音楽メディア・フリーマガジン

jamming O.P.

ブッ壊れるほど呑み込んだ全てを音に昇華した10年目の1stアルバム

PH_jamming_main横浜発の4ピースバンド“jamming O.P.”が、結成10年にして初のフルアルバム『broken words refuse me』を完成させた。2004年に結成するも2007年には解散、その2年後に再結成を果たすも一貫してマイペースな活動を続けてきた彼ら。500枚を完売した1stシングル『photograph/calling my name』収録の2曲を再レコーディングしたほか、結成当初からの楽曲も含めた全15曲はその実力とオリジナリティを証明するのに十分すぎるものだ。メタル〜ハードロックからメロディックパンクやカオティックハードコアまで呑み込んだ独自性とフックを併せ持つサウンドは、ジャンルを超えて幅広いリスナーの胸を撃ち抜くだろう。

 

●どうでも良い質問からで申し訳ないんですけど、“チャック”という名前は何が由来なんですか…?

チャック:それは諸説あってですね…。まぁ、今度呑みながらでも…。

●そのくらいどうでも良い話ということですね(笑)。

滝:何でチャックなのか、ウチらもよくわからないんですよ。諸説どころか1説も聞いたことがない(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●では、jamming O.P.というバンド名の由来は?

滝:“jamming”という部分はタジくん(田島)が考えてきたんですけど、色んな意味があって。それだけだと寂しいよねということで、チャックが「“O.P.”が良いんじゃない?」と。

●“O.P.”にはどんな意味が…?

チャック:これも諸説あって…(笑)。

●もういいです(笑)。そこは深く考えるなと。

太田垣:最初はバンド名が“チャック”だったんです。ボン・ジョヴィとか、ヴァン・ヘイレンやドッケンみたいな感じですね。一番最初のライブは実際に“チャック”という名前で出たんですけど、チャックが「紛らわしいから嫌だ」と言ったので変えたんです。

チャック:仮で付けたようなバンド名でそのまま行くのは、絶対に嫌だと思って。

●ヴァン・ヘイレンやドッケンの名前も挙がりましたが、音楽性にはハードロックやメタルからの影響も伺えますよね。

太田垣:僕は10年くらい『BURRN!』を定期購読していました(笑)。でもメンバーそれぞれが好きな音楽を特にルールは決めずに自分たちなりにアレンジして、曲を作っていったらこうなったという感じなんです。もちろん好きな音楽は近い部分もあるけど、1人1人に「他にこういうのも好きなんだよね」というものがあったりして。

滝:俺とタジくんは最初、メタルがすごく苦手で…。ちょっと抵抗があるくらいだったんですけど、2人(太田垣とチャック)はすごいメタラーだったのでそこから教わってきました。

田島:俺は今でもまだそんなに…。

●ハハハ(笑)。

滝:タジくんは結局、あんまりメタルが好きになれなかったんです(笑)。俺は好きになりましたけどね。

田島:俺はLUNA SEAから音楽に入ったんです。中学の時にはコピーバンドもやっていました。そこからHi-STANDARDやメロコアを聴くようになって。その後にthe band apartにハマって、ちょっとオシャレな音楽を聴くようになったところからジャミロクワイあたりまで好きになったんです。だから、メタルとは正反対のものが今は好きですね(笑)。

●趣味が正反対でも、一緒にバンドをやれている。

田島:jamming O.P.の曲でモロに「メタルっぽい」とか「ジャミロクワイっぽい」というものはほぼないと思っていて。エッセンスとしては入っているけど、曲自体が何か1つのジャンルっぽいものはないんです。1人1人が好きな音楽をやることで曲になっているので、自分は好きなように弾いているだけというか。

●だから今回の1stアルバム『broken words refuse me』もバラエティ豊かになっているんでしょうね。結成から10年の間に作った曲が入っている?

太田垣:10年目とはいえ、アルバムを作り始めたのは3年前なんです。だから実質、7年分の曲というか。

滝:しかも2年くらい解散していた時期もありましたからね…。だから4〜5年分くらいの曲なんです。

●“10年間の集大成”というわけではないと(笑)。

田島:5年くらいの集大成です(笑)。

滝:4〜5年しか、まともな活動はできていないんです。

太田垣:他のバンドと比べると、活動はだいぶ少ないよね…。

●ちなみに一度解散しているのは、大学を卒業して就職したとか…?

太田垣:…いや、誰も就職しなかったですね(笑)。

チャック:俺らはもう…クズだったので(笑)。

田島:就活もせず…。

太田垣:就活したら負けだと思っていましたから(笑)。

●ハハハ(笑)。それは音楽で食っていこうという意識があったから?

太田垣:解散前はそういう気持ちもありました。ずっとバンドをやれたら楽しいなと思っていたけど、(解散によって)それがなくなっちゃったことで「どうしようかな?」となって…。

●解散の理由は何だったんですか?

滝:それは単純に、俺が9mm Parabellum Bulletでメジャーデビューするからっていうことでした。

太田垣:そこから(滝以外の)3人で別のバンド(ALL IS VANITY)を始めたんですけど、途中で俺が辞めることになって。

チャック:そのバンドを解散するとなった時にやっと「そろそろ、ちゃんと仕事しようか」と(笑)。

滝:そこで青春にピリオドが打たれて、やっと大人になったんです(笑)。

●そんなことも経て、2009年にjamming O.P.が再結成を果たすわけですが。

滝:「再結成するぞ!」と言ってから2〜3ヶ月くらいは、「いや〜、復活して良かったね〜」という話をしながら呑んでいただけなんですけどね(笑)。

チャック:復活したっていうことで、1回落ち着いちゃっていたんですよ。受験が終わって、ダメになっちゃう大学生みたいな(笑)。

田島:とりあえずライブを1本やって、(滝から)「今なら参加できるよ」と言われた時にまたライブをやっていました。だから最初からガッツリ「この日とこの日にライブをやろう」と決めるわけじゃなくて、1本やったところでいったん活動が終わる感じなんです(笑)。

●1回1回で活動が完結するというか。

田島:次のライブが決まるまではスタジオにも入らないし、練習よりも呑みのほうが大事っていう(笑)。

太田垣:金曜日になると、チャックから「どう?」っていうメールが来るんです。しかもみんな、わりとその日はフワッと空けているんです(笑)。

滝:「もしかしたら…?」と思って、待っています。

●待っているんだ(笑)。

チャック:みんなから反応がない時も、滝からは「行けるよ」って返ってくることが多くて。

滝:俺は呑み会に出られない時期も多かったんですけど、チャックが1人になっちゃいそうな危機を2〜3回は救っていますね(笑)。

太田垣:上手いことできているんですよ。

●バンド活動が円滑に進んでいると。日常的に曲作りをしていたりはしない?

太田垣:元になるネタを作ったりはしています。ライブ前でスタジオに入っても、ライブ自体の練習は1時間くらいしかしなくて。あとはずっと曲を作っています。そういう時に「こんなの作ったんだけど…」っていう感じでネタを出したりして、最近はそこから作ったりもしています。

チャック:でもそういう作り方では、ほとんどできていないよね…?

滝:1〜2曲くらいはできたかな? 本当に1日で仕上げないと忘れちゃうので…。

太田垣:次回のスタジオに行ったら、誰も覚えていないっていう(笑)。

●ハハハ(笑)。

滝:今回のアルバムには2曲だけ新曲が入っていて。M-3「photograph」とM-15「keep you see my eyes」なんですけど、それは1日で仕上がったからみんな覚えていたんです。

田島:その2曲以外は、全部昔からあった曲なんです。それを改めて録り直したという感じです。

●作品を残したいという気持ちはあった?

太田垣:「アルバムを作るぞ」という意思はすごくありました。せっかく良い曲を作ってきたと思っているので、それを良い音で作品に残して1つの区切りにしたいなって。その気持ちがあったから、3年間かけて何とか完成にまで至ったんだと思います。

●作ろうと思うキッカケは何だったんですか?

滝:今まで録ったデモは音も悪かったので、そういうものも全部録り直そうということは最初からみんなで話していたんです。それでレコーディングの日程とかも考えていたんですけど、先にチャックが1人でドラムだけ全部録ってきちゃって(笑)。

チャック:録ったなぁ…。次の日眠くて、仕事をサボったもん(笑)。

●最初にドラムが全部録れるということは、曲としての形はどれも完成していた?

滝:歌詞だけは(太田垣が)「ちょっと書き直したい」と言っていたんですけど、それ以外は全部完成していましたね。だからレコーディングも基本的にサクサク進んで。

●楽曲は激しい中にもキャッチーさを感じるのが特徴かなと思ったんですが。

太田垣:やっぱりキャッチーな音楽が好きだから。カオティックハードコアとかも好きだけど、そういう曲の中にキャッチーな要素やメロディが入っているものが自分は特に好きなんです。だから意識はしていないんですけど、自然とそうなったんだと思います。

●滝くんのギターもすごくキャッチーですよね。

滝:それはいつでもどこでもメチャクチャ気にしていて。現役時代はかなり頑張って考えていたので、その時の努力が今も活きているなと思います。

田島:キャッチーであることは自分も心がけていて。歌に負けないくらいのベースラインが弾きたいとは思っていますね。

●遊び心や実験心みたいなものも感じられるし、やりたいことが色々と詰め込まれている作品というか。

太田垣:実験心はすごくありますね。

滝:ある程度は「勝手にやってもらって大丈夫ですよ」という感じなんです。全体としてやりすぎた形にならないようには、目を光らせていますけど(笑)。

●滝くんが全体を見渡して、まとめている?

滝:昔からそういうことがやりたかったし、やり甲斐があるというか。自分も実験的なことがやりたいので、そういうところも含めた上で良い形にできたらなと思っていて。具体的にどこを自分が作ったかは気にしていないんですけど、それは絶対に1人じゃ作れないものだからなんです。こんな大量のアイデアを出すのに、自分1人だったら何年かかるんだっていう(笑)。そういうことができるのは、jamming O.P.の楽しいところですね。

●曲作りはどうやっているんですか?

滝:歌詞を書いている太田垣が、基本的に歌とメロディは作っています。それをみんなでアレンジしていくんですけど、みんなで作っている意識が強いので作曲は“jamming O.P.”と表記していて。

太田垣:歌は曲を構成する1つの要素に過ぎないし、4分の1なんですよ。

●ではどれだけ売れても印税は4分割ということで…。

太田垣:今作に関してはそうですけど、死ぬほど売れたらわからないです(笑)。

田島:というか死ぬほど売れない限りは、俺らの手元には一銭も入ってこない(笑)。

●えっ、それはどういうこと…?

田島:全部を呑み代に使っちゃうから(笑)。あと、年に1回メンバーと友達何人かで一緒に旅行するんです。その経費は全部、jamming O.P.で奢るんです。

滝:活動費という名で、遊びに全て当ててゴージャスなバンド活動をするっていう。そして、遊ぶためにまた曲作りをして…という感じです。

チャック:また1年頑張りますか!

●ハハハ(笑)。そうやって活動を楽しんでいるから、ずっと続けられるんでしょうね。

田島:楽しくなくなることはないんじゃないかな…?

滝:酒を呑んでいれば、楽しくないはずはないですから(笑)。

チャック:肝臓がブッ壊れるまでは呑みたいね。

滝:肝臓がブッ壊れたらヤバいな…。それは解散の危機だ。

一同:ハハハ(笑)。

Interview:IMAI
Photo:橋本 塁(SOUND SHOOTER)

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