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MUCH-YO

危険な中毒性を持ったオルタナティヴ・ポップ・ロックバンドが誘う、最高にクールな合法トリップ体験

MUCH-YO_アー写Dr./Vo.ひぐちしょうこ、G./Vo.ゴンガーシホからなるオルタナティヴ・ポップ・ロックバンド、MUCH-YOが1stフルアルバム『マッチョ』をリリースする。共に数々のバンドサポートやセッションミュージシャンとして活動を重ね、その実力は国内ミュージシャン界隈では知らない者はいないほど。そんな2人が織りなすゴリゴリにヘヴィーなグランジサウンドと、クリックなしでほぼ全編一発録りの人力グルーヴ。その上に乗るキャッチーかつ不思議な歌詞とメロディ、アニメ声ツインヴォーカルは“合法トリップ”とでも言うべき危険な中毒性を放っている…。

 

「自分としては“変わったバンドをやっている”という認識だったけど、録ってみたら“カッコ良いじゃん!”と思って」

●お2人は相当長いお付き合いなんですよね?

しょうこ:もうすぐ20年になりますね。1997年に沢田研二さんのバックバンドのオーディションで出会いました。バックバンドを一緒にやっている時から私とゴンガーはすごく気が合って、最初からビビッと来ていたんですよ。だから、その仕事が終わった後も「一緒に何かやりたいね」とは言っていたんです。でもゴンガーは最初、女の子とバンドをやるということに対してちょっと渋っていて。そこで当時、私がやっていた“にゃんことわんこ”というバンドの音源を聴かせたら、すごく気に入ってくれたんですよね。

ゴンガー:曲がめちゃくちゃバカな感じで、「こんなのだったらやりたい!」と自分から言いました。そのバンドでも既にM-1「アルパチーノ」をやっていたんですよ。

●バンドとしての出発点は「アルパチーノ」?

ゴンガー:その曲がなかったら、「一緒にやろう」とは言わなかったかもしれない。

しょうこ:自分の中では、それが原点かな。まずギターのリフがあって、そこに気の抜けた感じのかわいい声のボーカルが乗ってくるようなものが元々すごく好きで。そういうところから始まっていますね。

●結成当初は3ピースバンドだったそうですが。

しょうこ:最初はもう1人、女性のベーシストがいて。その人が抜けた後もサポートを加えてゴンガーと私で活動を続けていたんですけど、だんだん曲調が暗くなってサウンドも重たくなっていったんですよね。そのあたりで煮詰まってきて、ポップさがどんどんなくなっていったんです。それで「どうしようかな…?」と思っていた時に2人ともspeenaでデビューすることになった(※2000年)ので、いったん活動休止しました。

●そこから2005年にしょうこさんがspeenaを脱退して以降はしばらく会わなかった時期もあったそうですが、2010年に偶然の再会を果たしたんですよね。

しょうこ:ある日、30万人くらい集まるお祭りに行ったら、隣に偶然ゴンガーがいたんですよ。そこでビックリして、まず「久しぶりだね」となって。その1週間後くらいに友だちのライブを観に行った時もすぐ後ろにゴンガーが並んでいたり、そのまた1週間後に渋谷の駅前を友だちと歩きながらゴンガーの面白いエピソードを話していたら、目の前に本人が歩いてきたっていう…(笑)。

ゴンガー:しかもまたその1週間後くらいに私があるバンドのサポートでイベントに出ていた時に、対バンのサポートでしょうこも出ていたんです。「こんなに短期間で何回も偶然出会うのはおかしい!」となって、絶対に「何かある!」と思いましたね。

●運命的な再会を経て、また一緒にやろうとなった。

ゴンガー:あと、当時ケーブルテレビの音楽番組で私が持っていたコーナーに、しょうこがゲストで出てくれたことがあって。その時にものすごく久しぶりにスタジオへ一緒に入って「アルパチーノ」をやったんですけど、そこで「イケるじゃん!」って思いました。

しょうこ:2人だけで「アルパチーノ」をやったら、すごく楽しかったんですよね。

●そこからライブも再開したんでしょうか?

しょうこ:2014年の5/5に下北沢CLUB251で、再始動してから最初のライブをやったんです。その時はもう1人、元SADSの坂下たけともさんという方にも参加してもらっていて。ツインギターとドラムという編成でやったら面白いんじゃないかと思ったんですよ。

●その後で坂下さんが怪我をしてしまって、ギターをベースアンプに突っ込んで急遽2人でライブを決行したことがあるんですよね。そこが2人で活動していくキッカケになった?

ゴンガー:結局、それが今につながっていますからね。そこから始まった感じです。

しょうこ:その時は「もうやるしかない!」という感じで。代わりの人もいないし、「2人でやろう!」となりました。そのライブを現在のディレクターが偶然見ていたんですよ。

●それが今回のアルバム制作につながったと。それぞれ曲を書かれるわけですが、作り方は違う?

しょうこ:最近はギターリフから出てくることが多いですね。それをスタジオでゴンガーに弾いてもらいながら私はドラムを叩いて…というのを何度かやっているうちにメロディが出てくるような感じです。ゴンガーは最近、曲と歌詞を同時に持ってくることが多いけど、どうやって作っているの?

ゴンガー:あれはほぼ同時に出てきている。逆にそうじゃないものは、ずっと考えても出てこない…。

しょうこ:そういう時は他のメンバーが考えるっていう。

●クレジットがMUCH-YO名義のものは、そうやって2人で共作している?

しょうこ:たとえばM-3「ムシを喰わせろ」は、ゴンガーが「途中までできたんだけど、聴いて〜」みたいな感じでスタジオに持ってきて。途中まではすごくカッコ良いんですけど、そこから先ができていなかったんですよ。リハで何度かやってみて、頭に浮かんだものをお互いに出し合っていたら突然、私の中から“ムシを喰わせろ〜♪”というフレーズが出てきちゃって(笑)。

ゴンガー:そしたら私がもう嬉しくなっちゃって、「これだ!」と(笑)。

●嬉しくなっちゃったんだ(笑)。

しょうこ:逆に私は、それが浮かんだ時に「うわ〜、嫌だ!」と思ったんです。すごいバカな感じだし、ムシなんて絶対に食べたくないし…。でもゴンガーに一応聴いてもらったらウケたので、採用っていう。

ゴンガー:「ムシを喰わせろ」を聴いた時は、もう興奮しちゃって。「最高なものが出たな!」と思って、その日の夜は興奮して眠れないくらいでした(笑)。

●それくらい、そのフレーズが気に入ったと。曲名や歌詞の言葉は響き重視で、直感的に選んでいる感じでしょうか?

しょうこ:語呂が良かったりして、言ってみたい言葉というか。私は名前がすごく好きなので、曲の中に人の名前がよく出てくるんですよね。

●M-13「まきばへレッツゴー」にも、草刈正雄や上沼恵美子といった名前が出てきますね。ちなみにこの曲の“いつも渉は1000%”という部分に出てくる、“渉”というのは誰なんでしょう?

しょうこ:渉くんは実在する友だちです。「まきばへレッツゴー」は、私が大学生の時に作った曲なんですよ。渉くんはサークルの先輩でボーカリストだったんですけど、新しい恋が始まったとかで「俺はいつでも1000%だ!」みたいなことを言っていて(笑)。それがとても素敵だなと思っていたんですよね。それに対して“だから私はときめきハンター♪”と歌っているんですけど…。

●“ときめきハンター”って何なんですか?

しょうこ:ノリです(笑)。基本的に私たちの歌詞については、聞き流してもらったほうが…。

●深く追求するなと(笑)。

しょうこ:気になったら負けですね…時間のムダ(笑)。

●ハハハ(笑)。実際「アルパチーノ」の中で“アルパチーノ メグライアン”という名前が並んでいるので、2人が共演した映画でもあるのかと思って調べてみたら何もなかったです…。

しょうこ:わざわざありがとうございます。でも答えはないんです(笑)。

ゴンガー:私は気になったことすらなかった(笑)。

●ちなみにゴンガーさんが作ったM-10「炎のヘモ野郎」に出てくる“ヘモロイド”って、“痔”のことなんですよね。

ゴンガー:これは私のことです(笑)。「自分、頑張れ!」っていう曲ですね(笑)。

●M-4「46」も自分のこと?

ゴンガー:私はバイクレースが好きで、その中でもバレンティーノ・ロッシという選手がめちゃくちゃ好きなんです。その人のゼッケンナンバーが46なので、その数字にすごく執着していて。自分が46歳になった時にこれはもう「46」という曲を作りたいなと思っていたら…あっという間にできました。記念の曲ですね。

●M-6「着払い」は、実際にあった出来事を元にしている?

ゴンガー:これは昔からやっている曲で、もう何だったのかは忘れたんですけど、何かが家に着払いで届いたんですよ。その時に「何で着払い!?」と思った…っていうだけの曲です。

●そうだろうなと思いました(笑)。M-14「地主は最強」もすごいタイトルですが…。

しょうこ:これは「地主って最強だよね」と言いたかっただけですね。大人に共感されるような内容って何かなと考えた時に、「地主って強いよね」と…。これをライブで言うと、大人はみんな「うんうん」と頷いてくれます(笑)。

●基本的にお2人とも、歌詞に深い意味はないと。

ゴンガー:そうですね。だから、聴き手にはどう受け取ってもらっても良いんですよ。

●でも言葉自体はすごくキャッチーだから、聴いていて耳に入ってくるんですよね。

しょうこ:やっぱりキャッチーであるということは、“光”なんですよね。だから、すごく大事にしています。やりたいことはやるんだけど、どこかにキャッチーさを散りばめたいんです。

●サウンドはヘヴィーですけど、メロディは子どもでもすぐ歌えそうな親しみやすさがあります。

しょうこ:だから、子どもウケがすごく良くて。お向かいの近藤さんのお子さんにM-9「HANANOKO☆ルンルン」を聴かせたら、“おひげがふんふん〜♪”と歌ってくれて。近藤さんのお子さんにもウケたから、「これはイケるかも?」って思いました(笑)。

●子どもによってキャッチーさが証明された(笑)。収録曲数は多いけれど、さらっと聴けるのは全体を通しての流れが良いからなのかなと。

しょうこ:曲数が多いし、最後まで飽きずに聴いてもらうためにはどういう曲順にしたら良いかということで色々と考えましたね。M-5「低気圧敏感娘(インスト)」は音量をギリギリまで落としてもらったんですけど、“何となく聴こえている”みたいなものにしたくて。「まきばへレッツゴー」もカセットで聴いているような感じにしたかったので、へなちょこな音であえて録音したんですよ。アルバムとして曲順を並べた時に、どちらもその次がガンッとくる曲だから。

●曲順については、すごく考えられている。

ゴンガー:2人で何回も話し合いましたね。1つの曲を作る時にはそんなに色々と話し合ったりしないのに、曲順に関してはすごく練りました(笑)。今って配信で1曲ずつ聴けちゃう時代だけど、やっぱりアルバムは全体を流して聴きたいから。だから曲間とかもすごく考えたし、アルバム全体の流れはすごく大事にしています。何十回も何百回も聴いているアルバムって、1曲が終わるとその次のイントロがすぐ頭に浮かぶじゃないですか。そういう感じのものにしたかったんですよね。

●自分たちで聴いても、そういう作品になった?

ゴンガー:なったと思います。

しょうこ:私はレコーディングしてみて、「こんなにカッコ良かったんだ!」と気付きましたね。アルバムを作り始める前は、こんなに面白くなるとは思っていなかったんですよ。

●えっ、そうなんですか?

しょうこ:自分としては“変わったバンドをやっている”という認識だったけど、録ってみたら「カッコ良いじゃん!」と思って。

●自分たちのカッコ良さに気付いたと。

ゴンガー:ライブだけだとわからなかったんですけど、録ってみたら「2人だけで成り立っているじゃん!」とも思いましたね。しかも今回はクリックも聴いていないし、エディットもしていないんですよ。

しょうこ:ちょっとしたタメとか突っ込みをすごく大事にしているから、クリックとか一定したものはないんですよね。間違えてもあえて直さずに、「このハートを届けるほうが大事!」っていう感じでやりました。本当に楽しかったな〜。

●初のアルバム制作を心から楽しめたんですね。

ゴンガー:ディレクターが本当に好きにやらせてくれたんですよ。困った時にはアドバイスをくれたりもしつつ、「こんなに好きにやらせてもらっても良いの?」っていうくらい自分たちのやりたいようにやらせてくれて…。こういう機会は滅多にないと思います。

●今作を作ったことで、ライブや曲作りにもエンジンがかかっているのでは?

ゴンガー:ライブはガンガンやりたいですね。

しょうこ:曲作りも勢いづいているので、ちょいちょい新曲もできているんですよ。この調子で作っていきたいなと思っています。

Interview:IMAI

 

 
 
 
 

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