音楽メディア・フリーマガジン

響心SoundsorChestrA

“響心帝国”

2016/5/17@心斎橋FootRock&BEERS
響心SoundsorChestrA / ウドントミカン(お笑い芸人) / 賢者クサヤマ(お笑い芸人)

 

世の中には星の数ほどの催しがあって、毎日いろんな場所で様々なイベントが行われている。そのうちバンドが企画するライブも数多く存在するが、響心SoundsorChestrAが主催する“響心帝国”は正直かなり変わったイベントだ。この日この場所に集ったのは、バンドマンとお笑い芸人。まったく違う立ち位置ではあるが、どちらも“人の心を動かす人”という共通点を持った人々が一堂に会すものとなった。音楽という枠組みを超えて、今までに無い新しい何かを生み出せるのはきっとこういう場所なのだろう。

 

まずは、主催の響心SoundsorChestrAによるライブからスタートした。「今日はありがとうございます。即興からやります」Vo/G.総理がそう告げると、歌詞も演奏もその場で瞬発的に生まれ出たものを素のままに放っていく。日頃からその内に宿した思想があるからこそ、いつでも自ずから沸き上がるものがあるのだろう。

続いてのお笑いパートでは、松竹芸能から2組の芸人が登場! まず1番手は京都大学在学中のインテリピン芸人、賢者クサヤマ。農学部で学んだ知識を活かした植物・昆虫ネタで、タメになる知的な笑いを繰り出していく。その内容は“へぇ〜! そうなんだ!”と意外に思うようなマメ知識を説明したあと、そこから生まれた疑問に切り込んでいくスタイルで、それらの知識に詳しくない人でも興味を持って楽しめるのが素晴らしい。

ウドントミカンは、香川出身のまっしーと和歌山出身のイッシーからなる漫才コンビ。いきなりステージから飛び出したかと思うと、お客さんひとりひとりと握手を交わし、観客の心(と手)をがっしりと掴んだ。そんな冒頭からもわかるように、体を張ったイッシーのボケとまっしーのツッコミはスピーディーで躍動感がある。特にウルトラマンになりたい男を主人公としたコントはところ狭しと動き回り、ファニーなリアクションで観客の笑いを誘っていた。

そして両者とも、ステージが終わったとたんアンコールを求めるすさまじい声が挙がる! 音楽ライブでは一般的なアンコールというシステムだが、実はお笑いの世界ではまずないことらしい。まったく経験のない事態に戸惑いながらも、呼びかけに応じて再び現れた2組。なんと1ステージにつき3度アンコールが行われるというすさまじい展開だった(笑)。

お笑いライブのあとは、出演者によるトークイベント。このコーナーでは各々に気になることを訊きあったり、お客さんの中から質問やトークテーマを募ったりするもの。芸人になった理由や今の事務所を選んだ理由など、普段はなかなか直接は訊けないようなことも話される。逆に出演者からお客さんに質問をするシーンもあり、ステージも客席も隔たりなく参加した楽しい時間はあっという間に過ぎてく。

そして本日の“響心帝国”を締めくくったのは、予想だにしなかった一大サプライズ。芸人チーム&響心SoundsorChestrAの総理とで、1日限りのオリジナルバンドを結成! ウドントミカンが楽器経験者ならではの演奏を見せたのもさることながら、クサヤマがこの日初めてギターに触ったというのも本当に驚きだ。だが、それでもライブは成立するんだということを証明してみせた。

“バンドとはこうじゃないといけない”とか“イベントは普通こうあるべきだ”だとか、きっと私たちはいろいろなものに対して、大なり小なり何となく決められたイメージ持っている部分があると思う。だけどその概念を破ったとき、まったく新しい景色が見えてくる。今日という日を経て、私の世界はいっそう広くなっていったように感じたのだった。

TEXT:森下恭子

響心SoundsorChestrA オフィシャルHP
http://kyoshinsoundsorchestra.com/

 

 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj