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Poet-type.M

夜しかない街の空に浮かぶ禍々しき月。 降り注ぐ秋雨の音はどこまでも哀しくて寂しい

2015年の1年間を通して“Dark & Dark=夜しかない街”の物語を表現するという4部作に取り組んでいる、Poet-type.M。そのconcept mini album第3弾にあたる秋盤『A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-』が、10/21にリリースされる。夏盤に続きサポートメンバーの楢原英介(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE、YakYakYak)と共に、サウンドプロデュースに挑んだ今作。リード曲「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」の振り切ったニューウェーヴ感溢れるアレンジに驚く人も多いだろう。だが東京藝術大学の学生とのコラボによる弦楽四重奏を加えた楽曲も含め、秋らしい空気感の作品全体を支配しているのはどこか哀しくて寂しい音だ。このような作品を生み出すに至った経緯を門田匡陽に訊く、『A Place, Dark & Dark』スペシャルインタビュー第3回。

 

「今の俺は『A Place, Dark & Dark』の街の中で月を見上げて、禍々しいなと思っているところもあるんだけれど、でもその月は『the GOLDENBELLCITY』の時からずっと同じ月なんだよね」

●リード曲のM-2「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」(以下「綺麗事」)のイントロが鳴り始めた時は正直ちょっと驚きました…。

門田:今回、あの曲だけはかなりニューウェーヴ感が出ている…っていうかWinkだよね(笑)。

●ハハハ(笑)。90年代初頭のJ-POPっぽい感じですよね。

門田:あれはまさに90年代初頭の感じにしたくて。ただ、この曲を作ったことで俺はもう飽きちゃったんだよね。

●夏盤からのニューウェーヴ的なアプローチがここで完結したというか。

門田:そう。というのがあって、M-1「だが、ワインは赫(Deep Red Wine)」(以下「ワイン」)やM-6「性器を無くしたアンドロイド(Dystopia)」(以下「アンドロイド」)はああいう音になった。

●「綺麗事」を作った後に、他の曲を作った?

門田:いや、そういうわけではなくて。「綺麗事」を作った段階で「これは次のリード曲になりそうだな」と思ったから、あとはストックの中から何を入れていくかという作業だった。だから、同じような曲はあんまり入れたくないなというところで。「ワイン」や「アンドロイド」は随分前からあったんだけど、「じゃあ、これをやってみようかな」という気になったんだよね。

●「綺麗事」は、秋をイメージして作ったんですか?

門田:この曲のメロディや歌詞は、実は前からあって。ボイスレコーダーに60曲くらい(曲の断片を)貯めているんだけど、ある日それを聴き直していたら、この曲のサビをギターの弾き語りで歌ったものが入っていたんだよね。これはすごくシンプルで良い曲だなと思って、このリズムとかコード進行だったらNew OrderとかWinkみたいなアレンジができるなと。

●New OrderとWinkが並列なんだ(笑)。

門田:俺はそのへんの文脈は無視しているから(笑)。正直に言うと、習作なんですよ。「自分はこういうアレンジをやれるのか?」ということを試すために作ったものなわけで。でも「綺麗事」のデモを聴いたスタッフが「良いね。これは推し曲になりそう」と言ってくれたから、「じゃあ、やってみようか」っていうことになった。

●ちなみにこの曲の“AGAIN”と歌っているところは、「Fructose」と同じメロディですよね。

門田:そう。「Fructose」は歌詞の問題で正式にCD化はできないから…。でも俺はあの曲がすごく気に入っているんだよね(笑)。あ、でも今度の“門田祭り”の会場限定盤(※“festival M.O.N-美学の勝利-”会場限定スプリットシングル『3 Way Spirit festival M.O.N -美学の勝利-』)には入っているんだけど。

●『3 Way Spirit festival M.O.N -美学の勝利-』はすごく豪華な内容だなと思いました。

門田:BURGER NUDSは新しい曲だし、Good Dog Happy Men(以下グッドドッグ)は「黄金の鐘」のオリジナルバージョンっていうすごくレアなものが入っていて…。元々は宗教色が強すぎて、お蔵入りになったんだよね。

●それをこのタイミングで出す気になった理由とは?

門田:グッドドッグをやっていた当時、俺たちは自分たちが日本で一番良いバンドだと思っていたんだよね。俺は自分の過去の音源をほぼ聴かないんだけど、今回の門田祭りに際して曲を思い出すために改めて聴いてみたら「やっぱりグッドドッグはすごく良いバンドだな!」と思って。こんなバンド、今も他にいないもん。

●グッドドッグの良さを再確認したと。

門田:当時は色々と勘違いをされて、俺は「批評家で確信犯なんじゃないか」と言われたりもしたんだけど、実は何も考えていなかったんだよね。ただ単に音楽が好きで「こういう曲が作りたい」というパッションだけが物凄くて。特に『the GOLDENBELLCITY』はそうなんだけど、まずそこが嬉しかったというか。

●純粋なパッションを持っているバンドだった。

門田:『the GOLDENBELLCITY』の「黄金の鐘」も良いんだけど、一番最初のパッションはやっぱりオリジナルバージョンのほうが物凄いんだよね。だから、ぜひこれは聴いてもらいたいなという気になった。

●ちなみに、宗教色が強かったというのはどういう部分で?

門田:歌詞に“アレルヤ(=ハレルヤ)”と入っていたりして。『the GOLDENBELLCITY』というアルバムを作っている段階で、特定の宗教を連想させる言葉は排除したかったんだよね。せっかく架空の街を作っているんだから、そこにまでキリストがいる必要はないじゃん。だから、そこは変えたいなというのもあった。

●今回のような形であれば、そういう文脈も関係なく出せるわけですよね。

門田:そうですね。今、自分が作っている曲だったら嫌だけど。「アンドロイド」とかにも色んな批評的な部分というのは入れてあるんだけど、そこに“神様”を介在させたくないという気持ちがすごく強いんだよね。

●秋盤のセルフライナーノーツには“両性具有のアンドロイド達が列をなす教会”という記述もありましたが、この“教会”も特定の宗教を指すものではない?

門田:俺が使っている単語としての“教会”というのは、明らかに“闇属性”なんだよね。信仰の対象ではなく、“嫌悪”の対象というか。

●嫌悪の対象としての“教会”というのは?

門田:これは日本人がアメリカに対して抱いている気持ちとすごく似ていて。アメリカという国の文化は愛しているけど、アメリカという国の政府はとても嫌っていたりするじゃない? 俺は“教会”という文化に対して、本当にそうなんだよね。「賛美歌」をずっと学校の授業とかで歌ってきたから自分の音楽にもすごく影響を与えているし、だからこそグッドドッグには「Judgement ;」(『the GOLDENBELLCITY』収録)という曲もあったりする。そういった意味で「賛美歌」はすごく好きだけど、「キリスト教というものがあったおかげで世の中は今こうなっているんだよな」という想いもあるわけで。そのメタファーとして、“教会”は仮想敵になりやすいんですよ。

●身近なものではあるけれど、嫌悪の対象でもある。

門田:同族嫌悪だね。そこが生んだ文化を愛しているからこそ、その背景がすごく気持ち悪い。最近の日本の現実社会にも、そういう気持ち悪さを感じていて。「アンドロイド」の“廃路”という歌詞は聞き方によっては“廃炉”とも取れるし、“いつか海を見た記憶を抱いて眠れ”というのは“3.11”(※東日本大震災)以降のことなんじゃないかと揶揄されたりもするんだけど、俺は別にみんながみんなそういうことを考える必要はないと思っているんだよね。

●そういうことを歌っているわけではないと。

門田:音楽をやっている人間は“反体制であるべき”とか“リベラルであるべき”とか言われるけど、そのことによって逆に全体主義的になっている感じがして。“そうじゃないといけない”みたいな。

●「他の人がそうしているから、あなたもそうするべきだ」と押し付けるような同調圧力に近いというか。

門田:俺が一番嫌いなのは“体制”ではなく、“全体主義”なんだよね。そういう気持ち悪さが最近はどんどん強くなっていて。正直、今回の『A Place, Dark & Dark』全体を通して、そこに対しての“嫌だな”という想いや気持ち悪さが通底和音としてずっと鳴っているんですよ。

●“性器を無くしたアンドロイド”というのも何かに対するメタファーになっている?

門田:アンドロイドなんだから、本当は最初から性器なんて無いわけで。でもそこにあえて「お前にはもう性器が無いんだよ」と言ってあげないと、それにすら気付けない。そういう“間抜けさ”や茶番の中をみんなが生きているっていうことですね。

●これまでのインタビューでも話していたように、『A Place, Dark & Dark』は現実社会の映し鏡になっているわけですよね。

門田:俺は本当は『A Place, Dark & Dark』をもっと絵空事にしたかったんですよ。でもだんだん『A Place, Dark & Dark』の中での居心地の悪さが現実社会とリンクし始めちゃって…。それによって今回はマイナーキーで始まり、「アンドロイド」で暗く終わるというCDを作らざるを得なかったというか。ある意味、すごく批評的な1枚だとは思う。

●春盤は明るさもあったのに比べて、作品を経るごとにだんだん暗さが増してきているようにも感じます。

門田:『A Place, Dark & Dark』の、“街”としての説得力はだんだん強くなってきていて。住んでいる人たちにとって、ここは“ディストピア(地獄郷)”であり“ユートピア(理想郷)”でもあると捉えていたんだけど、今は完全にディストピアだよね。本当に息苦しいから、今回のジャケットも物々しい。

●ジャケットは、月と教会をモチーフにしている?

門田:この絵もコンセプチュアルなんだよね。月がこんなにも大きく出ているのに、この教会はわざわざ(シンボルマークになっている)月を崇めているっていう。「性器を無くした」とわざわざ言わないと、無くしたことにも気付かないアンドロイド。そういう者たちが信仰しているものだから、こうならざるを得ないというか。

●教会や月も何かのメタファーなんですか?

門田:教会は“盲目的に信仰させる何か”のことで、月は“全体主義”のことだね。でも月というのは自分の中で、その時その時で魅入られるものがあって。グッドドッグの時の「Sweet heart of moon」(『Most beautiful in the world』収録)での月は、今話しているような“月”とは真逆の本当に心を豊かにしてくれるものだった。でも秋盤の月は禍々しいんだよね。

●イーヴルな感じがする。

門田:そう、イーヴルだよね。グッドドッグの時はまだ時代的に冗談が通じたんだよ。たとえば「Nightmare's Beginning」(『the GOLDENBELLCITY ep1』収録)の“三日月はそれを見ていたが もう大分、酔っぱらっていたから 唄いだしたよ”だったり、月が(歌詞に)出てくると絶対に良い方向だった。

●だんだん笑えない時代になってきているというか。

門田:そういった意味では、俺はまだグッドドッグの時のファンタジーにすがっているところがあって。それが今回のM-5「プリンスとプリンセス(Nursery Rhymes ep4)」だったりする。これは自分の中での反芻というか、「自分はまだこういう曲を作れる余裕があるのかな?」っていう意味での習作でもあるんだよね。

●Poet-type.Mの曲の中にグッドドッグの歌詞が時折出てくるのは、反芻しているわけですね。

門田:特に『A Place, Dark & Dark』では、あえてそうしているところがあって。「グッドドッグの時のこの人(登場人物)が今はこうなっているよ」っていうことを見せている。どのくらい後のことなのかまでは決めていないんだけど、『the GOLDENBELLCITY』の成れの果てが『A Place, Dark & Dark』で。そこで楽しんでいたヤツが今は絶望しているかもしれないし、逆に今のほうが楽しいなと思っているヤツもいるかもしれない。…ということを1回1回クスっとしたいというか。今の俺は『A Place, Dark & Dark』の街の中で月を見上げて、禍々しいなと思っているところもあるんだけれど、でもその月は『the GOLDENBELLCITY』の時からずっと同じ月なんだよね。

●月も太陽もずっと変わらずそこにあるけれど、見る側の視点によって見え方が変わってしまう。

門田:それに対して「今はこうだ」っていうだけだから。「今はこう見えているんだ」ということだけはちゃんと正直に表現したいよね。ただ『White White White』を作っていた時点で、次はディストピアものになるなという予感はあって。アンチ全体主義というものになるだろうなというのは、自分のテンションがそうだったからわかっていた。結局、俺の中ではまだ3.11以降のこの気持ち悪い日本というものに対する抗いや苛立ちのほうがファンタジーを上回っちゃってるんだよね。それを『A Place, Dark & Dark』でちゃんと終わらせたいなと思っているんだけど、どうなるかはまだわからない。

●終わらせるというところでは、今回は「さよなら」や別れというのもテーマになっているんですよね。

門田:“別れ”ということも1つのメタファーとして、今の俺のテンションに一番近い言葉っていうだけで。今、俺が自分の隣にある世界に対してどういうテンションなのかと言ったら、「一緒にユナイトしよう」というよりは「さよなら」という言葉のほうが近いし、表現しやすかった。別に「さよなら」を表現したいわけではないけど、そうせざるを得ない。あと、最初に設定した今回のテーマが“アンチ信仰”で、それをテーマに置いた上で考えられる歌詞の内容が全部“別れ”になってしまったんだよね。

●そういえばM-3「ある日、街灯の下(Farewell, My Lovely)」にも“Farewell(さよなら)”が入っていたりする。

門田:M-4「双子座のミステリー、孤児のシンパシー(GPS)」もそうだからね。これはいなくなった恋人の後を追うという内容で。ある意味で、情愛に対する信仰なんだよね。「プリンスとプリンセス」は、絵空事を歌っていて。主人公はもう相手がいないということをわかった上で、自分1人で“ハッピーエンド”と決めつけちゃっている。全部の曲が、何かを熱烈に信仰しているがゆえの悲劇なんですよ。だから、今回のCDはすごく哀しい。

●全体的に哀しいムードが漂っているのは、そういう理由だと。

門田:あと、実は今年の夏に、飼っていた猫が死んで。その猫が「ルイジ」という名前なんだよね。夏盤の「ダイヤモンドは傷つかない(In Memory Of Louis)」に出てくる“ルイ”というのは『the GOLDENBELLCITY』の「廃墟の子供達-黒い羊水-」に出てきた“目の悪いルイ”のことで。“ルイが大人になって、こういう人生を送った”という歌だったんだけど、実は最初に“ルイ”と名付けた時のモデルだったルイジが本当に死んじゃって…。しかも目が悪くなって死んじゃったんだよね。

●そこも重なったんだ…。

門田:そういうこともあって、本当につらかったんですよ。ちょうどその頃に秋盤を録っていたというのもあって。パーソナルな部分で言うと、秋盤を録っている時は全く楽しくなかった。色んなことが重なって、本当につらいなっていう。

●その時の心情も今作に出ているんでしょうね。

門田:でも1曲目の「ワイン」に関しては暗くてマイナー調の曲なんだけど、歌詞にはすごく救いがあるなと思っていて。ちゃんと次を見据えているというか、悲しみや孤独の先に歩く元気がある。そこに向き合う元気があるというのは感じているんだよね。曲調もそうなんだけど、ひょっとしたら今作で一番ライトかもしれない。

●弦楽四重奏もすごく良いバランスで入っているというか。

門田:そこはナラヤン(楢原英介)との共同作業で。俺が最初に作ったデモではもっと色んな音が入っていたんだよね。フレンチホルンやオルガンも入っていて、今よりもビートルズライクだったんですよ。でもそうすることによってストリングスの意味があまりなくなっているようにナラヤンは感じたらしくて、「だったら(余計な音は)全部カットしましょうよ」っていう。

●その意見があって、弦楽四重奏だけにしたと。

門田:俺の中ではストリングスアレンジは当初、装飾だったんですよ。でも他の音を全部無くしたことによって、この曲の心臓になったんだよね。フレーズ自体は俺が考えたものとそんなに変わっているわけではないんだけど、シンプルなサウンドにすることによって曲に生命力が宿った。

●今回、弦楽四重奏を入れようと思った理由とは?

門田:一番は曲が望んだということ。それと秋盤をやるからには何かしら、秋盤だけのチャレンジをしたいなと。それが弦楽四重奏だったんだよね。そして秋盤で表現したいことに、そのチャレンジがすごくハマったというか。春盤では初めて大々的にシンセサイザーを使って、夏盤ではそれをよりニューウェーヴっぽくやるというチャレンジがあった。秋盤になったら今度はガラッと変えて、今度は弦楽四重奏でっていう。冬盤はまた別のチャレンジを考えているんだけど、1枚1枚でそうやって音楽的なチャレンジをしていきたいんだよね。

●今回はそれが弦楽四重奏だったと。

門田:あと、「もしもこれが全部で『A Place, Dark & Dark』という1枚のアルバムだったら」ということも考えていて。だからもし夏盤がニューウェーヴ的な曲で終わっていたら、秋盤がこうはならなかったと思う。夏盤を「ダイヤモンドは傷つかない」で終わらせて、秋盤を「ワイン」で始めるというのは夏盤の時点で決めていたんだよね。そこらへんはちゃんと夏が終わって秋が来るという流れを考えてやっているかな。

●音楽的にも進化/深化している感じがあるので、次の冬盤がどうなるのかも楽しみですね。

門田:俺は“作家性”という部分に関して、どんどんワガママになってきているんだよね。正直、春盤の時はまだ様子を伺っていたところがあって。だから春よりも夏、夏よりも秋という感じで、今作っている冬盤はさらにそれが強くなっていると思う。

Interview:IMAI