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スカーフ

どんな人の耳にも浸透する魔法のメロディを備えた名曲たちがやさしく心を包み込む

PH_Scarfメンバー3人で共同生活をしながらマイペース+インドアに音楽制作を続けている純邦楽ロックバンド、スカーフ。一見どこにでもいそうな普通の3人組でありながら、その紡ぎだすメロディは一度聴けば必ず耳に残る“魔法のメロディ”と呼ぶにふさわしいものだ。どこか90年代全盛期の邦楽を思わせるハイクオリティな楽曲は、まるで慣れ親しんだ音楽のようにどんな世代の耳にも浸透していく。数々の活動を経て今回、吉祥寺のライブハウスPlanet Kに設立された新レーベル“Low-Fi Records”から1stミニアルバムをリリースする彼らの魅力に迫るべく、Vo./G.菊池に話を訊いた。

 

●現在、スカーフはメンバーと犬の“民生”という、3人と1匹で共同生活をしているそうですが、いつ頃から始めたんですか?

菊池:2015年の6月頃からですね。

●共同生活をしようと思った理由とは?

菊池:メンバーそれぞれの事情が重なったというのもあるんですけど、今住んでいる家はすごく広いので3人で活動していくには良い環境なのかなって。前からずっと使っているスタジオの近くでもあるので、そういう面でも楽になりましたね。ミュージックビデオも今回はここで録ったんですよ。…あと、運気も上がった気がします。

●運気が上がった?

菊池:今のレーベルとガッチリ一緒にやっていこうという話になったのも、ここに引っ越してきた後で。そのために引っ越したわけではないんですけど、結果的に色々と風通しが良くなったというか。バンドが動き始めたという感覚はあります。

●去年初めてアルバム『GREAT FUTURE』を全国流通でリリースしたことも、バンドにとって1つの転機だったんじゃないですか?

菊池:そこでライブに来てくれるお客さんの数が増えたり、CDを買ってくれた全国の人から反響があったりもしましたね。あと、しのくん(※篠塚将行/それでも世界が続くなら)と出会ったことで、バンドへの考え方もすごく変わったと思います。

●レーベルに正式に所属して、ガッチリ一緒にやるようになったことも大きかった?

菊池:今回ミニアルバムになったのも、それが関係していて。最初はフルアルバムの予定で10曲、録音はしていたんですよ。でもレーベルと相談した結果、今回は5曲入りのミニアルバムにしようということになったんです。良い曲ばかりを集めた作品にして、「こんなに良い曲を書くバンドがいるんだ!」と思ってもらえるようなミニアルバムになったと思います。

●作品の方向性やテーマは考えていたんですか?

菊池:『やさしい音楽』というタイトルは既に浮かんでいて。前回もアルバムタイトルを先に考えていて、そのタイトルにするために同名の曲を作ったんですよね。元々コンセプトを考えて曲を書くようなタイプではなくて、一発入魂みたいな感じで1曲ずつ書いているんです。だから今回もM-5「やさしい音楽」という曲を書いて、それで作品全体を包んだ感じでしたね。

●「やさしい音楽」の歌詞には“あなたに寄り添うようなBGM”というフレーズが出てきますが、自分が作りたい音楽はそういうイメージが近い?

菊池:今作までは聴いてくれる人に寄り添えるような音楽や「あったら良いな」と思われるような曲を書きたいと思っていたんです。でも良いライブをしたいと思うようになってから、ライブや音楽にもっと向き合うようになって…。

●ブログには、ライブに対する考え方も大きく変わったということが書いてありましたね。

菊池:今までのライブでは見せたい世界観もあって、楽曲的にはわりと真面目なのに、MCがユルいところがあったんですけど、そういうのはもうやめようと。「ライブパフォーマンスをどうするか?」というのもレーベルと話し合っていく中で、ライブ力をもっと上げていこうという方針になったんです。ライブで勝負していこうというところで、今は身体を鍛えていたりもしますね。

●それが楽曲にも反映している?

菊池:ライブの方針が変わったのはわりと最近なので、今作には影響していないんですけどね(笑)。元々、僕は奥田民生さんの「愛のために」を聴いた時に、「こんな音楽があるんだ。すごいな!」と思ったんですよ。バンドや楽器をやろうと思うキッカケになった曲というか。そういうキッカケになるような曲だったり、聴いた人が「もうちょっと違う選択肢を選んでみようかな」ってなるような曲を作れたらなと今は思っています。

●誰かのキッカケになるような曲を書きたいという心境になった。

菊池:そういうものを作り出していけないと、たぶん活動が続いていかないんだろうなと思うから。少しだけじゃなく、僕らは3ステップくらい上がっていかないと活動を続けていけないんだろうなと思っているんですよ。

●今作も、その1つのキッカケになるものというか。

菊池:前作は期待を抱いて自分たちでリリースした感じだったんですけど、今回はスカーフがレーベルに所属して最初のリリースなので、より大きな規模にはなっているなと感じていますね。

●気持ち的にも楽曲的にも、外に向かって発信していこうというモードになっているのでは?

菊池:以前に受けたインタビューで歌詞について「部屋で1人考え込んでいる感じがする」と言われたことがあるんですけど、そうかもしれないなと思っていて。元々、周りに発信していくのが得意な人間でもないから。発信していきたいという気持ちがないわけではないんですけど、発信することのリスクを考えてしまうというか…。

●深く考えすぎてしまって、動けなくなってしまう?

菊池:考えるし悩むんですけど、それをいったん置いておくということができる人間ではあるんですよ。でもいったん置いていたものがまたフィードバックしてきて、悩んだり…なんか悩み相談みたいになっていますね(笑)。

●ハハハ(笑)。M-2「僕らのkeep walking」は特に、そういう内省的な面が出ている歌詞かなと。

菊池:そうですね。僕は自分に向けてのメッセージを歌詞に書いていることが多いと思うんですよ。結果的に聴いてくれた人も勇気づけられたりポジティブな気持ちになってくれたらなと考えながら、自分に向けて発信しているというか。自分に「おい、大丈夫かよ?」みたいな歌詞の書き方をしていることが多いと思います。

●歌詞を書くことで自分自身も奮い立たせている?

菊池:「おい、頑張れよ!」みたいな歌詞ではないんですけど、そのもっと小さなバージョンというか。「頑張らなきゃ」とか「忘れてはいけないことなんだよ」と言っている感じですね。歌詞のテーマとしてはネガティブになりすぎないもので、最終的には聴く人の気持ちが楽になるような曲になったら良いなと思っています。

●歌詞の書き方も変化していたりするんでしょうか?

菊池:以前は歌詞の内容にも色んなバリエーションがないといけないのかなと思って、そういうところで悩んでいたんです。でもある時に、KREVAさんがラジオで「同じテーマで何回書いても良いんだ」みたいなことを話しているのを聞いて。そこからテーマとかはそんなにたくさんなくても良いのかなと思うようになって、今は書けるようになったんですよね。でも歌詞にもこだわっている部分はあるので、面白い表現はしたいなと思っています。

●今作の歌詞には、何か統一したテーマがあるわけではない?

菊池:そうですね。でも音楽って、どんな曲でもわりと“やさしい”じゃないですか。そういう意味で『やさしい音楽』というフレーズだったら、この5曲を括れるんじゃないかなって思ったんですよね。

●どの曲も“やさしい音楽”ではあると。タイトル曲以外の収録曲を選んだ基準は?

菊池:クオリティと統一感ですね。ちょっと明るすぎたり暗すぎるような曲だったり、メロディが似通っているものは外した結果、この5曲になったという感じです。

●M-3「あなたがないているから」は、過去の自主制作盤にも入っていた曲ですよね?

菊池:自主制作盤の時は、自分たちでレコーディングしていたんですよ。でも大事な曲なので録音クオリティ的にもプロにやってもらったものを再録したいという気持ちは、前からあったんです。あと、この曲なら新しい曲の中に入れてもマッチするんじゃないかなと思って、今作に収録しましたね。

●他の4曲は今作に向けて新たに作ったもの?

菊池:「僕らのkeep walking」だけはちょっと前からあって。すごく良い曲なのでこのまま埋もれさせたくないなという気持ちが大きかったので、今回収録しました。M-1「ライフ」とM-4「やさしい人」、「やさしい音楽」はアルバムに向けて作った曲ですね。

●「やさしい人」と「やさしい音楽」が続けて入っているのはちょっとコンセプチュアルな感じがしました。

菊池:「やさしい人」の曲調自体は、そんなにやさしい感じではないかもしれなくて。でも『やさしい音楽』という括りの中で聴くと、また違った聞こえ方もするんじゃないかなと思ったので入れました。

●当初の10曲から5曲に絞ったというのもあって、本当に選りすぐりの曲が入っているわけですよね。

菊池:ものすごく気に入っていますね。僕は自分の曲がすごく好きなんですよ(笑)。今回出した5曲もすごく自信があるし、カッコ良い作品になったと思うんですけど、かといって完璧なものはまだ作れていないなと感じていて。だから今も音楽をやっているのかなって思います。…もし完璧な曲ができたら辞めるかもしれない(笑)。

●目指す理想型みたいなものがある?

菊池:テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」や、梅沢富美男の「夢芝居」みたいな本当に「すごいな…」って思う曲を自分も作ってみたいですね。

●普遍的に歌い継がれる曲というか。作品全体としては、満足できるものになっているのでは…?

菊池:う〜ん…売れ方次第かな…?

●ハハハ(笑)。売れたいんだ。

菊池:やっぱり売れないと、活動を続けられないですからね。…曲に対する自信は日によって違うんですよ。嫌なことがあった日に自分の曲を聴いていて「すごく良い曲だな」と思うこともあったりして。

●自分自身の曲に励まされたりもする?

菊池:そうですね。やっていることは間違っていないなって。今回の作品も相当たくさん聴きましたし、自信を持って発表できるものにはなったと思います。それとは別としてまだまだ「もっと良いものが作りたい」と思っているので、リスナーの人たちにはこれからも気にかけていて欲しいですね。

●曲同様に、今も進化を続けているというライブも楽しみです。

菊池:僕らは音源は音源、ライブはライブという考え方でやっていて。音源とは違うけど、ライブに対する自負はちゃんと持って活動していきたいなと思っているんですよ。これからのライブを楽しみにしてもらえたらなと思いますね。

Interview:IMAI

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