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the band apart

謎めいた魅力が誘う、果てなきオープンワールドへの旅

PH_thebandapartthe band apartにとって通算7作目のフルアルバムが、遂に完成した。昨年5月の『BONGO e.p.』を間に挟んでいるとはいえ、前作フルアルバム『街の14景』からは約2年弱。まさしく待望の新作は、これまで以上のバラエティとクリエイティビティに満ち溢れている。キャッチーでありながら、彼ら一流のフックとヒネリを兼ね備えたメロディとサウンドが生む音楽的な奥行きは底知れない。『謎のオープンワールド』というタイトルが想起させるとおり、広大なゲームの世界観に誘われて、いつの間にか夢中になってしまっているような中毒的な魅力を秘めた傑作だ。

 

●昨年5月に『BONGO e.p.』をリリースされたわけですが、その時点で次にアルバムを出すことも見据えていたんでしょうか?

木暮:バンド内で話し合いをして年間スケジュールをあらかじめ立てているので、「このくらいの時期にアルバムをリリースしよう」ということは決めていました。

●『BONGO e.p.』が今作『謎のオープンワールド』と作品的につながっているわけではない?

木暮:そういうわけではないですね。全く別物というか。ただ、『BONGO e.p.』(2014年5月)の時に「もうちょっとみんなのアイデアを混ぜよう」ということを意識的にやってみたら楽しかったので、今回はそれをより進めたという部分はあります。

●前作の6thアルバム『街の14景』では、それぞれの楽曲をメンバー個々で作り進めていく形だったんですよね。

木暮:前作の時は各々がパソコンで完璧に作り上げたデモを持ってきていたんですけど、今回はそれをしていなくて。たとえば弾き語りで「こういうメロディが乗るかもしれない」くらいの状態で持ってきて、そこからみんなで合わせるような感じで作ったりもしましたね。

●セッションで形にしていった。

木暮:これまでは元ネタを持ってきた人が監督して、そこに他の人から出たアイデアを付け足す感じだったんですよ。でも今回はその元ネタ自体も、誰かと誰かのアイデアをくっつけたものだったりして。

●M-8「遊覧船」は、G.川崎さんのギターフレーズと木暮さんの打ち込みが元ネタになっているそうですが。

木暮:元になるフレーズを川崎がいっぱい作ってきて、それを俺がサンプリングソース的に使ってどうループさせていくかということをやりましたね。基本的にリズムは1〜2小節くらいをループさせていて、それを抜き差ししている感じです。

●浮遊感のあるサウンドで、不思議な感じがします。

木暮:何か不思議な感じですよね。ちょっとだけ気持ち悪いところもありつつムーディーで、食器を洗いながら聴ける感じというか。元々はアコースティックライブでできるような曲を作ろうということで、川崎が元ネタを持ってきたんです。でもメロディは川崎が考えた部分もあれば、サビはVo./G.荒井が作っていたり、Ba./Cho.原のフィルタを通すことで最終的にちょっと変わったりもしていて。

●全員で1つの形にしていったんですね。この曲は歌詞も共作なんでしょうか?

木暮:この歌詞は俺と川崎で喋りながら作りました。最初に俺が「“誰かがさっきまでいたんだけど、今はいない”っていうのは寂しいし、奇妙な感じがするよね」と言って。そういう感覚的なことを言ったら、川崎も「良いんじゃない」と。俺は元々、そういう変な違和感があるような描写が好きなんですよ。

●違和感を感じさせる言葉は、歌詞によく出てきますよね。M-11「裸足のラストデイ」はシティポップ的な曲調でスッと聴けるんですけど、急に“気違い”という言葉が耳に入ってきたり…(笑)。

木暮:「あれっ?」みたいな(笑)。この曲は原と2人でスタジオでセッションしながら、より手数を減らすという方向にしていった記憶があります。結果的に、かなりスッキリ聴ける形になって。曲だけ聴いていたらスーッと通り過ぎて行ってしまいそうなものに、こういう歌詞を乗せているのが良いなと。

●違和感のある言葉がフックになっている。

木暮:「何それ?」みたいな言葉が良いなと俺は思っていて。M-2「笑うDJ」も最初はもっと詩的な歌詞で、もうちょっとシリアスな感じだったんですよ。でもそういうものよりも、「何それ?」っていう言葉のほうが忘れないんじゃないかということで考え直したんです。

●最初はもっとシリアスな感じだったと。

木暮:ブレーキなしですごい勢いで進んでいくような曲調に合う、キャッチーな言葉がないかなと思って。俺の中でDJって、すごくストイックにやっているイメージがあるんですよ。そういう人がもう狂っちゃった、みたいなイメージで「笑うDJ」というフレーズにしたんです。しかも、それを何回も真面目に歌うのが面白いかなと。

●M-7「殺し屋がいっぱい」も面白い歌詞ですよね。

木暮:これは最初に元ネタができた時にすごく爽やかでポップな曲調だったので、普通の歌詞だと面白くないなと。この歌詞よりも前に、確か原がM-6「禁断の宮殿」を書いていたんですよ。そんなに深い意味はないと思うんですけど、“ソシアルロック”があいつは嫌いなのかなと思って。

●「禁断の宮殿」で“ソシアルロックンロール聞き飽きたら”と歌っていますからね。

木暮:だったら、その次の曲が“ソシアルロック”(的な曲)だったら面白いかなと思って(笑)。歌詞の内容的には、自分の中で違和感のある出来事をデフォルメ化して書いたという感じですね。

●これは最近のネット社会についての歌詞?

木暮:たとえば今って情報にアクセスしようと思えば、いくらでもできるじゃないですか。それで自分が実際に体験していないことを知っているつもりになって、利口になったような気分でいる。しかも実体験の裏付けがない知識なのにもかかわらず、その知識がないと物事について語っちゃいけないみたいな風潮もあって。

●SNSでも、そういう空気がありますよね。

木暮:何か事件に対する感想をTwitterとかでつぶやいたとしても、単なる自分の感想なんだから(本当は)言ったって良いわけじゃないですか。でもその感想が間違っていたりすると一斉に叩かれたり、リツイートされまくって「こんなバカがいました」みたいに晒されたりする。そういうことを本当に楽しんでやっている人たちもいるんだろうなっていうのを、外から観察している感じの歌詞ですね。

●そういった、生活の中で感じる違和感を歌っている歌詞は他の曲でも見られる気がします。

木暮:たとえばTVを見ていても、明らかにある国を“仮想敵”として捉えているような場面があって。もしかしたら本当に危険な国なのかもしれないけど、政治家の話とかを聴いているとそのイメージだけを上手く利用している部分もあるなと思うんですよ。そういうことについて、自分なりにもうちょっとしっかり考えないといけないなと思うところはあります。

●意識が変わってきている?

木暮:色々と考えたつもりで自分なりの価値観を持ったと思っていても、「それはやっぱり違うな」と年々思うようになったりして、なかなか覚悟が決まらない。でもそういう葛藤もありつつ、生きていくしかないじゃないですか。前は同じように俯瞰していてもまだ余裕のある感じだったんですけど、最近はもうちょっと物事に対してアクティブにならないとヤバいかもなというのを感じていて。「このままでいいのかな?」っていう。

●そういう意識の変化があったのは、日本語詞がメインになったことも関係しているんでしょうか?

木暮:こんなに考えるようになったのは、日本語詞になってからですね。英詞だった時は自分にとって第2言語だから、そんなに直接的には入ってこないんですよ。洋楽を聴いている時に近い感覚というか。それが日本語詞になってからはもう…すごく悩んでいます。

●歌詞を書くのに苦労していると。

木暮:バランスが難しくて。意味がありすぎても聴き手の想像力を限定しちゃうし、かといって「意味ないよ、これ」っていうものも嫌だから。面白い言葉で、かつ俺らっぽいものを…と考えていくと大変ですね。

●日本語詞で書くようになったことで、曲の作り方が変わったりもしたんでしょうか?

木暮:そこは全然変わっていないです。ただ、前作の時はメロディラインの抑揚を抑えるような付け方をしていたんですよ。それはやっぱり(日本語詞に)変えたばかりで、言葉の意味がはっきり聞こえる気がしていたからで。抑揚のあるメロディだとドラマティックになりすぎるかなと思っていたんですけど、今回はそういうことも考えずにメロディありきでフィットする言葉を乗せていった感じですね。

●『謎のオープンワールド』というタイトルは、全体のイメージが見えた後に付けたんですか?

木暮:最後に決めました。昔は歌詞が英語だったというのもあって、出揃った曲をバーッと並べる感じで全然良かったんですよ。でも今は10曲を1つの塊としてアルバムでリリースする以上は、1曲1曲をバラバラに聴くのとは違う聞こえ方や流れがないと、この形にする意味がないなと思っていて。だから後付けですけど、何か1つにまとめる良い方法はないかと考えていきましたね。

●そこで、このタイトルが浮かんだ?

木暮:歌詞の視点がバラバラだと俺は感じたので、どこかの仮想空間の中で主人公から見た誰かの気持ちやどこかの場面だったり…という体(てい)にすれば良いんじゃないかなと思って。物語とかでも良かったんですけど、もうちょっとライトで今っぽいものは何だろうと考えたら、ゲームが浮かんだんです。

●“オープンワールド”というのはゲーム用語で、広大な世界を自由に動き回りながら探索や攻略ができるように設計されたもののことなんですよね。有名なものに『グランド・セフト・オート』などがありますが。

木暮:『グランド・セフト・オート』も前々作くらいまでやっていましたね。最近は“モンハン(『モンスターハンター4G』)”しかやっていないですけど、ゲームってやっぱり身近だから良かったのかな。ゲームという形にすれば、みんなが「これは仮想空間だ」とわかるじゃないですか。それで後から、M-1「(opening)」やM-14「(ending)」みたいなスキットも考えて。

●それぞれのスキットに何かイメージがある?

木暮:「(opening)」はファミレスでモンハンをやっていて、ふと顔を上げたら周りに誰もいなかった…みたいなイメージで。そこからゲームの中に入り込んでいく感じですね。前半はアッパーで勢い良く進んでいって、中盤を通過した後のM-10「(save point B)」で「おや、シリアスなのか…?」みたいな雰囲気になっていけばいいかなっていう。

●そこで雰囲気が切り替わると。「(ending)」はどういうイメージで?

木暮:「(ending)」は余韻があったらいいかなというイメージですね。最初はもうちょっと遊びがあったんですけど、それがくだらなすぎて…。

●何をやったんですか?

木暮:俺らは中学からの幼なじみだから、今だに“うんこちんこまんこ”みたいなことで盛り上がっちゃうんですよ。それをたまたま録音していたので(トラックに)重ねてみたんですけど、後で聴いてみたら本当にアルバムの雰囲気を全てブチ壊すようなヒドい会話だっていうことに気付いて…(笑)。だから、その会話をメチャクチャに切ってからつなぎ直して、エフェクトもかけて何を言っているのかわからないようにしたものが最後にちょっと気持ち悪い感じで鳴っているようにしたんです。

●作品の余韻に浸りつつ、よく聴いてみたら“うんこちんこまんこ”の話をしていると。

木暮:いや、そこはよく聴いても判別できないです(笑)。

一同:ハハハハハ(笑)。

Interview:IMAI

 
 
 
 

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