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ジェッジジョンソン

創造と破壊の果てに生まれ変わった“過去”が最も新しい衝撃を放つ

PH_Jedze5年ぶりのフルアルバムとなった前作『テクニカルブレイクス・ダウナー』から1年、ジェッジジョンソンがニューアルバム『ストライク・リビルド【アッパー】』を完成させた。二部作構成のコンセプトアルバム前編となる今作は、インディー時代の楽曲をフルリメイクした作品となっている。前作でも高い評価を得た音楽性やサウンドメイキングに加え、“文学的な歌詞”や“歌”を前面に押し出した今作。自らの音楽を創造しては破壊することで進化を遂げてきた彼らの真骨頂とも言えるサウンドは、従来のファンのみならず、新たにこの音に触れた者にも大きな衝撃を与えるはずだ。

 

「今は自分が生きている実感も含めて、楽しくてしょうがないんですよ。ここが来たかった場所なので、作っていることが本当に楽しいですね」

●まずは今回…発売が遅れましたよね(笑)。

藤戸:はい、遅れました。

●それはどんな事情から?

藤戸:正直に言うと、やり込み過ぎちゃったんですよね。そしたら、発売が2週間遅れましたっていう。

●当初は5/11発売予定だったんですよね。いつ頃から制作の準備を始めていたんでしょうか?

藤戸:昨年の『テクニカルブレイクス・ダウナー』発売後から、もう始めていたんですよ。今年は5月にリメイク盤と11月に書き下ろしの作品を出すというのを、プロデューサーと話していて。2枚出すことが前提だったので、去年の6月くらいからリメイク盤の楽曲選定を始めていたんです。すごく古い曲もあるのでゼロから作り直さないといけなくて、準備期間が必要だったんですよね。マスタリングが終わるまでだと、8〜9ヶ月くらいかかったんじゃないかな…。

●そもそもリメイク盤を作ろうと思った理由とは?

藤戸:キッカケはプロデューサーと話していた時に、「過去の音源ってあるの?」と訊かれたことですね。その方とはメジャーデビューからずっと10年近く一緒にやっているんですけど、彼に出会う前の曲を資料として渡そうかという話になった時にアイデアとして閃いたというか。過去にリリースしたものも廃盤になっているし、インディーズなので1000〜2000枚くらいしか作っていないものもいっぱいあって、「誰も知らない良い曲もあるよ」というのがプロデューサーの意見で。だったら、その楽曲たちを今の技術でフルリメイクして、今の音として出してみようかというのが、今回の『ストライク・リビルド【アッパー】』の発端でした。

●今作収録のリメイク曲は『MILKMIX』(フルアルバム/1998年)と『DEPTH OF LAYERS UPPER』(フルアルバム/2004年)からの曲が多いですが、これはどういうセレクトなんですか?

藤戸:ジェッジジョンソンの作品では“アッパー”と“ダウナー”というふうに、明るめの曲とマニアックな感じの曲を2部作に分けたりしているんですけど、今回はどちらかというとわかりやすいポップな曲を集めた感じですね。今年2枚出すんですけど、実は来年も2枚出す予定で、2016年はアッパーの年らしいです。自分でも“2年で4枚か!”と思いつつ…(笑)。

●2年で計4枚って、すごい物量ですよね。作業も大変だったのでは?

藤戸:古い曲は、困難を極めましたね。やっぱり若い頃に作ったものなので、まずは自分が作ったものを全否定する作業から始まったっていう。

●古いものだと、20年くらい前ですからね…。

藤戸:歌詞や声とかレコーディングの手法もその当時の“時代の音”ではあるんですけど…、もう死にたくなりますよ(笑)。作り手にとって過去の自分の作品を聴くということは、時に拷問のようだなと。“あの時もっとできたのに…”とか“そうじゃないだろ!”とか思いながら、それをじっくり聴くというのは地獄ですね。今でこそ録音技術もスキルも上がったんですけど、当時のものは楽曲として破綻しているところも細かい部分ではあるわけで。それを直さなきゃいけないということは、過去のジェッジジョンソンが作ってきたものを全否定して新しいものに作り直すという作業なので、精神的に“自虐”でしたね。

●過去の自分を否定するところからの作業だった。

藤戸:それに対して、今の良いものを作らなければいけないですからね。前作『テクニカルブレイクス・ダウナー』は良い評価を頂いたんですけど、何よりも楽曲と音色(おんしょく)や音質を含めて評価されたと思っていて。その反動もあって今回の『ストライク・リビルド【アッパー】』では、前作のようなキレイな音じゃなくて、もう少し荒っぽくしても良いのかなっていう。だからTD(トラックダウン)の時に、あえてアナログのカセットテープを通したりしているんですよ。前作と今作とでは真逆の音色になっているというところも、リスナーの方にはぜひ聴いて頂きたいですね。

●今作を聴いていて、歌がすごく前に来ているのも大きな特徴かなと思ったんですが。

藤戸:そうですね。今回はアッパーでポップなので、楽曲の中で自分のボーカルが大きいんですよ。歌と歌詞が聴き取りやすくなるように作り直してしまったがために、時間がかかったというのもあります。実はミックスが全部で3種類あって、今風のオルタナサウンドにしたものと、『テクニカルブレイクス・ダウナー』のようにバランスから何から全て計算して作ったもの、そして歌詞とメロディ重視にしたものがあるんです。アルバムには10曲しか入っていないんですけど、実際には30曲分の作業をしていたという…。そんなことをやっていたら、時間がかかっちゃいましたね。

●それは遅れますね(笑)。

藤戸:今回ボーカルをなぜ大きくしたかというと、理由が2つあって。まずTDの段階で色んな関係者や友人のアーティストに聴かせたら「新曲かと思った」って言う人が多くて、リメイクだと言わないと誰もわからなかったんです。もう1つは、坂本美雨ちゃんに渡した時に「ボーカルが小さい」って言われたんですよ(笑)。彼女が「ジェッジジョンソンで、歌が前に出ているアルバムも聴きたい」と話していたのがキッカケで、一度そこまで振り切ったものを出してみようかなと思ってやり始めた感じですね。

●ここまでボーカルが前に来たものは、今までになかったですよね。

藤戸:インディーズで最初のアルバムを出した頃からボーカルはセンターにあるんですけど、ギターやドラムも大きいっていう。全部が横並びみたいな感じだったんですよ。だから今回、初めて歌が大きいっていう。

●歌が前面に出たことによって、メロディや歌詞がジェッジジョンソンの大きな軸になっていることがより伝わるというか。

藤戸:確かにメロディと歌詞が軸になっている曲というのも、ジェッジジョンソンの大きな要素ではあって。そういう楽曲が過去に何曲もあるので今一度、日の目を見るようにしたというところもありますね。歌詞や世界観がメインになっている楽曲というのも要素の1つなので、それを今回はクローズアップするという。

●フルリメイクということで、原曲からは大きく変わった部分もある?

藤戸:変わっていますね。楽曲については、Aメロ〜Bメロ〜サビとかの構成を全部変えたものもあって。キーを変更している曲も多々ありますし、歌詞を全部変えたものもあります。

●歌詞は何か気になる部分があったんですか?

藤戸:言葉遣いもそうですし、単語も変えています。英詞に関しては純粋にスペルミス及び文法ミス、使っちゃいけない放送禁止のスラングという、この3つがM-9「ザ・グレートセイリング」(の原曲)には全部入っていて…(笑)。直したくてしょうがなかったんです。

●前から気になってはいたんですね。

藤戸:ただ、あれはあれで成立しているものなので、否定するのはつらい部分もあったんですけどね。他にもインディーズ初期に出した楽曲では、パートから構成まで全部変えたものもあります。

●初期の曲というと、どのあたりですか?

藤戸:たとえばM-8「Dream, Crown, Applause and the DUSK」とかバラード系のものは、構成を全部変えています。あと、今回のリード曲になっているM-1「太陽の帝国」は、ジェッジジョンソンの中で一番古いんですよ。僕がまだ1人でやっていた頃からあった曲なんですよね。

●本当に初期の曲なんですね。

藤戸:“ジェッジジョンソン”という形になる前からあったような曲なんですよ。今回の『ストライク・リビルド【アッパー】』は、「太陽の帝国」を聴かせたいがために作り直したという想いもあるんです。

●この曲がキッカケの1つになった。

藤戸:自分の中では10年以上も前の曲なので古いと感じていて、ライブでもたまにワンマンでやるくらいだったんです。でも2年前くらいに知り合いのテレビ局のディレクターに偶然聴かせた時、「この曲は今の時代に合っている。レコーディングしてもう一度、世に出したほうが良い」と言われたんですよ。その時に、自分の中では何十年も前の曲でも、今聴いた人には今の時代に出てきた新曲に聴こえるという乖離があることに気付いて。そこから、今聴いても輝けるような時代に合った曲やみんなに受け入れてもらえる曲があるのではないかと思って、選曲に入っていきました。

●そういうセレクトだからか、今まで以上に間口の広い作品になっている気がします。

藤戸:歌詞の文学性も踏まえて、多くの人に届きやすいように作った作品ですね。今までは、サウンドがまず先にあって。マニアックなサウンドの後にポップなメロディ、その後に歌詞っていう順でユーザーの方々の耳にも入っていたと思うんですけど、それを今回は逆にしてみたいなと。歌詞についても評価して下さる方が元々多かったので、今回はそこを一番先に出したかったんです。

●ちなみにM-6「Religion」が今回唯一の新曲ですが、この曲を収録した理由とは?

藤戸:リメイク曲と照らし合わせて、「Religion」が一番合っていたんですよね。Key.蓮尾くんが珍しく70年代のキース・エマーソンを彷彿させるような完全なソロプレイを入れたりしているんですよ。響先生(Ba.西川)もそういったグルーヴを弾いていますし、相対的に見て親和性があるという判断でした。

●この曲は響先生の作曲というのもあって、藤戸さんの曲とはまた違う面白さがあるというか。

藤戸:かなり違うと思いますね。「Religion」に関しては実験的というか、今までの自分が取っていない手法でやってみた部分があります。今までは100パーセント自分の中で生まれたメロディだったんですけど、この曲はそうではないんですよね。メロディを僕が作っていないというのがあって、作曲者のクレジットに僕の名前が入っていないんです。

●そういうことだったんですね。今後は蓮尾くんの曲も入ってきたりする?

藤戸:11月予定のアルバムでは、そういう曲が入ってくる可能性もあります。実は今作にもう1曲入れようと思っていたのは蓮尾くんの曲だったんですけど、「あれもしよう、これもしよう」とやり過ぎちゃって、マスタリング日に間に合わなくなったんですよ(笑)。

●若干遅れたりしつつも、やり込んだ甲斐のあるものにはなったのでは?

藤戸:もっとやり込みたいですけどね(笑)。本当に生粋のオタクだと思うんですよ。時間を与えられたら、延々とやっちゃう人間だから。でも今回は〆切と責任という2つがある中で、今の自分がやれる限りのことはやってみました。

●本当に良いものにしたいから、やり込んでしまうわけですよね。

藤戸:心の中では確信犯で、やり込むことで〆切がアウトになるっていうのはわかっているんですよね。でもやり込みたくて、自分のエゴや欲求が反映されちゃうんですよ。ただそれをやり過ぎてしまうと、とんでもないことになるっていう(笑)。

●『テクニカルブレイクス・ダウナー』の前に5年間休んでいた期間があったというのもあって、そこから復活して今はもう創作意欲が尽きないんでしょうね。

藤戸:休んでいる間は、音楽をやりたくてしょうがなかったですから。でも体調の問題で音楽がやりたくてもできない状況が続いていたので、音楽だけで食べていくことができている今の環境をどれほど待ち焦がれたか…。だから今は自分が生きている実感も含めて、楽しくてしょうがないんですよ。ここが来たかった場所なので、作っていることが本当に楽しいですね。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

 

 

 
 
 
 

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