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the audio pool

その迫力と表現力は 正にオーケストラの域

tap_A_Photo1stアルバムをリリースしてから、前バンドメンバーの再集結や死線をくぐった命懸けのアメリカツアー敢行など、実に濃い経験を積んできたthe audio pool。そこから得たものが発揮された2ndアルバム『Escape from the World』は、過去の作品とはアレンジアプローチや作曲の流れが大きく変わったという。“5 piece power pop orchestra”の名に相応しい、迫力と奥行きを持った彼らの音楽にどっぷりと浸かってほしい。

 

●1st Album『into the pool』から約3年半振りのアルバムリリースとなりますが、その間に様々な出来事があったそうですね。まず、新しく櫻田さんと渡辺さんが加入されたそうですが。

大森:2人は僕が昔やっていたバンドの元メンバーなんですよ。だから個人的には気心が知れた相手で。

●白井さんと野代さんは面識はあったんですか?

白井:僕らはなかったですね。

野代:真也(櫻田)さんと初めて会った時、すごくテンションが高くて驚きました…思わず一言目に「酔っ払ってるんですか」って言っちゃいましたからね。

●初対面の第一声で(笑)。その後アメリカツアーを敢行されたとの事ですが、どういった経緯で?

渡辺:僕はこのバンドに入る前に、アメリカツアーをやったことがあったんですよ。それで向こうのバンドで仲の良い友達がいて、冗談半分で「今度一緒にツアーを回ろう」っていう話をしていたんですよね。冗談っぽく話を進めていたら、冗談みたいにそのまま行っちゃいました(笑)。到着日にそのままライブをして、寝ずに移動して次の日もライブをして…着いてからも冗談みたいなスケジュールでしたね。

野代:そんな感じで2週間強くらい回りました。ただ初めは8箇所でライブをする予定だったんですけど、途中でいろいろあって6箇所しか行けなかったんです。

●何があったんですか?

櫻田:その年はちょうど数十年ぶりの大寒波が来ていて、路面が酷いアイスバーンになっていたんですよ。それでスリップしてハイウェイの脇に脱輪しちゃって。

白井:周りは横転したトレーラーがたくさんあったりして。本当に死線を越えてきた感じですね。

●事故だったんですか!

櫻田:他にも機材が壊れたり警察のガサ入れを食らったりといろいろありました。

●す、すごく濃い経験だったんですね…! 今作『Escape from the World』についてですが、収録されている曲の歌詞を見ると、大切な人との別れについて書かれているように感じました。

大森:前作を出してから、以前一緒にバンドをやっていた大事な友人が亡くなって…そこから「もっと音楽を続けなさい」っていうメッセージを受け取って曲を作っていきました。このタイトルには、“自分たちが狭く観ていた世界から殻を破って、もっと広い世界に出よう”という想いがあるんですよ。

●気持ちとしては、前を向いた作品になっている。

大森:そうですね。収録しているのは3年半の間で書いてきた曲で、時系列で並べているわけではないんですが、結果的にいちばん新しい曲が最後になりました。

●最後というと、M-12「impurity」ですか。

白井:作り始めている途中から、アルバムの最後になりそうな流れになっていましたね。

●中には過去に音源化されたものをAlbum Mixで入れているものもありますね。

櫻田:まずアルバムに先駆けてM-1「SCARLET」とM-10「タダキミ」の2曲をシングルで出したんですよ。M-11「Reunion」はこのメンバーになってからリリースした最初のCDに収録されていた曲ですね。

●じゃあ「Reunion」(再会)というのは、渡辺さんと櫻田さんが加入したところから来ている?

大森:まさにそうです。こうやって集まれたのがすごく嬉しかったので、割と明るい雰囲気ですね。

●サウンドもキラキラしてますもんね。今作のリード曲はM-2「Escape from the World」ですが、この曲ありきでアルバムを作っていったんですか?

櫻田:この曲と「タダキミ」が出来たくらいから、アルバムを固めて行けるかなという感覚になりました。軸になる曲ということもあって難産でしたね。

白井:頭でっかちなバンドなんで、良い落としどころに行き着くまでに時間がかかるんですよ。もっとも頭でっかちの主な原因が僕なんですが…(笑)。

●前回のインタビューでも、白井さんはかなり理論派という話をしていましたね。

白井:ただ、前作と今とでは曲作りの流れが大きく違うんですよ。いつも剣作(大森)が曲を作って全員でアレンジするんですけど、旧メンバーの時は各パートからなかなかアイディアが出て来なかったんです。

野代:当時はアイディアマンが1人しかいなかったのが、ナベさんが加わったことによって2人になったんですよね。理論派と感覚派みたいな。

渡辺:僕は音のイメージが映像で浮かぶ事が多いんですよ。例えば「水たまりを踏んだ時に、パッとしぶきが跳ねたような雰囲気で」とか。

白井:僕は具体性がないと進められないんで、最初に「どういう曲にしたいのか」をヒアリングをします。

●それぞれ対照的なんですね。

大森:ネタ出し側としては、持っていった曲が全然違うものになるのが楽しかったですね。“細かいところでもひとひねりあるぞ”みたいな。

櫻田:剣作の想像を超えてやろうと思ってます。それに前作とは音数もアレンジアプローチも違うんですよ。M-4「The World of Sorrow」を聴いてもらうと今までと違う姿が見られるんじゃないかな。

野代:全部人力で出しているから、ライブでも出来るだけCD音源を再現しているし、それがこのメンバーの強みだと思っています。

白井:ナベちゃんがバンドのキャッチコピーとして“5 piece power pop orchestra”という言葉を考えてくれたんですけど、それを聞いた時にすごく良いなと思って。僕は元々クラシックをやっていたので、オーケストラが出す音の迫力って、どんなバンドも敵わないんじゃないかとずっと思っていたんです。何よりオーケストラって常に生であって、それによる音の幅や奥行きがあるんですよ。でもこのメンバーなら、“これだけのことができるんだ”と感じたので。

●オーケストラに負けないくらいの音が出せると。

白井:僕らのアンチテーゼとして、簡単に出来てしまうことをしたくないという気持ちがあるんですよ。例えば、バスドラのように聴こえる音が実はピアノの鍵盤を叩いて出しているとか、自分たちの腕で出来ることをやるのがオーケストラだなという感覚ですね。

大森:ボタンを押すだけで鳴る音と、実際にそれを叩くのとでは、込める気持ちも伝わり方も全然変わってくると思うんです。僕らは音を届けるために音楽をやっているので、そこにちゃんと人の温度を入れたい。

●同じフレーズでもニュアンスが変わるでしょうし。

野代:だからこそ、それをライブで観てほしいですね。

Interview:森下恭子