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FOUR GET ME A NOTS

湧き上がってくる想いと感情を歌と音に込めて

PHOTO_FGMAN結成10周年を経て、バンド初となるベストアルバムを春にリリースしたFOUR GET ME A NOTSが、5枚目となるフルアルバム『ASTREA』を完成させた。想いや感情と直結した12曲は、10年間培ってきた経験と技術と自信の上で鳴らされた、FOUR GET ME A NOTSらしさ溢れるみずみずしい楽曲ばかり。哀愁感溢れるメロディを更に磨き、ライブハウスで気持ちと気持ちを繋ぐ想いや熱を封じ込め、様々な表情で魅せる今作は、バンドの更なる進化と可能性を感じさせる名盤だ。

 

「歌でお客さんの気持ちを引っ張ることができてるのが、僕はすごく嬉しいんです。だから“もっと歌がうまくなりたい”とか“もっと歌いたい”と思うようになって、どんどん好きになって」

●3/29の下北沢SHELTER “BLINKS 5”-Follow your tracks-を拝見したんですけど、あの日のライブは…3人は前からそうでしたけどあの日は特に…本当にマイペースでしたよね。

3人:アハハハ(笑)。

●ワンマンだから特にお客さんが温かいという前提があるにも関わらず、その上をいくマイペースというか(笑)。でも“FOUR GET ME A NOTSらしさ”がすごく伝わってきて。これはいい意味なんですけど、“前はもっとがんばってたのにな”って思いました。

石坪:ワハハハハ(笑)。わかります(笑)。あの日のライブからというわけではないんですけど、最近は決めたMCとかしないし、力を入れ過ぎないというか。

阿部:まあ時と場合にもよるけどね。でもあの日は特に…マイペースにやり過ぎちゃったかな(笑)。でも確かに、最近は変に気を張るようなことはなくなってきたかもしれない。

石坪:やっぱりその方が楽しいですよね。

●ああ〜。

石坪:自然体というか。その方が伝わるだろうし。俺らの場合はですけどね、飾ったりしても嘘っぽくなるじゃないですか。

高橋:それに、飾ったりすることを器用にできる3人じゃないという。

●あ、そうか。

高橋:そもそも正直なんだから正直にやろうっていう。“できないんだな”って(笑)。

石坪:流れやMCを決めたりすることも大事なんだろうけど、そういうことも含めて色々な試行錯誤を経て、一周まわって今のような感じになったというか。自分が観る側になったときもそう思いますし。

高橋:でもMCに関しては、私が自然体になるととっ散らかるので(笑)、気をつけてます。

●ハハハ(笑)。

阿部:でも結局ライブをやると高揚してドーン! となっちゃうんですけど、それは自然なことで。無理にテンションを上げるようなことはやらなくなりました。もう30代になったし、どっしり構えたライブにした方がいいのかなって最近は思いますね。

●なるほど。最初にそういう話をしたのは、実は最近のライブの印象と、今回の5thアルバム『ASTREA』を聴いたときの印象が、すごく近かったからなんです。

石坪:ああ〜。

●今作は振り切れている極端な曲が多いと思うんですけど、“そのまま”とか“ありのまま”とか“喜怒哀楽のどれか”みたいな曲が多い上に、最後の曲M-12「All is simple」ではまさにそのままのことを歌っているという(笑)。

3人:ハハハ(笑)。

●FOUR GET ME A NOTSは作品ごとにその時々の心境を詰め込んできたと思うんですけど、それが今作はより濃くなりましたよね。

石坪:まさに今作は最近作ったんですよ。下北沢SHELTERの後に作り始めて、マスタリングが終わったのが6/1。

●めっちゃ最近だ!

石坪:ネタはある程度はあったんですけど、曲としてはほぼまとまっていなくて。3人がそれぞれ持ち寄って、ガーッと作ったんですけど。

●先ほど「ありのままの心境が出ている」と言いましたけど、感情に直結している曲が多いですよね。それも歌詞だけじゃなくて、メロディとアレンジと、もっと言えば歌い方も気持ちに直結しているというか。例えばM-6「Here we go」の高いテンションなんて、無理に作ろうとしたら伝わらないような純粋なものだと思うんですよね。

高橋:「Here we go」はもう、ライブでみんなと一緒に歌いたくて作った曲なんです。“こういう曲があったら絶対に楽しい!”と思って、ゴリ押しして。

●なるほど。そういう極端な例でいうとM-10「Now」とかもそうですよね。30秒弱しかない短い曲ですけど、瞬間的な感情が凝縮されていて、言いたいことがスッと伝わってくる。M-4「Void」とかM-7「Hate」も、本当に感情の濃度が高い。

石坪:曲を作っているときは特に意識していなくて“いい曲にしよう”としか考えていなかったんですけど、その曲の魅力を最大限引き出そうとした結果、それぞれが振り切れたんでしょうね。

●FOUR GET ME A NOTSのパブリックイメージとして“哀愁感”がずっとあったと思うんですが、今作は“哀愁感”を感じる曲はそこまで多いわけじゃなくて。

石坪:今回も歌詞は後付けなので、その曲で表現しようとしている気持ちや感情をアレンジの段階から細く詰めたわけではないんです。もちろん曲のアレンジに関しては、3人でやり取りをしながら作っていったんですけど、そのアレンジのイメージに合う歌詞を付けていったというか。

阿部:でも確かに、今回の審査基準は“グッとくるか/こないか”みたいなところはありましたね。サビでもいいし、ギターでもいいんですけど、何かしらひっかかるもの…グッとくる部分がなければボツになっていたんです。そういう意味では、M-1「Sail」とかは速攻で「いいね」って3人のイメージが合致したんです。

●それと、ボッチ(石坪)の歌の表現の幅がすごく拡がったような気がしていて。思い切り声を張るんじゃなくて、情緒があるというか。

高橋:なんか、聴いていて思ったのは色気が出てきたのかなと。

●あ、そうそう! 湿度がある!

石坪:ハハハハ(照)。

高橋:いつもは「オラーッ!」って感じだったんですけど、今回はすごく肩の力を抜いて歌えていて。録ってるときもブースの外でずっと聴いていて、少し違うなと思ったら「もうちょっと笑顔で歌って」とかは言いましたけど、基本的には本人の力だけでやっていて。だから今回は、曲が持っているイメージを3人が共有できてきたからこそのアルバムになったのかな。

●うんうん。

高橋:優しい歌は本当に優しくて湿気がある感じで歌えているし、逆にカラッとした歌はカラッと歌えているし、重たいものは力強く歌ってるし。表現力が増したなって思います。だからあまり口出しもせず。

石坪:歌うのが更に好きになったのかもしれないです。

●お!

石坪:最近、1人でも弾き語りをやるようになったんです。まだギターは未熟なんですけど。4thアルバム『AUTHENTIC』(2014年1月)を録ってから1年半くらい経っていますけど、その間で自分なりに歌い方とかを色々と試してきたんです。

●弾き語りをやるようになったのは、なにか理由があるんですか?

石坪:単にやりたかったからだけです。僕、ギターは全然弾けなかったんですよ。今までも曲を作るときはベースの弾き語りで。

●はなわみたいな?

高橋:そうそう(笑)。はなわでいつも伝えてきて、私たちも「うーん…?」って。

石坪:頭の中でギターは常に鳴っているんですよ。で、智恵が「こんな感じ?」って弾いたら「それそれ」って。でも、歌がどんどん好きになってきたから、やっぱりギターも弾けるようになって、弾き語りのシンプルな構成でやってみたいなと思ったんです。

●歌がどんどん好きになっているということが今作に表れていると。

石坪:うん、そう思います。あと今回は特に“曲に寄せて歌いたい”という想いもあったんです。曲が持つ雰囲気とか表情とか。そこは意識しましたね。

●歌がどんどん好きになったのは、どういう理由なんでしょうか?

石坪:うーん、なんだろうな…。ライブとかでちゃんと気持ちを込めて歌えていると、やっぱりお客さんの表情に出てくるっていうか。

●ああ〜。

石坪:歌でお客さんの気持ちを引っ張ることができてるのが、僕はすごく嬉しいんです。だから“もっと歌がうまくなりたい”とか“もっと歌いたい”と思うようになって、どんどん好きになって。それが楽しいですね。

阿部:今回のボッチは曲に合った感じの歌い方ができているからいいですよね。濡れ感も出てるし。大人になったのかな(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

高橋:なんか曲作りの段階から“ボッチは今回歌いたいんだな”と感じていたんです。だから割合的に、私はあまり前に出ていない曲が多いと思うんですけど。

●そういうことか。

高橋:特にそういう会話は交わさなかったんですけど、“歌うのが楽しいんだな”って感じていて。結果的にそういう曲が揃ったし、私は今はどちらかというと「Here we go」のような“ライブで楽しみたい”というモードなんです。歌うのも好きだしギターを弾くのも好きだけど、お客さんと共有する時間を作りたいという気持ちが結構強いんです。だからそれがバンドとしていい感じに混ざったんだと思います。

●自然にバランスが取れていたんですね。

高橋:もちろん歌を歌って気持ちが伝わるのも嬉しいですけど、ライブには自分たちのすべてが詰まっているということが、長くバンドをやってきて気づいたことなので。「自分たちがやりたい曲は?」と考えたとき、何をやってもFOUR GET ME A NOTSだという自信というか確信がある上で、振り切った曲もできるんじゃないかなと思ったんです。

●そういう意味でも、ジャンルとかはもう関係ない感じですよね。

石坪:うん、ジャンルはまったく意識してないです。やりたいこととか、自然に出てきたものをやるっていうスタイルにいつの頃からかなりましたね。3rdアルバム『BLINKS』(2013年3月)辺りからかな。

高橋:『BLINKS』があって、その後に『AUTHENTIC』でプロデューサー(渡邊忍/ASPARAGUS)さんが入ったことで“これでいいんだ”と納得できた部分だったり、“こういうアプローチの方法もあるんだ”と学んだ部分も多くて、それが今作に繋がっていると思います。

interview:Takeshi.Yamanaka

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