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nano.RIPE

いつか終わってしまうシナリオだとしても 今ぼくらは奇跡を纏い、光で照らし続ける

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nano.RIPE、通算5枚目のフルアルバム『スペースエコー』が完成した。だが、そのリリースを目前にした10月頭に発表された、Ba.アベノブユキとDr.青山友樹の年内での脱退というニュースに衝撃を覚えた人も多いだろう。昨年にはメジャーデビュー5周年を迎えて赤坂BLITZ公演も大盛況に収め、このメンバーでさらにステップアップしていく未来を想像していたところへ届けられた予想外の知らせ。そんな状況の中でも、結成時から共に歩み続けてきたVo./G.きみコとG.ササキジュンの2人は決して後ろ向きにはなっていない。“光れ 光れ”と力強く歌うリード曲「ルミナリー」を筆頭にして今作に収められた全14曲はいずれも、前進を続けるポジティヴな意志と決して歩みを止めない強靭な覚悟に満ち満ちているのだ。これまでもまさに紆余曲折という道のりを乗り越えてきたnano.RIPEはどんな物語にも必ず終わりは来ると知りながらも、最後の最後まで全身全霊で光を放っていく。

 

Vo./G.きみコ・インタビュー#1

「自分にもっとエネルギーがあって、あたし自身がもっと強く光っていられたら、それによって力を与えられるんじゃないかと。そういう存在になりたいなという気持ちが、ここ最近で芽生えてきたんですよね」

「“もっともっと!”っていう気持ちをこの5年の間で忘れかけていた時期もあったんじゃないかなと、振り返って思ったんです。“よりストイックに貪欲にやるぞ!”っていうのを、歌にすることによって改めて自分に言い聞かせたところもありますね」

●今年2月にシングル『ライムツリー』をリリースしてから次のシングル『スノードロップ』を出すまでにnano.RIPEとしては珍しく半年ほど期間が空いたわけですが、その間にアルバムの制作もしていたんでしょうか?

きみコ:その半年の間もアルバムを10月に出すということを見据えて動いていたので、曲作りはしていました。3〜4月と7〜8月にそれぞれツーマンツアーもやりながらの楽曲制作だったし、レコーディングは『スノードロップ』リリース後だったので、わりとカツカツなスケジュールではありましたね。

●アルバムのビジョンは見えていたんですか?

きみコ:大まかな話はしていました。前作の『七色眼鏡のヒミツ』の時にミトさん(クラムボン)や色んな方にアレンジャーとして参加して頂いて、同期やシンセの音も取り入れることで1つ壁がなくなっていたんです。曲の世界観を大事にしつつ、そういう部分をより一層広げていくというのが今回のテーマで。とにかく曲や歌詞、メロディに対してどういうものが一番良いのかということだけを考えて、“4人の音だけじゃないとダメだ”っていう考えをもっと取っ払っていこうというのは最初に決めていましたね。

●リード曲のM-2「ルミナリー」のアレンジを担当した渡辺拓也さんは、初めて参加する方ですよね?

きみコ:初めてですね。あとはM-13「ディア」の高橋諒さんも初めてでした。ナベタクさん(※渡辺)に関しては伊藤かな恵ちゃんに曲を書いていて、その曲にあたしが歌詞を乗せたことがあったので、その時に一度お会いしたことはあったんです。他にもナベタクさんが作った伊藤かな恵ちゃんの曲を聴いたことがあったので、どういう音を作る方なのかは何となくわかっていて。だから不安もなく、まるっとお任せできました。

●「ルミナリー」は“発光体”や“天体”という意味で歌詞の内容も宇宙的なことを歌っているので、アルバムタイトルの『スペースエコー』にもつながっているのかなと思ったんですが。

きみコ:「ルミナリー」がリードになったことでインストのM-1「SN1998A」ができて、『スペースエコー』というアルバムタイトルやアーティスト写真のイメージも決まったんです。そこから他のものがどんどん決まって、全体的なイメージが固まったという感じですね。

●ちなみに「SN1998A」には、どんな意味があるんでしょうか?

きみコ:「ルミナリー」でも“赤くなった時に 終わりが来るとどこか知ってた”と歌っているんですけど、これは“超新星爆発”のことなんです。英語だと“supernova”なので、超新星爆発をした星には“SN◯◯(年号)”という名前の付け方をするらしいんですよ。たとえば2001年に爆発した星だったら“SN2001”で、その年の何番目に爆発したかによって1番目ならAで2番目ならBを後ろに付けるっていう。nano.RIPEでいうとあたしとジュンが出会ったのが1998年なので、こういう名前になりました。

●そういうことだったんですね。『スペースエコー』にはどんな意味が?

きみコ:今回は「ルミナリー」がリード曲でアルバムの核にもなっているので、それに合うような言葉を考えていた時に“宇宙”というのが浮かんで。“スペース”って(“宇宙”という意味以外に)、“空間”という意味もあるじゃないですか。“エコー”にも“繰り返す”とか“こだま”とか“響く”とかいくつも意味があるので、色んな組み合わせができるなと。“空間で鳴り響き続ける”みたいな意味に取れば、CDやライブハウスもそうですけど、四角いものの中で音が鳴り続けているっていうイメージがすごくバンドっぽいし、音楽ってそうあるものだなと思って。幾重にも意味は重ねているので、色んな意味を持ったタイトルですね。

●なるほど。その核になっている「ルミナリー」は、元々どういうイメージで作った曲なんですか?

きみコ:(作曲者の)G.ササキジュンはいつも通り作曲したつもりだと思うんですけど、あたしは何か新しいことをしようとしているようにすごく感じていて。自分の中で、何となくその時の気持ちとリンクしたというか。「ルミナリー」のデモ音源を聴きながら“何を書こうかな”と考えていた時、そばに宇宙についての本があったんですよ。何となく手を伸ばして読んでみたら、“ビッグバンって面白いな”とか“宇宙ってこんなふうになっているんだな”と思って、それが人の一生と重なったんです。

●たまたま宇宙の本を手に取ったことがキッカケになった。

きみコ:今まであたしは「太陽よりも月だよね」と言われてきたし、実際に月の曲をたくさん書いてきたんですけど、自分自身も光る力を持ちたいなと思ったんです。nano.RIPEの曲って、お客さんの背中を押せるような曲が今まであんまりなかったと思っていて。お客さんに対して「頑張れ」とは言わないですけど、自分にもっとエネルギーがあって、あたし自身がもっと強く光っていられたら、それによって力を与えられるんじゃないかと。そういう存在になりたいなという気持ちが、ここ最近で芽生えてきたんですよね。

●そういう気持ちが「ルミナリー」には表れている。

きみコ:そういう気持ちが強くなっていったことがたまたま手に取った宇宙の本とリンクして、こういう前向きな歌詞になりました。あたしの中ではちょっと珍しい、力強い感じの歌詞になったかなと思います。

●M-9「スノードロップ」をシングルで出した時も“変化”を意識していたそうですが、今年はそういう気持ちが特に強いんですよね?

きみコ:“変わらなくちゃ”っていう感じでした。『七色眼鏡のヒミツ』では新しいことをして1つ壁は壊せたんですけど、その後に出したシングルコレクションの『シアワセのクツ』には世間が抱いている“nano.RIPE”というイメージが詰まっていたと思っていて。並べて聴いてみた時にシングルとしてリリースしてきた曲はすごく統一感があって、逆に言えば初めて聴く人には「全部同じ曲に聴こえる」って言われてもおかしくないくらいnano.RIPEのカラーがそこにしっかりとあったんです。

●色がしっかりとあることで、イメージが固まりすぎてしまう。

きみコ:それは武器でもあるし、あたしが歌って、ジュンとあたしが曲を作っている限り、その色は消そうと思っても消えないものだと思うんです。だから、そこはもうあえて出そうとしなくても良いなと。それよりもアレンジやサウンド面で新しいものをもっと出していくことで、あたしの言葉やジュンのメロディがより映えるんじゃないかなと思って。だからサウンド面に関しては、もっと変えていかなければいけないという感じがしたんですよね。

●アレンジやサウンド面で変化があっても、軸にある歌とメロディがしっかりしているのでブレないというか。

きみコ:“変わらない”っていうのは良いことでもあるんですけど、成長していないということでもあるなと思って。ただのエイトビートをやるにしても“あっ、全然違う!”って思わせられるくらい、サウンド面では変わっていきたいなという気持ちがあったんです。

●「スノードロップ」はそれを特に意識していた?

きみコ:そうですね。ああいうテイストの曲って、今までだったらたぶんアルバムのリード曲にしていたと思うんですよ。たとえば「ナンバーゼロ」(2ndアルバム『プラスとマイナスのしくみ』収録)や「セラトナ」(1stアルバム『星の夜の脈の音の』収録)もそうなんですけど、今までのnano.RIPEのイメージからするとシングルで切るには暗すぎるというのがあって。でも『ライムツリー』あたりから“こういうのもアリだな”というのを自分たちもそうだし、お客さんの反応を見ていても感じられたので、そこは恐れずにやっていこうと思いました。

●歌詞の面でも「スノードロップ」は、言葉が今までになく強い気がしたんです。“こんなもんかな? こんなもんでしょう?”とかは、自分を煽っているようなところもあるのかなと。

きみコ:『食戟のソーマ』のエンディング主題歌を担当することが決まって、いつも通りあたしとササキジュンで1曲ずつ作ったんです。あたしがその時に作ったのがM-4「システム」で、すごく自信があったんですよ。でもジュンが作ってきた曲も含めて、両方ともボツになってしまって。

●そんなこともあるんですね。

きみコ:その理由を訊いた時に、“でもそれはnano.RIPEがやらなくてもいいことなんじゃないかな?”と思ってしまったんですよね。別にそういう意味で言ったわけではないと思うんですけど、あたしは「システム」がボツになったことだけでも“何でこれがダメなんだ!”っていう気持ちがあったから。だから“誰にだって作れるものをnano.RIPEが作って何か意味があるのかな?”ということを思い切ってそのまま曲にしてみたら、それが通ってしまったっていう…。まさに反骨精神が出た曲ですね。

●「システム」のほうも攻撃的な曲ですが、『食戟のソーマ』からそういうイメージが浮かんだんでしょうか?

きみコ:『食戟のソーマ』の原作を読んだりアニメを見たりした時に、主人公の幸平創真やその他の主要なキャラクターもみんなが自分だけの武器を持っていて、その武器で“てっぺんを取るぞ!”っていう気持ちが出ているところが音楽にも通じるなと思って。あたしは“オンリーワンで良いんだ”みたいな考え方が苦手というか。それはそれで良いとは思うんだけど、音楽をやっていたりして自分みたいな生き方をしていると、やっぱりできる限り一番上まで行きたいんですよね。だから、あたしの生き方としては“オンリーワンよりナンバーワン”なんです。創真たちもそれをずっと学園の中で言っているのがすごくカッコ良いなと思って、それをテーマにして書いたので“弱肉強食”がテーマになりました。

●最近のJ-POPなんかにはあまり見られないようなストレートな表現というか…。

きみコ:“弱き肉を強き者が食らうシステムだ”って、勝手に言っちゃってますからね。普通は“勝ち負けが全てなんだ”に対して“そんなことないよ”って続くんでしょうけど、“勝ち負けが全てです!”っていう(笑)。

●ハハハ(笑)。

きみコ:たぶん無意識的になんですけど、ここにきて急にパンク精神みたいなものが湧いてきていて。第2次反抗期みたいなのが今来ているんだと思います(笑)。

●それは何かキッカケがあったんですか?

きみコ:メジャーデビュー5周年を迎えて『シアワセのクツ』を出した時に、ぼくらが想い描いていたところにはまだまだ届いていないという現実を改めて見つめる機会にもなって。そういうところで“もっともっとやってやる!”というような気持ちが出てきているのかもしれないですね。

●現状に満足していない。

きみコ:ありがたいことにnano.RIPEをずっと続けられているし、たくさんタイアップも頂いてシングルもこの時代にこんなにたくさん出せていて、アルバムもコンスタントに出せていて。そういう意味では今のペースで楽しく続けていくというのも1つの選択肢なのかもしれないんですけど、そこで止まるというのはあたし的にはぬるま湯に浸かるような感覚になっちゃうから。“もっともっと!”っていう気持ちをこの5年の間で忘れかけていた時期もあったんじゃないかなと、振り返って思ったんです。“よりストイックに貪欲にやるぞ!”っていうのを、歌にすることによって改めて自分に言い聞かせたところもありますね。

 

Vo./G.きみコ・インタビュー#2

「むしろ今のぼくらの状況と今回のアルバムを見比べて考えてみると、バンドのことばかり歌っているなっていう。後から思えば、予言みたいな歌が多いなって思います」

「ライブハウスで直接2人の言葉を伝えたほうがたぶん誤解なく伝わるし、みんなも安心すると思うんですよ。直接みんなと話ができるのはnano.RIPEにとってはライブハウスだけなので、そこをより一層大事にしていきたいな」

●今回のアルバム制作期間も、そういう気持ちでストイックに向き合っていた?

きみコ:そうですね。スケジュールが詰まっていたのもあるし、アルバムにはかなり集中して前向きに取り組めました。アレンジャーさんにお願いした曲も、イメージと違うということが全くなくて。むしろ全てイメージを超えてきてくれたので、外部の方にお願いしたことでストレスになることも全くなかったんですよ。

●アレンジャーの福富雅之さんについては、編曲クレジットが福富さん単体のものとnano.RIPEとの連名になっているものがありますが、これはどういう違いなんでしょうか?

きみコ:元々nano.RIPEだけで完成していたものに対して、福富さんに鍵盤を入れて頂いたりアイデアを頂いたりもして。そこでまた自分たちと福富さんとで話し合って「こうしたほうが良いんじゃないか」っていうやりとりを何度かしたものもあるんです。連名のものに関しては、そうやって5人目のメンバーくらいの感じで一緒に作って頂いているんですよね。

●逆にクレジットが個人名義のものは、完全にお任せしているわけですね。

きみコ:まるっとお任せしています。福富さんにも今回M-12「ものがたり」をお願いして。この曲はnano.RIPEだけでは出てこないアレンジや世界観になっていると思います。あたしのアコギの弾き語りだけの状態で渡したんですけど、それをこんなにもファンタジックな世界で、“切ないのに温かい”っていうものに落とし込んでくれたのは福富さんのセンスだなって思いますね。

●この曲はタイトル通り、何らかの物語をイメージして歌詞を書いている?

きみコ:実は「ものがたり」とM-11「イタチ」とM-10「在処」の3曲は、あたしの大好きな『鉄コン筋クリート』(松本大洋)について書いた曲なんです。書いた時期も全部バラバラなんですけど、たまたま今回3曲とも入ることになって。「ものがたり」は『鉄コン筋クリート』の世界を自分に置き換えたり、物語の中に自分が入り込んでみたりっていう感じで書きました。

●「イタチ」というタイトルはどこから出てきたんですか?

きみコ:これは『鉄コン筋クリート』のキャラクターからですね。“シロ”と“クロ”という2人の主人公がいるんですけど、シロは真っ白な心を持っている純粋な男の子で、クロは血とか暴力を好むタイプで、2人が一緒にいることでお互いに何とかバランスを取れていて。でもシロとクロが離れ離れになってしまった時に、クロは自分の中にある一層黒い部分に引きずられそうになるんですよ。そのクロの中にいるもう1人の自分が“イタチ”っていう名前なんです。

●“性が悪だとしたらぼくら何を学ぶだろう”という歌詞も、『鉄コン筋クリート』の世界観から?

きみコ:あたしは性善説・性悪説みたいなことを昔からよく考えていて、“結局、人間はどっちなんだろう?”みたいなところを歌詞にしたんです。善と悪っていうのはシロとクロにも重なるので『鉄コン筋クリート』に沿っているところもあるんですけど、AメロやBメロはわりと自分やバンドのことを歌っていたりもしますね。

●「在処」はどういうイメージで?

きみコ:最初にこの曲のメロディをジュンからもらった時に“どうせ見えないんだろう 居るわけないだろう”っていう冒頭の歌詞が浮かんで、“これはもう暗い歌になるな”と思ったんです。そこから書き始めたので最初はそういうつもりはなかったんですけど、書いていくうちに“あれ? 何か『鉄コン筋クリート』の世界観に重なるかもしれない”と思い始めて。

●最初から意図していたわけではなく、途中で気付いたんですね。

きみコ:そこから何回か書き直す中で、『鉄コン筋クリート』のキーワードをちょっと加えたりもしました。でも結局は恋愛もバンドもそうなんですけど、“きみ”がいないと“ぼく”は成立しないっていうことを書いているんです。たとえばファンでもメンバーでもスタッフでも恋人でも良いんですけど、そういう存在がいないとあたしは成立しないっていう気持ちが入っていますね。

●その存在をメンバーと捉えれば、きみコさんにとっての“在り処”というのはnano.RIPEだとも言えるのでは?

きみコ:バンドにも置き換えられる曲ですね。むしろ今のぼくらの状況と今回のアルバムを見比べて考えてみると、バンドのことばかり歌っているなっていう。後から思えば、予言みたいな歌が多いなって思います。

●「ディア」では“拝啓 愛する人”と歌っていますが、これもファンのことだと捉えられるのかなと。

きみコ:まさにその通りですね。「ディア」は、このアルバムの中でも一番最後に歌詞を書いたんですよ。何について歌おうかなとずっと悩んでいたんですけど、他の曲の歌詞を読んでいたら自分のことやバンドのことばかり歌っているなと思って。せっかく聴いてくれる人や手に取ってくれる人がいて初めて成立するものなんだから、アルバムの中で1曲くらいは聴いてくれる“きみ”に向かって問いかける曲を残しておきたいと思ったんです。

●手紙のような文体になっているのはなぜ?

きみコ:ライブでお手紙を頂いたりするんですけど、それに対するお返事を全員に書けるわけではもちろんなくて。だから、これまでは“ライブハウスのステージの上から返す”っていう気持ちで歌っていたんですよ。でも今回はその気持ちを曲にして、“みんなからいつも頂いている手紙への返信ですよ”っていうような曲を書きたいなと思ったんです。これは本当に“手紙”ですね。

●“ウソもつくよ プライドなの”と“ウソじゃないよ プライドなの”という部分は、どういうニュアンスで言っている?

きみコ:ここだけは今回のnano.RIPEの今置かれている状況というか、リズム隊の2人が抜けるということが決まった後に書いた歌詞なんです。お客さんからしてみたら“4人でnano.RIPEって言ったじゃん。今の4人が最高だって言ってたじゃん”っていう気持ちもきっとあると思うんですよ。そういうのって結局「この4人でnano.RIPEです」と言ってきた以上、ウソになってしまうわけで。別に脱退の話だけじゃなくて、過去に歌ってきたことを自分で否定するような曲を書いたりもしているので、昔の言葉がウソになってしまったり、MC1つ取ってもウソになってしまう言葉というのはあって。

●時間が経てば、考えや状況が変わるところは誰しもあるわけですからね。

きみコ:その時はもちろん本気で言っているんですけど、それがウソになってしまうというのも生きていく上ではあって当たり前で。そういう意味で、“ウソもつくよ”っていう。でもそれも歌い続けることが、あたしのプライドだから。ウソになってしまった言葉でも自分が書いた曲であって、nano.RIPEの作品としてこの世に残した以上は、ウソだとしても歌っていくのがあたしのプライドだっていうのを伝えるためにそう書きました。

●この曲だけはリズム隊の2人が脱退するということも踏まえて、歌詞を書いている。

きみコ:「ディア」以外は脱退の“だ”の字も出ていない時期に書いているものばかりなんですけど、後から見たら意外とハマってしまったという。そう思って歌詞を読むと“ふたりきりじゃ何故いけないの?”(「在処」)とか、“分かれ道で手を振った”(M-14「終末のローグ」)というのもそういう意味にも取れるから。

●「終末のローグ」は特にそういう今の状況とも重なる内容だと思うのですが…。

きみコ:実は「終末のローグ」のサビのメロディは、『シアワセのクツ』のリリース記念で赤坂BLITZでやったライブのSE用にジュンが作ったメロディをサビにしているんです。

●あの時のSEが元になっているんですね。

きみコ:それをジュンが曲にしたものに、あたしが歌詞を書いたんです。5周年の節目を迎えてこれまでを振り返ってみると、nano.RIPEは今回に限らずメンバーチェンジがたくさんあったバンドで。色んな人と別れては出会って、色んなことがあって空になっては満たされてというのを繰り返していて。そういう意味では今までに脱退したメンバーや、離れ離れになってしまったスタッフのことを思って書いたので、今回のことに当てはまるのも当たり前と言えば当たり前なんですよね。

●過去にもメンバー脱退を幾度も経験してきている。

きみコ:それでもnano.RIPEは続けてきたし、“これからも続けていくぞ!”というのを改めて決意表明として出すつもりで最後に“進め 終わりへ”と書いたんです。それがこのアルバムに入ることによって、4人の終わりみたいな感じになってしまって…。別にそういう意図ではなく、バンドをやるにあたってとか人生について書いたものなんですよね。

●“何回でもあたしは全てにトキめくよ”っていう歌詞がすごく良いなと思って。その感覚があるからバンドもずっと続けられるし、新しい曲も生まれてくるのかなと。

きみコ:それがあたしとジュンがたくさん曲を書こうと思える原動力になっているんじゃないかなっていう。ライブも何回やっても楽しいんですけど、やっぱり曲ができた時の喜びはすごく大きくて。特に今回みたいにアレンジャーさんにお願いして、自分が思ってもみなかった感じに化けたりすると、本当に自分が書いた曲にトキめくんです。そういうことを繰り返していくと辞められないというか、辞めるっていう選択肢はないなって思います。

●バンドを辞めるという選択肢は絶対にない。

きみコ:だから今回のアルバムもせっかくリリースやツアーが決まっていたので、最後に今のメンバーで最高のものを作ろうという感じでした。(脱退についても)メンバー間の不仲でもないですし、音楽性の違いも今さらないですし、そういうことではなくて。あたしとジュンにとっては、nano.RIPEっていうものは18年もやっているのであって当たり前だし、むしろなかったらどうしようっていうもので。nano.RIPEがなかったら“どうやって生きていこう?”っていう感じになるというか。

●それくらい欠かせない存在になっている。

きみコ:でも(リズム隊の)2人はnano.RIPE以外にもバンドを経験してきているし、特に(Dr.青山)友樹は加入してから一番歴史が浅かったりもするので、まだまだ音楽をやるにあたって他の選択肢がたくさんあって。メンバー内でも話し合ってジュンは「俺はきみコがやるって言っているうちはnano.RIPEを辞めないけど、2人はまだまだ先も長いし可能性もあるから、よく考えて自分のやりたい道を選びな」と言ったんです。だから1人1人の人生として、すごく前向きな決断になったかなと思います。

●あくまでも前向きな決定だったと。

きみコ:結局、本当のところはどうなのかっていうのは、ライブに来てもらうのが一番手っ取り早いというか。“脱退が決まっている今の4人の空気感はどんな感じなんだろう…?”ってきっとみんな不安だと思うんですけど、今まで通り楽しくライブをやっているから。ライブハウスで直接2人の言葉を伝えたほうがたぶん誤解なく伝わるし、みんなも安心すると思うんですよ。だからホームページやSNS上ではあまり言いすぎず、本当に気にしてくれている人はライブハウスに来てもらって、そこで伝えるのが最善の方法かなと思っています。

●やはりnano.RIPEにとってライブハウスこそが原点にある、大切な“在処”なのかなと思います。

きみコ:そうですね。便利な時代なので色んなところで発信ができるんですけど、どういうふうに伝わっているのか見えないところがあって。受け取ってくれている人の顔が見えないと、発信している側も怖いなっていう気持ちがすごくあるんです。直接みんなと話ができるのはnano.RIPEにとってはライブハウスだけなので、そこをより一層大事にしていきたいなと今回の件でも思いましたね。

●ちなみに脱退後は、また新しいメンバーを迎えたりもする予定はあるんでしょうか?

きみコ:今のところジュンとは「2人でnano.RIPEを背負っていこう」と言っているので、この機会にたくさんの方と一緒にやってみたいなと思っていて。色んなアレンジャーさんと一緒にやることで“この曲がこんなふうになるんだ”っていうのが、すごく面白かったんですよ。リズム隊に関しても“この人がドラムだと、あの曲ってこんなふうになるんだ”とか、そういうのが試せる良い機会だと思っているので当分の間はnano.RIPEはササキジュンときみコの2人で背負っていくことになると思います。

●バンドとしても止まらないということですね。

きみコ:全然止まらないです。もう来年の予定も決めていますからね。これまでもnano.RIPEは形を変えながらやってきたわけなのでここで終わるのも違うし、あたしとジュンも今終わったら路頭に迷ってしまうから(笑)。今回のアルバムは“nano.RIPEっていう名前は守っていくぞ”という意志表示でもありますね。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

 

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