音楽メディア・フリーマガジン

COMIN’KOBE’15

COMIN'KOBE'15 2015/4/29@神戸ポートアイランド

メイン_84_M3_3144s_yk昨年10周年という節目の年を経て、心機一転再スタート! と思いきや、会場変更で開催のピンチを迎え、存続をかけたクラウドファンディングに挑戦。見事20,000,000円を超えるイベント支援金を集め、無事無料でイベントを開催することが決まった。今年は本番前から印象的な出来事があり、このイベントがたくさんの人たちの協力によって成り立っていることを改めて実感した年だったように思う。そうやって迎えた2015年4月29日は、例年以上に特別な意識を持っていた。

まず初めに向かったのはひとぼうステージ。ひとぼうとは阪神・淡路大震災記念の記念館である“人と防災未来センター”から名前を取っており、地震と災害に対する防災と減災の願いを込めて開かれたステージだ。この場所の一番手はせっくす倶楽部のVo./Key.森田とワタナベフラワーのVo.クマガイタツロウ。当ステージのメインパーソナリティ・平林氏が独特な切り口のインタビューでアーティストの意外な一面を切り取りつつ、“減災のためにできること”を分かりやすく伝えていく。このように親しみやすい形で震災について考えられる機会が、“COMIN'KOBE”にはたくさんある。続いてLIVE DAM STADIUM Sing STAGEのトップバッター、KNOCK OUT MONKEYのライブへ向かう。大歓声に包まれながらメンバーが登場した。タイトなリズムに乗せて繰り出される骨太なサウンド、そして脳髄をループするボーカルの叫びがのっけからフロアの熱を上げていく。メンバーが何も言わずとも、オーディエンスが自然とシンガロングするシーンは鳥肌モノだ。「かかってこいや! まだまだ行けるやろ?」とVo./G.w-shunが言葉を投げかければ、会場は爆発的にヒートアップ! 「震災から20年。だから何ってわけじゃないけど、ここを笑顔で溢れさせたい」。そう語るw-shunに、カッコいいだけじゃない彼らの心意気を垣間見た気がする。それに感化されてか、オーディエンスも全身でその問いかけに答えて見せた。

会場の移動中、ROLAND Stageであまりの多さにフロアから溢れ出る人の山を見つける。背伸びしながら覗いたその場所には、異様な光景が広がっていた。辺り一帯に飛び交うカラフルな風船、腕を突き上げる観客達、そして沸き上がる気勢を隠すことなく熱唱するメンバー達。どうやら、今話題沸騰中のロックバンド、愛はズボーンのライブらしい。予測不可能なライブ展開で始終リスナーの目を奪い、キャッチ—なメロディーで耳を奪う。フロア前を通り過ぎるキッズ達が自然と口ずさむほど、と言えば、いかにその楽曲が印象的か伝わるだろうか。演奏が終わるまで、辺りの人波が止まることはなかった。市民広場へ向かうと、SRC StageではGOODWARPが空の下に響くグッドミュージックで観客を惹き付けていた。シティ・ポップやファンクなど様々な音楽性を感じさせる楽曲。だがどれも共通してキラキラとしているような、子ども心を呼び起こすものばかり。心地良い時間をサプライし皆を虜にする彼ら自身も楽しそうに揺れている姿が、いっそう気持ちを純度の高いものにする。いつかここでライブを観た人たちは、今日GOODWARPのステージに立ち合えたことを誇りに思うことだろう。かりゆし58の曲を聴いていると、人に寄り添う歌とはきっとこういう歌なのだろうと思う。自分以外の誰かが歌っていても、轍のように刻まれた言葉をたどり自分の境遇が思い起こされ、改めてそのことに向き合う機会を得られるのだ。これが“歌の力”というものなのか。サクラメリーメンは音出しの時点でガッツリと盛り上げたのち、「待ちぼうけ」「ブルーバード」を披露。多幸感溢れるステージで、恐らく今日が楽しみ過ぎて眠れなかったであろうオーディエンスの目をバッチリ覚まさせる! そして凄まじい神戸コールが巻き起こり「サイハテホーム」へ! 途中、Vo./G.小西が「僕らは1年目から(このイベントに)出ていて、このイベントと一緒に育ったと思っています。僕らはこの街のバンドです。神戸で生まれ神戸で育ったこのイベントに出られて光栄です」と語る。水を得た魚のように生き生きとした表情を見せるメンバー達に“あぁ、彼らは本当にこの場所が好きなんだな”と実感する。

ESP BLACK Stageでは、ミソッカスがダンサブルかつハイセンスな楽曲でオーディエンスを踊らせていた。特徴的なキーボードの音と矢継ぎ早に紡がれる言葉の使い方が面白く、一際異彩を放つ才能を見せつけていた。またESP 10th Stageでは、もはやその存在だけでフロアをブチ上げるKEYTALK。Vo./G.寺中とVo./Ba.首藤によるダブルボーカル、移り変わるメロディやリズムなど緩急のある展開がクセになる「MABOROSHI SUMMER」。G./MC./Cho.小野は率先して前に出て煽りつつも「ケガのないように楽しんでー!」と呼びかけるのも忘れない。本日発売の「桜花爛漫」は新曲にも関わらず大盛上がり。知っているかどうかはもう関係ない。彼らにかかればどんなフロアも一瞬でダンスホールに変わるのである。再びワールド記念ホールに戻ると、今や押しも押されもせぬ実力派となったキュウソネコカミのお出ましだ。「DQNなりたい、40代で死にたい」ではその場にいる全員がコール&レスポンス! もはや彼らは神戸出身の若手バンド代表格と言っても過言ではない。その後ふらりと歩いていると、北海道のガールズロックバンドDrop'sを発見。骨太なサウンドと味わい深い楽曲は、全編メインディッシュ級の大ボリュームだ。次いで出会ったCrystal Lakeは、ヘヴィなサウンドでキッズ達を沸かせ、床をぶち抜かんばかりに飛び跳ねる! そこから怒髪天へ赴くと、汗の飛び散る熱いステージに大人の本気を見せつけられた。「楽しくなると呑みたくなるもの」と語るVo.増子よろしく、酒にまつわる歌詞が多いのはご愛嬌。ジャンルはもちろん、若手からベテランまでの混在具合が他に例を見ないほど広いあたりは、さすが“COMIN'KOBE”といったところ。

リハで「お客さんの声を返してくださーい!」と笑いと熱狂の渦を巻き起こしたのは、ワタナベフラワーだ。“神戸の神戸による神戸の為のワクワクロックンロールバンド”という宣言や「神戸の音楽は君と僕らで作るもんや!」という発言、更には「神戸ストラット」などの楽曲からも、地元に対する深い愛を感じる。彼らのように「一生懸命はやめられない」バンドが音楽を、ひいては地域を盛り上げていくのだろう。実行委員長・松原氏が組んでいるコピーバンドMUNA SEAがキッカケで知り合い、出演が決まったというCocco。この日はソロ形態でのライブだったのだが、なんと実は楽器が弾けないため、この日のためにピアノを練習してきたという彼女。どれくらい弾けないのかというと、どの鍵盤を弾けばいいかわかるようにシールを貼って印をつけているほど。ライブが始まる前は少し不安を持っていたファンもいたかもしれないか、いざ演奏が始まるとそれは一瞬で払拭された。リハーサルであることを忘れるほどの歌声で、すべての観衆を魅了する。彼女のライブを見れば、歌声に人の心を動かす力があることを身をもって知るだろう。披露した曲は「Snowing」「強く儚い者たち」、リハを含めれば全3曲。しかし彼女が私たちに残した感動は、例え数十曲を詰め込んだワンマンでも味わえないかもしれないほどのものだった。夕方のひとぼうStageには、カミングライダー・ピストン平尾が無事到着! ショッカー達の洗礼を受けつつも(笑)、旅を通じて感じたことを曲にして歌い上げる。もはや“COMIN'KOBE”が神戸だけに留まらないイベントと化しているからこそ、こういった機会も生まれるのだろう。永遠のパンクヒーロー、Ken Yokoyamaはいくつになっても輝きを放っていた。なんせ新旧入り交じったセットリストでありながら、年齢問わずあらゆるキッズ達を夢中にさせるのだ。きっと彼らがいる限り、パンクロックは鳴り止まない。そして一昨年、昨年に引き続き3年連続の出演となるドラマチックアラスカ。「松原さんにここのトリを任された。やるぞ! 神戸のドラマチックアラスカです!」と意気込みを語ると、1曲目の「リダイアル」へ。爆発必至のキラーチューンであるこの曲の始まりをアカペラで歌い上げたことに、ちょっと鳥肌が立つ。彼らからこのステージに立つ気迫を感じられたからだ。昨年“COMIN'KOBE14”で彼らを観たときは、ステージに立てることへの感謝を強く感じる内容だった。だが今年はそれだけでなく、自らが先陣を切ってを牽引していこうという意識が生まれたように思う。年毎に一皮むけていく姿に、頼もしさと多大な期待を覚えた。

やはりガガガSPを観なければ“COMIN'KOBE”は締められない! 「卒業」「祭りの準備」「国道二号線」「晩秋」など往年の名曲を詰め込んだセットリストに、オーディエンスのボルテージは始終MAX状態をキープ! しかしただ歌い上げるだけではなく、そこからは18年活動を続ける中で増した円熟味のようなものがにじみ出ている。だからだろうか、このときVo.コザック前田が話した言葉が忘れられない。それは「俺らは大したバンドじゃない。だけど1つだけ誇りに思っていることがある。生まれてから36年間ずっと神戸に住んでることや」という言葉。自分の街を誇りに思う人たちが、大切なこの場所で何を発信しようとしているのか。散々キツい作業をこなしながら、なぜ松原氏が“COMIN'KOBE”を続けるのか。その意味を考え、自分なりの答えを見つけたとき、あなたはもっと“COMIN'KOBE”を好きになるはずだ。

TEXT:森下恭子

 

<COMIN'KOBE15募金額(5/18集計時点)>
募金 4,400,863円
05:46⇒14:46チャリティーリストバンド 2,416,000円
05:46⇒14:46チャリティーリストバンド(太陽と虎販売) 19,000円
チャリティーオークション 174,000円
モンスターエナジー募金 143,017円
チャリティーマッサージ 30,000円
チャリティ光るうちわ 15,900円
夜の本気ダンス「チャリTシャツ募金」 100,000円
せっくす倶楽部「チャリティー缶バッチ」 15,000円
チャイルド・ケモ・ハウス募金 80,466円
チャイルド・ケモ・ハウス物販 46,450円
合計 7,440,696円

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj