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HOWL BE QUIET

鳥籠から解き放たれた可能性は遥か高みへと到達する

PH_HOWL自己の内面を徹底的に深く掘り下げることで“普遍”に達するかのごとき圧倒的な歌詞の世界観と、胸を掴んで離さない強力なメロディセンスを感じさせた1stアルバム『DECEMBER』。そこから1年弱の時を経て、HOWL BE QUIETが新たな作品『BIRDCAGE.EP』を完成させた。前作では「タワレコメン」を獲得し、ライブの動員も増え続けているなど、彼らへの期待値は確実に高まっている。だが、そんな期待すら遥かに超える進化を遂げた驚愕の新作は、4人の底知れぬ可能性を物語るかのようだ。この先どれほどの高みに到達するのか、予想すらできない…。

 

 

「どう頑張っても、全く後悔なく生きることってすごく難しいじゃないですか。迷うことも後悔することも全部それはすごく正しい生き方で、“人間”然としていると思うんですよ」

●昨年12月に初の全国流通盤となる1stアルバム『DECEMBER』をリリースしたわけですが。

竹縄:それまでにもシングルやライブ会場限定の自主盤を出したりはしていたんですけど、初めての全国流通盤が『DECEMBER』だったんです。結成が2010年の頭なので、そこから丸3年かけて“やっと出せた”という想いが強かったですね。

●今振り返ると、どんな作品だったと思いますか?

竹縄:結成から3年間の集大成という感覚は、自分たちの中にありましたね。あとは今思うと、“内に内に”というアルバムだったのかなと。作った当時は自分たちなりには外に向けて発信しているつもりだったし、“伝えよう”とは思っていたんです。でもそのベクトルが内側に向かっていたなっていう印象が、今振り返るとあって。

●それもあってか、今作『BIRDCAGE.EP』を聴いた時にすごく開けたような印象があったんです。

竹縄:前作と比べると、そう思う人が多いかもしれないですね。『DECEMBER』というアルバムに対しての“ネガ”な感情は一切ないんですけど、リリース後にライブや音源を聴いてくれた人の感想だったり色んな声を聞く中で、“もっと深くつながりたい”という想いがすごく強くなったんです。人間関係でもそうですけど、自分が外に向けて心を開かないと相手も心を開いてくれないわけで。お互いに心を開かないと、深い部分でつながれないじゃないですか。

●確かにそういうものですよね。

竹縄:それは音楽についても同じだと思うんですよ。そういう意味で『DECEMBER』は“内に内に”というものだったけど、それを客観的に見たリスナーの人たちが反応してライブを観に来てくれたという感じだったと思うんです。だからキャッチボールというよりは、一方通行だったなという感覚が少しあって。

●リスナー側が好意的に反応して、興味を持ってくれたというか。

竹縄:そういうことを経て、“今以上に深くつながりたいな”という想いを前作リリース以降の1年弱はすごく抱いていたんです。それがそのまま“外に発信する”ということにつながって、今回の曲にも出ているんだなと自分では思っています。

●全国流通盤を出したことで、色んな人の反響を聴けたことが今作にもつながっているのでは?

竹縄:そこはすごく大きいですね。自主盤しかなかった頃は自分たちの音が届く距離は、目に見える範囲だけだったんですよ。ライブで目の前にいるお客さんにしか、自分たちの音楽は届かないから。俺らが知らない人も俺らのことを知っているっていう、一方通行な出会い方がなかったんですよね。やっぱり音楽をやっている以上は多くの人に知られたいし、伝えたい、つながりたいという気持ちは強いんです。でもその反面、(多くの人に知られることへの)恐怖や不安みたいなものもあって。

●色んなことを想像して、考えすぎてしまうタイプなんでしょうか?

竹縄:「そんな細かいことを気にするの?」って言われるくらい、気になっちゃう人なんです。一度気になったことを放っておけないというか。自分の中で全てに合点がいかないと前に進めない…っていうタイプの、すごく面倒くさい人間なんですよ(笑)。

●でもそうやって1つの物事に対してすごく深く考えるタイプの人間だからこそ書ける歌詞にもなっているのかなと思います。たとえば“君と僕”という1対1の関係性を歌っていても、すごく普遍的なところまで掘り下げられているというか。

竹縄:“孤独を歌う”ということに対してもそうですね。そもそも他の誰かがいるから、“孤独”という状況が生まれるわけじゃないですか。だから“僕と君”なしでは“孤独”という概念については語れない。しかも人それぞれが感じる“孤独”は違うものだから、簡単に結論付けることもできないんですよね。俺は「みんなこうだよね。お前らのことはわかってるぜ」って押し付ける感じで、“孤独”を歌うわけじゃなくて。「俺が思う“孤独”っていうのはこういうことなんだよな」っていうのに対してリスナーが共感してくれたらいいなという感じで歌詞を書いているんです。

●そういう感覚に共感してくれる人が多いんだということも、前作を出して実感できたのでは?

竹縄:『DECEMBER』では“恋愛”というフィルタを通して歌っている曲が多かったんですけど、自分の感情の中では“孤独”や“1人”というテーマに占められている部分がすごく大きくて。でも“恋愛”というフィルタを通したことで、単に「ラブソングを歌うバンドなんだな」というふうに捉えられてしまったところもあったと思うんです。自分たちとしては“恋愛を歌おう”と決めて作ったアルバムではなかったのに、そういうふうにも捉えられてしまうんだなと。

●あくまでも“恋愛”というフィルタを通して表現しただけで、ラブソングを歌うだけのバンドではない。

竹縄:そういうイメージを今回は覆したいという気持ちがすごくあったので、“恋愛”じゃないテーマについて歌いたいなと強く思っていて。“恋愛”じゃない部分で、“孤独”や“生きる”ということを歌いたかったんです。バンドとして、1つのことだけに括られたくないという気持ちはすごくありますね。

●今回は音楽的な面でも大きな変化を感じました。前作はピアノを使いつつも、もっとギターロック寄りのサウンドでしたよね?

竹縄:実は『DECEMBER』では元々ギターでやっていた曲を、アレンジの段階でピアノに変えたりもしていて。結成から丸3年分の自分たちの曲をもう一度見つめ直して、色々と試行錯誤して作ったものだったんです。だから良い意味でも悪い意味でも、すごく泥臭いアルバムだったと思うんですよ。今回はそこから“変わりたい”という想いがあったし、もっと前に進みたいという気持ちがすごく強かったんですよね。言葉についても音楽的にもそういう気持ちが強かったので、前作と比べるとすごく変わったんだと思います。

●今回は曲作りの方法から違ったんでしょうか?

竹縄:『DECEMBER』もそうですけど、自分は昔からギターで曲を作って、それをバンドに持っていく形が多かったんです。でも今作の収録曲は全部ピアノから作ったものだということに、完成してから気付いて。それが自分の中では、すごく革新的だったんですよ。ピアノって、それ1つでアンサンブルが組める楽器じゃないですか。だからギターで作るのとピアノで作るのとでは、歌の譜割りや乗せ方が全然違っていて。そういう根本の曲作りの段階から違ったというのが、自分の中ではすごく大きかったですね。

●前作が評価されている状況にもかかわらず、1曲目の「From Birdcage」からいきなり雰囲気が変わっていたことに驚きました。

竹縄:やっぱり新しいものを常に追求していきたいし、提示していきたいんです。このEPより前に作った何曲かの中には、もう少し『DECEMBER』のイメージに近いものもあったんですよ。それも良かったんですけど、“今はもっとこういうことをするべきなんじゃないか?”という話し合いをして出てきたのがこの5曲でした。

●収録曲の制作は『DECEMBER』リリース以降?

竹縄:そうですね。一番最初にできたのは、M-2「千年孤独の賜物」かM-3「ライブオアライブ」のどちらかだったと思います。

●「ライブオアライブ」は、マンガ『テンプリズム』(曽田正人)とのコラボから生まれた曲なんですよね?

竹縄:『テンプリズム』の編集を担当している方がHOWL BE QUIETを気に入ってくれて、コラボを提案して頂いたんです。その時に「ライブオアライブ」を聴いてもらったら「この曲でコラボしたい」と言って下さって、そこから話が進んでいきました。でも『テンプリズム』に寄せた歌詞を書こうとは、微塵も思っていなくて。自分たち然としているものでコラボすることに意味があると思ったから、向こうにイメージを寄せすぎちゃうと意味合いが変わってしまうと思ったんですよ。

●『テンプリズム』のイメージに合わせて、曲を作ったわけではない。

竹縄:曲の核となるものは最初から決まっていたんですけど、最初はまだボヤッとしていた部分が『テンプリズム』を読んで明確になったりはしましたね。そういう部分でも、すごく楽しいコラボでした。

●すごく壮大なスケール感の曲だと思いました。

竹縄:確かに聴く人からしたら、今までで一番壮大な曲かもしれないですね。でも壮大にしたいと思って作ったわけじゃないんです。曲が求めるものをただ追求していったというだけで、曲に寄り添って色んな試行錯誤をした結果がこの形になった。“面白いことをしたい”という気持ちがすごく強いので、ティンパニを入れてみたりだとか。そういうアレンジにすることへの恐怖や不安もあったんですよ。でも“今、俺らがこの音楽を鳴らすことに意味がある”という気持ちが勝ったから、こういう曲ができたんだなと思っています。

●「ライブオアライブ」でも“命懸けで戦うんだ”という歌詞がありますが、今回は“生きる”というのも1つのテーマになっているのかなと。

竹縄:でも漠然と“生きなきゃダメだよ”ということを歌いたいわけではなくて。どう頑張っても、全く後悔なく生きることってすごく難しいじゃないですか。迷うことも後悔することも全部それはすごく正しい生き方で、“人間”然としていると思うんですよ。『DECEMBER』を出してからの1年弱はそういうことを考えていた時期でもあって、だから歌わずにはいられなかったというか。大きな意味じゃなくて、個人レベルの“生きる”ということを歌いたいなとすごく思っていたんです。

●M-5「救難戦争」にも“今日を生きてる”という歌詞が出てきますが、この曲は何かを吐き出している感じがすごくあって…。

竹縄:「救難戦争」は特に自分に向き合って書いた曲だったから、いざ完成して形になった時に聴けなくなっちゃって。俺が俺に対して向き合って言っていることだから自分にすごく刺さっちゃうのは当たり前なんですけど、えも言われぬ感情になってそのまま聴いていられなくなるような感覚がすごくあったんですよ。“吐き出した”という感覚はすごく強かったですね。

●そこから1曲目に戻って「From Birdcage」を改めて聴くと、浄化されるような感覚を覚えます。

竹縄:実際、自分たちの中でも2曲目の「千年孤独の賜物」から順に「ライブオアライブ」「A.I」と来て「救難戦争」まで通過してきた人が1曲目に戻ってきて、こういうことが言えているんだねっていう話はしていたんですよ。「From Birdcage」に戻ってくることによって、「救難戦争」も救われる感じがするというか。

●『BIRDCAGE.EP』というタイトルを決めたのは、そういう全体のイメージができてから?

竹縄:「ライブオアライブ」のイメージを人から訊かれた時にパッと浮かんだのが、虹色の鳥たちが飛び立っていくような姿で。なぜ“飛び立っていく”のかと自分で考えてみたら、1ヶ所に集まっていたからだろうなと。そして、それは鳥籠に閉じ込められていたからだと思ったんです。一番最初に浮かんだイメージから過去を辿るようにして、“BIRDCAGE”という言葉が出てきたんですよ。その言葉が出てきた時にはもう他の曲がいくつかできていたんですけど、そこで驚くほど合点がいって。「あ、この曲たちは“BIRDCAGE”じゃん!」となりました。

●自分の考えていたことにちょうど当てはまるタイトルが浮かんだ。

竹縄:そうなんですよ。無意識に浮かんだから、余計に嬉しかったですね。

●ここまでの2枚を聴く限り、次はどんな作品になるのか全く予想できないというか。だからこそ、すごく楽しみでもあります。

竹縄:やっぱり予測できないバンドのほうが、興味は湧くじゃないですか。今の音楽シーンでどんな音楽が流行っているかは全然意識していないけど、自分たちの音楽がそこには乗っていないという感覚はあって。乗る必要もないし、「自分たちの音楽として面白いものを追求することがHOWL BE QUIETだよね」という話はメンバーともよくしているんですよ。だから、そういうものでありたいなという気持ちはすごく強いですね。

Interview:IMAI

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