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RUSH BALL 2014

2014/8/31@泉大津フェニックス

【ACT】[Alexandros] / サカナクション / SiM / ストレイテナー / the telephones / the band apart / Czecho No Republic / QUATTRO / TOTALFAT / グッドモーニングアメリカ / THE ORAL CIGARETTES [OPENING ACT]

【ATMC】ゲスの極み乙女。 [ATMC/Closing Act] / MO'SOME TONEBENDER / the chef cooks me / Northern19 / 神聖かまってちゃん / Kidori Kidori / tricot / SHISHAMO / go!go!vanillas / ドラマチックアラスカ / THREE LIGHTS DOWN KINGS

オープニングアクトを務めたのは、奈良のTHE ORAL CIGARETTES。昨年には“RUSH BALL☆R”から“RUSH BALL”のATMCステージへ出演した彼らが、今年はまた一歩先、大きなステージに立っているのは実に感慨深い。ビートの効いた「大魔王参上」や「Mr.ファントム」など、往年のキラーチューンはもちろん、新曲を披露するなど、勢いのあるライブでイベントは幕を開ける。

続いてATMCの一番手はTHREE LIGHTS DOWN KINGS。Vo.Glielmo Ko-ichiが「朝だけどさ、眠いんじゃない?」とオーディエンスに問いかけたのち、ライブがスタート! スクリームを多用したボーカルとエレクトロサウンドが絡み合い、会場を踊らせていく。早朝いちばんに鳴り響くダンスミュージックで、眠気も一気に吹っ飛ばした!

アイキャッチが流れ、ついにトップバッターのグッドモーニングアメリカ! 夏休み最後の日ということで、宿題ができるようBa.たなしんがサイン入りのノートを配るという粋な? 計らいも。「イチ、ニッ、サンでジャンプ」「空ばかり見ていた」と開放感のある曲を放り込めば、会場からはシンガロングの嵐。他にも「拝啓、ツラツストラ」「輝く方へ」「未来へのスパイラル」など、フェス使用のセットリストで攻め倒した。

ドラマチックアラスカは、G.トバのギターアレンジが際立つ「東京ワンダー」に始まり、Dr.ニシバタとBa.マルオカのリズム隊とVo./G.ヒジカタによる歌が一体になる感覚が心地良い「エキセントリックアルカホリック」へと繋げていく。「アレシボ・メッセージ」や「リダイヤル」、そして大定番の「星になる」でフィニッシュ。「次はあっちのステージで会いたい」と言葉を残した彼らに、ますます期待が高まった。

いつもよりパーティー感増し増しのTOTALFATは、新たなサマーアンセム「夏のトカゲ」でボルテージを上げていく。沸き立ったオーディエンスによって、一瞬で砂ぼこりが立つほどだ。「Room45」「Summer Frequence」と、ここからまた再び夏が始まるかのような熱気をはらんだ楽曲を続々投入! いくつものアッパーチューンで、ノンストップに駆け抜ける。

その後、ATMCステージから流れるgo!go!vanillasのサウンドに誘われて、次々と人が集まり騒ぎ出す。瑞々しい感性で憧れの地を歌った「オリエント」、駆け出したくなるような爽やかな疾走感が魅力の「エマ」など、思わず聴き惚れてしまうようなグッドメロディーの応酬。「ホラーショー」では“ライフイズまさにホラーショー”のコール&レスポンス! 自然と体が動き出すほど楽しんだ、まさに至福のとき。

QUATTROのステージが始まると、陽気な音楽が辺りに広がっていく。軽快なイントロで気分まで上がっていく「Question #7」、日本語詞のボーカルとコーラスが美しい「ほどけた靴紐」、エフェクトのかかったボーカルによるハイトーンが耳に残る「Loyal Isolation」など、ハイセンスなサウンドで魅了する。ちなみにグッドモーニングアメリカ、TOTALFAT、そしてQUATTROは同じ出身地の音楽仲間。地元のライブハウスで“いつかフェスのメインステージで会おう”と約束していたそうだ。そんな3バンドにとって、このステージに立つことは、きっと特別な意味があっただろう。

本日唯一のガールズバンド、SHISHAMOの1曲目は「僕に彼女ができたんだ」。イントロの一音で意識を掴むようなリフが、オーディエンスの心を射抜いていく。ギターの主観から綴られた「サブギターの歌」、バンドマンを好きになってしまった女の子の歌「バンドマン」などストーリー性のある歌詞が面白い。ラストは「タオル」「君と夏フェス」とライブナンバーで最高潮の盛り上がり!

Czecho No Republicはリズミカルな「ネバーランド」からスタート。スペーシーでキラキラした「No Way」「Amazing Parade」でさらに疾走感を増していきつつも、Vo./Ba.武井とCho./Syn./G./Per.タカハシマイの歌声が絡み合う部分でグッと曲の世界に惹き込まれる。アッパーナンバーを固めて来た後はスローテンポの「ダイナソー」。暖かい音が会場を包み込んでいく、本当に野外が似合うバンドだ。

リハの時点で「爆裂パニエさん」をガッツリ鳴らし会場をヒートアップさせたtricot。激しさが前面に現れたイントロから嵐の前の静けさのようなAメロへと移り変わり、そしてサビで一気に爆発する対比が絶妙な「POOL」。1曲の中でもその展開の多さに目を見張るが、続く「おもてなし」「Break」と、通して観たときの緩急もライブにアクセントを付けている。「99.974℃」で沸点を越えたオーディエンスの熱気に包まれる!

the band apartは、安定感のあるライブでオーディエンスを揺らしていく。お洒落でアーバンなサウンドの「誰も知らないカーニバル」、颯爽と駆け抜けるメロディが壮快な「coral reef」、各パートのアレンジが個性的な「I love you wasted junks & Greens」と、秀逸なバンドアンサンブルが耳に心地良い。自然体な姿がこんなにカッコいいのは、長年培ってきた確かな実力があるからこそだろう。

今やすっかり“RUSH BALL”の常連として定着しているKidori Kidori。ソリッドなサウンドと開放的なサビが気持ちいい「Say Hello!(I'm not a slave)」の次は、新譜『El Blanco 2』から「テキーラと熱帯夜」。どこか楽しげでほどよくユルい雰囲気のこの曲はどこか新鮮で、新しい一面が見られたような気がした。様々な苦境を乗り越える彼らの歌は、年々説得力を増して訴えかけてくる。

the telephonesが現れ「夕日をミラーボールにして踊ろうぜ!」と叫べば、そこはもうダンスフロア! のっけからブチアゲナンバーを繰り出していく。「Hyper Jump」では、「今日はRUSH BALLのためだけに、ジャンプの審査員を連れて来ました」と言うと、ビシッとスーツを着込んだSP風の審査員が登場! 双眼鏡を持ってチェックする様子が面白い。誰もが競い合うように騒ぎ飛び跳ねる、最高の光景だった。

「お前ら全員メンバーだ!」。そう宣言したのは神聖かまってちゃんだ。1発目から早々に披露した「ロックンロールは鳴り止まないっ」は、何年立っても瑞々しく鳴り響く、まごうことなき名曲。途中「もっと上げていくぞ! でも、ここに来てバラードをやります」と笑いを誘うシーンも。アグレッシブかつユーモアのある姿を見せた彼ら「お前ら最高だぜ、俺らより最高だった!」と言葉を残し、ステージを去っていった。

美しい叙情的な「Melodic Storm」を皮切りに、ストレイテナーのアクトが開始する。Vo./G.ホリエが「なんだい! ディスコが終わったら夏は終わりかい?」と煽れば、それに全力で応えるオーディンス。すると「最新の曲を“RUSH BALL”に捧げます」と、熱狂の渦の中に新曲「The World Record」を叩き込む。骨の髄まで揺さぶられるような重低音が効いたゴリゴリのナンバーが響き渡る。

「くっそ久し振りに“RUSH BALL”に戻ってきました。その間にめちゃめちゃパワーアップしていると思います」。そう告げたNorthern19はBPM高めのスピーディーなキラーチューンを次々と繰り出していく。そんな中、ゆったりとしたリズムで始まる「TONIGHT, TONIGHT」は異彩を放っていた。昼と夜の境目にであるこの時間帯、静かに沁み渡るスローナンバーはロケーションにもピッタリ。

この日最もアグレッシブなライブを見せたのは、SiMではないだろうか。「Blah Blah Blah」の演奏が始まった途端、前が見えなくなるほどの砂ぼこりが巻き起こる暴れっぷり! ヘヴィなサウンドには、思わず鳥肌が立つほど。「俺は9/1になってから宿題をやるタイプだったから、31日は好きじゃなかったけど、去年“RUSH BALL”に出させてもらったとき、忘れられない日になった。来年も出たいです!」と抱負を語り去っていた。

the chef cooks meは、全員がストライプの入った衣装を着込み7人編成で登場。目まぐるしく展開の変化する「流転する世界」、のんびりとしたテンポで日常を歌う「環状線は僕らをのせて」など、ポップな楽曲たちに触れて胸の奥が熱くなってくる。大人数だからこそできる、複数のボーカルとコーラスが美しい。「音楽好きが集まると、何でもできる気がしました。ありがとう」とVo.下村が感謝を告げ、「song of sick」でフィニッシュ。

サカナクションのステージに入ると、泉大津に幻想的な光が差し込んでいく。まずはDJタイムにレーザーを使用した演出で“RUSH BALL SAKANACTION”の文字が浮かび上がると、会場から感嘆の声が上がった。そして舞台が暗転し、バンドセットに移れば「夜の踊り子」で歌詞に合わせてファンが飛び跳ね「アイデンティティ」で全力で踊り出す。それは会場もメンバーもひとつになって初めて成立する、究極のアートのようだった。

“祭”と書かれた大うちわを持って、なおかつ電飾の施されたコートを羽織り、頭には電光板の付けられたヘルメット…MO'SOME TONEBENDERは、見た目からパフォーマンスから全てが衝撃的だった。骨太な低音と歪んだギターに圧倒される「ロッキンルーラ」そして目も眩むほどの輝きを放っていた「Shining」…彼らはその存在そのものがロックであり、まぎれもないロック・スターだろう。

かつて[Alexandros]が出演したとき「次はもっと遅い時間に会いたい」と語っていたが、ついにトリとして舞台に立つ日が来た。Vo./G.川上の「踊り狂えー!」という言葉と共に始まった1曲目は「Starrrrrrr」。“RUSH BALL”がキッカケで生まれたこの曲を頭に持ってくる辺りに、特別な想いを感じられた。タイトな演奏とツヤのある歌声を存分に発揮して、堂々たるステージを見せつける。最後に「世界一のバンドになって、また戻ってきます」と宣言した彼ら。その言葉が真実になるときが楽しみだ!

本編終了後に行われる【CLOSING ACT】に華を添えたのはゲスの極み乙女。だ。洗練されたアレンジとVo./G.川谷の甘い歌声が絡み合い、極上の音楽を生み出していく彼ら。「ドレスを脱げ」では会場全体でシンガロング! サカナクションやKANA-BOONなども務めた【CLOSING ACT】。ゲスの極み乙女。がやがて大舞台に立つ日も、そう遠くないのではないかと信じられるほどのライブを見せてくれた。

例年に比べ、若手バンドが多く出演していた“RUSH BALL 2014”。歴史を重ねることで変わっていくものもあるが、ずっと変わらないこともある。それは、関西が誇る夏の音楽イベントとして、素晴らしいアーティストを紹介し続けていること。「“RUSH BALL”に出ている人たちなら間違いない!」と言い切れるほどに、どのバンドも最高のアクトを見せてくれた。“RUSH BALL”がある限り、この先もきっと、この場所でまた素晴らしい瞬間と出会えるだろう。

TEXT:森下恭子
PHOTO:田浦ボン / 河上良 / Yukihide"JON..."Takimoto

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