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四星球

アホの最先端に到達したコミックバンドが作り上げたものは、もはやCDではないと断言できる。では彼らはいったい何を作ったのか? 答えは“あなたの笑顔”です。

PHOTO_四星球01今年の夏は全国各地のフェス会場を賑わし、日本列島を笑いの渦に巻き込んできたコミックバンド界の台風の目・四星球。昨年自主レーベル・みっちゃんを設立して以降、一瞬たりとも立ち止まらずにライブとリリースとおもしろいことを続けてきた彼らが、待望のアルバムを完成させた。アホの最先端に到達したコミックバンドが作り上げたものは、もはやCDではないと断言できる。では彼らはいったい何を作ったのか?
答えは“あなたの笑顔”です。

 

 

 

もはや音楽誌のインタビューではない:その1

「夏のバタバタはZepp Nambaのワンマンから始まったんですよ。そういう意味では、あのワンマンを乗り越えることができたのが良かった」

●7/11にZepp Nambaでワンマンがありましたが、どうでしたか?

康雄:もう2ヶ月前か…。Zepp Nambaのことはよく覚えてないんですよね。

●アホだから?

康雄:今年の夏が色々とありすぎて。本当に申し訳ないですけど、今年の夏は本当に色んなところでライブをさせてもらって。

U太:例えばいちばんバタバタだったのが、8/23の青森の“八食サマーフリーライブ”に出て、次の日に“MONSTER baSH”だったとき。

●うわ! すごい移動距離!

U太:その次の日は新潟の“音楽と髭達2014”があって。しかもその次の週に“OTODAMA〜音泉魂”。

康雄:そのときも“OTODAMA”に出て、徳島の野外があって、またその日に“OTODAMA”に戻って。

U太:その次の日は十三Fandangoで勝手に後夜祭をやって。

●なんだそれ!

U太:もう死にそうになって(笑)。青森から香川の移動は飛行機だったんですけど、機材のこととかもあるし。

●あれ? 四星球機材あったっけ?

U太:機材あるわ!

康雄:9月は“MASTER COLISEUM”もあるし、その次の週に“いしがきミュージックフェスティバル”もあるし(※取材は“MASTER COLISEUM”前日に実施)。僕らフェスの出演本数だけで言うたら、日本のバンドの中でも結構上位なんです。

モリス:毎週出ていますからね。

●呼んでいただく機会が増えたということなんでしょうか?

U太:ありがたいことにそうなんですよね。ツールとしてうまく扱ってもらってると思うんです。

康雄:いっぱい出演者が居る中に、こういうバンドが1組くらい居てもいいんじゃないかって。

●今年の夏フェスで印象的なことは何かありました?

康雄:また移動の話なんですけど、“八食サマーフリーライブ”から“MONSTER baSH”に移動するとき、青森空港から伊丹空港まで僕1人だったんですけど、芸人のあべこうじさんと一緒の飛行機でした。たぶん奥さん(高橋愛)も一緒だったと思うんですけど、奥さんの顔は見れなかったんですよね。

モリス:僕も印象的な移動としては、“八食サマーフリーライブ”の青森から、次の日の“MONSTER baSH”の為に香川に移動するとき、1回家に帰ったんですよ。青森でライブしてその日に香川の家に帰るってヤバくないですか?

一同:アハハハハハ(笑)。

康雄:同じような行程を湘南乃風もやっていたらしくて。そういう時代なんでしょうね。

U太:台風だけが心配だった。

●移動の話ばかりですね。

まさやん:青森行くとき、「強風で途中までしか行けないかも」っていうアナウンスが流れました。

●わっ! しゃべった!

モリス:“MONSTER baSH”の打ち上げで、Dragon Ashとマキシマム ザ ホルモン、湘南乃風というそうそうたるメンツで飲んでて、僕は次の日朝の11時くらいからラジオがあったから途中で帰ったんですよ。そこで「ラジオだから先に帰ります」と言った瞬間、そうそうたるメンツの中で僕がいちばん売れてる錯覚に陥りました。

●アハハハ(笑)。

康雄:ラジオに来たところでまったくしゃべらへんけどな。

U太:夏のバタバタはZepp Nambaのワンマンから始まったんですよ。そういう意味では、あのワンマンを乗り越えることができたのが良かったのかなって思いますね。

●そういえばZepp Nambaのワンマンでは、オークションで“あなたのためだけに作る曲”という企画がありましたよね。11万円の値が付いて結局3人で分担するということになりましたけど。

康雄:今、曲を作っているところです。まだ形にできていないんですけど、3人それぞれにインタビューしてその人の背景とかを訊いて、それぞれの曲を作ろうと思ってます。

●すごいな。

康雄:最終的にはCDにしてそれぞれに渡そうかなと。ずっと聴いてもらえますからね。

もはや音楽誌のインタビューではない:その2

「一見僕らはなんでもアリのように見えますけど、自分の中でナシっていうのが実はすごくいっぱいあったんです」

●今回アルバムがリリースとなるわけですが、夏は非常に忙しかったとのことで、いったいいつ作っていたんですか?

U太:6月です。フェスシーズンに入る前に制作があったから、余計にバタバタした夏だったんですよ。

●今回のアルバム『もはやCDではない』を聴いて思ったのは、康雄くんが曲を形にする前にネタを色んなところでしゃべりすぎだということで。

康雄:ハハハハ(笑)。

U太:どういうことですか?

●前アルバム『COMICBAND~アホの最先端~』(2013年8月)のインタビューのときに言っていましたけど、今作のタイトル『もはやCDではない』は前アルバムのタイトル候補の1つでしたよね?

康雄:はい(笑)。

●それに今回M-14「ゴーストライターありがとさん」という曲がありますけど、これについては8月号のinnocentの特集で康雄くんにコメントをお願いしたとき、ゴーストライターネタでコメントを書いてきて。

康雄:はい(笑)。書きました(笑)。

●M-6「全日本ライブ大賞」は、DVD『四星球放送局〜なんばハッチお茶の間計画〜』(2014年4月)のインタビューのときに「CDショップ大賞も嬉しいけど、本心としてはライブ大賞が欲しい」と言っていたことが元になってるし。

康雄:はい(笑)。言ってました(笑)。

●曲のネタ、事前に漏らしすぎですよ!

康雄:思いついたら言いたくて我慢できないんです(笑)。

U太:JUNGLE☆LIFEと一緒ですよ。思いついたら書きたくて我慢できないっていう。

●ハハハ(笑)。去年自主レーベル“みっちゃん”を立ち上げてからずっと駆け足で突っ走ってきたからこそ、アルバムも間髪入れずに出そうということで?

康雄:そうですね。その前がかなり間が開いてしまっていましたから、続けてリリースした方がいいかなと。ツアーまわりながら曲を作りつつ、ツアーが終わったら一気に完成させるっていう。今回いちばんやりたかったのは“なんでもアリ感”みたいなことなんです。一見僕らはなんでもアリのように見えますけど、自分の中でナシっていうのが実はすごくいっぱいあったんです。

●ごめんなさい。ずっとなんでもアリに見えていました。

一同:ハハハ(笑)。

康雄:見えてたでしょ? でも1つの作品の中での一貫性をずっと大切にしていたんです。この曲でこんなことを歌ったから、次の曲では反することを歌ってはいけない、とか。

●ふむふむ。

康雄:今作で言うと、アルバム前半の曲で“歳をとることはステキなことだと教えてくれた”というフレーズがあって(M-4「LAUGH LAUGH LAUGH」)、アルバム後半の違う曲では“年齢なんて 分母にすぎないね”(M-10「バースデイソング」)と歌っている。そういう矛盾は、昔は絶対NGだったんです。でもそれをこのアルバムで全部取っ払いたかった。

●なぜこのタイミングで、今まで大事にしてきたことを取っ払ったんですか?

康雄:よりおもろいものを作ろうとか、より色んな人に聴いてもらおうと思ったら、自分のルールは要らんなと思ったんです。

●自我なんてどうでもいいと。

康雄:自我なんてどうでもいいと思いました。もともと僕らコミックバンドでやっているわけじゃないですか。ロックバンドだったら自我は大切だと思うんですよ。でもコミックバンドと謳ってお客さんに対してやっているのに、なんでお前はそこでミュージシャン気取って自我を大切にしてるねん! と。ステージでは「お客さんに喜んでもらってナンボ」と言ってやってるくせに、いざ歌詞を書くときになったら自我を守りすぎていたという。

●ああ〜。

康雄:だからそこを取っ払おうと。「ゴーストライターありがとさん」で歌っていることがまさにそうなんですけど、自我を取り払って、自分じゃない人が作ったくらいの感覚で作ったらどうやと。曲を作るアプローチがいろいろとある中で、僕じゃない人が書いたようなものもあっていいんじゃないかと思ったんです。

●ということは、「ゴーストライターありがとさん」はゴーストライターが書いた曲?

U太&モリス&まさやん:違うわ!

康雄:僕が書いたんですけど、アプローチとして、自我を取っ払ってまるで他人が書いたような感覚のものもあってもいいんじゃないかという話です。

●そうですか。今作はM-1「前作で全部出し切った」の幕開けからびっくりしたんですよね。曲が始まったらいきなり「2014年アルバムできました!」って言っちゃってますよね。来年以降聴いてもらうこと全然考えてないという。

康雄:そこの勝負なんですよ。それがおもろいかなって。その後に90年代のことを歌った曲が入っていたり(M-7「チャンネルはあのままで」)、19歳のときに作った曲が入っていたり(マイナストラック「桃源郷」)、もうむっちゃくちゃにしたかったんです。時代とかにとらわれない感じ。そういう一貫性も取っ払ったんです。

●『もはやCDではない』のタイトル通り、四星球は前アルバム辺りから“音楽CD”という枠組みを完全に無視した感じが出てきましたよね。今年1/1にシングルで発表したM-9「親孝行 or DIE」のアルバムバージョンも収録されていますけど、これもひどい。反則にも程がある。この曲、シングルバージョンにまさやんの友達の声優さんのトラックを重ねただけですよね?

康雄:そうです(笑)。来てしゃべってもらったんです。

U太:でも他のバンドだったらトラックも重ねずにシングル曲をアルバムに入れるだけですからね(笑)。

モリス:リミックスみたいなもんです。

●そういう反則技みたいなこともやりつつ、『もはやCDではない』と言っているのに楽器陣のプライドも伺い知れるという。曲を聴くとどうしても康雄くんの歌と歌詞に意識を持って行かれますけど、その裏では音楽的な幅も広げていて。その際たる例は「チャンネルはあのままで」だと思ったんです。ダンスナンバーというか、踊れるサウンド感が新しいなと。こっそり音楽的な成長も感じる。

モリス:ツイストしたくなる感じですよね。

U太:「チャンネルはあのままで」については、ジャンルで闘っていないバンドだからこそ、敢えてあのジャンルをやってみた感はありますね。あと今回大きく変わったのは、制作中に音源を家に持って帰ったこと。

●家に持って帰った?

U太:今まではふわっとしたまま形にしていたんですけど、今回はPCに落として音符単位まで見直してみたんです。その方がキッチリふざけられるかなって。アルバムのタイトルとは裏腹に、説得力を持たせたかったんですよね。

●なるほど。

U太:ヴォーカルのメロディも全部音符に落として「これは違うかな?」って、音楽的に見直してみたりして。というのは、小室哲哉の曲の作り方を勉強したんです。

●小室? TK?

U太:小室が作るメロディって、同じ音符の繰り返しが多いんですよ。その方法を「LAUGH LAUGH LAUGH」のサビにも活かしてみたりとか。でもガチガチに固めてしまったら四星球じゃなくなるから、ガイドラインだけ作って「あとは好きに歌ってください」という感じ。

●要するに、ゴーストライターや詐欺師をフィーチャーしたアルバムだと。

4人:違うわ!

もはや音楽誌のインタビューではない:その3

「楽になる曲がほしいなと思ったんです。“がんばろうぜ”と歌う曲はいっぱいあるけど、楽にしてくれる曲ってあまりないから」

●「親孝行 or DIE」もそうですけど、四星球は焼き直しっていうか、同じ料理にちょっと手を加えて2日目にあたかも違う料理として堂々と食卓に並べる常套手段を持っているじゃないですか。

康雄:はい(笑)。

●今回M-5「ノーフューちゃん」という曲がありますけど、これはシングル曲「フューちゃん」(2013年6月)を速くしただけですよね?

康雄:この曲はすごく気に入ってます。

●でもテンポを速くしただけなんですけど、この曲を聴いたとき、むしろこっちが原曲のような完成度を感じたというか。勢いがあるし、なによりすごくエモい。

康雄:もともとはただのネタだったんです。京都でワンマンをしたときに“四星球ヴォーカリストオーディション”というライブをやったんですよ。パンク出身のヴォーカリストが来て、そいつが歌う「フューちゃん」という設定でパンクアレンジでやってみたんです。

●あ、なるほど。

康雄:そしたら自分ながら“これはメッセージ性が強くなるな”と感じて。テンポを上げるだけで新しいものになるとか、思いっきりやるだけで違うものになるっていうのは、曲としてというより、その過程がメッセージになるなと。だから『もはやCDではない』というタイトルのアルバムに入れるには相応しい曲なのかなと。方法論としてアルバムに入れた感じがありますね。“テンポを速くして違う曲にする”という方法論を入れたかった。

●なるほどね。あと、今後ライブの定番になる予感がする曲があったんです。

康雄:どれですか?

●M-2「妖怪泣き笑い」なんですけど、「Mr.Cosmo」(アルバム『2009年途中の旅』収録/ライブで激盛り上がりする名曲)の後を継ぐような曲だなと。

康雄:そうですね。だから実は、明日の“MASTER COLISEUM”では「Mr.Cosmo」をやらずに「妖怪泣き笑い」をやるつもりなんです。

●あっ、特ダネ情報ゲットした! Twitterでつぶやこう!

康雄:この人ほんまにアホやな。ルールもライブも何もわかってない。

●作ったときからライブの定番となる手応えがあったんですか?

康雄:そうですね。これで更にライブのバリエーションを出すことができるんじゃないかなって思います。ノリも勢いもありつつ、コミックソングなりの哲学というかメッセージもちゃんとあるので。

●この曲に込められた哲学は素晴らしいと思うんです。荒俣宏先生が「世の中で起きるすべての出来事は妖怪の仕業だ」と言っていたんですけど、それを逆手にとったようなこの曲の“悪いの全部妖怪のせいにすればいいさ”という歌詞を聴いたら…なんか、ちょっと楽になる。

康雄:そう、楽になりますよね。楽になる曲がほしいなと思ったんです。「がんばろうぜ」と歌う曲はいっぱいあるけど、楽にしてくれる曲ってあまりないから。四星球は常々楽になる曲を作ろうと思ってやってきましたけど、その最たる例として「妖怪泣き笑い」ができたんです。

●四星球らしい名曲ですね。

康雄:更に、この曲は妖怪の名前がいっぱい出てきますけど、そういう部分は今後ライブのネタにも繋がるのかなと思いつつ。色々と考えて作りました。

●あとびっくりしたんですけど、M-12「思い出クイズ」という曲は…これ、ラブソングですよね?

康雄:はい、いちおうラブソングです。

●いちおうっていうか、結構なラブソングですよね?

康雄:はい。結構なラブソングです(照)。

●なにこれ?

一同:ハハハ(笑)。

●僕の勝手なイメージかもしれないですけど、四星球というバンドのキャラクターとして、ブリーフ1枚でライブやっている割に下ネタを言わないし、色恋みたいな歌もあまりないし。“男”の部分をあまり感じなかったんですよね。

康雄:そうですね(笑)。

●若干恋愛を想起させるような視点は今までの曲にも入っていますけど、「思い出クイズ」はストレートなラブソングと言っていいと思うんです。近々結婚するんですか?

康雄:いや、結婚はしないです(笑)。バリエーションの1つとして、自分の中でずっと貯めていた部分があるんですよ。ラブソングを作るんだったらほんまにいいものを作らんとあかんなと。安売りはできないなと。僕らみたいなバンドが気軽にラブソングを作ったら、ほんまにペラペラになるじゃないですか。

●確かに(笑)。

康雄:というか、今回のアルバムは「これもしかしてラブソングか?」という曲が結構多いんですよ。「LAUGH LAUGH LAUGH」とか。

●言われてみればそうですね。

康雄:だから今までだったら1枚のアルバムにラブソングとも取れる曲を2曲も絶対に入れないんですよ。でも最初に言ったように、今までの自分の中のルールを全部取っ払ったからアリにして。

●え? 彼女が最近できたんですか?

康雄:違います。

●やっぱり結婚するの?

康雄:結婚しないです。

モリス:めっちゃゴシップ好きな音楽誌やな。

●「思い出クイズ」はすごくいい曲ですよね。悪ふざけがないというか、最後までストレートというか。と思ったら、そんなストレートなラブソングの後に、アルバムの中でいちばん長いトラックが収録されている。6分17秒のM-13「思い出クイズショー」。音楽じゃなくてコントがいちばん長いという。

康雄:「ナメんなよ」ということですよね。「何分でもやったるぞ」と。

モリス:「こっちはナンボでもやったるぞ」と。

●ハハハハ(笑)。アルバムの前半にもM-3「モリス教授の世界一のLove Song」というふざけたトラックがあるじゃないですか。なのに、アルバムの後半にもっとふざけたトラックが入っているという。

康雄:だから「お前らナメんなよ」ということです。これももはや、コントがおもしろいかどうかという次元の闘いではなくて、スタンスの闘いですよね。コントが3トラック目に入っているというおもしろさを狙ったんです。

●それは思いました。ひどいなと。

モリス:「モリス教授の世界一のLove Song」は録る前に「アルバム前半に入れる」と言われましたからね。だから割とあっさりしたテンションでやったんです。

康雄:1トラック目にコントを入れるっていうのはよくある手法じゃないですか。でも2トラック目って中途半端でしょ? だから3トラック目に入れたんです。ここは特にこだわったところですね。

●そういう前フリがありつつ、「思い出クイズショー」で思い切りやったと。

康雄:アルバムを聴き進めていって、「ここでまだこんなことやるんか!」と思わせたかったんです。「もう普通に終わったらええやん!」と。

●しかもそれだけでは飽きたらず、アルバムの最後には衝撃的な曲が収録されているという。

U太:はい。「ボーナストラック」じゃなくて「マイナストラック」です。

●ボーナストラックのよくあるパターンとしては、クレジットにも表記せず、アルバムを再生しっぱなしにしていたら最後の曲の5分後に急に曲が始まったりするとかじゃないですか。でも今作のマイナストラック「桃源郷」は「ゴーストライターありがとさん」が終わったらすぐ始まる。

まさやん:隠す気がないんです。

●「桃源郷」は、康雄くんやU太くんが19歳の頃に作った四星球の1stデモ『なけなし』に収録していた曲ですよね。しかも録り直しもせずにそのまま入れるという。メンバー2人違うし。

康雄:そうなんですよ(笑)。「メンバー違うやん!」っていうね。

モリス:印税どうなるんでしょうね。

●確かにどうなるんだろう。

康雄:そういう部分も『もはやCDではない』ということで、既存の音楽CDの概念をぶち壊したかったんです。

U太:文句言われたら「もはやCDではないので」と答えようと思います。

●ハハハハ(笑)。でも「桃源郷」はすごく良かったです。若い人にしか出せない爆発力があって、真面目に頭おかしいこと歌ってる。なぜこんな初期のデモ音源をそのまま入れようと思ったんですか?

U太:いや、おもしろいかなと。

●今も頭おかしいね。

康雄:他の曲でも別によかったんですよ。デモとしては10曲くらい残っていたので。でも「桃源郷」がやっぱりいちばん破壊力があった。

U太:初期の頃はずっとやっていた曲なんです。

●そうなのか。

康雄:当時、僕らが他のバンドに埋もれなかったのはこの曲があったからだと思うんです。青春パンクが流行った当時、周りのバンドがみんな青春パンクをやっている中で、僕らはこの曲をやってました。

まさやん:今でいうと「Mr.Cosmo」の位置でやっていた曲ですね。

●キラーチューンというやつですね。ライブのマストアンセム。

康雄:まさやんがまだメンバーになる前、ライブを初めて観に来たときもやってたよな?

まさやん:うん。“この人ら頭おかしいんちゃうか”と思いました。

●アハハハハハ(笑)。

U太:当時のライブはむちゃくちゃでしたもん。「桃源郷」のサビにハミングみたいなところがあるじゃないですか。ライブではあそこでネタをやるんです。

康雄:ネタを入れたり、PAさんがめちゃくちゃリバーブをかけたり。

●「Mr.Cosmo」の原型というか、今の四星球の原点というか。

康雄:当時の僕らのアイデンティティだったんだと思います。

もはや音楽誌のインタビューではない:その4

「舞台監督さんと直接話したりするんです。特効屋さんに資料をもらって見せてもらったり。今の活動スタンスのお陰で視野を拡げてもらってますね」

●コミックバンドにこういう質問をするのは失礼かもしれないですけど、今回音楽的な部分で何か言っておくことはありますか?

モリス:今回は初めてアレンジャーさんが入ったんです。

●え?

U太:「LAUGH LAUGH LAUGH」とM-11「幸せならCLAP YOUR HANDS」ですね。今回初めてアレンジャーさんにお願いしたんです。

●あらら!

U太:「アレンジャー入れるのもいいんじゃない?」というアドバイスは以前からもらっていたんですけど、1つの経験として、見たことがない世界を見てみるのもいいんじゃないかなって。

●「LAUGH LAUGH LAUGH」と「幸せならCLAP YOUR HANDS」のアレンジは、ガラッとバンドの雰囲気が変わっているわけじゃないですよね。奥深さが出ているというか。

U太:敢えてバラードをお願いしたんです。頼んだアレンジャーさんはギタープレイヤーなので、ギターを中心に。

●まさやんどうでした?

まさやん:いろんなことを教わりました。例えばステレオだから右と左から音が出てるじゃないですか。それを1つとして考える方法というか。ギターを6弦とも歪ませて録ったら音が濁っちゃうから、右は上3弦弾いて左は下3弦を弾く…みたいな。そういう手法を教わったんです。

●なるほど。その経験は、きっとこれからの四星球の活動に活きてくるんでしょうね。

U太:そうですね。だからバラード2曲をお願いしようと。コミックソングだと、それがアレンジャーさんによってめっちゃ変わったらバンドとして違うじゃないですか。バンドのイメージもあるし。

●ブレますよね。そもそもブレている部分ですけど。

康雄:有り得ない話ではないですからね。コミックソングがちゃんとしたものになってしまうという。

モリス:「ノーフューちゃん」を「ちょっと遅くしてみようか」とか言われたらどうしようもない(笑)。

康雄:「これパンクじゃなくてバラードにしてみよう」とか言われたら本末転倒やしな。

●アハハハハ(笑)。それおもろい(笑)。

まさやん:レコーディングの日までお会いしたこともなかったんですよ。それまでメールとかのやり取りで。

●まさにチャレンジだったんですね。

U太:変えて欲しかったから、バラードとか昔の曲(「幸せならCLAP YOUR HANDS」は2007年6月リリース『ゆとり教育の星』収録)をお願いしたんです。

●なるほどね。

康雄:これを期に、昔の曲とかも新たにアレンジしてまた作品に入れたいなと思っていて。アルバムを出すたびに、昔の曲がかわいそうになってくるんですよね。ライブとか特に、どうしても新しい曲に焦点が当たるじゃないですか。そういう意味でも、また機会があれば昔の曲を収録したいなと。今から聴いたら“あのときこんなこと考えてたんや”って発見することも多いんです。今回の「幸せならCLAP YOUR HANDS」を突破口にして、今後もやっていければいいなと思ってます。そうすることによって拡がりも増すかなと。

●なるほど。今の四星球がやりたいことを全部詰め込みつつ、今後のライブへの期待も膨らませつつ、バンドの可能性が拡がるアルバムになったと。

4人:はい!

●リリース後はツアーが控えていますが、大阪は御堂会館というホールですよね。相変わらずチャレンジしてますね。

U太:違うことがしたくなるんですよね。

●ホールでやるライブはやっぱり感覚が違います?

まさやん:前にやったとき(2013年2月の徳島市立文化センターワンマン)はやっぱり感覚がちょっと違いました。

康雄:席があるからお客さんが疲れないですもんね。ライブハウスではお客さんがヘトヘトになるじゃないですか。でもホールではお客さんもしっかりと観れるから、そういうところでしっかり魅せるものにしなくちゃいけないですよね。

●確かに。

康雄:ちなみに、Zepp Nambaワンマンのオークションのお陰で、“MONSTER baSH”では花火を上げたんですよ。

●え?

康雄:ライブ中に。ネタとしては「“MONSTER baSH”ではいつも最後に花火が上がるけど、僕が今からスタッフの目をかいくぐって花火を上げてくるから、みんなはステージの方に目を向けといて」と言ってハケて、花火が上がって僕が爆発した格好で戻ってくる、という。

●1発?

康雄:3発です。

●すごい!

康雄:“OTODAMA”ではCO2を5本用意してもらって、僕たちだけのために特効の会社に来てもらいました。

●みっちゃんすごい!

康雄:だから御堂会館ではどこまでできるかわからないですけど、おもしろいことがやりたいですね。こんなこと言ったらあれですけど、バンドマンって狭いところでやってるなと思いました。

●お。

康雄:お客さんの方を向いているからいいことなんでしょうけど、“お客さんを楽しませる”という視点で考えたら、ライブハウスでももっともっとやれることがあるなって。僕ら4人で動いてるから、舞台監督さんと直接話したりするんです。特効屋さんに資料をもらって見せてもらったり。今の活動スタンスのお陰で視野を拡げてもらってますね。

●“お客さんを楽しませたい”ということを全力でやっている四星球らしいマインドですね。ではスペースがなくなってきたのでそろそろ終わりにしたいと思いますが、最後にモリスの好きな女性のタイプを教えてください。

モリス:お金を持ってる娘です。

interview:Takeshi.Yamanaka

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