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Bentham

これまでの経験を凝縮した7曲のキラーチューンが異次元の興奮をもたらす

img_0115_FIX_mini_WEB3rd EP『OMG』から8ヶ月、Benthamが通算4作目の新作EP『ExP』を完成させた。今年2月に前作のレコ発ツアーファイナルの渋谷CLUB QUATTRO公演をSOLD OUTさせたのに続き、4月に代官山UNITで行った初のワンマン・フリーライブには約5,000人の応募が殺到。バンドとして確実に今、波に乗っている状態での新作リリースと言える。今回もTGMX(FRONTIER BACKYARD)をプロデューサーに迎え、独自の“ハイブリッドロック”がさらに進化。ライブの盛り上がりが容易に想像できる、全曲キラーチューンと呼ぶべき渾身の1枚だ。

 

「“何をやってもBenthamらしくなる”と言い切れる作品になったなと思っていて。今までの“Bentham”というバンドのイメージから今作でもう少し間口が広がって、色んな伝わり方ができるような作品になったんじゃないかな」

●前作の3rd EP『OMG』のレコ発ツアーファイナルとなった2/16の渋谷CLUB QUATTROは大盛況で、バンドが良い状況に来ていることを実感しました。

辻:あれくらいの規模で、自分たちのイベントをやるのは初めてだったんですよ。後ろのほうまでお客さんがみんな楽しそうにしている姿を見て、やっている側としてもテンションが上がりましたね。

鈴木:前回のツアーを組んだ時点では「本当にクアトロが埋まるのか?」っていう気持ちだったんですけど、その間にも“COUNTDOWN JAPAN 15/16”や“MERRY ROCK PARADE 2015”といった大きなイベントに出たりして。今までにないような大きな場所でもやっていたので、規模的な面では日和らずにやれたのかなと。初めてだったので慣れないこともあったんですけど、すごく気持ちよくできて良かったなと思います。

小関:ツアーでの経験を盛り込めたという感覚もあって、とても良い感じでした。

●自分たちが『OMG』のツアーで成長したことも感じられている?

須田:それはかなり感じましたね。各地方でお客さんが増えてきたことを実感できたツアーだったし、『OMG』を出したことによって曲数もかなり増えたので、今後のライブをどういう展開にしていくのかと考えたりもして。『OMG』の収録曲もツアーの間に育ってきていたから、ライブに落としこむ時にはどういうアレンジにしたら良いのかといったことまで考えられたツアーでした。

●『OMG』では楽曲の幅を広げたわけですが、それがファンに受け入れられている実感もあった?

辻:ありましたね。聴いてくれるお客さんの層も広がったと思うし、それがライブに来てくれるお客さんの数にも比例している気がします。

●前作では、メンバー全員が作曲することにチャレンジしたんですよね。そこでの経験も今回の新作『ExP』に活かせたのでは?

小関:前作で初めて作曲をしたメンバーもいたんですよ。だから前回はまだ進め方が良くない部分もあったんですけど、そういうところも考えた上で今回はよりスムーズにいくように意識しましたね。全員が作曲を経験済みなので意思疎通もやりやすいし、前回で疑問に感じたことを各自が消化しながらやったと思うので、そのあたりのスピード感はすごく上がったと思います。

●今作を作り始める段階で、何かイメージはあったんでしょうか?

小関:全曲がリード曲になれるようなものというのは意識しました。Benthamらしくというのはありつつ、たくさんの人に聴いてもらえるようなキャッチーな曲ということは考えていて。全員で曲出しをした中から良いものを選んでいったんですけど、各々が思う“リード曲”を作ってきたというか。ゆっくりめの曲を持ってくるメンバーもいたし、それぞれのスタンスで作曲はしていましたね。

●キャッチーな曲というのが軸にはあった。

小関:僕の中での“リード曲”というのは、どんな曲調だとしても“聴いた人が歌える”というところなんですよね。あと、“Benthamらしさ”というよりも“僕っぽい”感じが出ているのが“リード曲”だと思っていて。今までは聴いてくれる人のことをより意識していたので、今度はもっと自分が“こうやりたい”というものを貫きたいなと思いました。

須田:やっぱり小関が歌うメロディの立っている曲というのが、僕らにとって第一だと思うんですよ。そこに僕が耳に残るような難しすぎないリフを付けることで、リード曲になり得るのかなと思っていて。そういうものも入れつつ、しっかりと歌が抜けるように…というイメージがありました。前作では自分がやりたいように作った曲が多かったんですけど、今回は初めてそういうところを意識して作ったという部分ではチャレンジでしたね。

●各々が考える“リード曲”を形にしていった。

辻:プロデューサーのTGMXさんはリード曲のことを“パイロット曲”と言うんですよ。他の曲たちを引っ張ってくれるパイロットになるような曲だからということなんですけど、自分もそういうことなんだなと気付かされましたね。その曲があることで作品全体が目立ったり、他の曲たちがより良く見えたりするものというか。

●M-5「AROUND」は辻くんが作曲に関わっていますが、これもそういう意識で作った?

辻:これは小関との共作で、僕が作ったオケの上にメロディを乗せてもらった感じですね。僕は前作で初めて作曲を経験してから、打ち込みを色々とやるのが楽しくなっちゃって…(笑)。色んなジャンルの中で試行錯誤していたら、リード曲っぽいものが全然できなかったんですよ。でも「AROUND」で小関が一緒にやってくれたことで、キャッチーな方向に戻れたんです。

●鈴木くんと小関くんの共作によるM-4「KIDS」は、ちょっと異色な感じですよね。

鈴木:この曲は基本になるものを僕が作ってきて、メロディを小関に付け直してもらいました。普段はあまりギターを弾かないので、Benthamの曲がどういうコード進行になっているのかも僕はよくわかっていなくて。でも小関が歌ったら、Benthamっぽくなると思うんですよ。Benthamらしいリード曲というのは他のみんなが持ってくるだろうから、自分はそことはちょっとテイストが違う曲をいくつか作ってきましたね。その中でもアップテンポなものが今回は1曲入ったという感じです。

●普段はギターを弾かない鈴木くんが作るからこそ、他とは違う面白さも出るのかなと。

小関:ギターで作ると“弾き語り”みたいな曲になっちゃって、バンドっぽいアレンジがパッと浮かばないことも多いんです。でも今回はたまたまエレキギターを友だちにもらったのもあって、頑張ってリフを作ったりして。そういうチャレンジもありましたね。

須田:この曲はデモの段階でタカさん(鈴木)が作ってきたリフをそのまま使っているんですよ。そういうところは前作とは違うところだなと思います。

●小関くんは共作する上で何かイメージがあった?

小関:僕の得意な感じに作れるなという感覚があったので、タカさんのイメージを崩さないようにしつつ作っていきました。ちょっとダーティーなイメージがあったので歌詞は「人間関係やお金関係の話にしたい」ということを話したら、本人は「繁華街っぽいイメージだから近いかも」と言っていて。だからそこにイメージをちょっと寄せて、“キャバクラに行ってボッタクリに遭う”みたいなイメージで書きましたね(笑)。

●ハハハ(笑)。そもそも鈴木くんはどういうイメージだったんですか?

鈴木:繁華街をスケボーに乗って走っているようなイメージというか。…僕の曲はだいたい、酒か繁華街のイメージなんですけどね(笑)。

小関:“ロックっぽく”というところは意識して、タカさんのドラムに合うようなイメージで曲作りは進めていきました。

●須田くんが作詞作曲したM-6「カーニバル」も今までにない感じがします。

須田:これは全部のデモ出しが一度終わった後に、追加で作った曲なんです。たとえばフェスや野外の大きなステージでやった時に盛り上がるような曲というイメージで作りましたね。今までこういうカントリー調の曲はなかったし、新しい一面が出せたかなと思います。

●歌詞の内容的にもフェスを意識している?

須田:根本には亡くなったお祖母ちゃんのイメージがあって、今の僕が音楽で頑張っている姿を見て欲しいという気持ちで書いた曲です。昔からバンドはやっていたんですけど、今こういう状況にある姿を生では見てもらえなかったんですよ。だから、大きな会場で自分が演奏している姿をそういう人たちにも見ていて欲しいなという想いで作ったというか。“届いて欲しい”という気持ちが出ていますね。

●MVが公開されているM-1「サテライト」も、サビの“届け”というメッセージが印象的でした。

小関:この曲は須田の書いてきた仮歌詞の時点で、既に“届け”という言葉が入っていたんですよ。僕は自分の歌詞がすごく好きなんですけど、人からは何を言いたいのか伝わらないということを言われることが多くて。この歌詞では“走れ自分の足で 大切な事分かるだろう”というところに(言いたいことを)要約していることで、収まりが良いのかなと思っているんです。サビの“届け”という言葉そのままなんですけど、本当に“お客さんに届くように”ということを意図して書いたつもりですね。

●この曲が象徴的ですが、今回はライブでお客さんも一緒に歌えるような仕掛けが多いなと。

小関:この曲はサビが本当にシンプルなので、Aメロを小気味良い感じにして僕の得意な抽象的な歌詞を書きつつ、Bメロで(テンポが)落ちた時にみんなで一緒に歌う姿がイメージできたのでエモい感じにしてみました。一緒に歌っている時にお客さんにも自分たちにも言葉が刺さってきて、サビで“届け”とお互いに歌い合うようなイメージで書きましたね。

●「サテライト」が1曲目にあることで、すごくインパクトも増している気がします。

小関:曲順を決める時に「サテライト」が1曲目だというのは4人とも共通していたので、すごく自然に決まりましたね。『OMG』の時は“あの収録曲の中ではこれが1曲目かな”という感覚だったんですけど、今回は「サテライト」を1曲目にすることによって『ExP』という作品ができた感じがしていて。完成した後で、もし1曲目が「サテライト」じゃなかったら『ExP』じゃないなって思いました。

●そのくらい重要な曲になっている。今回の『ExP』というタイトルは、どこから来ているんですか?

小関:作品タイトルは一番最後に決めたんですけど、意味合いとしては“経験値(experience)”ということですね。もう少し掘り下げると、“7つの経験を元に7曲で構成されている”ということでもあって。各々にテーマがあるんですけど、それは後付けなんですよ。まず“経験値”というアイデアが出てからその理由付けを考えた結果、みんなが「良いね」となったんです。どの曲もイメージがすぐに浮かんだので、スムーズに決まりました。

●“経験値”という意味だったんですね。

小関:自分たちも今作を作ってからライブで収録曲を演奏したり、インタビューを受けたりしているうちに、「サテライト」が『ExP』というタイトルにガチっとリンクしてきたというか。「サテライト」みたいな曲をお客さんは今求めていると思うし、それに自分たちもちゃんと対応できている。“僕らの経験とあなたの経験がお互いに響き合っているんだ”という感じで、キレイにまとまったと思います。

●これまでの経験値を昇華できた作品になった。

鈴木:4枚目のEPなんですけど、過去3作を凝縮したようなものになっていて。ツアーも含めて、これまでの経験をギュッと1枚にまとまめられたかなと思います。

辻:今までで一番、色濃いものになったというか。前作の『OMG』はカラフルでボリュームも多かったんですけど、今作はそれを7曲に凝縮させられていて。どの曲を聴いてもリード曲っぽいし、何となくコンセプトっぽいところもあるんですよね。今までで一番“作品”らしい作品になったなとも思うし、充実感がすごくあります。

須田:“何をやってもBenthamらしくなる”と言い切れる作品になったなと思っていて。今までの“Bentham”というバンドのイメージから今作でもう少し間口が広がって、色んな伝わり方ができるような作品になったんじゃないかな。自分たちが伝えたかったバンドのイメージが今回をキッカケにこれまでも聴いてくれている人たちや、まだ聴いたことのない人たちにももっと伝われば良いなと思います。

●リリース後のワンマンツアーでも、さらに経験値を高めていくわけですよね。

小関:『ExP』というタイトルのとおり、ツアーでしっかりと経験値を稼いでどれくらいレベルアップできるかというところがあって。自分たちの現段階でのレベルを確認しつつ、どこまで行きたいかというのも見えてくると思うんですよ。「よし行くぞ!」という準備万端の気持ちで、ファイナルの恵比寿LIQUIDROOMは臨みたいですね。

Interview:IMAI

 

 

 
 
 
 

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