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INUUNIQ

終章で導き出した、“SOUND THEATER”という新たな答え

2015/12/2@大阪amHALL
“INUUNIQ presents SOUND THEATER 君と僕のかたちのない世界 終章 遥”  

INUUNIQ「とにかく大編成でライブがしたかった。最初はそれだけだったんです」。先日行ったVo.竹下咲とのインタビューで彼女はそう答えてくれた。その目標を実現させていく中でアイデアが広がり、ついにはライブの発想を越えて新たな表現へと成長したワンマン公演“SOUND THEATER 君と僕のかたちのない世界 終章 遥”(以下、“終章 遥”)。INUUNIQの集大成とも言えるイベントは、バンドの新たな可能性を感じるものだった。

開演前、会場に入ると特殊な球体のスピーカーなどが複数設置され、ノイズとともにいたるところで何かと交信しているような音声やソナー音のようなものが流れていた。まるで宇宙船の中に入り込んだような感覚だ。しばらくして、「それでは良い旅を…」と場内アナウンスが流れ、インストゥルメンタル曲「introduction」の演奏をきっかけに総勢13名からなるINUUNIQオーケストラの壮大なサウンドが鳴り響いた。サラウンドを駆使した音響が会場を埋め尽くし、主人公役の2人のダンサーが舞台に上がり駆けまわる。白で統一された舞台装飾、衣装にプロジェクションマッピングを使った映像表現がステージを華やかに彩っていた。

今回の“終章 遥”には2人の少年少女を主役にしたストーリーが存在する。しかし、ステージ中にセリフはほとんどなく、彼女たちの奏でる音楽と映像などの演出のみで物語は進んでいく。今まで生み出された楽曲たちが“終章 遥”を軸におぼろげにリンクするさまは、新たな解釈で作品を再構築しているようでとても面白い。ストーリーの核心となる曲「遥」からエンドロール中に演奏された「25時の宇宙」まで、表情豊かな音楽で観客を魅了した後、新たな生命の始まりを予感させる鼓動の音が鳴り、公演はドラマチックに締めくくられた。その一連の流れは、まるでテーマパークのアトラクションのような煌やかなステージだった。

己の表現方法を追求し、“SOUND THEATER”という新たな答えを導き出した彼女たち。“総合芸術”として進化を続ける独自の活動は、今後も見逃せない。

TEXT:馬渡司

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