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wash?

純度の高い爆音と言葉は、病める魂を救う最高の特効薬として確かに此処で鳴り響く

PH_washwash?史上最高傑作と言われていた前作『Hurt me』を軽く超えるような、ニューアルバム『PURE CURE SURE』がいよいよ世に放たれる。2014年の夏に現在の3人によるトリオ編成となってから、試行錯誤の中でバンドを再構築してきたという彼ら。結成から13年を超えた今こそが一番良い状態にあるのだと証明するかのごとく、ここに収められた7曲は圧倒的な強度とクオリティ、そして一線を超えた狂気すらも感じさせる。ストイックな中に誰もが持つ葛藤や苛立ちを解放するような救いも秘めた、この音と言葉を早くライブで全身に浴びたいと切に願う。

 

 

●前作の『Hurt me』をリリース後にメンバーの脱退があって、2014年の夏から現在の3ピース編成になったんですよね。

奥村:『Hurt me』を出した後にツアーをまわって、一区切りとして東京のワンマンがあった3日後くらいに脱退しました。

●そこでバンドの活動を止めようとは思わなかった?

奥村:俺は続けたいと思っていたから。でも一応、Ba.河崎とDr.杉山に「どうしますか?」と問いかけたら2人とも当たり前のように「やる」と即答だったんです。そこから「3人でやるか、新たにギターを入れようか」とか色々と考えた時に、「3人でやる」というアイデアに俺はすごくワクワクしたんですよね。前作を作った頃から3人のテンションは非常に高いところで一致していたので、「思いつきをもっと形にできたり、スピード感が上がるかもしれない」と思えて。そこで「じゃあ、頑張ろう!」となったんですけど、その次のライブがちょうど地方での初ワンマンで…。それまでにワンマンに必要な曲数をトリオ編成でやれる状態にするという、物理的な部分での苦労はすごくありました。

●物理的な苦労はあったけれど、3人のモチベーション自体はすごく高かったわけですよね。

奥村:そうですね。落ちる理由がなかったから。「もっと違うことができる。もっとやりたい放題できる」ということにワクワクしている気持ちのほうが大きかったです。あとは3人になって「こんなにもダイレクトになるのか!?」という感覚があって、スピード感がすごく上がったんですよ。思いついたことがすぐにやれるというのは、今でもすごく楽しめていますね。

●3人になったことで、逆にスピード感が上がった。

奥村:河崎はプロデューサー気質があるので、俺のことを尊重しつつプロデュースしてくれようとしていて。杉山は向上心の塊のような人間なので、俺もケツを叩かれるところがあるんですよ。

●そういう関係性だから、トリオ編成になってからもすぐに動き出せたんでしょうね。

奥村:ただ「3人でもできるだろう」くらいに思っていた曲が、意外とできないこともあったりして。逆に「これはできるんだ!?」というのもあって、意外な発見はたくさんありましたね。

●そして3人になってから最初にできた曲が、M-2「アーハーオーイエー」だそうですが。

奥村:3人になって最初のライブだという時に、新曲がないというのは嫌だなというところがまずあって。河崎が「変化があった時に現状維持だと、お客さんは減る。変化があった時こそ、何か1つ新しいものがないといけない」と言ったのを聞いて、俺も「なるほどな」と思ったんです。あとは3人の共通認識として「ヘコんでいる感じは出したくないから、新曲をどんどんやろう」というのもありましたね。何なら今までファンが名曲と言ってくれているものでも、3人でやった時につまらなければどんどん捨てようと。それによってお客さんが0になるかもしれないということを腹に括って、もう一度3人で始めようというところから「じゃあ、新曲を作ろうか」となった時にできたのが、「アーハーオーイエー」でした。

●M-1「Hurt me」は、かなり前からライブでもやっていたんですよね?

奥村:結構前からありますね。これは河崎のアイデアを元に、俺が形にした曲なんです。河崎が曲作りのアイデアを出してくるようになった最初の頃に作った曲で。

●前作のタイトルと同名なわけですが、そこには入れなかった理由とは?

奥村:前作のタイトルがなかなか決まらなくて、「どうしようかな…?」となっていたんですよ。前々作の『love me』(2010年)はそれ単体としても良いタイトルだと思っていたけど、ふと自分の中でその反対語は何だろうかと考えてみたら“Hurt me”という言葉が浮かんで。でも「Hurt me」という曲自体は入れないというアイデアもそこで思いついてメンバーにもどう思うか訊いてみたら、2人とも「良いね、それ!」と。「じゃあ、次のアルバムの1曲目はもう決まりだね」ということで、前作を出した時にはもう今回の『PURE CURE SURE』の1曲目は決まっていたんです。

●ここまでずっとライブで育ててきた感じでしょうか?

奥村:そうですね。この曲でライブを始めるというのが気に入っていて。強制的に自分たちのテンションが上がる曲なんですよ。一音目から上がるわけじゃなくて、だんだん上がってくるというか。歌っている内に、自分でも本当に腹が立ってくる感じで(笑)。そこはメンバーとも共通認識だったので、じゃあ1曲目が良いかなと。

●この曲の歌詞は、自分の中にあるフラストレーションを表現している?

奥村:ある時から色んな意味でカッコつけるのをやめたんですよね。ポーズをするとかキャラクターを演じるということを、歌詞を書く上でもライブをする上でも全てにおいてやめた。「言いたいことがこれだけあるのに誰かのふりをして言っていられないな」と思ったし、地に足をつけていたいなと思って。だから“普通”でいようと思ったんです。普通でいるためには、普通の言葉で歌わなきゃいけない。そこで一人称も“俺”になったんですよ。俺は自分のことを“俺”としか言わないから。

●昔は一人称が別の歌詞もあった?

奥村:“僕”と歌っている時もありましたね。でもそれはカッコつけて、良いヤツぶっていた時です。他人の歌詞だったらそれでも良いと思うかもしれないけど、自分の歌詞だったら恥ずかしくてしょうがない。

●今回の歌詞は「本当にこう思っているんだろうな」と感じるリアルな言葉が並んでいるように思います。

奥村:だからこそ歌っていると、自分もその気分になってくるんです。興が乗ってくるというか。ライブでその言葉に反応した人から急に何か言われた時にもちゃんと返せる。

●実際にライブ中にオーディエンスから何か言葉が飛んでくることもあるんですか?

奥村:ありますよ。友だちのバンドマンも含めてですけど、お客さんからしたら誰が言ったかなんて関係ないじゃないですか。ヤジられているという状況でもちゃんといなして、“場”を支配してやらなきゃいけないというのは意地のような感覚としてあるんです。かと言って無理をしても意味がないと思うし、そこで笑っちゃったら笑っちゃったで良いと思うんですけどね。

●ステージ上でも“普通”の自分でいるというか。

奥村:それをするために必要な作業というのがまず言葉を普通にするというのと、あとは歌詞を推敲し過ぎないということで。メロディに対して歌詞(の言葉数)が多かったとしても、もう全部言っちゃえみたいな。それをやり始めてから、本当に楽になりましたね。

●それを始めたキッカケとは?

奥村:『Hurt me』に入っている「オヤスミ オハヨ」という曲ができたことですね。曲は先にできていてメロディに歌詞を乗せようとしたんだけど、最初は全然当てはまらずにイライラしていて。でも電車の中で急にハッと思いついて、iPhoneで一気に書き上げたのがこの歌詞だったんです。この歌詞が書けた時に「これは俺の新しい発露だ」と思いましたね。

●新しい歌詞の表現方法を見つけたというか。

奥村:「これができるんだから何も怖くないよ」と思って。「Hurt me」もそういう感じだし、今回のアルバムにもそういった曲が結構ありますね。もう「困ったら全部言っちゃう」みたいな。歌詞に関しては“普通の自分”でいようと思ってから本当に楽しくなったし、楽になったんです。曲作りでも「あ〜、楽しい!」「おおっ、それ!」と思えるものをまずやって、後で理屈を考えるみたいな快感原則を特に大事にしているので…メンバー2人には迷惑をかけています(笑)。

●ハハハ(笑)。

奥村:「今、何を言っているのかわかっていないんだろうな」と思いながら、とりあえず言っちゃったりして。でも彼ら2人は「何とか受け止めてやろう」という母性が強いから大丈夫なんですよね(笑)。

●M-6「Dusk」は、ちょっとブッ飛んだ歌詞だなと思ったんですが…。

奥村:これは本当に一筆書きのように書いた歌詞をほぼそのまま使っているんです。だから文章として読んだ時に何を言っているのかわからないような飛躍もあるんだけど、音や言っているトーンを全部総合すると、たぶんその人の中で見えてくるんじゃないかなと。最初は漠然と「いつも曲のアイデアに困ると声を張り上げちゃうから、声を張り上げない曲をやりたい」と思って作り始めたんですよ。そこから音像を考えていく中で杉山がドラムパターンを考えてきて、河崎が後半のベースのリフを考えてきて「あ〜、来た! 完璧」…となった時に俺の中で景色が見えて。その景色を全部、歌詞にしたんですよね。

●「Dusk」では徐々に浄化されていく感じがあって、その後でラストのM-7「ビューティフルサンデー」がくるという流れがすごく良いなと思って。

奥村:ロックミュージックは高尚なものじゃないと思うから。しょうもないヤツらのしょうもない…コーラの泡みたいなもので、シュワっとしているくらいのものなんですよ。それであって欲しいし、そういうものじゃなきゃ俺は「好き」って言えない。宗教になっちゃったら、つまらないから。大事なことにはちゃんと触れなきゃいけないけど、“なんちゃって”はずっとなきゃいけないし、でも本気だし、でもどうでも良いものだし、聴かなくたって死なないし、でもそれがあったことで生きながらえる人もいるし…っていう、このワシャワシャした感じはすごく大事で。やっぱり「なんてね」って言えなきゃいけないと思うんです。それがあるのが、俺の“普通”だと思っていて。「ビューティフルサンデー」だけじゃ嘘だし、「Dusk」だけでも言い過ぎているというか。

●そこのバランスが重要なんでしょうね。

奥村:「これを言ったらこう思われるかもしれないから言い直さなきゃ」みたいな邪念と「でも言い切っておきたい」というもののバランスが良くなっているなとは思います。「伝わりたい」というものと「言いたい」というものはイコールではないと思っているんです。「おまえに何がわかる」って世の中の全員に対して思っているし、でも同時にちょっとでもシンパシーを覚えた人たちには「あなたにだけはわかって欲しい」とすごく思っているから。そういう中でグルグルまわってはいますけど、少なくとも自分に対しては嘘はつきたくないなと思っていて。

●だから、後から振り返った時に「こんなものはやりたくなかった」と後悔が残るようなものにはならない。

奥村:ならないですね。前作の『Hurt me』以降、俺の人生ではそういう作品はないと思っていて。作品を作る上で、自分の中の“嘘をついていない本当の自分”みたいなものとの関わり方がわかったから。

●『Hurt me』が転機だった。

奥村:そうですね。だからこそ、前作は良いアルバムになったと思っていて。「それを超えられるかな?」っていうのをすごく気にしていたけど、俺たちメンバー的には「超えたな」と思っているんです。今のところ聴かせた人たちもほぼみんな「今回のほうが好き」と言ってくれているので「じゃあ、良かった」と思っていますね。

●ブログでも「俺の人生で最大の成長期が来ている」と書かれていましたが、バンドとしても本当にすごく良い状態にあるんだろうなというのを感じます。

奥村:成長期ですね。俺はwash?を始めたのも30代だし、歌い始めたのも30代になってからなんですよ。19歳くらいからバンドを始めて、30歳で歌い始めて、まさか42歳でトリオをやり始めるとは思わなかった。トリオって俺の思う、特殊じゃないバンドの最小単位なので、一番難しくて一番面白くて一番カッコ良い形だと思っているんです。いつか遊びでやれたら良いなというくらいに思っていたけど、実際にやることになったら「まあ、こんなにも楽しいものか…!」と。責任感とどうでも良さがマーブル状態になっているようなバランスなんですよね。頭の中にイメージしたことがそのまま具現化できるという意味での“できること”が増えていっているから、今は本当に成長しているなって感じています。

Interview:IMAI

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