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NESS

変人の、変人による、変人のための音楽

PH_ness三浦俊一(ex.P-MODEL)と戸田宏武(FLOPPY/新宿ゲバルト)による電子音楽ユニットに、内田雄一郎(筋肉少女帯)と河塚篤史(CONCERTO MOON)という強力なリズム隊が加わり2011年に結成された、NESS。前作『NESS 2』から2年半ぶりにリリースされる待望の新作タイトルは、誰もが予想したとおり『NESS 3』だ! だが、その音は相変わらず本人たちすら行く先がわからないほどに、予測不能な化学変化を見せる。ポストロック+プログレ+エレクトロというだけでは到底語りえない、「変人の、変人による、変人のための音楽」(三浦談)を作り上げた個性的すぎる4人に今回もユル〜く迫ってみた。

 

 

「ヒットチャートに乗っかってくるものと比較すると、とても変わっていますよね。SEKAI NO OWARIとは随分違うし…」

●今回は2年半ぶりの新作ということですが…。

内田:あっ、そうですか?

河塚:気付くと、そんなにも経っていたんですね…。

三浦:長かったですね。でも作り始めたのは結構早かったんですよ。今年の頭には作り始めていて、本来は2年ぶりくらいで出る予定だったんですけど、色々と事情があって半年遅れたという感じです。

●Twitterでのつぶやきを見ると、三浦さんは最後まで制作に苦しんでいたようですね。

三浦:僕は音楽を作るのがあんまり得意じゃないので、ギリギリまでやっていました(笑)。実は僕より2週間くらい前に、戸田の作業は終わっているんですよ。

戸田:他の予定があったので、〆切を本来より1ヶ月くらい前に設定していたんです。…結局、そこよりは2週間くらい遅れてしまいましたが。

●当初の予定よりは遅れてしまったと。“nシリーズ”(※M-3「n1」、M-6「n2」、M-9「n3」)があるからか、今回は戸田さんの曲が多い印象です。

三浦:nシリーズのおかげでしょう(笑)。

戸田:実質2曲くらいです(笑)。

●nシリーズはどれも短いですからね(笑)。

三浦:僕が聴いた限りでは、どれも楽曲として認めて良いものになっています。「n1」は純粋なノイズなんですけど、「n2」「n3」は音楽的なニュアンスも強いですから。尺は短いものだと30秒弱くらいとはいえ、良いところに良いものが入ってくれたという気はします。

●こういう曲を作ってみようと思ったのは?

戸田:元々は「2~3分くらいのノイズを1曲作ってみてはどうか?」と三浦さんに提案されたのですけど、それに対して「1分とか30秒くらいのものを3曲でどうでしょうか?」というふうに答えたんです。長めのノイズを作っても、昨今の再生事情的にあんまり聴いてもらえないんじゃないかという不安がありまして…。ライブだと動きがあるぶん問題は少ないかと思うのですが。

●nシリーズの“n”は何の略なんですか?

戸田:“noise”です。

内田:ポップなノイズだよね。

三浦:「n3」はノイズというよりもアンビエントに近いかな。

●3曲ともタイプが違いますよね。

戸田:せっかくなので、なるべく作り方は全部変えようと思ってそのように作りました。

●そもそも三浦さんは、なぜノイズの曲を作らないかと持ちかけたんですか?

三浦:制作前、ニュアンスとして参考にしようと思ったのが、想い出波止場の『金星』(1995年)で。あのアルバム、1曲1曲バラバラで、全然まとまっていないんですけど、ああいうスクラップな印象を残したかったんですよ。すごくポップな曲の後にノイズが入っていて、不穏な感じで終わっちゃうとか、ちょっと腑に落ちない作品にしたかったというのはありますね。

内田:…まぁ、全曲にノイズは入っていますけどね(笑)。

●確かに(笑)。

三浦:ただ、その部分だけを抽出したものというのをアルバムに入れたことがなかったので、一度やってみようかなと。ライブではたまにノイズのみの演奏もやるんですけど、やる度にお客さんが減っていっちゃうので、不安もありつつ…。

一同:ハハハ(笑)。

●M-1「Fes/Gate」は戸田さんと三浦さんの共作ですが、これはどうやって作ったんですか?

三浦:僕がリフを2つばかり作ったのをバンドで構成して、まず戸田以外の3人で録ったんですよ。それをある程度僕がエディットしてから戸田に「あとはお好きにどうぞ」って渡して。そしたら構成から何から全部変わって…(笑)。

●だから、作曲者のクレジットが「戸田宏武/三浦俊一」になったと。

三浦:本来、クレジット上では僕の名前が先に来るはずなんですけど、仕上がりが「これはどう聴いても戸田の曲だな」ということになっていたんで戸田を先に。元々とは全然違う曲になりましたね(笑)。

河塚:少なくとも僕がドラム録りの時に「こういう曲だな」と思って演奏した形とは随分違います。

内田:ベースも自分の音のはずなんだけど、全然覚えていない…。「あれ? こんなの弾いたっけ?」って(笑)。

●そのくらい原形からは変わっている。

戸田:変わった…んですかね? …魔が差したのかも知れません(笑)。

●魔が差したんだ(笑)。「Fes/Gate」というタイトルの意味とは?

戸田:“Festival Gate”のことです。表記の仕方はアナログシンセの“CV/GATE”という書き方にかけたんですけど…そこには特に意味はないです。曲調がフェスティバルっぽかったというのはあって。

●フェスティバルっぽかったんだ。

河塚:言われてみれば、確かにリズム録りの段階での曲の雰囲気はフェスティバルっぽかったですね。

戸田:僕の中にある黒人の血が…、SOULの血が出てしまったのではないかと(笑)。

●内に秘めたSOULの血が騒いだ結果、フェスティバルっぽくなったと(笑)。M-8「C99」も戸田さんの曲ですが、タイトルはどういう意味が…?

戸田:近頃、死んでいくような曲をよく作るので、これもそういう一環で“石炭袋”(※コールサック/Caldwell 99という暗黒星雲の別名)です。

●そういう由来だったんですね。内田さんと河塚さんの共作によるM-4「Nescio」も、あまり耳馴染みのない言葉ですが。

内田:このタイトルはラテン語で“私は知らない”という意味ですね。

●それは曲に由来しているんですか…?

内田:みんな自分のパートだけをやっているので、(最終的にどうなるのか)“私は知らない”っていう(笑)。

河塚:それもひとえに僕のせいで…。本来は1曲担当だったんですけど、本当に時間がなくて…。おぼろげなイメージとリズムパターンはあったんですよ。でもそのイメージを音にすることなく、リズムパターンだけを録って、後は(他の人に)投げちゃったんです。

●それを内田さんが形にした?

内田:ライブで(三浦と戸田)2人のノイズセッションを録音して、それと組み合わせたんです。

三浦:そうだ、ノイズ部分はライブレコーディングなんですよ。

●ライブレコーディングする際に、組み合わせるもう一方のイメージは知っていたんですか?

三浦:ある程度の想定はしていたんですけど、もっとシンプルなものなのかなと思っていたら、わりとややこしいのができてきて(笑)。まさかレゲエっぽい流れになるとは思ってもいなかったですね。

●本当に予想のつかない仕上がりになった。

河塚:僕はリズムだけ録って投げちゃったので、アルバムができあがってくるまでどういうことになっているのか本当にわからなくて…。というか、(アルバムに)入っているのかどうかすらもわからないっていう(笑)。だからタイトルを見ても「そういう曲があるんだな」というくらいの感じだったんですけど、できあがったものを聴いてみたら「まさかこんなことになるなんて!」と。本当に申し訳ない気持ちで日々猛省しています…。

内田:いやいや、すごく面白かったですよ。

●内田さん作曲のM-2「Entwurf」は、ドイツ語で“下書き”や“設計”という意味ですよね?

内田:曲名を決めなくてはいけない時期にまだ下書きの段階だったので…(笑)。というのもありつつ、“青写真”という意味もあって。最初から何となく頭の中にあったものが(結果的に)できたかなと。今までNESSでは曲がどんどん変わっていった結果、(当初のイメージと)全然違ったりしたんです。でもこの曲は、わりと元からあった“青写真”のとおりになったかなと。

●プログレ感が一番出ている曲かなと思いました。

内田:NESSはメンバーそれぞれが変な経歴を持っているし、世代も違うヤツらが集まっていて。だから最初は「どんな音楽をやるんだろう?」と窺いつつやってきたんだけど、「もう好きなことをやっちゃえば良いや!」という気持ちになったんです。3枚目にして「これで良いのか。わかった!」というのが見えてきたから、そこを推し進めました。…と言っても、売れそうな音楽ではないんですが。

●ハハハ(笑)。でも今作を聴いてみて、過去2作よりもポップだなと感じました。

内田:ええっ!?

河塚:そうですよね! 僕もそう思いました。

三浦:CD店のバイヤーの方々からの評判も良いですね。

●ポップさは意図していたわけではない?

内田:僕らは勝手にやっていますけど(笑)、ミューちゃん(三浦)は頑張ってポップにしようとしていますね。

三浦:僕はそれしかできないので…。内田や戸田みたいな曲を作れと言われてもできない。でもようやく「何をやっても、この4人でやればNESSになる」という感じになってきましたね。なんだかんだで来年で5年目ですから。時間は結構かかりましたけど、「4人揃って何かをやればもうそれで良いんだな」っていうことにライブでもなってきていて。

●何をやってもNESSになる。

三浦:曲もバラバラと言えば、バラバラだし…。もし僕らが高校生でライブハウスのオーディションを受けに行ったら、「何がやりたいのかわからない」とブッキングの人に言われて帰ってきますね(笑)。

河塚:絶対、けちょんけちょんに言われますよ(笑)。

内田:ポプコン(※ヤマハポピュラーソングコンテスト)なら予選落ちだ(笑)。

●逆に今、コンテストに出たら面白いとは思いますけどね(笑)。

三浦:「もうちょっと人に聴かせる努力をしたほうが良いんじゃないのかな?」なんて言われて。でも今となってはたぶん審査員のほうが自分たちよりも後輩なんだろうから、なかなか文句は言えないんじゃないかな(笑)。

●ハハハ(笑)。でも今は自信を持って、自分たちの好き勝手にやれば良いと思えているわけですよね?

三浦:全員が「好き放題やりました」っていう感じですかね。僕だけは若干辻褄合わせに走った部分はあるかもしれないですけど、それは作業が一番最後だったからというのもあって。

●最後に全体のバランスを取ったと。今作の中でM-5「MAGIC AND ECSTASY/EXORCIST II THE HERETIC」は誰もがどこかで聴いたことがある曲という意味で、1つのフックになっているかなと。

内田:映画『エクソシスト2』のテーマなんですけど、NESSを結成した当初にたまたま聴いて。「NESSの方向性はこんな感じかな?」と思って、「やろうよ」と言ったんです。それを4〜5年経った今やってみたら、良かったのかなと。

三浦:ライブではお馴染みのナンバーなんですよ。

●NESSを始める時の指針になるような曲だった。

内田:映画自体はものすごく怖いんだけど、この曲ってどこかマヌケじゃないですか。そこが良いのかなと思っていて。

三浦:あと、この曲だけ、生声が入っているんですよ。

●あっ、あのコーラス部分は自分たちなんですね!

内田:初めてみんなで入れました。

河塚:個人的にはあれも全部シンセで鳴らすのかと思っていたら、「じゃあ4人でコーラスを録ろうか」と言われて。「えっ…コーラスを録るの!?」っていう(笑)。度肝を抜かれましたね。

三浦:しかもそれが戸田の提案だったというのにも、度肝を抜かれました(笑)。

●戸田さんはなぜ全員でコーラスをやろうと…?

戸田:みんなで仲良くしたいなって(笑)。

河塚:真ん中にマイクを立てて、4人で囲んで歌ったんです。何度も何度も…。

三浦:戸田から「もっとヒステリックに」みたいなディレクションが来て、僕らが「頑張ります!」っていう。他にも「低いヤツ」とか「全員、頭の血管が切れちゃっている感じで」とか言われて、全部で20本くらい録りました。

内田:バンドの結束が固まった曲ですね(笑)。

●ライブでもみんなで歌うんですか?

三浦:たぶんライブでは誰も歌わないと思います(笑)。普段のライブではシンセでやっていますね。

河塚:だから「今から録りましょう」という時に、初めて歌ったんですよ。そういう不安定な部分も、曲の良い雰囲気につながったんじゃないかなと思います。

●フックも増して、より多くの人に届く作品にもなったんじゃないかなと。

三浦:3枚目になったし、そろそろ届けたいかな。ヒットすると良いんですけどねぇ…。

●と言っている三浦さん自身がTwitterで「変人の、変人による、変人のための音楽」と書かれていましたが。

三浦:ヒットチャートに乗っかってくるものと比較すると、とても変わっていますよね。SEKAI NO OWARIとは随分違うし…。

●そこと比べますか!?

三浦:いつもチャートで1位のものを思い浮かべていますよ。世の中、テレビで流れているものが全てだと思っている人が圧倒的に多数派だろうし。

●それではNESSも今後は日本ブームに乗っかって、世界進出したりして…。

河塚:これ、日本ブームに乗るのかな?

三浦:もうちょっとヴィジュアル系っぽかったり、アニメっぽかったり、アイドルっぽいようなものじゃないと…。そういう今の日本のアイコンみたいになっているものとも、NESSはちょっと違うのかもしれない。

内田:でも戸田くんを見て「Oh! Japanese Robot!」って言う人はいるかも…。

●モビルスーツ的な勘違いを(笑)。

三浦:そしたら移動が苦手な戸田に全身麻酔をかけて、ヨーロッパまで連れて行きますよ。荷物のほうに預けて(笑)。

一同:ハハハハハ(笑)。

Interview:IMAI