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Nothing’s Carved In Stone

悪魔をも笑わせる、完璧にして慈悲深い音。

PH_NCIS_main渋谷CLUB QUATTROにて開催した3ヶ月連続の“Monthly Live at QUATTRO”を大成功させ、今夏のフェスでは今まで以上にパワーアップしたステージでオーディエンスを熱狂させているNothing's Carved In Stone。常に高次元なライブを展開してきたにも関わらず、彼らのここ最近の成長は目覚ましく、ライブのたびに我々を驚かせ、そして魅了し続けている。そんな彼らが完成させた7枚目のアルバムは、これまでのイメージを根本から塗り替えるかのような、想像を絶する成長を遂げた彼らの生々しい躍動を感じることができる。悪魔をも笑わせる完璧にして慈悲深い音は、時代と我々にとっての福音となるだろう。

 

 

 

INTERVIEW #1

「4人で気持ちを表現するようなライブができるようになったという感じがあって、それはバンドの成長としてお客さんと共有できたんじゃないかな」

●3ヶ月連続の渋谷CLUB QUATTROでの“Monthly Live at QUATTRO”の後はしばらくはライブがなく、夏は色々とフェスに出る機会がありましたよね。この夏は“ライブ欲”みたいなものを爆発させている感じですか?

生形:そうですね。まあでも、自分たちが主体でやるライブとフェスはちょっと感覚が違うんですけどね。今年は特に慣れ親しんだフェスが多かったので、どこもホームみたいな感じでできました。

●リラックスして挑めたと?

生形:リラックスとはまた違うんですよ。トリをさせていただくことも多くて、そういう意味でのプレッシャーなんかもあったんですけど、でもそれにしてもホームっていうか、勝手がわかっているフェスだったので、楽しくできました。だから“ライブがやりたい!”という気持ちはあったけど、そこまでがっついたライブはしてないです。フェスってやっぱり、肩に力を入れると空回りしちゃうことも多くて。それよりもやっぱり、いつにも増して歓声が多かったし、そういうところにも助けられてすごくいいライブができてます。

●“Monthly Live at QUATTRO”はバンドが大きく変わったという印象があったんですけど、自分たち的にはあの3回はどういうライブだったんですか?

生形:俺的には、すごく大変だったけど意味がある企画だったと思います。

●大変だった?

生形:うん。大変でした。演ったことがない曲も1曲あったし…「Terminal」(4thアルバム『Silver Sun』収録)なんですけど、アルバムのツアーのときには再現できなくて抜いたんですよ…でも“Monthly Live at QUATTRO”でやってみたら、普通にできましたね。

●お。

生形:その辺の確認もできたっていうか。あとは3rdアルバム『echo』の曲ってものすごく難しいイメージがあるんです。だから今まで演ることが少なかったんですよ。どんどん省いていっちゃって。でもやってみたらやってみたで、すごくかっこよく、難なくできたなって。それはバンドが成長したからかもしれないし…そういうことは色々と感じましたね。

●それは技術的なところではないですよね?

生形:うん。グルーヴの出し方だと思う。4人の合わせ方がすごく成長したっていうか。なんだかんだ言っても、もう7年目ですからね。『echo』を出したときは3年目だったので、“4年経ったらこんなにもバンドが変わるものなのか”とも思ったりしました。

●現時点のNothing's Carved In Stoneを確認できたと。

生形:だから今年の前半はそういうことがすごく多かったんです。フェスにしても、最初は真っ昼間の小さいステージから始まっていたものが、トリをやらせてもらったり、最初の頃と比べたらお客さんも本当にたくさん集まってくれたり。バンドの成長をすごく感じることができた上半期だったというか。

●充実した日々を過ごせていると。拓さんは、フェスは楽しくやれていますか?

村松:そうっすね。色々と思うところはありましたけど、バンドがちゃんと成長できている実感がありますね。ライブで俺たちが何を見せたいかっていうのが、どの場所でも、どんなセットリストでも、どんなに限られた時間でも、ちゃんと見せられるように成長できてるっていうか。それがすごくお客さんにも伝わっていると思うし、だからお客さんと一緒に楽しめたかなっていう。

●うんうん。前に拓さんには言いましたけど、“Monthly Live at QUATTRO”は拓さんのステージが大きく変わったタイミングだったと思うんです。歌や音を通して気持ちが伝わってくる度合いがどんどん強くなったというか。それがフェスでも活きている?

村松:そうですね。“Monthly Live at QUATTRO”の前後で、俺たちのライブを観に来てくれる人たちが、ライブで何を観たいのか、何を感じたいのかがわかったような感触があったんです。今までわかってなかったわけじゃないけど、そこで自分がどういう風にライブに挑んでいくかっていうところでいい作用になってて、それをフェスでもちゃんと活かして形にすることができたというか。Nothing's Carved In Stoneとして、4人で気持ちを表現するようなライブができるようになったという感じがあって、それはバンドの成長としてお客さんと共有できたんじゃないかなって思います。

 

INTERVIEW #2

「もちろん構築する部分がこのバンドの良さっていうことはわかっているんですよ。でもそれだけじゃない部分も出そうと思った」

●今回リリースとなるアルバム『MAZE』ですが、制作はいつ頃からやっていたんですか?

生形:最初に2曲だけ録ったんですよ。2014年の年末くらいかな。M-1「YOUTH City」とM-11「Thief」なんですけど。

●あ、真逆なタイプの2曲ですね。

生形:うん。最初に、シングルでもいいくらいのものを作ろうと思って。

●確か「YOUTH City」はライブで少し演ったことがありましたけど、今回のアルバム『MAZE』を聴いた印象は、「YOUTH City」をライブで少し聴いたときからの想像をはるかに超えるものだったんです。

村松:どういうことですか?

●我々リスナーからすると、過去にリリースした6枚のアルバム収録曲を3回にわけて演るという“Monthly Live at QUATTRO”があり、8月にはベスト盤とも言えるライブアルバム『円環 -ENCORE-』のリリースがあって。

生形:はいはい。

●時系列的にはそういう経緯があったわけで。要するに我々は、アルバム『MAZE』が出る前に、Nothing's Carved In Stoneのこれまでを全部おさらいしてるんですよね。

村松:うん。

生形:ああ〜。

●“Nothing's Carved In Stoneとはこういうバンドだ”みたいなものが1回見えている。そういう経緯が影響している部分も大きいと思うんですけど、『MAZE』は今までとかなり変わった感触があって、バンドとして大きな一歩を踏み出した作品だと僕は受け取ったんです。

村松:ほう。

●1年に1枚ずつアルバムを出してきましたけど、アルバム毎の変化は今回がいちばん大きいような気がしていて。全然守りに入ってない。乱暴に言えば、すごく好き勝手にやっているし、それまでのバンドの定番を更新しようとしている。

生形:うんうん。

●びっくりしたんですよね。言葉では説明しづらいんだけど、情景が一瞬で見える曲が多くて。こんな曲があるのか? っていう。音やアレンジやグルーヴは確実に我々の知っているNothing's Carved In Stoneなんですけど、全体で見たときにすごく新しい感じがする。

村松:Nothing's Carved In Stoneというキャラクターがあるじゃないですか。今まで4人で作ってきたもので、最近はそこにオーディエンスも加わって。ずっと聴いてくれている人たちは俺たちのどこの部分が好きで、俺たちもどこを大切にして…っていうキャラクターがあると思うんですけど、今作はそういうものに囚われずに、そういうフィルターを通さずに作ることができたんじゃないかなっていう印象が強いかな。歌詞に関してもそうだし、曲のアレンジにしてもそうなんですけど。同期が薄くなっていることだったり、色んなことを含めてそんな気がします。

●ほう。

生形:うん。今まででいちばん何も考えずに作ったアルバムなのかもしれないですね。“こういうアルバムにしよう”だとか“こういう曲が増えてきたから違うタイプの曲を入れよう”とか、いつもはそういうことを考えてストーリーを作るんですけど、今回はあまり考えなかったかな。

●へぇ〜。

生形:あとはね、アレンジがすごく早く終わった曲があったんですけど、そういう場合は俺、最後まで練ることが多かったんですよ。でも今回はそういうこともなくて。それはここ何年かの経験で“そういう作り方もありなんだ”と思えたからなんです。

●あ、そうなんですね。

生形:今までは徹底的にアレンジし尽くさないと気が済まなかったんです。でもそうじゃない曲も必要かなと思ったり。

村松:余白だよね。そのときの勢いとか。

生形:そうそう。

村松:バンドが成長したからなのかどうかはわからないけど、そういうものに目が向くようになってきたよね。

●その話を聞いてふと思ったんですけど、僕が考えるNothing's Carved In Stoneの魅力の1つに“構築美”というものがあって。計算し尽くして複雑なものを幾重に重ねて美しい情景を描く、みたいな。でも今回はそういう要素がちょっと少ないというか、一見雑にも感じるんだけど、その結果が美しく見えるというか。

生形:そうですね。「YOUTH City」なんかはアップテンポの曲だけど、実はギターのアレンジをものすごく考えているんですよ。M-10「Gravity」も。だけど一方でM-7「Discover, You Have To」なんかはその日に作ったアレンジをそのまま入れたりしていて。パッと作って弾いたギターのアイディアをそのまま。M-2「The Poison Bloom」もそうだし。ちょっとLed Zeppelinっぽいというか。Led Zeppelinって、ジャムを基盤として作ったりしている曲がすごくたくさんあったり、かと思えばKashmirみたいなすごく複雑に構築された曲もあって。ウチは構築する部分ばかり出してきたんだけど、無い部分もどんどん出していいんじゃないかって。

●ほう。

生形:もちろん構築する部分がこのバンドの良さっていうことはわかっているんですよ。でもそれだけじゃない部分も出そうと思ったというか。さっき拓ちゃんも言ってたけど、一発目のテイクで出たものってなんかよかったりするんですよね。そういうものを曲作り中にも入れたいと思ったというか。個人的には、椎名林檎さんのレコーディングに参加させてもらったのが大きかったんです。

●というと?

生形:アレンジも含めて一発なんですよ。その日に初めて会った人たちと、まずは音出しで1回まわして、リハを1、2回やって、次はもう本番録り。何も話してないんです。

●ええっ!?

生形:一発で「せーの」で録って終わりなんです。俺が関わらせてもらったどの曲も。

●うわ!

生形:“これでいいのか?”って俺は正直思っていたんですけど、後から聴き返すとすごくおもしろいんですよね。まったく想像していなかったギターソロを自分が弾いていたり。一切制約がないので、バッキングを聴いていてもそのときの想いが乗っかっているというか。“ここで決めなきゃだめだ!”っていう。

●ああ〜。

生形:ギターとしては、その経験が大きかったですね。それをNothing's Carved In Stoneに持ってきたくて。それは俺個人の話ですけど、たぶんひなっち(日向)とかはいろんなところでそういう経験しているんですよ。そういうものをNothing's Carved In Stoneのギターのサウンドに入れたのは今作からっていう。

●そういういい経験があったんですね。アーティストの底力を試される現場というか。

生形:そう。しかも常に崖っぷちに居るというか、もうやるしかないっていう。だから録ったものを聴くとすごくおもしろいんですよ。

 

INTERVIEW #3

「デイヴ・グロールやリアム・ギャラガーみたいに、声を張って出す歌い方が俺の美学だったんだけど、そればかり追求するのはやっぱり人の真似だから」

●先ほど「アルバム毎の変化は今回がいちばん大きいような気がする」と言いましたけど、そういう実感はあるんですか?

生形:大きく変わったとは思っていないんですけど、個人的にはさっき言ったようにアレンジを一発で入れた曲があるということが、すごく大きな変化ですね。

●今までの生形真一からしたら考えられない?

生形:絶対にないです。

●あ、絶対にないと。それは大きな違いですね。拓さんはどうですか?

村松:俺のギターはどっちかというとそっち側というか、もともとその場で決めてレコーディングしちゃうようなアプローチだったんです。だから2本のギターの方向性としては近くなったような気がする。

●うんうん。

村松:だけど歌に関しては、作る段階から音作りとかマイクワークとか、前よりもより細く気をつけるようになった気がしますね。

●ほう。

村松:自分の気持ちとか云々の前に、できることを色々と潰そうと思って。サウンドの取り組みっていうか、そういう部分での視野はかなり広くなったと思います。より繊細に。

●なるほど。2人の話を聞く限り、今回のアルバム制作のテンションはとても良かったと想像するんですが。

生形:うん。すごくいい状態で作れました。

村松:今回はすごく楽しかったんです。7枚アルバムを作った中で制作はいちばん楽しかったです。

●あら。

村松:今までは“いい”と思っていても“自分として足りてるのかな?”って色々と悩みながら作っていたから。今回もそういうことはありましたけど、そういうことも全部ひっくるめて楽しめたかなって。すごくフリーだった。

●今作の大きな特徴として感じたことがあったんですけど、歌やメロディに“いなたさ”があるいうか、日本の80年代の雰囲気を感じるというか。具体的な例で言えば80年代前半のYMOとか、あの辺り。

生形:ほう。

村松:ハハハ(笑)。

●メロディや歌に艶っぽくて色気があって。特にそういう雰囲気を感じたのはM-5「デロリアンを探して」、M-6「MAZE**」、「Discover, You Have To」、「Thief」からなんですけど、なんか“歌謡曲”とまではいかないんですけど、それに近しい日本人特有のポピュラリティを感じたんです。前からNothing's Carved In Stoneは“いなたさ”に敏感で、曲作りに於いてダサくなる手前の絶妙なバランスを保っているバンドだと思うんですが、今作の歌やメロディの感触が、今までにはないものだった。

村松:真一と2人でメロディを書くのでどうかはわからないですけど、俺は結構80年代の音楽が好きだから、そういう影響はあるかもしれないですね。

●ああ〜。

村松:メロディを書くときに俺が個人的に思っていたのは、今までよりも音域を下げたりとかして、もっと自分の音域が活きるラインが作れないかなということで。

●確かに。低い。

村松:デイヴ・グロールやリアム・ギャラガーみたいに、声を張って出す歌い方が俺の美学だったんだけど、そればかり追求するのはやっぱり人の真似だから。もっと俺のオリジナリティを突き詰めたとき…俺の声も楽器だから…この楽器に合ったメロディはどこなんだろう? というアプローチを結構したんですよ。

●うんうん。

村松:その上で、さっき言ってもらった80年代の雰囲気みたいな好みが乗っかってるんじゃないですかね。「MAZE**」は真一が書いたメロディなんですけど。

生形:そういえばさっき言われた曲は、「MAZE**」以外は全部拓ちゃんのメロディだよね。

村松:うん。それに「MAZE**」も、上がってきたときのメロディのテイストは80年代っぽさがあったんです。だから俺はそれが気持ちよくて和っぽさを入れ過ぎちゃって、メンバーに止められた。

●和っぽくなり過ぎて?

村松:そう。「うーん、拓それやり過ぎじゃね?」みたいな(笑)。だから変わったという印象があるのは、そういう要因な気がします。メロディに関してですけど。

●ということは、歌いやすさとか自分らしさを追求する過程で、拓さんのルーツが自然に出てきたというか。

村松:うん。それはもう無条件でそうなっちゃってるんじゃないですか。やっぱり自分が“いい”と思っているものだから。

●ちなみに生形さんが歌詞を書いたのはM-2「Milestone」とM-4「Perfect Sound」ということですが、どっちもすごく生形さんらしい歌詞ですね。特に「Perfect Sound」はバンドの等身大の歌詞がジーンとする。

村松:「Perfect Sound」は、俺もレコーディング中にめっちゃ背中を押されました。

●「Perfect Sound」で歌っていることは、拓さんが前に言っていたことと符号するんですよね。前号のインタビューで拓さんが「今年の3月頃は落ち込んでいた」と言っていましたけど、「Perfect Sound」はその気持ちを解決させる答えというか。

生形:うん。でも、俺がいつも書くことですよね。「Isolation」(1stアルバム『PARALLEL LIVES』収録)のときから変わってない。それ以外に書きたいことが出てこないんです。

●こういう“バンドの意志”を書き続けること自体が、この曲で歌っていることを体現しているように思うんです。常にこういうことを想い続けることが大切というか。

生形:それはやっぱり、今までバンドをずっとやってきて思うことですね。トム・ヨークみたいなのもかっこいいけどね。ちょっと湿ったようなことを歌っているバンドと、カラッとしたような姿勢のバンドというタイプに分けるとしたら、俺はカラッとした方が好きだなって。

●うんうん。

生形:若い頃とかJimmy Eat Worldの歌詞を読んで、ちょっとクサいけど確かにアガるなっていう感じがしたし、THE BEATLESもそうですごくシンプルな言葉なのにグッとくるというか。そういうのが好きなんです。

●歌詞に関する難しさや考え方は変わってきましたか?

生形:やっぱり難しいですよね。「Milestone」とかはすごく時間がかかったんです。やっぱり日本語だから、まず言葉をリズムに乗せることに時間がかかったし、聴かせたい言葉をどこに乗せるかとか考えるとキリがなくなっちゃって。でも歌詞を書くのは楽しいですね。最初は何から手を付けたらいいのかわからなくて悩みますけど、画を描くのと同じで、見えてくるに従ってすごく気持ちが盛り上がってきて、どんどんアイディアが出てきて。

●生形さんは以前のインタビューで「自分の気持ちをさらけ出すのはやっぱり恥ずかしい」とおっしゃっていたじゃないですか。例えば前アルバム『Strangers In Heaven』で言うと「Shimmer Song」は生形さんの作詞で、あの曲はライブでお客さんが一緒に歌ってくれる曲になりましたよね。元々は自分の内面を吐露したものが、ああやって自分以外のものになるというのは、個人的にも大きなことだと思うんですが。

生形:そうですね。その前の「きらめきの花」(5thアルバム『REVOLT』収録)も近い感覚なんですけど、やっぱり日本語の曲はみんな歌ってくれてて、そういう光景を見ると嬉しいですね。ただ、今回の「Milestone」は歌えない気がする。言葉が詰まり過ぎてて。というかね、そういうことも考えちゃうんですよ、歌詞を書きながら(笑)。

●歌えないかな? サビとかキャッチーだし、歌えそうな気もしますけど…。

生形:かなり速いし、音程も相当高いですよ? …なんてことをも考えながら、歌詞を書いたりしてます(笑)。

 

INTERVIEW #4

「“憧憬”という言葉が結構表してるなって思ったんです。すごくピュアで、いつまで経っても飽きないし、憧れを求め続けているところ」

●あと、今作でいちばん衝撃を受けたのはM-9「Go My Punks!!!!」なんです。

生形:ポップですよね。

●この曲は僕、完璧だと思うんです。

村松:マジすか?

●今までのNothing's Carved In Stoneのパブリックイメージを覆す明るさがあるし、バンド自身のことを歌っている歌詞だし、歌詞としてのおもしろさも携えてて。すごくポップな曲ですけど、僕の解釈としては涙を流しながら笑っているような曲で。めちゃくちゃ落ち込んだときに聴きたい曲。

村松:ちょっと気が楽になりますよね?

●うん、めちゃくちゃ楽になります。しかもこの曲5分もあるのに、まったく長いと感じさせないんです。終わり方も潔いというか。

生形:ああ〜。うんうん。

●もう1度言いますけど、この曲完璧ですわ。

2人:アハハハハハ(笑)。

村松:Nothing's Carved In Stoneでこういうサウンドアプローチは新しいんですけど、でもずっとメンバーの中にあったものですね。

●ほう。

生形:Battlesだよね。あの感覚。だからこの曲ができたときには“すごく新しいものができた”っていう手応えがあって。これだけポップなのにサイケで、ロックでもあるっていう。

村松:そう。本当に色んなものを含んでる。

●そうですね。なんでこんな曲ができたんですか?

生形:これはね、ひなっちが「こういうベースがあるよ」って持ってきて、そこから作ったんです。

●あっ、ベースなんですね。この曲はギターからだと思ってました。

生形:ギターもその場で閃いて付けたフレーズですけどね。

村松:俺がイントロで弾いてるギターも、ひなっちが「こういう音なんだけど」って何となく口で言ったりして。

●自分たち自身も、新しいという感触があったんですね。

生形:ありました。俺らとしては、ポップなんだけどマスロック的なイメージが強くて。だからかっこいいなと思って。

村松:すごくポップなんだけど、その振れ幅がおもしろいですよね。

●しかもさっき拓さんがおっしゃっていましたけど、歌のキーもすごく低いですよね?

村松:そう。これね、最初はもっと低かったんです。

●え?

生形:「さすがに低すぎるだろ!」ってね(笑)。

村松:最初は違うメロディだったんです。で、歌ったら「ちょっと低いね」ということで、メロディも変えて。

●しかも「Go My Punks!!!!」というタイトルもいいです。タイトルからは、結構マッチョなパンクを想像したんですけど、聴いたら全然爽やかで。でも歌っている内容はマッチョだという。

生形:ああ〜、そのバランスが。

●歌詞の“言葉の裏に潜んだ悪魔笑わせて”とかもすごくいい。この感じ。

村松:天才でしょ?

●あ、自分で言った。

2人:ハハハハハ(笑)。

村松:でも歌詞はすごく時間がかかりました。最初にできたとき、歌詞の完成度が高い割に毒が足りないんじゃないかなって。もうちょっと言葉が少なかったんですよ。

●はい。

村松:そういうバランスは気を使いました。単にポップなだけで終わらせたくなかったから。最初に真一に歌詞を見せて「絶妙なバランスのところにいきたいね」っていう話をして、そこから微調整をして。そこは意識しました。

●この曲は“車輪の4つある”という歌い出しですけど、今作にはM-5「デロリアンを探して」という曲もあるし、今のバンドに通じる共通した世界観が伝わってくるのもいい。

村松:なんかね、かっこいいものを探しているっていう感覚があるんです。

●ん? 表現に於いて?

村松:そうそう。俺たちは作っている立場ですけど、常にかっこいいものを探している感覚があって。例えば車とかは、しっくりくるんですよね。ガンダムとかも。

●“陸海空”とか、“宇宙”と書いて“そら”と読むところとかはガンダムですよね。“鉄の塊感”というか。

村松:うん、男っぽさというか。真一が歌詞を書いた「Milestone」に“憧憬”という言葉があるんですけど、その“憧憬”という言葉が結構表してるなって思ったんです。すごくピュアで、いつまで経っても飽きないし、憧れを求め続けているところがあって…まあそれは男だったら誰にでもあると思うんですけど…そういう感覚を歌詞で表現するとき、俺の場合は車とかがしっくりくるんです。

●ああ〜。

村松:“トランザム”とか。別に車じゃなくてもいいんだけど“ツバメ”とか。言ってみれば比喩の個性ですよ。だからたまたま車なんですけど、やっぱり“憧憬”なんですよね。「デロリアンを探して」もそうなんですけど、未来を探している…タイムマシンを探している感じとか、辿り着きたい場所がどこなのかを探している感じとか。“憧憬”ですね。

●あとMUSIC VIDEOになっている「YOUTH City」は早い段階でできたということですが、この曲はどういう経緯でできたんですか?

生形:元々は俺がデモを持ってきたんです。よくわからないですけど、デモの段階では“Zeppelin”って書いてありました。

村松:全然Zeppelinじゃないじゃん。

●ハハハ(笑)。すごくNothing's Carved In Stoneっぽい曲ですよね。

村松:Nothing's Carved In Stoneの旨味を凝縮した感じですよね。歌詞については、俺的には“東京”を歌っているんです。いろんなバンドが“東京”を歌っているじゃないですか。

●ああ〜、はいはい。

村松:俺はその感じが好きなんです。都会で生きる人たちの生活に馴染むと思うんです。

●千葉生まれですけどね。

村松:でもそういうのも大事じゃないですか。その街で生きる意味っていうか。その街は架空のものでもなんでもいいんですけど、そういうものに馴染む歌詞を書きたくて。

●いいですよね、“東京”を歌った曲。

村松:うん。夢も感じるし、逆に言うとマイナスな部分も孕んでいて。都会が持っているイメージそのままっていうか。そういうものを書きたかったんです。

●なるほど。今作はテンションがフルテンではない曲も多いじゃないですか。だからライブでどうなるんだろうっていう期待がものすごく大きいんです。

村松:うーん。まだツアーについては何も考えてないんですよね。でも楽しいツアーになるだろうっていう期待はあるんですよ。

生形:演ってみないとわからないですけど、かっこよくなるんじゃないかな。やっぱり「ライブの方がいい」って言われたいし、そういう想いは常にあるから、いいツアーにしたいですよね。

●Nothing's Carved In Stoneは絶対にライブの方がいいでしょ。あ! いやいや! CDもめちゃくちゃいいんですよ! ギリギリの差、僅差でライブの方がいいですよ! 結構高いレベルでのせめぎ合いですよ!

2人:アハハハハハ(笑)。

生形:どうやったらライブが良くなるかって、メンバー全員が感覚的にはわかっているつもりなんですけど、演奏が合うとか合わないとかじゃなくて。それももちろん重要なんですけど、そこ以外のところなんですよね。

●そうですよね。

生形:そこを間違わずにやっていけば絶対にライブは良くなるだろうし、今回のアルバムの曲たちもかっこよくなるんじゃないかなっていう手応えがありますね。生々しい曲があるからこそ、更におもしろくなるような気がしています。

村松:個人的には、すっげぇ熱く歌っているけどすっげぇ平熱で弾かなきゃいけないギターとかが今回多いんですよ。だからちゃんと曲を乗りこなせるようになったらいい表現ができるかなって思います。今作の曲すごく大好きなんです。だからツアーは楽しみですね。

interview:Takeshi.Yamanaka

 

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