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coldrain

ブラッドムーンの夜に繰り広げられた狂宴

SPECIAL LIVE REPORT
coldrain “Until The End JAPAN TOUR 2014”
2014/10/8@Zepp Tokyo

 

皆既月食によるブラッドムーンが空に浮かぶ頃、それは始まった。coldrainの“Until The End JAPAN TOUR 2014”ファイナル公演、Zepp Tokyoワンマン。ステージにメンバーが登場すれば悲鳴にも似た声が全方位から沸き起こる。バックドロップに掲げられたネオンの閃光が暗闇を切り裂いてライブスタート。

拡声器を持ったVo.Masatoが叫ぶ。会場の興奮を一層掻き立てる「Aware And Awake」での激しい幕開け。巨大なコール&レスポンスがステージの5人を包み込み、1曲目からステージとフロアの意識がガッチリと1つになる。Masatoと同じように観客自らが歌い、G.Y.K.CとG.Sugiのギターに大歓声で応え、Ba.RxYxOとDr.Katsumaが生み出すリズムに合わせて揺れる。coldrainの音楽に感情を高ぶらせ、腕を振り上げ、宙を舞う。誰にも断ち切れない強固な絆とも呼ぶべきステージとクラウドの関係性は、coldrainがその規模を大きくしていくに従って、より強いものになってきたという実感がある。

Masatoは攻撃の手を一切緩めない。「前から後ろまで誰1人つっ立ってんじゃねぇぞ! 跳べ! 跳べ! 跳べ!」と煽って「Voiceless」、張り詰めたような緊張感からフロアを狂乱の渦に落とし込む「Rescue Me」、「1人残らずぶっ潰してやる! かかってこいよ!」と「No Escape」。Masatoを中心点としたステージの5人から放たれる圧倒的な迫力に、オーディエンスも負けじと理性を投げ捨てて暴れまくる。モッシュとダイバーでぐちゃぐちゃの中からすぐに1人、また1人と拳を天に突き上げてステージのカリスマに共鳴していく。

MCでMasatoは「最高のツアーをまわってきました。coldrain、バンドを始めてから1回もZepp Tokyoを目標にしたことはありません。だから今はボーナスステージみたいな、よくわかんない気持ち」と、今ツアーの充実度が伺える笑顔を見せる。その後、デビュー当時から彼らを知っている身としては嬉しい「8AM」を披露。Masatoは「この曲をやっていた頃はお客さんが20〜30人でした」と、歌とギターのみの幕開けでグッと惹きこませる。激しさや熱さだけではない、ヴォーカルの表現力は更に磨きがかかっていた。

そしてこの日のライブは、音の感触も以前とは違っていた。楽器陣が放つ音は、まるで鍛え抜いた鋼のように硬質な輝きを放って迫り来る。Katsumaの強烈な一打一打は強くて重く、RxYxOのベースは得も言われぬ粘度と奥行きを感じさせ、Y.K.CとSugiというタイプの違う2人のギタリストが作り出す音像は、まるで何もない空間に彫刻を刻み出すかのような芸術性をも感じさせる。一瞬一瞬の全てが絵になるのだ。自信も経験も、様々なものを1つ1つその手で掴んできたことが伺えるタフなステージ。彼らだからこそ辿り着いた境地から鳴らさせる音だからこそ、オーディエンスたちがこの上なく狂喜乱舞するのだろう。

ライブが後半にさしかかり、Masatoの熱は更に上がる。「声出せ! 叫べ! 暴れろ! 明日死ぬかもしれねぇからな! やり切れ!」と吠えた「Die Tomorrow」ではフロアが混乱を一層強め、その流れのままMasatoが客席エリアの柵の上で歌い始めた「Persona」では会場の空気が重く湿度を帯び始める。各々が体内に貯めていたエネルギーを一気に放出したかのような壮絶な光景のまま、「The War Is On」では全員が大合唱し、ウォールオブデスで更に熱気が立ち込めた「Fade Away」を経て、ステージから炎が吹き出る演出を前に最高の盛り上がりを見せた「The Revelation」で本編終了。

アンコールでも5人とオーディエンスの勢いは一切止まらず、いや、むしろ興奮はぐんぐんと上がっていき、ラストはMasatoが再び「最高のツアーになりました!!」とここZepp Tokyoでワンマンライブを一緒に作り上げたオーディエンスに感謝の気持ちを伝え、「最後に今年いちばんの3分半を作ってもいいですか? 2014年が明日終わってもいいように最高の3分半にしよう!!」と叫ぶ。当然のことながら最後の曲は「Final Destination」。3分半後、Zepp Tokyoを埋め尽くしていたのは数えきれないほどの振り上げられた腕と笑顔、そしてステージ上でその光景を汗だくのまま見つめる5人の笑顔。最後までただ1人残ったMasatoがマイクを通さずに「ライブハウスと音楽を愛し続けてください。よろしくお願いします」と観客に向けて頭を下げ、たくさんの拍手と歓声に包まれたまま名残惜しそうにステージを去った。

ライブを重ねるたびに大きな成長を見せつけ、そして現状に満足することなくストイックに走り続けるcoldrain。ブラッドムーンの夜に繰り広げられたその狂宴は、恐ろしいほどにタフで頼もしく、同時に人間味も存分に感じさせる痛快なワンマンだった。

TEXT:Takeshi.Yamanaka / Photo:HayachiN

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