全国15万部を誇る日本最大級のミュージックフリーマガジン on Web!!

twitter instagram

雨のパレード

テン年代のアートロックバンドが切り開いた“新しい場所”

PH_ameno昨年10月にリリースした2ndミニアルバム『sense』が耳の早い音楽ファンの間で広がり注目を集め始めている、雨のパレードが新作3rdミニアルバム『new place』を完成させた。前回に続いてkono(残響record社長/te')をプロデューサーに迎えた今作は独創的な世界観はそのままに、広い世界に向かって開かれたような感覚を持つ。より良いものを求めて、徹底的に研ぎ澄まされたメロディは万人に届く可能性を持ったものだ。細部にまでこだわったサウンドメイキングは、聴く者の五感を刺激して踊らせもする。音楽だけにとどまらない独自の活動を展開するテン年代のアートロックバンドが、ここからまた次なる新天地を切り開いていく。

 

●今回の3rdミニアルバム『new place』を聴いて、今まで以上にメロディが際立ったように感じました。

福永:メロディはかなり意識しましたね。(リスナーが)受け入れやすいメロディみたいなところを意識して、今回は作ったんです。

●そこを意識するようになったキッカケとは?

福永:前作の『sense』(2ndミニアルバム)では、自分たちの好きなようにやらせてもらって。でも今回に関しては、他の人の意見もちゃんと取り入れつつ制作したんですよ。

●前作・今作とkonoさん(残響record社長/te')をプロデューサーに迎えているわけですが、関わり方が前作とは違っていた?

福永:前作は、ほぼ既存の曲だったというのがあって。今回は他の人の意見も取り入れつつ「もっと良いものを仕上げていく」っていうっていうスタンスで、新たに曲を作り上げていったんです。

●具体的な指示があったりもしたんですか?

福永:基本的には「もっと良いものを!」みたいな感じで、抽象的な注文が多かったですね。それに対して、僕らも必死になって「もっと良いものを作らなきゃ!」という感じで取り組んでいって。何をしたら良いのかわからなくなる時もあるけど、細かく指示されるよりも自分たちのやりたいことをした上でもっと良いものが作れるので助かっています。

●何かを強制されるわけではなく自分たちで考えて、より良い方向に進めていけた。

福永:比較的自由にさせてもらっているので、ありがたかったですね。

●そこはkonoさんが“雨のパレード”というバンドの特徴を理解しているからこそというか。

福永:konoさんは本当に良いものは良いとわかる人だと思うので、すごく信頼していて。僕らに寄せてくれているところもあると思うし、本当にありがたいです。

●曲作りの上でも何か方向性が示されたりはしなかったんですか?

福永:ぼんやりとなんですけど「踊れるような曲に寄せていこう」みたいなものは最初の段階であって。そこから悩みつつ色々と作っていきましたね。

●今作からはここ最近で再び流行の兆しを見せているシティポップ〜AORのような匂いも感じたんですが、そういうところも意図していた?

福永:意図しています。そういうものをやってみたかったんですよね。自分たちなりに、今好きなジャンルを形にしてみました。

●Twitterのつぶやきを見ていると、福永くんが最近聴いているものが見えてきますよね(笑)。

福永:海外の若手アーティストはかなり聴いていて。“みんなも聴いてくれないかな?”と思いながら、毎日Twitterでつぶやいています(笑)。

●海外の同時代的なシーンの最前線にいるようなバンドとリンクしている感じがします。

福永:そこはかなり意識しています。色々と漁って聴いているので、「音色は絶対これがカッコ良い!」というものがあって。そういうものを自分たちなりにやっていたりしますね。次回作はもっと寄せようと思っているんですけど(笑)。

●前作もそうでしたが、音作りや音色に関しては福永くんがメンバーに指示していたりもする?

福永:前作よりも注文が増えて。音色からリズムや音使いまで色々と言っていますね。

●特にギターに関しては、前回も注文が多かったわけですが…。

福永:最近は本当に申し訳ないですね…(笑)。

●より注文が増えていると(笑)。

福永:(G.山崎)康介さんはメンバーの中で、耳が一番良くて。コードも読み取れるし、僕のやりたい音色を理解して出せる人なので助かっています。

●音に関してはBa.是永くんが一番、福永くんと感覚が近いんですよね。

福永:亮ちゃん(是永)とは感覚がわりと近いので、上手くやってもらっていて。ドラムに関しては最近色々と言っていますけど、前回よりも音作りに関して他のメンバーと相談するようになっていると思います。だから、みんなの個性もちゃんと出ていますね。

●以前のインタビューでは『Petrichor』(1stミニアルバム)の時はまだ模索していたところから、前作『sense』で自分たちのやりたいことが明確になったという話をされていましたが、今回はそこからさらに進んだ感じでしょうか?

福永:そうですね。あの時よりもっと深いところで、やりたいことをやれていると思います。

●曲の作り方も変わってきている?

福永:少しずつ色んなことを試していこうと思っていますね。今作は比較的セッションから作ったものが多いんですけど、次回作では弾き語りで持ってきた曲をそのままアレンジしたりもしてみたい。あと、今回は自宅でも色々やってみようと思って、曲になる前の“種”作りの段階から色んな機材を使ったりしています。サンプリングパッドも買ったので、今後はそれこそ僕が普段聴いているような洋楽みたいにワンショットのフレーズで変な音も色々と入れていこうと思っていて。

●曲作りでもどんどん新たな挑戦に取り組んでいるわけですね。

福永:常に変化を心がけていますね。作り方に関しても、凝り固まらないようにというのは意識しています。

●今回の収録曲は、どれも新たに作ったもの?

福永:M-2「encore」以外は、ほぼ全て新曲です。最初は「encore」を推し曲にしたかったんですけど「もっと良いものを」という話になって、それに負けない良い曲を作るのが大変でした。でも結果的に、全部が推し曲という感じになりましたね。

●ストックは使っていない?

福永:今回は「0から作ろう」ということだったんです。今までの経験を活かして、新しいものを0から作っていくっていう。

●曲作りはスムーズだったんですか?

福永:難産でしたよ。僕は曲を作るスピードがすごく遅くて…。でも前作のツアー中に、1ヶ月で3曲のペースで作るように言われていて。自分でも「無理でしょ!?」と思っていたんですけど、何とかできちゃいましたね(笑)。

●ちなみに4/10のTwitterで「2ヶ月ほど苦しめられてた曲にやっと終わりが見えてきた」とつぶやいていましたが…。

福永:それがM-1「new place」ですね。この曲は時間がかかりました。

●どういうところで苦戦したんですか?

福永:サビのメロディですね。メンバーともディスカッションしつつ迷いに迷って…、キーを何回も変えたんですよ。色々試して、やっとできた曲です。

●この曲が最後にできた?

福永:他の収録曲は全部録り終えた後に、「new place」だけは別で録ったんです。「もっと良い推し曲ができるでしょ!?」っていうことを言われて、ギリギリまで作っていて。楽器録りをしたその日に、ボーカルも録って…という感じでしたね。

●本当にギリギリまでやったと。この曲のサビではキャッチーなメロディに、“人には言えないいかれた過去を ここまで隠して生きてきたんだ”という歌詞が乗っているのが印象的でした。

福永:そこの歌詞についても、すごく悩みました。最初は思いっきりキャッチーにしようと思って作っていたんですけど、全然できなかったんです。ただの楽しい曲に、“ベイベー”という歌詞を乗せるというのも僕は受け入れられなくて。

●“ベイベー”もちょっと驚きましたね(笑)。

福永:そうですよね(笑)。この曲の歌詞では、自分のことをちゃんと書いてみようと思って。今までの曲はどれもシニカルに客観視した感じだったんですけど、ここではちょっと主観を意識して書いていますね。

●主観ということは、“人には言えないいかれた過去”がある?

福永:そうですね…色々ありまして。本当に人には言えないです(笑)。

●M-6「夜の匂い」に“いつかの辛い日々”と出てくるのも、この曲と通じるところからなと。

福永:「夜の匂い」は「new place」の前にできた曲で。ボーカルレッスンの先生や知り合いのライターの方に、「そういうものも作品として消化できるから」と言われたんですよね。だから少しだけ晒してみようかなと思って、そこのAメロに少しチラつかせたんです。

●それをさらに進めたのが「new place」ということなんですね。

福永:そうですね。

●自分のことを少しずつ歌詞に出せるようになってきている?

福永:たとえば友人の生い立ちを聞いたことで、より近い存在に感じたりもするじゃないですか。それと同じように、この曲を通じて“もっと聴いている人の近くになれないかな”と思ったりもして。そういうイメージで歌詞を書いていきましたね。

●自分の中を見せることで初めて、他人との距離も縮まるわけですよね。

福永:もっと近い存在になりたいという想いはありましたね。僕の場合、他者に向かう歌詞があまりないんですけど、今回はそこを意識していて。「new place」は本当に最後の最後でレコーディング前日の夜中にサビの歌詞を書いていたのもあって、特に意識しています。

●実際、聴いた人が自分を重ねられる歌詞にもなっていると思います。

福永:そうなってくれたら、ありがたいですね。

●歌詞の内容的には、音楽やライブハウスとの出会いみたいな意味にも取れるのかなと。

福永:そういう比喩にしている感じです。「new place」はわかりやすい歌詞にしようと思っていたので、“場面に連れて行く”っていう意味でAメロやBメロはわかりやすく表現していますね。

●実際は自分の内面的なことから発しているんだけれど、それをこういう比喩に置き換えていると。「夜の匂い」は恋愛的な内容にも受け取れますが。

福永:恋愛は意識していますね。すごくきれいな曲が作りたいというのがあって。

●きれいなバラード曲だからこそ、こういう歌詞にもなった。

福永:僕はバラードも好きなんですよね。邦楽だときれいなバラードを歌うような人たちが好きなので、「夜の匂い」はそういうアーティストの曲を意識して作ってみました。

●M-5「僕≠僕」も恋愛のことを歌っている?

福永:恋愛の曲ですね。今回は恋愛の曲にも取り組んでみようかなと思って。高校生の時以来、久しぶりに色々と書いてみた中で残ったのが「僕≠僕」でした。

●恋愛の曲を書くのは久しぶりだったんですね。

福永:初めて書いたのが恋愛の曲だったんですけど、数ヶ月後に客観的に読み返してみたら「あ、こじらせちゃってるな…」と思っちゃって(笑)。

●こじらせていたんだ(笑)。

福永:だから(恋愛の曲は)いったん避けようかなということになって。色々と経験してから、また書こうと思っていたんです。

●この歌詞は自分のことを書いている?

福永:いや、これはちょっと客観視している感じですね。振り切ってみようと思って、全部“あなたのせい”にしてみたんです(笑)。最初は“僕のせい”も入れていたんですけど、何かつまらないなと思って。

●実際は全部を相手のせいにしたりはしない?

福永:それはないですね。実際は全部、逆です(笑)。

●「僕≠僕」というタイトルはどんなイメージで?

福永:歌詞が仕上がった後に考えたんですけど、“あなたのせいにしている僕は本当の僕じゃない”っていう意味を込めています。

●この曲やM-3「bam」の歌詞はシニカルですよね。

福永:そうですね。あと、「encore」もシニカルかな。

●ライブでの情景に対して、“いつわりの熱”とか歌っていますからね(笑)。意識して書かないと、シニカルなものになってしまう?

福永:なっちゃうんですよね(笑)。実は「new place」のAメロも、最初はもっとシニカルな歌詞だったんです。でもそのままだと伝わりにくいかなと思って、もっとわかりやすいように書き直したんですよ。

●M-7「YES」はシニカルな表現もありつつ、すごくポジティブな曲かなと思いました。

福永:これは「自分はポジティブな歌を作れるんだろうか?」と悩みながら作った曲ですね。推し曲が全然できなくてどうしようかという時に、(歌詞のテーマを)「平和にしよう!」と思い浮かんで。「もう俺にはラブ&ピースしかない!」と(笑)。

●ハハハ(笑)。ラストのM-8「AM4:29」はインストですが、どういうイメージで?

福永:今回はアルバムを通して、全部が夜のイメージになっていて。“AM4:29”というのは、発売日(2015年7月1日)の夜明けの時間なんですよね。

●そういう意味だったんですね。

福永:だからこの曲は夜明けのイメージで、早朝の街のような音を作っているんです。個人的にポストダブステップみたいなものをやりたかったんですよ。

●同じくインストのM-4「inst / □」のタイトルは、前作『sense』に入っていたインスト曲「○」の流れから付けた?

福永:そうですね。今回は「□」にしてみました。僕はタイトルを決めるのが非常に遅くて…。今回も収録曲が決まってから並べて、文字の見え方でタイトルを決めたんです。記号があると締まる感じがするので、そこは意識しましたね。

●では、今作のタイトルを『new place』にした理由とは?

福永:このタイトルに関しては、「new place」という曲が大きいかな。聴いてもらえたら、明らかに前作とは違っているのがわかる曲だと思うから。常に変化をしていくというところで、このアルバムの象徴になっていると思います。

●自分たちの中でも、新境地的なところがある?

福永:ありますね。前回よりもメロディや歌詞を意識したし、新しい音色や楽器も取り入れたりして。自分たちの可能性も感じられて、もっと自由なんだなって感じました。

●リリース後にはツアーも予定されていますが、“肥大する夜”というタイトルに込めた意味とは?

福永:相対的な時間として捉えた時に、楽しい夜だと肥大するんじゃないかなと僕は思っていて。時間の感覚がわからなくなるような“肥大する夜”を、全国で作っていけたら良いなと思っています。

Interview:IMAI
Assistant:馬渡司

banner_228 new_umbro banner-umbloi•ÒW—pj