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Marmalade butcher

予測不能な異才が放つ、 “超絶”モンスターサウンド。

sample_smoke01_small_logo自らを“モテるインスト”と称し、ポストロックやマスロックのみならず、あらゆる音楽的要素を吸収するMarmalade butcher。予測不能なその音楽性は、主宰・にえぬの作り出す高難度な楽曲とメンバーの卓越したスキルが絡み合い、まさにモンスター級のサウンドとなっている。そんな彼らがさらなる進化を見せつけた『Uteruchesis』を11/26にリリース。彗星のごとく現れ、未だ謎のベールに包まれた異才たちに初インタビューで迫った。

 

 

●元々2010年から、にえぬさんのソロがきっかけでMarmalade butcher(以下マ肉)が始動されたんですよね。

にえぬ:そうですね。だいたい4年くらい前から曲を作り始めました。その頃は1人で宅録をやっていて、YouTubeやニコニコ動画に音源を上げたり、コミックマーケットやM3という同人即売会で音源を売っていましたね。

●ソロでやっていた時と今のバンド編成での活動はどう違いますか?

にえぬ:作品自体の方向性に変わりはないですね。ずっとこの感じで、1人で活動している時から芯にあるものは変わらずに音楽を作っていました。バンドになってから多少は変わったけど、根っこにあるサウンドというか、やりたいことは変わらずにやっていますね。バンド編成でライブを始めた当初は同人バンドみたいなところがありました。

●そうやって活動をしていく中で、バンドに対する本気度が変わっていった?

大谷:規模が大きくなって、より多くの人に聴かれたり、観られたりするとなると気持ち的にも「あ。もっとちゃんとやらなきゃ」みたいなところが出てきて。良い感じのプレッシャーがあったんですよ。

●マ肉は、いわゆるバンドマンとは違うスタンスで活動しているような印象があったんですよね。

J氏:僕は以前バンドをやっていたんですけど、演奏に対するスタンスがバンドをやっていたときと全然違うんですよね。にえぬさんが作った曲を演奏する分、すごいクオリティの高いコピーバンドみたいな感覚でいます。そういう所で演奏に対する熱意というか、産み出すという感覚は周りのバンドマンの方が強いんだろうなと感じます。

●とはいえ、あの高難度の楽曲を弾き切るのはすごいことだと思うんですけど。

J氏:腕立て伏せみたいな感じですかね? 最初のデモ曲をもらう時に「できるわけねぇだろ!」ってだいたいキレてましたから(笑)。昔は本気でキレていたけど、2年間続けて気づいたのは「どうせ(練習すれば)できるようになるだろう」っていう。

●アーティスト写真でマスクを被られていますが、M-13「Anima」のMVにも使われていますよね。

にえぬ:「Anima」を作る前からMVの話も進んでいて、マスクを作るっていう話になっていたんですよね。

●これからは覆面バンドとしてやっていくということ?

J氏:いや、あれは…もう封印です(笑)。マスクは1回やったからいいです。

にえぬ:またどこかで使うかもしれないですけどね。

●そういう企画をノリでやってしまうところが強いんですかね?

J氏:あ、バレましたか(笑)。それが分かっちゃうと、このマスクを作った理由もなんとなく理解できてしまう(笑)。ノリと勢いですね。

にえぬ:いつもノリのことを“お告げ”って言ってるよね(笑)。

J氏:そう、お告げは大事。夢で(お告げの内容を)見たらパッと起きて「ちょっと、今お告げ来たんだけど」ってメンバーに電話するんです(笑)。

●ははは(笑)。じゃあ天からのお告げでマスクを作ったと。

にえぬ:マスクもそうだし、今回のCDの特典同人誌「MA-ZINE」もそうだし。

J氏:これも思い付きでしたね。

にえぬ:ただ単に「冊子が作りたい」っていう。中身とかあまり考えていなかったですね。

●今作『Uteruchesis』ですが、タイトルの由来はなんですか?

にえぬ:「子宮」という意味の単語“uterus”と、“Lachesis”というギリシャ神話の運命の女神の名前を繋げた造語なんです。元々このアルバムは“肉体的なもの”を作りたいと思っていて。魂は心臓に宿るというよりも、子宮に宿る気がするんですよ。言葉にしにくいんですけど「“運命”と“子宮”。これは何か生まれそうだな」って。

●作品を作る時に子供を産むような感覚があるということ?

にえぬ:それとはまた違うんですよね。作った曲に対して、言葉にできないことが多いんですよ。曲名にしても、テーマにしても、ざっくりと全部に意味はあるんですけど、深い部分は僕の中の“僕”しか知らないというか。だから僕は自分の曲を語るのはあまり好きじゃないんですよね。そういうのはリスナーが聴いて「これはこうなんじゃないか?」って楽しんでもらえれば良いんじゃないかなと思っています。

J氏:確かに、にえぬさんの作る曲は子供を産むというより、自分の中から引きずり出している印象がある。

にえぬ:自分の分身のようなものなんでしょうね。楽曲については自分でも深く語れない部分が多いんですよ。

●今作を聴いた印象として、マスロックとかシューゲイザーだけというよりも、もっといろんな音楽的な要素が絡み合っている気がするんですよね。

にえぬ:それはごもっともですね。僕としても「自分たちのジャンルとは?」って考えるところはあります。YouTubeに上がっているMVだけ観ると、同じような曲をやっていると思うかもしれないけど、アルバムを聴いたらそんなことはないんですよ。僕は曲が全部同じような、一辺倒なインストのロックを聴いてもすぐ飽きてしまうので。まずは、自分が聴いて良いと思うものを作らないといけない。

J氏:当たり前ですよね。自分が聴きたくもないものは作らない(笑)。今作は本当に自分自身が好きな音楽のために力を出せたので、今までで1番好きなアルバムになりました。

Interview:馬渡司

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