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ゆれる VS ZAZEN BOYS

「己の刃を磨くため」。ゆれるが仕掛けた真剣勝負

ゆれる1

2015/1/23 @渋谷 TSUTAYA O-Crest“HISGARAGE”

渋谷 TSUTAYA O-Crestで行われた、ゆれるの自主企画“HISGARAGE”。今回招かれた“スペシャルにカッコいい”ゲストは、本番直前まで明かされず、ステージも白幕で隠される徹底ぶりだった。聞けばその“客人”は、強烈な個性を放つ、あの大物バンドだというーー。

 

 

 

【歓喜が爆発した会場】

期待と興奮に包まれた空気の中、BGMが急に鳴り止み、フロアの緊張が一気に高まる。ステージを覆い隠していた白い幕が取り払われた瞬間、オーディエンスは目の前に立ったゲストの存在を観て、息を呑んだ。

登場したのはZAZEN BOYS(以下ZAZEN)。一瞬時が止まったかのように静まったフロアから、驚きと同時に大歓声が上がる。「渋谷シティ…渋谷シティの貴様らに伝えたい」Vo./G./Key.向井の声が響き、「KIMOCHI」の演奏が始まった。メロウな歌から始まった楽曲は、次第に凄まじい切れ味を持ったサウンドへと変貌していく。もはや神業と言える、絶妙なタイム感で放たれる轟音、轟音、轟音。達人の居合い斬りのようなZAZENサウンドが会場を熱狂の渦に変えた。

ゆれる・G./Vo.Amiから来たイベントの誘いのメールを見て、可愛い娘かと勘違いしたとMCで語る向井。「キューティーポッピーなAmiちゃん」を期待して本人に会ってみたら「貸しスタジオの店員みたいな人でガッカリした」と冗談で会場を湧かせた。最後は「Asobi」を演奏し、「乾杯!」という向井の言葉でステージを終える。O-Crestという真近な距離感で見るZAZENの演奏に歓喜が爆発した会場。何か事件が起こったかのような空気の中、今回の仕掛け人・ゆれるのステージが始まる。

【尊敬するバンドを呼べば、己の刃も磨かれると思った】

S.Eとともに入場するメンバー。Amiが静かに、まるで水の中を泳ぐような動きでギターを鳴らす。得も言われぬ緊張感の中で、ステージの空気がガラリと変わっていく。程なくしてディストーションサウンド全開の爆音が鳴り響き、「0.03」が始まった。ZAZENという巨人に物怖じすることなく、むしろその試練を力に変えんとする彼らのステージ。エネルギーが凝縮された非常にフィジカルなパフォーマンスで、会場を沸点までブチ上げる。続く「BPM」では、Ba.Yuta Sakaeが高速ピッキングでギャリギャリとエグるような音を放ち、Dr.Bauchiの肩に足をかけアクロバティックに演奏。本能に身を任せて暴れまわる彼らの姿に、オーディエンスも反射的に拳を上げ興奮を伝えていた。

ステージ冒頭で「誰が貸しスタジオの店員やねん!!!」とZAZEN・向井のMCにツッコミを入れていたAmiだが「実は、(ZAZENとの共演に)まだ手が震えている」と今の本音を語る。「尊敬するバンドを呼べば、己の刃も磨かれると思った」。彼らはこの日のために毎日スタジオに篭り、鍛錬を重ねてきたと言う。「感無量です」。Amiは今回の企画を快諾したZAZEN、そして会場に集ったオーディエンスに感謝を告げた。

そして本編の最後は「ヒューズヒュー」で結ばれる。全身全霊で放たれる爆音の塊に、Amiの独特なハイトーンと、全てを吐き出すような歌声が乗せられる。歌詞の最後の一節、“気にせず出来れば必ず敵うかな”は、正に今の彼らの心情を歌っているかのようだった。

アンコールでは、ニューアルバムを制作していることを明らかにした、ゆれる。“日本刀を腰に、ディストーション身に纏い”、次に挑むのはどんな強者か? 今後の彼らからも目が離せない。

TEXT:馬渡司

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