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アルカラ

稲村太佑激白インタビュー 「アルカラとネコフェスとくだけねこレコーズと私」

PHOTO_稲村012002年神戸にて結成、2014年9月に7枚目のアルバム『CAO』をリリースし、現在絶賛ツアー中のロック界の奇行師・アルカラ。同バンドのフロントマン・稲村太佑は、ステージ上での強烈なパフォーマンスはもちろんのこと、ライブハウスサーキットイベント“ネコフェス”を地元神戸で2012年にスタートさせたかと思えば、地元神戸出身の後輩バンド・folcaのCDを自主レーベル・くだけねこレコーズでリリースしたりと、まさに八面六臂の活躍でシーン唯一の存在感を放ち続けている。なぜ彼は自らのバンド活動だけに飽きたらず、周りを巻き込んで様々な新しいことにチャレンジし続けるのか? 今月号では、シーンの最重要人物・稲村太佑に、世間を騒がし続け、音楽ファンの注目を集め続けるアルカラとネコフェスとくだけねこレコーズについて激白してもらった。

 

 

「そのために努力や準備せなあかんことはいっぱいありますけど、それを“おもしろい”と思ってくれる人が集まってくれて、そのみんなと“おもしろい”と思うことをやっていけるのがすべて」

●今年の“京都大作戦”の牛若ノ舞台では、PANとGOOD4NOTHINGとアルカラの出番が続いていましたよね。偶然かもしれませんが、この3者は関西でイベントを主催しているバンドなんですよね。

太佑:ああ~。

●太佑さんはアルカラをやりつつ2年前に地元神戸でライブハウスサーキットイベント“ネコフェス”を立ち上げ、今年は自主レーベル“くだけねこレコーズ”からfolcaのCDをリリースしましたよね。自己表現欲を満たすだけならバンドだけやっていればいいと思うんです。もともと神戸ART HOUSEでブッキングマネージャーをやっていたことも関係しているんでしょうけど、太佑さんは“現状を変えたい”というか、“新しいムーブメントを起こしたい”というような想いがあるのかなと思ったので、このツアー中のクソ忙しいときに恐縮ですが、インタビューをお願いしたんです。

太佑:まず“ネコフェス”については、やっぱり僕たちは神戸のバンドですから、神戸で何かをしないと意味がないと思っていて。神戸ART HOUSEの店長・西本さんや太陽と虎の松原とか、神戸ってキャラが濃い人が多い上に、バンドも濃いやつらが多いんです。10年くらい前から“これは世の中に出ていけへんやろうな”って思うような、すごくキャラの濃いバンドが居て。僕が働いていた神戸ART HOUSEはもちろん、松原が働いていたSTAR CLUBにもガガガSPやセックスマシーンを筆頭に、メガくん(メガマサヒデ)とかアナル玄藩とか、今日明日のことしか考えてなさそうなアーティストが居て。

●はい。

太佑:最近でこそようやく認められるようになって、例えばキュウソネコカミとかは器用な部分も持っていると思うんですけど、そういう時代になってきたときに、神戸の良さもっと知ってもらいたいなと思うようになったんです。“ネコフェス”をやることによって、いろんな人がライブハウスに興味を持ってくれるだろうし、行ったことがないライブハウスを知ってもらうことによって、そのライブハウスが好きになることもあるだろうし。あるいは好きなライブハウスに1回は観てみたいと思っていたアーティストが来たら、より楽しくなるだろうし。単純にそういうことが自分らでできたらいいなっていう想いと、神戸のすごさっていうかおもしろさを知ってもらったら、ツアーバンドとかももっと神戸に来てくれるようになって、より神戸がおもしろくなるだろうなと考えたんです。

●なるほど。

太佑:地方って、力技ででも誰かが来てくれないとできないこともあるじゃないですか。“ネコフェス”では武道館クラスのバンドとアマチュアのバンドが一緒にやるわけで、それによっていろんなチャンスがもっと増えていけばいいなと。それは1回やったらできるわけではないので、“ネコフェス”を続けていって、神戸のライブハウスのスタッフの良さや音の良さも含めて知ってもらいたいんです。

●すばらしい考え方ですね。

太佑:でもそれによって、僕らも刺激を受けたいんです。誰かのためだけにやっているわけじゃなくて、どこかで自分らに返ってくると思っていて。アルカラだけで「CDを作って大きくやっていこう」ということよりも、みんなを巻き込んだ方がおもしろいし、最終的に自分らも楽しいからっていう。…簡単に言えば「どうせ遊ぶんやったらみんなで遊ぼうよ」ということです。

●どうせ遊ぶんやったらみんなで遊ぼう…いいですね。子供みたいですけど、すごく大切な部分。

太佑:“ネコフェス”も最初は手探りでしたけど、だんだん手を貸してくれる人が増えてきて。1年に1回のお祭りというか風物詩みたいになっていけばいいなと思ってます。“自分らがどれだけ精一杯楽しむか”っていうところにみんなを巻き込んでいって、それが形になったのが“ネコフェス”というか。

●ということは“ネコフェス”をやっている感覚には、バンドマンというだけではなく、ライブハウスのブッキングマネージャー的な感覚もあるんでしょうか?

太佑:そうですね。自分らだけじゃなくて、観ている人たちも楽しいし、みんなも楽しいってめっちゃいい状態じゃないですか。ライブハウスに居たからこそ、例えば1バンドだけめっちゃ盛り上がっていても他のバンドがそうでもなかったら、イベントとしては成功とは思わないし。昔から「自分だけがよければいい」と言う人ってかっこわるいと思っていたんですよ。

●はい。

太佑:アルカラが上京するとき「神戸を捨てて自分らだけ東京行きやがって」と思われていたかもしれないけど、自分らが有名になることが恩返しだと思っていたし、それだけじゃなくて神戸というおもしろい土地を巻き込んでおもしろいことができればいちばん楽しいなと。

●ふむふむ。

太佑:とは言っても、自分たちの実力が伴ってないとみんなを巻き込めないじゃないですか。説得力がないと人はついて来ない。そういうのもあって、考えはあってもなかなか実力が伴わなくて悶々としていた時期があったんです。でも去年くらいから“どれだけ思ってても実行しなかったら思ってないのと一緒やな”と思うようになったんです。だから満を持してじゃないですけど、とりあえず知り合いから1人1人電話して。あんなにおもしろいイベントになると思っていなかったので、自分でもびっくりしましたけど。

●太佑さんがおっしゃるように、神戸って個性的なバンドが多いと前から感じていたんですよ。なぜなんでしょうね?

太佑:あれはね、ライブハウスの店長やブッキングマネージャークラスが全員、元バンドマンだからですよ。だからオーソドックスなバンドよりも、ちょっとひと癖あったり、変なところがあった方がおもしろいと感じるというか、フックアップされやすいというか。神戸はそういうバンドが活動するにはすごくいい土壌があるんですよね。

●確かに神戸は元バンドマンがスタッフのライブハウス多いですね。

太佑:だから僕、神戸が好きなんですよね。バンドも変なやつらが多いし。アルカラですら、神戸だったらスタンダードな方ですからね(笑)。

●だから神戸にこだわりたい?

太佑:そうですね。せっかく自分らが育った場所なので、それ以外こだわるところがあるのか? っていうくらいの話で。さっき言ったような神戸のよさって、東京に出てきたお陰ですごくわかったんですよ。東京って結果がすぐに求められるし、今日正解だったものが明日は正解じゃなくなるくらいのスピード感がある。結果重視の世界だから、何か勝負を賭けるにはすごくいい土地だと思うんです。そこで僕らがやるべきことというのは、神戸で教えてもらった“自分たちらしくやる”ということを、このスピード感のある東京でやるべきなんじゃないかなって。それが神戸にこだわることになるんだと思うんです。

●メロコアやパンク界隈のシーンはバンド同士の“みんなで楽しもう”という意識が強いじゃないですか。でもアルカラが活動している周辺って、あまりそういう意識がないですよね。

太佑:パンクのシーンとか見ていて羨ましいですもん。例えば「CD出すからコメント下さい」とか言ってくるようなバンドってすごく多いんですよ。でもこのシーンは、いざ一緒のステージでライブをしようとしたときに、メンバー以外の部分の思惑でなかなか実現しないことが多くて。

●ギターロック界隈は、早い段階から事務所やレコード会社が関わることが多いですからね。

太佑:こないだ“いしがきMUSIC FESTIVAL”に出させてもらったんですけど、BRAHMANとか10-FEETとかと一緒にライブさせてもらって。あの人たちって、バンドの意志がまずありきで、お互いがそれを認め合ってて、周りの大人たちがそれをちゃんとサポートしているっていう形がハッキリしているんですよね。バンド力があるっていうか。

●うんうん。

太佑:だから僕らのシーンでも、バンド力をちゃんと付けていかないと上手くいかないっていうか、逆にバンド力があればギターロックやポップロックのシーンでもああいう繋がりやムーブメントは作っていけると思っているんです。僕らに当てはめてみると、神戸で教えてもらって、東京で気付かされた“自分ららしくやる”ということの延長が“ネコフェス”なんです。メロコアやパンクだと当たり前にやっていることかもしれないですけど、やっとそのきっかけを作ることができたんじゃないかなって。今まで12年間アルカラをやってきて、ようやく1P目に辿り着いたというか、冒険するための装備が揃ったというか。

●それとつい先日、folcaという神戸の後輩バンドをくだけねこレコーズからリリースしましたよね。CD業界が逆風のこの時代に自らのレーベルで他のバンドのCDを出すなんて、確固とした信念がないとできないことだと思うんですが。

太佑:言ってしまえばこれも“ネコフェス”と一緒で、アルカラの表現の1つなんです。CDを作ることもライブをすることもそうですけど、アルカラってみんなで騒ぎたいんです。みんなで徒党を組んで「これおもしろいでしょ?」ってやっていく中に、レーベルも含まれていたんです。確かにレーベル業はめちゃくちゃシステマチックにやらなあかんこともいっぱいあって、今も全然勉強の途中ですけど、folcaのお陰でいっぱい勉強させてもらってるし、まだまだ足りないなと思うことも多くて。それに僕はすぐ上手くいったらあかんタイプなんですよ。

●すぐ調子に乗るんですか?

太佑:そうそう。「俺やっぱ正しい」とか思ってしまう(笑)。でも逆風が吹いてくれることによって、ほんまに自分の意志が正しいかどうかがわかりますよね。意志がなければ逆風が吹いたらすぐやめちゃうし。

●確かにそうですね。金儲けのためなら、上手くいかなければすぐに別のことをやればいいわけで。

太佑:逆風のお陰で、ほんまに残していかなあかんことがわかりやすくなると思うんです。自分らで無い知恵出して、アルカラのメンバーやスタッフ、folcaのメンバーも入れて一緒にディスカッションしたりすることがおもしろいんです。それもアルカラの一部みたいな感覚なんです。みんなで「どうやっておもしろいことしようか?」を悪巧みしているみたいな。だからこれからもおもしろい人と出会って、そういう提案をずっとしていけば、いつか形になるだろうなと思ってます。もし僕らが企業で「お金儲けのためにやろう」と決めたんだったらfolcaはやらないですから。

●ハハハハハ(笑)。

太佑:でも気持ちが自分らと近かったり、一緒に学んで闘っていける仲間とやることが、どれだけ大損こいても最終的には自分らの糧になると思うんです。

●なるほど。

太佑:だから僕らが“ネコフェス”や“くだけねこレコーズ”をやるのは、熱い部分もあるかもしれないけど、結局は今までずーっと「なんかおもろいことやろう」「誰もしないことをやろう」っていうことを常にやってきた結果なんですよね。だからアルカラも「なんかおもろいことやろう」という活動の1つなんですよね。

●ああ〜、そういうことか。アルカラが100%というより、なんかおもしろいことをしたいからアルカラをやって、その延長線上に“ネコフェス”も“くだけねこレコーズ”もある。

太佑:それがアルカラを中心に広がっていけばいいと思っているんです。それこそライブハウスをやり始めるかもしれないですよね。…そんなことしたら色んな人を敵にまわしますけど(笑)。

●ハハハ(笑)。

太佑:これから何があるかわからないですけど、常にそういうおもしろいことをやっていきたいんです。

●ところで、太佑さんのいう“おもしろい”というのはどういう基準なんですか?

太佑:うーん。なんなんですかね、これ。僕もよくわからないんですよ。リバーシブル吉岡ってめっちゃおもしろいけど「なんでおもしろいの?」って訊かれたらキチンと説明できないんです。感じるものっていうか。僕が“おもしろい”と思うものが集まっていったら、それがアルカラの表現になると思うんです。“ネコフェス”とかまさにそうなんですけど。

●はい。

太佑:僕が“おもしろい”と思っているものに対して、“おもしろい”と思ってくれる人が居る…それでいいと思うんです。でもリバーシブル吉岡みたいな人ばかりが集まったら大変じゃないですか。だからそこにはバランスが必要で。アルカラの場合は音楽という括りでそれを表現するんじゃなくて、定食で言うとご飯担当の人も居れば、味噌汁担当の人も居るっていう。間違いなくリバーシブル吉岡は梅干しとかが担当になると思うんですけど(笑)、お互いがお互いを高め合うようなおもしろいものを集めて、おもしろいことを作っていきたいんですよね。

●なるほど。そういうおもしろい人たちと、おもしろいことがしたいと。

太佑:そうですね。「おもしろい人たちと、おもしろいことがしたい」って活字にするとめっちゃ薄っぺらくなりますね(笑)。そのために努力や準備せなあかんことはいっぱいありますけど、それを“おもしろい”と思ってくれる人が集まってくれて、そのみんなと“おもしろい”と思うことをやっていけるのがすべてやと思います。

interview:Takeshi.Yamanaka

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