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Kidori Kidori

まだ見ぬこの先へ進む3人の行く手には、想像もつかない新天地が待ち受けている

KK_A_main_rgb全曲日本語詞へと転換した前作のフルアルバム『![雨だれ]』を経て、Kidori Kidoriが1年ぶりに新作EPをリリースする。賛否両論を受けつつもVo./G.マッシュ自身が“最高傑作”と自負する前作以降も、その音楽的探究心は全く衰えていない。汐碇真也(Ba.)を正式メンバーに迎えて再び3人組へと戻ったことでも、創作意欲と勢いをより増しているようだ。今作『フィールソーグッド e.p.』には、そんなバンドの充実具合がハッキリと投影されている。夏らしい疾走感と独自のクールネスをまとった表題曲「フィールソーグッド」に、彼らの本質でもある“おとぼけ感”漂うゴキゲンなサウンドの「ハッピーアワー」。さらには、くるりの名曲「東京」をシューゲイザー的なアプローチで解釈したかと思えば、細野晴臣の名作『はらいそ』収録の「東京ラッシュ」をトロピカルな雰囲気そのままに3人組ならではのシンプルなアレンジでカバーしてみせた。ルーツを垣間見せながらもそこに回帰するのではなく、まだ見ぬ場所を目指して変わり続けていく。その先には想像もつかない新天地が待ち受けているのかもしれない。

 

「来た道を忘れてしまったわけではないので、いつでも帰れるとは思っていて。でも元いた場所に帰るということに、ミュージシャンとしての成長は待っていないから。僕はそれよりも先が見たいからまだまだ進んでいきたい」

●昨年12月に渋谷WWWでPredawnとの2マンをやった際に新曲として「ナイトミュージック」を披露したので、てっきり次のシングル曲かと思っていたら…違いましたね。

マッシュ:そういうことをやっちゃうバンドなんです(笑)。

●ハハハ(笑)。その時のMCでは「次は夜みたいなテーマで行こうと思っている」と予告していたわけですが、今回の『フィールソーグッド e.p.』にも反映されている?

マッシュ:前作の『!(雨だれ)』はコンセプトを先に決めてから作っていくというやり方をしたんですけど、次もそれをもう一度やってみたいなと思っていて。コンセプトの中での1つの描写みたいなものを切り抜いたのが、今回の『フィールソーグッド e.p.』になっているところはありますね。

●実際に表題曲のM-1「フィールソーグッド」は、夜っぽい雰囲気がありますよね。

マッシュ:夜ですね。“辺りは真っ暗”という歌詞なんかも色んな捉え方ができるところではあるんですけど、イメージ的には全編“夜”で行きたいというのは考えていたから。

●“夜”をコンセプトにしようと考えた理由とは?

マッシュ:夜が深くなるにつれて、1人ぼっちになっていく感じがするなと思っていて。仕事や学校が終わって家に帰ってきて、部屋に入ったら1人というか。夜っていうのは“大人の時間”でもあるというところで、(自分の中での)大人なところと子どもなところとのせめぎ合いもあるなと。そういう意味で、自分の子どもっぽさや未熟な部分がすごく反映されている曲だと思うんですよ。

●この曲の歌詞は帰り道の心境を歌っているようで、バンドや自分自身の人生にも重ねられる内容かなと思いました。

マッシュ:本当にその通りですね。夜に向かっているということは、大人になっていっているということで。子どもの頃の純真さを取り戻すというか、もう一度あの頃の気持ちに戻ってみたいとは思うんです。あの頃が一番トガッていたし、向こう見ずな感じだったけど、今から見たら“幼い意見だったな”と思うところもあって。でもそう言っている今の自分もきっとまだ幼いんだろうなっていう。まだ人生の中間地点にいるような、そういう目線なのかなと思います。

●大人になりきってもいないし、子どものままでもない。その中間地点にいる感覚があると。

マッシュ:もう“いい歳”のはずなんですけどね(笑)。たぶん、ずっとそうなんだろうなとも思うんですよ。明日死ぬかもしれないくらいの年齢になっても幼い部分はきっとまだあるし、そこまで人生を達観した仙人みたいな人に会ったこともない。だから、ずっと抱える問題なんだろうなと。シンプルに“子どもか大人か”という話ではないだろうとは思っています。

●そういう感覚を感じるようになったのは、2014年に大阪から上京して以降だったりするんでしょうか?

マッシュ:大阪で生活している中でも感じることではあったと思うんですけど、やっぱり東京に来て1人の時間がすごく増えたことで色々と考えたりする中で“案外、自分はものを知らないんだな”という発見があって。

●1人の時間が増えたというのは大きいでしょうね。マッシュくんは誰かと頻繁に遊びに行くというよりは、部屋に1人でいる時間のほうが長そうなイメージがあるんですが…。

マッシュ:おっしゃる通りです。でも家にずっといるわけではなくて、1人で近所をブラブラ歩いたりはしています。何かをする際に、人と一緒でなくてはならないという考えもなくて。でも1人旅はちょっとしんどいかなと思いますけどね。旅行に行くっていうのは、僕的には誰かと楽しさをシェアしてナンボなんじゃないかって思うので…やったことがないからわからないですけど(笑)。

●メンバーと旅行に行ったりはしない?

マッシュ:Dr.川元とは付き合いも古いし、今さら感もあって。お互いに照れみたいなものもあるから、それはないと思います。

●去年から新加入したBa.汐碇くんは少し年上ですが、どういう関係性なんですか?

マッシュ:絶妙ですよね。ものを言う時に、気を遣っていたりはしますけど。

●あ、気を遣ってはいるんですね。

マッシュ:多少ですけどね。でも僕もお子様なので「それ嫌い!」とか、わけのわからないことを急に言い出したりして(笑)。言わなアカンことは言うけど、そこにはちゃんと尊敬みたいなものがあるので良いのかなと。

●そういう関係性があるから、正式メンバーとして迎え入れられたのでは?

マッシュ:そう思います。あと、何よりも本人にやる気が感じられたから。「一緒にやりません?」っていう話をしたらすぐに「やるやる!」と言ってくれて、やる気とかガッツみたいなものがあるなと感じたんです。僕らみたいなちょっと斜に構えたようなバンドをやっていると、特に熱量が大事だと思うんですよ。音楽が好きだとか、バンドが好きだとか、そういう部分がある人やなと思ったので“イケる!”と思いました。

●汐碇くんが加入したことで得たものもある?

マッシュ:お兄やん(※汐碇)は王道系の人で、僕はそれが良いなと思ったんですよ。ヘンテコな要素は僕が持っているので、新しい風が欲しいと思っていて。“色んなヤツが色んなものを持ち寄るのがバンドなんじゃないか”と考えているので、今までになかった“王道”という感性が入ったことは良かったんじゃないかなと。

●それによって、バンドとしても変わっていけるというか。

マッシュ:人間は、常に変わっていくものだと思うんですよ。普通に生きているだけでも色んな人と話して色んな価値観を知って、日々成長しているというか。ずっと同じことをやれるのも才能だと思うし、そういう人もすごいなと素直に思うんですけど、僕はどうしても変化していってしまうような感覚があるんです。

●だから、作品ごとに変化も見せていく。

マッシュ:自分でも“おぉっ!”って言えるようなものを毎回作りたいと思っているので、変化は怖くないというか。やっぱり“良いものを作る”っていうことが大事なんですよね。“Kidori Kidoriらしさ”とか“バンド像がどうか”という話ではなくて、シンプルに自分もメンバーもスタッフもお客さんもみんなが“良い”と思えるものが作れたら良いなと思っていて。僕たちがこれをやることに意味があると思うし、代わりが利くようなものであればやる必要がない。それゆえに、いつも変化していってしまうんです。

●日本語詞を入れるというのも、変化の1つですよね。

マッシュ:そこについては色んな意見があったし、「絶対に英語のほうが良い」って言う人も大勢いると思うんです。でも結局のところ、何も変わっていないとも言えるんじゃないかと僕は思っていて。

●何も変わっていない?

マッシュ:もちろん日本語になっていたり、(表面的に)色々と変わっているところはあると思うんですけど、本質的なところでは何も変わっていないと思うから。日本語になったからどうとかいうものではないんです。“本当に良いと思うものを作ったよ”っていうことでしかない。

●そういう流れもあって、今作も日本語詞になっている。

マッシュ:「やっぱり英語のほうが良い」って言う人たちに対して、作っている身としては「え〜、日本語も良いよ!」って思うんです。だから、そういう人たちも“おぉっ!”と思わせられるような日本語の曲を作ろうとは考えていましたね。

●それを形にしたのが今作という感じでしょうか?

マッシュ:そうですね。「フィールソーグッド」は、“こんなバンドだよね”っていう感じの曲だなと。ミックスやマスタリングが終わって聴いた時に、“あ、Kidori Kidoriだな”と思いました。今、本当にこんな感じだなと思うんですよ。

●自分たちらしさが出ていると。

マッシュ:昔から僕らは照れ隠しみたいな部分が多いんですけど、ちょっと暗い歌詞の「フィールソーグッド」の後に、とことんゴキゲンなM-2「ハッピーアワー」みたいな曲が入っていたりするところも、こうやって見ると幼いなと(笑)。でもそういうところも含めて、今作のムードにはピッタリなんだなと思います。

●「ハッピーアワー」のような“おとぼけ感”のある曲も、“らしさ”ですよね。

マッシュ:そこはやっぱり大事というか。真面目な話をしていても急にギャグをブッ込んじゃうような人間なのでそういうところは大事にしたいし、余裕みたいなものなのかなとも思っていて。本当に余裕がなくなってくると、そういうことを言えなくなりますからね。自信があるから、こういう遊びもできたのかなと思います。

●シングルっぽいのは「フィールソーグッド」かもしれないですけど、「ハッピーアワー」もKidori Kidoriを象徴している曲かなと。

マッシュ:まぁ、バカですからね(笑)。2曲とも、自分としてはよくできた曲だなと思っています。

●そして後半2曲はカバーなわけですが、どちらも“東京”に関わる曲なのは意図的なものですよね?

マッシュ:そうですね。自分が今どこにいるかと言えば東京だし、どこから見た視点かというところで、(今作の)歌詞に出てくる描写のヒントになっているような部分もあって。やっぱり大阪の目線じゃなくて東京の目線のものを作りたいから、今回は“東京”縛りでカバーをやろうということになったんです。

●この2曲を選んだ理由とは?

マッシュ:メンバー2人に「東京と言えば何でしょう?」と訊いたら、くるりの名前が挙がって。特に川元はM-3「東京」の入っているアルバム『さよならストレンジャー』(1999年)が好きなんですよ。このアルバムのスペシャルサンクス欄に川元の出身サークルの名前が入っているらしくて、そういうところで感情移入するポイントもあったりするのかなと。

●歌詞の内容的にも上京してきた人の心境が描かれているので、重なる部分もあるのでは?

マッシュ:カバーをする上で改めて歌詞を読んでみたら、重なるところも多かったです。何より今回のEPの流れにバッチリとハマる曲だなと思ったので、このチョイスは間違っていないなと。

●サウンド的にはシューゲイザー的な感じになっていますが、これはどういうイメージから?

マッシュ:歌詞を読みながら改めて聴いた時に、前向きな歌ではなく下を向いてウジウジしているようなイメージがあったんです。その目に見えているものと言えば土やアスファルトとか、あとは…靴だなと思って。じゃあ、“シューゲイザー”だなと。ずっと下を見ているから、“Shoe(=靴を)・gazer(=見つめる人)"なんですよ。そういうことで、シューゲイザーをやるのが説得力があるんじゃないかなと思いました。

●ダジャレだったのか…(笑)。歌い方も今までとは少し違っていて、独白っぽい感じがするというか。

マッシュ:僕の中でシューゲイザー=マイブラ(my bloody valentine)なんですけど、そういうマナーみたいなものがあるなと感じていて。今回はそのマナーに則ってカバーするということで今まで通りの歌い方でやってはいけないなと思ったので、ちょっと違う歌い方をしてみました。“カバーだし色々やってみよう”という感じで、名曲を盾にして挑戦させて頂いた感じですね。

●カバーを上手く利用して、自分たちの幅を広げようとした。

マッシュ:レコーディングの何が楽しいって、成長できるところなんですよ。たとえば昔の自分に言っても理解できなかったであろうことが徐々に理解できるようになっていったりするし、聴こえていなかったものが聴こえるようになったりする。そういうのがすごく好きで、ミュージシャンとしての質がどんどん高くなっていくのが楽しい。もっといっぱい知りたいと思うのなら色々と試さないといけないわけで、今回もまた1つ勉強させて頂いた感じかなと思っています。

●もう一方のM-4「東京ラッシュ」は細野晴臣さんのカバーですが、こちらを選んだ理由は?

マッシュ:この曲が好き過ぎて「絶対にやる」って、僕が言ったんです。あまりにも聴いていたので、歌を録る時もそんなに練習はしていなくて。でも良いテイクがすぐに録れた感覚があったんですよね。

●アレンジはどんなイメージで?

マッシュ:「東京ラッシュ」の原曲って、色んな楽器が鳴っているんですよ。それを僕らは3人組でやるから音もスカスカになりがちなんですけど、何とかそこを補うべく色々考えたりして作っていくのが面白かったですね。

●良い意味でのリラックス感が出ている曲かなと思います。肩の力が抜けている感じというか。

マッシュ:それは間違いないですね。

●今作を通して聴くと、ちょうど2曲ずつ対照的になっているなと思って。「フィールソーグッド」と「東京」はシリアスな感じで、「ハッピーアワー」と「東京ラッシュ」は肩の力が入っていない感じがします。

マッシュ:そうなんですよね。曲順を考える時に気付いて。「東京ラッシュ」と「ハッピーアワー」については元々すごく親和性を感じていたんですけど、「東京」が入ることになってから「フィールソーグッド」とすごく近いことに気付いたんです。それがすごいなと感じたし、やっぱり“バンドなんだな”と思いました。

●偶然のようでいて、必然性のあるものになっている。今回の4曲は、次に出るであろうアルバムを想像させるものになっているんでしょうか?

マッシュ:なっているとは思いますけど、さらにここからは想像もつかないような話になっていくんじゃないかなと。ここからつながって、さらにその先まで考えています。

●ちなみに今回はジャケット写真の雰囲気もガラッと変わりましたよね。

マッシュ:これは単純に新しいデザイナーさんに変わったということなんですけど、音楽性の微妙な変化に合わせて周りのものも変えていってみようというところでした。でも自分の中では、『!』で1回変わっている自覚があって。

●えっ、そうなんですか?

マッシュ:『!』から、ジャケットにオバケがいなくなったんですよ。

●確かにそこまでの作品には、必ずどこかにオバケのキャラクターがいましたね。今までのイラストから今回は写真に変わったというのも、イメージ的に変化が大きいのかなと。

マッシュ:曲に対して、より説得力を付けていきたいと思ったんですよね。デザイナーさんに「フィールソーグッド」がどういう曲なのかといったことも全部説明した上で作ってもらったので、今回はヒントがたくさん隠されているようなジャケットになっているんです。そこから色んなことを考えられるような作りにして頂きました。

●今後またイラストに戻る可能性もある?

マッシュ:元に戻ろうと思えば、いつでも戻れると思うんですよ。いつでも気が向けば、英語で激しくうるさい曲もやれるわけで。来た道を忘れてしまったわけではないので、いつでも帰れるとは思っていて。でも元いた場所に帰るということに、ミュージシャンとしての成長は待っていないから。もちろん突き詰めたりはできるんですけど、僕はそれよりも先が見たいからまだまだ進んでいきたい。だから、アートワークも少しずつ変わっていくというか。常に変化するということだけが変わらない部分なんですよね。一貫して僕は僕であるという信念を持ってやり続けることで、より説得力を強めていけたら良いなと思っています。

●ジャケットに自分の写真を使うというのも、自信の表れかなと。

マッシュ:ちょっと恥ずかしいですけどね(笑)。でも最初の3枚(※『El Primero』『La Primera』『El Blanco』)に映っている人影は全部僕だったので、ある意味では帰ってきたんですけどね。

●今回のジャケットを思い切って、川元くんにするというアイデアはなかった?

マッシュ:絶対にないですね。まず造形物として、形がカッコ良くない(笑)。

一同:ハハハハハ(笑)。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

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