音楽メディア・フリーマガジン

KANSAI LOVERS 2016

たくさんの愛があふれたはじまりの場所

9月17日(土)・18日(日) 会場:大阪城野外音楽堂

【17日出演】アルカラ / UNCHAIN / GOOD4NOTHING / ココロオークション / SABOTEN / THE ORAL CIGARETTES / SHE’S / セックスマシーン / ラックライフ / LEGO BIG MORL / Rick Rack(O.A.)

【18日出演】感覚ピエロ / シナリオアート / ジラフポット / ドラマチックアラスカ / tricot / PAN / プププランド / Brian the Sun / ユビキタス / 夜の本気ダンス / YAJICO GIRL(O.A.)

 

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今年で9回目を迎える野外フェス“KANSAI LOVERS”。このイベントは、“ライブハウスに来てもらう入り口を作りたい”という願いのもと、ライブハウスのスタッフが中心となって開催している。だからこそ関西のバンドにとっては、馴染み深い人々が仕掛けているイベントであり、若手にとっては3000人規模の会場というひとつの目標であり、ベテラン勢にとっては返って来られるホームのような暖かい場所でもある。

初日のオープニングアクトとして出演したRick Rackは、グランジ感のある渋いサウンドで魅了し、艶のある歌声と音の質感がたまらないTHE ORAL CIGARETTESへ。SABOTENは晴れ晴れしいパンクが秋空に鳴り響かせ、ラックライフが高い熱量と人間力でオーディエンスを惹き込む。今年10周年を迎えるLEGO BIG MORLは珠玉の旋律で聴く者の耳を奪い、セックスマシーンが数千人のゲストボーカルと共に大合唱! 会場を縦横無尽に駆け回ったあのライブは、この先語り継がれていくに違いない。

折り返しとなる6バンド目、SHE'Sはキャッチーかつ壮大な美しいピアノロックを放っていき、キッズ達とほど近い距離感でどんな場所もライブハウスに変えるGOOD4NOTHINGがその後に続く。オーディエンスと心を撃ち抜くカンラバのスーパーシューター、ココロオークションの次は上品かつお洒落なファンクミュージックでフロアを揺らしていくUNCHAIN。全く違うタイプの出演者が並ぶ中、フロアは始終歓迎ムードで暖かい。ラストのアルカラは、本日の全出演者に対して一言ずつコメントを贈り、抜群のライブパフォーマンスで初日のステージを締めくくった。

2日目のオープニングアクトはYAJICO GIRL。現代社会に生きる者の心情を幅広い音楽性で見事に表現する。柔らかな歌声とギターロックサウンドの組み合わせが絶妙なユビキタスの後は、映画のように、あるいは絵本を繰るように物語が展開していくシナリオアート。そして和心を備えたメロディが日本人の感性を刺激するドラマチックアラスカから、聴き入るようなカントリー要素の曲やブチ上がるロックンロールナンバーのキレが凄まじいプププランド、スタイリッシュかつエモーショナルなロックナンバーが炸裂するジラフポットへと繋いでいく。歌心あるバンドラッシュで、耳が幸せになるようだ。

夜の本気ダンスは独特なセンスを発揮したダンスナンバー(とギャグ)で踊らせ、PANは名刺代わりにパンを投げたのちお祭り感全開の楽曲でオーディエンスの心(とお腹)を満たし、tricot はクオリティの高さはもちろん、曲中にサンバを踊り出す大胆さや男勝りな煽りで自身を印象づける。今その瞬間の想いに正直に向き合い、偽らない姿が胸を打ったBrian the Sunからステージを引き継ぎ殿を務めたのは、感覚ピエロ。始終フロアを盛り上げた彼らは、最後に「今日来てくれたあなた達を、後ろで支えてくれた連中を、てっぺんまで連れて行く」と力強く頼もしい宣誓を残していった。

2日間に渡り開催された“KANSAI LOVERS”。総勢22組もの出演者がいる中、その誰もが同じように関西を愛し、ライブハウスを愛するバンドばかりだった。“何故このイベントが開催されているのか”“主催者がどのような気持ちで臨んでいるのか”をしっかりと汲み取り、自身のステージを通じてそれを発信していく。それができるのも、主催者であるライブハウスの人達とバンドの間に、絶大な信頼関係があるからこそだ。ここから助走をつけて大きく羽ばたいていくバンド。気持ちを新たにまた全国を駆け回るバンド。進む道はみなそれぞれだが、時々またこの場所に集まっては変える場所がある大切さを実感するのだろう。彼らが大切に想う場所を、私達もまた守っていきたい…そんな風に思わせてくれる2日間だった。

TEXT:森下恭子

 

【17日出演】

 

【18日出演】

 

 

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