔山:俺は今まで「かわいい」としか言われたことがないんですけどね。

●それまでの楽曲制作では客観視する立場を貫いていたJ.M.さんが、前作では歌詞やメロディを作ってきたり。転機になる作品でしたよね。

J.M.:塔山主導の作品が続いていたので、それを変えたいと思って。

塔山:結局ニュアンスの話なんですよね。例えば俺が作った曲に対して、「こういう音でこういうフレーズを入れろ」っていうような音楽的な意見を出すわけじゃなくて、感覚的に「もっとこういう雰囲気にしたい」っていう、センスの部分を共有して助けてくれるようになったというか。2人の意見が合ってOKになるというのは変わらないんですけど、今までは俺ばかりがやっていたものに対して、前作からはJ.M.のエッセンスも入れたという。前作はそういう要素があった程度だったんですけど、今作はそれによって作ったサビをまるまる潰したりもありました。

J.M.:もっとバンドを広くしたかったんですよね。だから全部逆なことをしようとして。

●塔山さんと真逆のことをして、バンドの幅を広げたかった?

J.M.:そうそう。素人でも音楽が作れるのを見せたいというのもあったし、塔山に対して挑戦状を出したいっていうのもありました。

●塔山ナメんなと。

J.M.:かつ、真逆なことをして今までの塔山がのめり込む性質っていうのを、いい意味で変えたかったんですよね。“最近はバラード書いてないやんけ”っていう気持ちもあったし、塔山に対して“お前はもっといいもん持ってるじゃん”っていう想いもあって、“今回はあたしがやるから見とけ”っていう。塔山は結構我が強いから、制作に介入するのも大変なんです。でもそれは自分にしかできないから、一個一個説得するっていう作業も大変でした。

●今まで人ごとのようだったJ.M.さんがこんなに変わるなんて…ウチのいちばん最初のインタビューなんて、歌舞伎町の喫茶店で取材しましたけど、J.M.さんいきなりポークジンジャー注文しましたからね。

一同:アハハハハハ(笑)。

J.M.:あのときとは人間が変わったとは思いますよ。本当に第三者的な感じでやっていたし。一生懸命やってはいたけど、心のどこかでは音楽に対して今ほど強い想いはなかったんでしょうね。

●いい話だな。

J.M.:マネージャーがいなくなってから、バンドがガタガタになっちゃって。メンバーはメンバーで飛び抜けている個性の人たちばかりで。そんな中で、危機感だけは感じていたんですよね。去年は結局、作曲に関与するっていうところと、ライブでは1曲1曲に焦点を当ててバンドの演奏から変えようと思ったところ、その2つをまずはやろうと。

●ライブも変えようと。

J.M.:今までのアプローチは、ライブではカオスというか、その場の熱量が売りだったんです。だけどこうなってくると、絶対的な演奏力の上でのエンターテインメントがないとダメだと思って。その構造から…メンバーに意見をするっていうことから自分を変えなきゃいけないと思ったんですよね。「このバンド、舵を取る人がいない!」と思って。

塔山:自然と変化せざるをえなくなって、そうなったのはいいんじゃないですか。チーム形成としては健全ですよ。

●そういったバンドの変化を経て、今回リリースする『いなり寿司ガールの涙、、、EP』はすごくエネルギッシュだし、語弊があるかもしれないけど、わかりやすいというか、伝わりやすい作品ですよね。

J.M.:そう。それは私も狙っていたというか。嫌な意味じゃなくて“0.8秒と衝撃。が次にどんな音を出したらかっこいいか”くらいの感じで焦点を合わせたっていうのはありますね。自分の中では、ふんわりしたものじゃなくて絞ってガツッとしたものを作るべきと思ったんです。

塔山:大まかな意味でポピュラリティというか、今まで届いていないようなやつらにもパンチを当てていくという部分だと思います。ある種クールな目で見て、俺が書いた曲に対して言ってくれた方が俺も燃えるじゃないですか。それをJ.M.が身近でやってくれた。

●どの曲からも共通項として感じたのは“踊らせる”っていうことなんです。そのマインドは0.8秒と衝撃。というバンドの根幹になっている気がするんだけど、今作は歌詞もサウンドもそこにベクトルが向かっている。同時に、“涙”という言葉も相変わらずたくさん出てきてますけど。

J.M.:うちのバンドの代表キーワードですよね。涙の存在を美しく感じていますからね。

塔山:力強かったりもするじゃないですか。狂気的ですしね。

●涙が出る瞬間とか踊る瞬間って、人間が理性をなくしてぶっ飛んでる状況じゃないですか。聴く人をそういう状態にさせる作品ですよね。

J.M.:ミックスとかマスタリングは、感覚にくる感じに仕上げたかったというのがあって。M-1「ARISHIMA MACHINE GUN///」の間奏とかって、自分の感覚にすごくくるんですよね。陶酔するような感覚をサウンドで出したかったというか。自分が聴いていて“気持ちいい”って思うのがあるから、そういう要素がどこかしらに欲しいっていうのがありましたね。“クスリなんて必要ないからこれを聴いておけばイケるよ”みたいな。

塔山:今回の作曲は楽しかったですね。そこが前回と全然違う。楽しんだ方が感情を乗せられるんですよ。“人が聴いたときにこう思うやろうから、こうしとこう”ってなったら感情が乗せられない。

J.M.:自分主導じゃないとね。

塔山:世の中に売れる売れないの方程式があったとして、“俺がこうやったものは売れるんだろうか?”っていうのを試したいんですよね。

●なんか、昔より健康的になりましたね。以前の塔山さんは、そういう部分に対してもっと攻撃的だったような気がする。チンピラみたいだった。

J.M.:塔山は定期的にガラッと人が変わるんですよ。変化が速くてキャッチできない。私はそれをいちばん感じるから今まではその部分での葛藤もあったんですけど、最近はいい意味でそれを楽しむようになれた。

塔山:そういうモチベーションから入った方が楽しいじゃないですか。今は次の音源を作っているんですけど、インドっぽいことをやりたいから、いちばん最初にやったのがチチカカにラーガシャツを買いにいくことでしたからね。それを着て作業するんです。

一同:アハハハハ(笑)。

J.M.:何でこんなに変われるんだろうって思うんですけどね。

●オナニーするときもラーガシャツ着ているんですか?

塔山:オナニーするときは素っ裸ですよ。

●そんなことよりM-4「永遠の太陽。」はすごくいい曲だと思うんですけど、この曲が「ARISHIMA MACHINE GUN///」と同じ人間から生まれたものとは思えないんですよね。人間っぽいと言えば人間っぽいし、バラードは今までもあったけど、その振れ幅が奥深さにも繋がっている。

J.M.:たぶん、0.8秒と衝撃。ってそういうものだと思って。今回は0.8秒と衝撃。を表した5曲が入っているというか。

塔山:自分が“こんな曲がいい曲だと思う”っていうことをやりたかったんです。特に激しいのを書こうとか、バラードを書こうっていうよりは、そのときに書きたくなったものをまず出す感じですね。自分の中で形を出して、“この作品のここに入れたら合うんちゃうか”っていう。あくまで自分たちの表現欲求の方で当てていくというか。最初にこれが1曲あって“こういう作品を作ろう”っていうプランまでは考えないんです。いろいろ球を出してみて、“これはこの作品の○曲目に来そうやな”みたいなものが作っていく中でわかってきますから。

●自分の日常のいろんな感情を曲にする。

塔山:人間、その日によって違いますからね。仕事で疲れて帰ったとき“今日はビールが飲みたい”って思う日もあれば“今日は酒はいらんわ”ってときもある。それをちゃんと表現していっただけ。だから楽しいですよ。「ARISHIMA MACHINE GUN///」を作った翌週に「永遠の太陽。」みたいな曲を作っていたら。

●自分にとっても新鮮な気持ちになれる?

塔山:そうですね。どっちの曲にとってもいい影響になるんですよ。いろんな感情を刺激できますからね。

●リリース後は東名阪でレコ発がありますけど、さっきJ.M.さんが「ライブを変えたかった」とおっしゃっていたように、最近のライブのモードはどうですか?

塔山:いい意味でオーガニックな関係性になりましたね。メンバーもJ.M.もそうですけど、例えば楽曲という脚本がある。それをみんなで考えて、セットリストはJ.M.に振ってみたりして。今までは全部俺が作っていたんですけど、それをやってみて面白かった部分や直していきたい部分を、各パートごとに責任を持たせる。今まではライブで各パートのやつが成功しても失敗しても、全部俺の責任だったんですよ。でも、各パートを“自分が鳴らしている”と思った方が、一個のバンドになったときに無敵になるんですよね。最近のライブはそういうチームを構成してやっていってるから、本数は少ないけど内容が濃い。

●マインドの部分が大きいのかな。

塔山:ミュージシャンシップのオーガニックさが出てきている。別に人として仲良くなくてもいいんですよ。でもステージに上がったらその時間はみんなが守らないとダメじゃないですか。だって、バンドは運命共同体だから。そこでケミストリーを生み出すバンドにしたいから、その訓練をしていて。音源にシーケンサーとか機械的な音が入っているだけに、ライブはオーガニックなケミストリーがより出るようになったというか。前はそこに縛られていたんですけどね。“機械的なサウンドだからオーガニックではあかん”って。でも、音源を再現しつつもオーガニックなフレーバーを出せるようになった。フレーズ以前に、関係性として。俺たち2人もライブメンバーとよく話すようにしたり、いろんなものを共有したり、彼らに任せる部分は任せたり。“俺やったらこうやって頑張れるけどな”っていうことを、他のメンバーにも頑張って欲しいんです。そこについてきてくれている。

●そこはJ.M.さんのバンドに対する変化と共通している話なのかもしれないですね。0.8秒と衝撃。は自分のバンドだ、という自覚。

塔山:今まではそこまで腹を割って話してはいなかったんですよね。

J.M.:変な意味でお互いを尊重していたっていう部分があったし。

塔山:でも尊重することがメンバーを守ることかと思ったら、違ったんですよね。そんなことしたらバンドが死んじゃうんですよ。俺ら2人も死ぬし、ライブメンバーも死ぬ。そうじゃなくて、嫌なことも話し合って不味いものも一緒に食った方がいいんですよね。そのほうが強くなれるし、上手いものも食えるんですよ。だから今は居合道みたいなライブをやってます。

●一撃必殺みたいな。

塔山:それができたときは、お客さんも度肝を抜かれるわけですよ。キュウソネコカミにも言われましたもん。「塔山さん、しゃべらずにライブをやったらかっこいいですね」って。

一同:アハハハハ(笑)。

●塔山さんがしゃべらずにライブできるんですか?

塔山:MCをせずに曲に集中して。曲のエネルギーと伝えるエネルギーを1回全力でやってみようと思って。しゃべりたいときはしゃべればいいけど、俺らがいちばん鳴らしたいのは音だから。まずはそれありきで興奮させといて、“こいつらかっこええやん。声聞きたいな”とか思わせたときくらいにしゃべる。そういうノリでやりたいんですよ。

●あんなにしゃべってたのに。

塔山:気づいたんですけど、曲を邪魔しちゃってたんですよ。俺のしゃべりが。

●それはみんな知ってましたよ。塔山さん以外みんな気づいてました。

塔山:やかましいわ! よかれと思ってしゃべってたんや!

●ハハハ(笑)。

塔山:しゃべるのが悪いんじゃなくて、結局メンバーとオーガニックな繋がりを持てていなかったから。メンバーはメンバーで“入ったらあかんやろ”と思ってるから、その間ができたところを“俺が埋めなあかんのか”と思ってしゃべってた。6人が繋がっていたら音を鳴らすだけでいけるのに、繋がりきれていなかったから“誰が責任を持つんだ”という話にもなるんですよ。誰も責任を持っていなかったら、どうやってこのバンドをデカくしていくんやっていう。だから6人でちゃんと責任を持って、来たやつを興奮させて、1人だったお客さんを2人〜3人と増やしていけば絶対にイケる。そういうライブをやりたいなと思って、今はそうなっていってる。だからすごく良くなってますよ。

●ツアーが更に楽しみになってきました。

塔山:そういう意味でも音楽が楽しいんですよね。ラブ&ピースみたいな楽しさじゃなくて、ストイックな部分を持ちつつ、興奮しつつ、楽しいんです。

interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:森下恭子