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lynch.

結成10周年という節目を超えてなお彼らはさらなる高みへと突き進み続ける

PH_lynch_main2014/12/27@新木場STUDIO COAST
“THE 10th BIRTHDAY『2004-2014』at STUDIO COAST”

新木場STUDIO COASTを埋めた2000人超のオーディエンスは、結成10周年という記念すべきバンドの節目に立ち会えることへの歓喜と期待に満ち溢れていた。2004年の同日に、名古屋CLUB QUATTROで行った初ライブからちょうど10年。メンバーもファンも様々な感慨が脳裏をよぎっていた開演前の独特な空気から、この日が特別なものになるであろうことは決まっていたのかもしれない。暗転してSEが鳴り始めると、メンバーを迎えるべく手拍子が自然発生してフロアを包み込む。ステージ前方に張られた薄いカーテンに映し出される、5人のシルエット。ダークなライトに照らされて、「LAST NITE」からゆったりとライブが始まる。

そのステージと客席を隔てる幕が落ちると、「I’m sick, b'cuz luv u.」からいきなりヘヴィかつアッパーなサウンドを展開。客席からは一斉に、興奮の拳が突き上げられる。「GREED」からは背景のスクリーンに映像が映し出され、観る者の気分をさらに高めていく。扇情的な歌詞との相乗効果も相まってか、Ba.明徳のスラップもいつも以上にエロティックだ。「-273.15℃」では炎が立ち上り、まるで燃え上がるオーディエンスの気持ちを代弁するかのよう。一気に「DEVIL」まで駆け抜けた前半5曲の後にVo.葉月がMCで言った「すごい景色だぞ、おい!」という言葉は、まさにそのとおりだっただろう。

「THE FATAL HOUR HAS COME」では一部でサークルモッシュも起こるなど、ヘッドバンギングの嵐と合わせて、狂乱のカオスが眼前に広がっていた。ラウドもメタルも飲み込んで、新旧のファンを問わずに一体化していくような圧巻のパフォーマンスとサウンド。もちろん激しいだけではなく、じっくりと雰囲気たっぷりに歌を聴かせるミドルテンポの楽曲も彼らの持ち味だ。「BALLAD」「MAZE」「an illusion」と続いた流れでは、そんな魅力を遺憾なく発揮してくれる。かと思えば「UNTIL I DIE」からは再びヘヴィな轟音で身体を揺さぶり、「melt」の前には葉月が「もっと声くれよ! もっとおかしくなっちゃうようなヤツくれますか!?」とさらに煽り立てていく。

インディーズ時代の楽曲も織り込みながら、ヘヴィ・ミドル・アッパーと様々なタイプの楽曲を浴びせかける展開は、観る者を全く飽きさせない。「PHOENIX」で思い切りブチ上げた後の、「GALLOWS」イントロでの破裂音では一瞬あっけにとられる。「ヤベェところまで行くぞ!」と叫んでからの「MIRRORS」「ALL THIS I'LL GIVE YOU」には、本当に絶頂を超えた絶頂へと到達してしまいそう。「俺らとお前らとの絆を歌います」という言葉からの「ADORE」で本編が終了するも、全30曲があっという間に感じられたのは自分だけではないはずだ。

もちろん鳴り止まない拍手に応えて、アンコールのために5人が再びステージに現れる。本編とは変わってリラックスした空気が漂う中で、まずは3月にベストアルバム『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』をリリースすることを発表。それに伴う全12ヶ所のレコ発ツアーに加えて、初のホールツアーを東名阪で行うことも発表され、今後への期待は増すばかり。メンバーそれぞれのMCではこれまでの10年を感慨深く振り返りながらも、「もっとデカく強くなりたい」そして「絶対に武道館に行くぞ!」という葉月の力強い宣言は5人の目が常に未来を向いていることの証明にほかならない。1つの大きな節目を超えてなお、lynch.はさらなる高みへと突き進み続けている。

TEXT:IMAI
PHOTO:Koji Takeuchi(a designer)

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