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楽しいよふかし

じわりと浸透する言葉と音がもたらす、心地よい違和感と中毒性

楽しいよふかしアー写意味深な雰囲気を漂わせながらも捉えどころのない歌詞と、リフレインを多用したサウンドとメロディが心の中にじわじわと浸透していく。そしてまた最初から聴いてしまう…そんな不思議な中毒性を、楽しいよふかしの音楽は持っている。2005年の結成からメンバーチェンジや改名もありつつ10年以上にわたって、ふわりとした独自のスタンスで活動を続けてきた彼ら。初の全国流通盤となった前作の8曲入り音源『サードニクス』(2014年)を経て、満を持して放たれるフルアルバム『他日』はその音に触れた者の中に心地よい違和感を刻みこんでいくことだろう。

 

「言葉って強いから、それに飲み込まれないようには注意していて。それ自体として強い言葉を使うわけじゃなく、言葉にメロディも含めた色んな要素を組み合わせた時に何かが立ち上がってくるようなものにしたい」

●前作の『サードニクス』が初めての流通音源だったそうですが、実はもう結成から10年以上になるとか…?

vano:そのようです(笑)。実は去年が結成から10年目で…。今の名前になったのは2009年からなんですけど、改名前の曲も今でもやっているし、オリジナルメンバーの3人は最初からずっと残っているから。

わ央:最初は4人で始まって。メンバーの入れ替わりはありつつ、この3人はずっと変わっていないんです。

キク地:最初は大学のサークル内で一緒にコピーバンドをやったりしていたんですけど、趣味も近かったので「ちゃんとやってみようか」ということになって今に至ります。

●途中で劇的な変化があったわけでもない?

キク地:徐々に変わってきている部分もあるし、全然変わっていない部分もあると思います。曲の作り方自体はそんなに変わっていなくて。

vano:でも同じことばかりしてきたわけではなく、自分たちの中で「今までやっていないことをやろうよ」という感じで続けてきていますね。土台はそんなに変わっていないと思います。

●作詞作曲はvanoさんなんですよね?

vano:アレンジはみんなでやっているんですけど、メロディラインと歌詞は僕が考えていますね。オケはアレンジの中から出てきたりもするので、コード進行を考えているのは僕じゃない曲もあったりします。

●歌詞は何だか独特な感じがします。

vano:一見、あんまり意味が通っていないように見えるとは思いますね。どうとでも取れるけど、聴いていると“何か”がフワッと浮かび上がってくるような感じというか。1曲を通して言いたいことが1つあるとかではなくて、何か気になるフックがあるような歌詞を書きたいと思っているんです。タイトルを見て「何だろう?」となって、歌詞の中身を読んでも「何だろう?」ってなる感じで。聴いた人が「何かちょっと引っかかったな…。もう1回聴いてみようか」と思うようなものになれば良いなっていう。

●ちょっとした違和感を残すというか。

vano:僕は言葉を選ぶのがすごく好きなんですよ。言葉って強いから、それに飲み込まれないようには注意していて。それ自体として強い言葉を使うわけじゃなく、言葉にメロディも含めた色んな要素を組み合わせた時に何かが立ち上がってくるようなものにしたい。

●リフレインを繰り返しているうちに、じわじわと来るような曲が多い印象です。

vano:曲も歌詞も、繰り返しは多いですね。繰り返しているうちに「あ、これは繰り返しになっているんだな」と気付いたところから、また違う意味付けがされていく感じとかが好きで。たとえばAメロの中で同じ言葉を2回言うと、1回だけ言うのとは(ニュアンスが)違ってきたりする。そういうのを自分では楽しんでいます。…あと、繰り返しを使うことで歌詞が早く書けるというのもあるんですけど(笑)。

わ央:省エネなんだ(笑)。

●ハハハ(笑)。では曲もリフレイン多いので、早くできたりする?

キク地:でも実はシンプルそうな曲ほど、時間がかかっていたりするんですよ。すんなりできたという曲は、あんまりない気がします。vanoはリズム隊が「これで良いのかな?」と思うようなアイデアも結構言ってくるんです。それでも「とりあえずやってみようか」というところから「まあ、これで良いのかな」みたいな過程を繰り返して、曲が固まっていく感じで。

vano:スタジオに曲を持っていって、みんなでアレンジしていく中で「ここはもっとこうしたほうが良いんじゃない?」みたいな意見が色々と出てきて。それがだんだん積み上がって、曲が完成するような感じですね。

●みんなで話し合いながら固めていく。

わ央:アレンジに関しては、それぞれの意見を言うことが多いですね。

vano:「何だかシックリこないから、シックリくるようにしよう」みたいなところで、全員で言い合いをする感じですね。

キク地:そこに時間がかかっていることが多いですね。すんなりできすぎると「本当にこれで良かったのか?」みたいな感じで、逆に不安になる(笑)。

●1曲1曲に時間をかけて作っていると。

vano:ライブでずっとやっているうちに変わってくることもあるし、スタジオで作っている中でどんどん変わっていく場合もあって。ようやく固まって、音源化されるという曲もありますね。今回だとM-4「Stainless」なんかは7年くらいライブでやっていて、ようやく今の形になったという(笑)。

わ央:全く違うバージョンが3〜4つくらいあります。

キク地:M-3「他日を摘め」もライブでやり始めてから手応えが出てきて、「リードトラックにしようか」となったんです。ライブでやった感じをスタジオでも再現できるように、速さを変えたりとかもして。

●ライブでの手応えをスタジオで形にした。

vano:逆にM-1「槿花一日」はレコーディングしている中で固まってきて、「リード曲っぽいから1曲目にしようぜ」という話になったんですよね。

キク地:ライブであんまりやっていないから、イメージが湧いていなかったというか。結果として、すごく良くなったなと。それぞれの曲ごとに、育ってきた過程が違うんです。

●それによって、曲にバリエーションも生まれるんでしょうね。

vano:全曲が同じ生まれ方をしたわけではないから。そこが一緒だと、飽きる気がするんですよ。

わ央:収録曲を集めた段階では、「本当に1枚のアルバムに入れても大丈夫なのかな?」っていうのはありましたけどね。

●結果的には、まとまりのあるものになったのでは?

vano:アルバムを聴いている人が、「こういうのもあるんだ!」となってくれたら良いなって思います。その時々で自分たちのやりたいことをやっている感じなんですよね。でもこの3人で音を出したら、わりと近い感じにはなるんだなと。何をやっても意外と大丈夫なのかもしれないと思えたので、ちょっと安心しました。

●この3人で鳴らせば、ちゃんと“楽しいよふかし”の音になる。

vano:そうなんですよ。逆に言えば何をやってもそうなっちゃうから、「ちょっと違う感じにしよう」というのをいつもスタジオでやっているのかもしれない。たとえば自分の手クセが出ていたら、それをメンバーに指摘されたりもして。「これをやらない」というのを決めた上でアレンジしていったのが、「他日を摘め」だった。この曲はまず今までにやっていないリズムを刻んでもらって、それを基準に他の楽器の音を乗せていったんです。

キク地:「こういうドラムに対して、今までこういうベースは弾いていなかったな」という基準で今回は弾いたりしました。

●今までやっていないことを重ねていった。

vano:今までの自分を俯瞰しながら、いつもとは違う道を進むというか。でもやっている人間は同じだから、すごい脱線はしないだろうという感じでやっているのかもしれない。

キク地:でも難しいことはしないっていう。

●そこはルールなんですね。

vano:難しいことはできないから(笑)。でもやりたいことは形にしていきたいっていう。

キク地:そういうことの組み合わせで「他日を摘め」は良い曲になっていったので、思い入れはありますね。

vano:今回の中心になっている曲は、どれもそういう作り方をしています。

●アルバムタイトルの『他日』もこの曲名から?

vano:前回も「郷愁のサードニクス」という曲名から取って『サードニクス』にしたんですよ。今回もその流れで曲名から取った感じですね。

●曲名の「他日を摘め」というのは、“一日を摘め”という言葉から来ている造語ですよね?

vano:元は“一日を摘め”ですね。タイトルを付けるにあたっては、その曲をたくさん聴くんですよ。聴いた中から言葉を選び取っていく作業をしていって、最終的にこれになったという感じで。タイトルはだいたい後付けなんです。

●“一日を摘め”と“他日”という言葉を組み合わせて作ったわけですね。

vano:そしたら「ちょっと変化が出たぞ。何か新しいものができた!」っていう。「ちょっと違うぞ」っていうものが立ち上がっているし、歌詞とタイトルも良い感じの距離感だなと。曲を聴いて出てきた言葉だから、そこまで遠いものではなくて。歌詞なりタイトルなりで言葉を扱う時には、距離感を大事にしているんです。やっぱり言葉って強いから。

●たとえば特定のジャンルを想像させるような言葉は使っていない。

キク地:そういうものは3人とも嫌だと思うので…。

vano:基本的に全てを3人で決めているので、僕が2人に対して「どうでしょう…?」みたいな感じはあって。自分で「これだ!」って決めることはないですね。そこまで固まったメッセージ性とかもないし、何かがフワッと立ち上がってくれたら良いなっていう感じだから。

●押し付けがましくないものになっている。

キク地:押し付けがましさとかを感じたら、たぶん僕かわ央が「それは良くないんじゃない?」って言うと思うんですよ。

vano:僕もそう言われるだろうなって思うので、そうじゃない意見を出すんです。だから常にお互いへの影響を与え合っていると思いますね。

●お互いの空気感を読み合っているわけですね。

vano:「こうしたら、こう来るだろうな」みたいな。

キク地:そこらへんの感覚は、長くやっていることでちょっと育っている部分はあるかもしれない。「だけど、こうしたい」みたいなアプローチが返ってくることもあって。

●ちゃんと主張するところはすると。

キク地:「こう弾いて欲しいんだろうな」って思いつつ、あえて弾かないというのをやったりもして(笑)。

vano:「絶対にこう弾いて欲しいのをわかっていて、あえて弾いていないな」っていうのもわかります(笑)。でも「とりあえずやってみよう」という感じはあって。お互いに「こうに違いない!」みたいな感じではないですね。

●我を通すわけではない。

vano:我はあるんですけど、通す時にはお互いに影響を与え合う感じはあると思います。スタジオ内では口数が少なくて「あ、何か微妙だと思っている…?」みたいな心の読み合いの中で僕がテンパりだして、メンバーが「ちょっと…やめなよ」みたいな感じになるような、すごく面倒臭い雰囲気があって。そこまで和気あいあいとはしていなくて、良い緊張感がありますね。

●楽しみながら作ってはいるけど、完全に遊んでいるわけではない。

vano:そうですね。…でもそこまで意識が高いかと言ったら、ちょっと違っていて。すごい議論とかがある感じではないし、人間の面倒臭さがぶつかり合っている感じで…。だから、意識は全く高くないです!

●ハハハハハ(笑)。

キク地:インタビューで高らかに「意識は全く高くないです!」って言うのも新しい(笑)。確かに高尚な感じで作っているわけではないけど…。

vano:語弊があったらいけないなと思って。そういう感じの緊張感ではないんですよ。

●そこまで音楽に対してストイックに取り組んでいるわけではないと(笑)。

vano:“ライフワーク”という言葉を使っても、まだ意識が高く感じるくらいですね。

キク地:まあ、やりたくてやっている感じです(笑)。

vano:そう。やりたいタイミングでやっているというか。

キク地:それでまだ飽きていないっていう感じですね。…スタジオではこういう感じで、お互いに言葉をかぶせ合っていて。噛み合わないし、「わざと噛み合わせない」みたいな動きもあるんです(笑)。

vano:でもあんまり噛み合っちゃっても、身動きが取れない気がするから。これくらいでちょうど良いと思うんですよね。

●そういう空気の中で、今回は良い作品が作れたという満足感もあるのでは?

vano:まあ、「できたな」っていう感じはありますね。ぜひ聴いて欲しいです。

わ央:さっきvanoが「今作を作れて安心できた」という話をしていましたけど、2016年は安心して過ごせそうだなと。

キク地:最近はvanoも安定しているしね。

●元々は安定していないんですか?

キク地:…だって、安定しているように見えなくないですか?

●ヒドい(笑)。

キク地:vanoは目標があると安定するんですよ。

わ央:前作の時は安定していなくて…。

vano:前作はいつ出すかを決めないままで合間合間に作っていったので、ゴールが見えていなかったんですよ。でも今回はいつまでにリリースするという目標を決めていたので、それが良い感じに働いたと思います。次はこれを踏まえて、また色々とやってみたいですね。

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