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オトループ

共感を呼ぶ言葉が胸打つメロディに乗り、拡散し続けていく

PH_otoloopLINEの“既読”を題材にしたリード曲「Re」がTwitterなどのSNSで大きな広がりを生んだ前作『オトノベル』から、約10ヶ月ぶりの新作をリリースする3ピース・ギターロックバンド、オトループ。前作の反響によって自信を深められたことで今回、Vo./G.纐纈は自分自身の内面により深く潜って歌詞を書けたという。自らの実体験を元に描かれるリアリティに満ちた歌の世界観は、さらに多くの人から共感を呼ぶに違いない。いずれも聴き手が自身を投影できるような8つの物語を収めた『カタリベシンパシー』を機に、彼らの名はさらなる拡散を見せていくだろう。

 

 

 

 

「自分の情けない部分だったり、今まではカッコつけて見せたくなかった部分も含めて、嘘のない言葉を1つ1つ選んで書いた作品になりましたね。やっぱりLINEで既読になっているのに返信が来ないと、気になって何回も読み返してしまったりもするから(笑)」

●LINEの“既読”を題材にした、前作『オトノベル』のリード曲「Re」はすごく反響があったそうですね。

纐纈:「Re」はPVを作って公開したこともあって、色んな人が反応を返してくれましたね。「共感できる」っていう意見を多く頂けたことが、自分の中で今までにない喜びだったんです。そこで“より共感してもらうためにはどうしたら良いか?”ということを考えるようになって、“自分自身の内面にもっと深く潜って歌詞を書こう”というところから作り始めたのが今回の作品でした。

●前作の反響が大きかったことで、次を作るモチベーションにもなった。

纐纈:僕らの歌を聴いて反応を返してくれる人がかつてないほどに増えたので、それがすごく自信にもなって。“大丈夫だ!”と思えるようになったことが、自分の中では大きかったですね。ものすごいパワーを頂いているというか。自信が付いて、心の中が変わってきた部分は大きいと思います。

●自信がついたことで、今回は自分の内面をより率直にさらけ出せているのかなと。

纐纈:自分の情けない部分だったり、今まではカッコつけて見せたくなかった部分も含めて、嘘のない言葉を1つ1つ選んで書いた作品になりましたね。やっぱりLINEで既読になっているのに返信が来ないと、気になって何回も読み返してしまったりもするから(笑)。そこは自分の性格もあるとは思うんですけど…。

●M-1「A型症候群」という曲名の通り、A型なんでしょうか?

纐纈:まさにA型です(笑)。歌詞はほぼ僕の実体験を元に書いていて。だから今作は、僕の分身のような8曲になっていますね。自分でも「ああ、そうだな」と思えることが、歌詞のテーマを選ぶ基準になっているんですよ。自分自身も言って欲しいことや感動できることを軸にして書いています。

●まず自分自身が共感できたり、感動できることが大事というか。

纐纈:もちろん聴いてくれる人に共感して欲しいという気持ちはどんどん強くなっているんですけど、だからといって人の意見をただ取り入れるという感じではなくて。自分自身が感動したり興奮できるものを追求した結果、人にも共感してもらえるものになると信じているんです。だから今回はそういう方向性で、自分の内面により深く潜っていった感じですね。

●自分の奥深くまで潜っていった結果、出てきた言葉が他人にも共感できるものになっている。

纐纈:もちろん嫌いな人もいるかもしれないというのは覚悟していて。でも“僕はこういう歌を歌っています”というのを前作よりもっと強く提示したかったので、まずは今作を聴いてから判断してもらえたら嬉しいなと思っています。

●自分の情けない部分を見せることに躊躇はない?

纐纈:最初は躊躇もあったんですけど、書き始めるとすごくスルッと言葉が出てくるんですよ。そういう書き方だとすぐに歌詞ができるので、面白くなってきて。前作の時よりも、今はすごく楽しんでやれていますね。

●M-3「DAKARA DAKARA」も情けない部分をさらけ出している曲ですよね。

纐纈:この曲もほぼ僕自身の考え方を書いていますね。やっぱりネガティブになりがちだったりするから。実際に言ってしまえばもう大丈夫なんですけど、そこまでに色々と考え過ぎちゃって踏み出せなかったりするなと思って。そういうところをテーマに書いた曲です。

●M-2「容疑者アカ」の歌詞のように、Twitterのタイムラインとかも見てしまう?

纐纈:すごく見てしまいます。LINEで返事が返ってこない人がTwitterでつぶやいていたりするのを見ると、気になっちゃうので…(笑)。でも相手のことが好きでしょうがないという気持ちが根本にあって、だからこそ気になっちゃうという歌なんですよね。

●ラブソングが多いのは、恋多き人だから?

纐纈:それもありますね。すぐ恋してしまうタイプだし、常にときめいているのが好きなんですよ。自分でも思い入れがしやすいテーマということで、どうしてもラブソングが多くなってしまいます。

●M-5「フタリセカンド」もラブソングですよね。

纐纈:(付き合って)2年目の2人を描こうということで書いた曲ですね。出会った頃のときめきからは気持ちが変わってくるんですけど、それとはまた違う温かい気持ちで今は一緒にいるっていうのをテーマに書きました。

●この曲を聴いた時に、もしかしたら前作に1年目の2人を描いた曲もあるのかな…と思ったりしました。

纐纈:1年目の2人とまでは言っていないですけど、恋愛初期のどうしようもないワクワク感を描いた「プライマリー」という曲はあります。リスナーの方から「この曲とこの曲をつなげると1つの物語のように聞こえる」という意見をもらったりして、「そういう聴き方もできるんだな」とこっちが気付かされることもあるんです。そういうところに喜びを感じたりもしますね。

●色んな解釈の余地がある曲になっているというか。

纐纈:そうなっていたら嬉しいですね。やっぱり世に出て聴いてもらわないと、答えがわからない部分もあるから。人に言われて「そうなんだ」と気付くこともあるので、僕はただ「良いものを」と思って書いています。

●人と接する中で歌詞のテーマを見つけたりもする?

纐纈:実際、人と会話をしている時にそういうものをもらえることが多いんです。歌詞のテーマについては常にアンテナを張りつつ、日々を過ごしていますね。M-6「ニシカ」は友だちから聞いた話が元になっていて。“「あなたにしかこんなこと話せない」と言われると、その人のことが気になっちゃう”という話を聴いた時に、“ニシカ”という言葉が耳に飛び込んできたんですよ。

●“あなたにしか”という言葉から“ニシカ”だけを切り取る視点が面白いなと思います。

纐纈:その響きがすごく面白いなと思って、タイトルから作った曲なんですよ。友だちの話を聴いていて“ニシカ”という言葉が耳に入ってきた瞬間に「これだ!」と思ったんです。自分の中でもバシッと決まった感覚がありましたね。

●楽曲制作は他もそういう感じで、スムーズに進んだんですか?

纐纈:言葉選びはじっくりやっていたので、ものすごく時間はかかりました。あと、歌を大事にしようという気持ちが強くなったというのもあって。以前はメンバーでセッションしながら作っていたので、色んな音をどんどん詰め込んで最後に削ぎ落としていくような作業が多かったんです。でも今回は歌を大事にしたいという理由からデモの段階でイメージをできるだけ仕上げたものをメンバーに聴いてもらって、その上でスタジオに入って練り上げていく感じでしたね。

●曲作りの方法も変わったと。デモの段階から、自分の中で完成形のイメージがある?

纐纈:あります。だから今回はまず自分でドラムもベースも打ち込みで入れて、“自分はこうしたい!”というものを今までよりも強く提示するようにしたんですよ。もちろん違う意見があれば聞くんですけど、より自分の意見を強く出すようになった作品ではありますね。

●纐纈くんの意見を強く出しながらも、ちゃんとバンドとしてのグルーヴは音に出ていると思います。

纐纈:自分で聴いていても気分がアガって「最高だ!」と思えるものを、サウンドには閉じ込めるようにしているから。やっぱりバンドなので、メンバー同士の化学変化に期待している部分はあって。

●メンバーにも歌詞についての意見を求めたりする?

纐纈:基本的に歌詞は僕に任せてくれているんですけど、たとえば「こういう時って主人公はどう思うのかな?」という質問を投げかけたりして、メンバーにアドバイスや意見をもらうことはあります。

●自分だけの視点にならないような工夫をしているわけですね。

纐纈:個人的な世界観になりすぎると、共感してもらえないんじゃないかって思うから。できるだけ色んな人の意見を聞くようには心がけています。人の意見を聞くことで、歌詞の結末が変わったりもするんですよ。もらった意見を自分の中で噛み砕いてみると、「あ、そうか」と思うこともあって。前はもっと独り善がりで書いていた部分もあったんですけど、そのあたりは良い意味で開けてきたというか。芯はありつつも、自分の中で変わってきた部分はありますね。

●今回の『カタリベシンパシー』というタイトルに込めた意味とは?

纐纈:僕がカタリベ(語り部)になって、物語を提示したいという気持ちからこのタイトルにしました。全曲が出揃った時に、今回はそういう気持ちのこもった曲が多いなと思ったんですよ。

●歌や物語を届けたいという気持ちは、ライブにも変化をもたらしているんじゃないですか?

纐纈:“歌をどうやって伝えるか”という意識が強くなってきたことで、ライブの見せ方も考えるようになりましたね。マイクを変えてみたりとか、そういう部分にもすごく気を遣うようになって。もちろん音のバランスも関係しているけど、本気で伝えようとしているかどうかというのは大きいと思うんですよ。ライブについてもそういうところまで細かく話し合うようになったので、バンドとしても成長できたかなと思っています。

Interview:IMAI

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