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そこに鳴る

新世代による突然変異サウンドが誘う迷宮のポップワールド

sokoninaru_aphoto_RGBtrimKOGA RECORDSの2015年一押しニューカマー、そこに鳴るが初の全国流通となるCD『I’m NOT a pirolian』をリリースする。2011年に大阪で結成されたという彼らだが、何よりもまずその圧倒的な演奏力に度肝を抜かれるだろう。超絶テクニカルなギター&ベースのユニゾンタッピングに、メタルにも匹敵するツーバスドラミングなど、多彩で重厚なサウンドは3ピースとは思えない。そこにエモーショナルかつキャッチーなメロディを乗せた楽曲は、間違いなく“ポップ”なのだ。まだ20代前半という3人による、新世代の突然変異サウンドが今鳴り響く。

 

 

●メンバー同士の付き合いは古いんですか?

鈴木:高校の頃からですね。

藤原:高校生の時に、凛として時雨(以下、時雨)のコピーバンドを一緒にやっていて。大学に入ってから、同じメンバーでオリジナル曲を作ろうということになったんです。その時に今のバンド名を付けて、本格的に動き始めた感じですね。

●元々、音楽は好きだった?

鈴木:コピーバンドを始めるキッカケになったのは時雨なんですけど、それまで僕はMONGOL800やGOING STEADYを聴いていて。中学生の頃は、Every Little Thing(以下、ELT)しか聴いていなかったですね。

●原点はELTなんですね! 楽器との出会いは?

鈴木:中学生の時に祖母が亡くなったんですけど、僕の誕生日がちょうど命日だったんですよ。亡くなる前に僕の誕生日プレゼントとして、アコースティックギターを買ってくれていて。それって形見であり、遺言みたいなものじゃないですか。そこで「これはやらなきゃいけないな」と思って、弾き始めたんです。

●すぐ弾けるようになったんですか?

鈴木:弾き始めた時はELTのいっくん(G.伊藤一朗)みたいに弾けたら楽しいだろうなと思っていたんですけど、始めて5秒で「無理!」ってなりました(笑)。

●ハハハ(笑)。そこから今の演奏技術にまで到達したのは、時雨に出会ったから?

鈴木:完全にそうですね。時雨がいなかったら、ギターの練習も全然していなかったと思います。実際、コピーバンドの名前も“凛としてくれ”だったんですけど…。

●直球ですね(笑)。影響を公言しているような感じというか…。

鈴木:言わなくても音を聴けばわかるだろうし、恥ずかしがる必要性もないかなって。事実として影響をすごく受けているので、隠す必要はないと思うんです。

藤原:私は元々、ギターを弾いていたんですよ。でも時雨を聴いた時に「こんなにカッコ良いベースを弾く女の人がいるんや!」と思って、そこからベースに転向したんです。そういう事実もあるので、全く否定するようなことではないかなと。

●時雨のどういうところに衝撃を受けたんですか?

鈴木:「なんて退屈しない音楽なんだ!」っていうところですね。昔から「なんで日本の音楽はどれもAメロ〜Bメロ〜サビという全く同じ流れを2回やるんだろう?」と思っていたんです。でも9mm Parabellum Bullet(以下、9mm)の「Heat-Island」を初めて聴いた時に、全てのパートで違うことをやっていたので「なんて素晴らしい趣向なんだ!」と思って涙して…(笑)。

●涙したんだ(笑)。

鈴木:それくらい飽きさせない構成というのに惹かれて。その時にちょうど9mmと時雨が“ニッポニア・ニッポン”という2マンツアーをやっていて、そこで初めて時雨を観たんですよ。

●ライブで観たのが最初だった。

鈴木:最初は意味がわからなかったんですよ。でも何度も聴いていると、セクションごとに違う趣向が凝らされていて、最初から最後まで飽きずに楽しめるような曲になっているのが素晴らしいなと。そこで自分でもコピーしてみたいなと思ったんです。

●今のボーカルスタイルは時雨ほどハイトーンではないですが、そこは自分の個性を活かしている?

鈴木:あんな声は出ないので…(笑)。僕は普通の声が良いんですよ。たまに“独特”や“アンニュイ”と言われるんですけど、自分としては“う〜ん?”っていう感じですね。

藤原:今は普通かなって思います。昔はすごかったですけど(笑)。

●昔は歌い方も違っていたと。

鈴木:そこに鳴るになった当初は、まだ高い声で歌おうとしていたんです。でも当時はすごく音痴だったので、変なラップみたいになっていて…。そこからまともなメロディを歌えるように努力していったら、いつの間にかこういう感じになったんですよね。

●当初は楽曲の雰囲気も今とは違っていた?

鈴木:そこに鳴るというバンド名にしてからオリジナル曲をやり始めたんですけど、凛としてくれの時代にも2曲作ってあったんですよ。その2曲は不協和音がひどくて…。

藤原:あまりにも…な感じでしたね。メンバー内でも、いまだにネタになっているくらいです(笑)。

●バンド名を“そこに鳴る”にした理由とは?

藤原:“そこ”や“鳴る”みたいな言葉って意味が固まっていないというか、「“そこ”ってどこやねん!?」とか「“鳴る”って何がやねん!?」ってなるじゃないですか。そうやってモヤッとした気持ちになることで覚えてもらえて、次に見かけた時にも「どこかで見たことのある名前やな…」ってなると思うんですよ。印象に残るし、人それぞれで違う解釈ができるのも面白いかなって。

●歌詞に関しても明確なメッセージを提示するより、色んな解釈ができるものになっている?

鈴木:本当は自分の意図をすごく正確に伝えたいんですけど、もちろん不可能なわけで。たとえば誰かと2人で呑みに行って深い話をした時に“わかり合えた”みたいな気持ちになるけれど、それは“わかり合えたつもりになっただけで結局は何も理解していないんじゃないか?”と思う瞬間があると思うんですよね。そういうことを考え始めると、正確に伝えられないなと思うので。だから自分の想いの内を述べるにしても、できるだけ抽象的にしちゃいますね。最初から諦めてしまうというか。

●でも実は1曲1曲の歌詞にテーマがあったりする?

鈴木:1曲1曲にちゃんとありますね。

●歌詞を読むと、日頃から色んなことを考えている感じがします。

鈴木:そうですね…めんどくさいタイプだと思います。

●ハハハ(笑)。メンバーには鈴木くんの意図が正確に伝わっている?

鈴木:説明しても「わからないです」と言われます(笑)。

藤原:「この曲はこういう設定で〜」とか教えてもらうんですけど、難しくて…。

●たとえば?

鈴木:M-4「真実の花」は“人が真理というものを勝ち得たとして、それは果たして幸福といえるのか? 多くを知るからこそ孤高であり、それはこの上ない孤独なんじゃないか?”というとってもわかりやすいテーマなんですけど…って、言っていることはわかりますよね?

藤原:わかるんですけど、それを噛み砕いた上で歌う時に意識するのは難しいなって思います。

●歌詞について訊いたりもする?

藤原:自分の中で考えて理解できたと思うものは訊かないですけど、どうしてもわからないものは訊いたりします。

鈴木:M-2「夏の落とし物」はわかる?

●お、問いかけが(笑)。

藤原:(歌詞カードをじっと見て)………なんかわかるようなわからんような。

一同:ハハハ(笑)。

鈴木:この歌詞は本当に意味がなくて。元々はバンドでやるつもりもなく、息抜きで作った曲なんですよ。メロディに合わせてアドリブで入れたような歌詞なので、僕の中にあるボキャブラリーでしかないんです。

●歌詞の中に古語的な表現があるのも、鈴木くんのボキャブラリーから?

鈴木:「真実の花」とM-5「さらば浮世写し絵の如く(do-do gigantic evolution ver)」は、そういう言葉をあえて使っています。和メロなので、勝手にそうなっちゃったみたいな感じですけどね。

●「さらば浮世〜」は、以前の無料配布音源にも入っていましたよね?

藤原:その時とは歌を録り直して、ミックスも変えています。

●今回はミックスにもこだわった?

鈴木:ミックスには今までの中では最もこだわりましたね。以前のデモをレコーディングスタジオで録った時を含めても、これだけミックスに注文を出したのは今回が初めてです。録っている時点ではまだ決定していなかったんですけど、もし正式にリリースすることになるなら恥ずかしくないものにはしたかったので。

●録っている時点では、まだリリースが決まっていなかったんですね。

鈴木:その当時の僕たちはまだ就職活動中で、“就職するかバンドをするか?”を考えている時期だったんです。だから今回の音源を録って、それを色んな事務所やレーベルに送っても反応が特になかったらバンドを辞めようと思っていたんですよ。でもそれ以前のデモ音源を聴いた時点で(レーベルオーナーの)コガさんが反応してくれて、「じゃあ、これをリリースしちゃえば良いじゃん」となって。だから僕らとしては、最初からリリースするつもりで録ったものではなかったという。

●最後かもしれないという覚悟で作ったからこそ高いクオリティになって、リリースにつながったのでは?

藤原:”今できるベストを出し尽くそう”という想いはありました。大学での4年間の集大成というか、今までやってきたベストが出せたかなと思います。

鈴木:でもベターではあってもベストではないですね。できるだけ普遍的に良いものを作りたいと思っていますし。

●演奏はテクニカルなことをしていても、メロディはどれもキャッチーなのが特徴かなと。

鈴木:自分の中では、“アニソン”という基準を設けていて。たぶん今、邦楽のロックを聴いているメインストリームの層にはアニメが好きな人たちも多いと思うんですよ。だからそこに寄せることで、メインストリームにおいても普遍的なメロディになるのではないかと思って作っています。

●メインストリーム層に届くような楽曲を意識して作っている?

鈴木:そうですね。音楽にハマるキッカケって、日本に住んでいたら誰しもJ-POPからだと思うんですよ。たとえば僕はELTからどんどん入り込んでいって、最終的にはディープなものまで聴くようになって。でもELTが今好きな人に、そんなディープな音楽を聴かせても良いとは思わないはずで。僕はかつて“ELTが良い”と思った自分の感覚を忘れたくないんです。その感覚に基づいて、ELTしか知らなかった頃の自分でも“良い”と思えるものを作りたいから。なおかつ次はもっとディープなものも聴いてみようという方向に導けるような、入り口的な曲を自分たちは作りたいなと。

●J-POPの要素もありつつ、音楽を掘り下げて聴くキッカケにもなるようなものというか。

鈴木:本当にJ-POP然としたものを作るのであれば、自分たちよりも上手くできる人だらけだと思うのでそれは自分たちの武器にはならない。だから今の僕らができることと言ったら、こういうところなんですよね。

藤原:私も元々ポップな音楽が好きなので、そういうものが好きな人にも伝わりやすい曲にしたいですね。J-POPが好きな人でも聴けて、その人が楽器を始めるキッカケになるような曲ができたらなと思っています。

●ちなみに今回の作品で見せたものとは違う方向性を持った曲もある?

鈴木:色々やっているほうだと思います。3ピースのわりに無茶はしていると思いますね。

●宣伝用資料のプロフィールにも”3ピースで3ピースとは思えない無茶をして笑いをとる”と書いてありましたが…。

藤原:曲を聴いて、笑って欲しいですね。

鈴木:M-1「pirorhythm stabilizer 〜only your world〜」のイントロなんかも笑って欲しいんです。(MVで)可愛らしい格好をした女の子にあのフレーズを弾かせて、背中合わせでプレイしているという姿がもう笑えるかなと思ったんですよ。

●笑って欲しいんだ(笑)。

鈴木:別にそんな、シリアスでクールなバンドじゃないから。

藤原:ライブでも「ここは背中合わせで弾く」とか「同時にギターとベースを傾ける」とか「2人とも柵に足をかけて弾く」みたいな、クサいパフォーマンスを取り入れているんです。そういうところでも「笑って欲しい」ということを視覚的に訴えていて。「面白かった」とか「笑った」と言ってもらえるのが一番嬉しいですね。

Interview:IMAI

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