音楽メディア・フリーマガジン

GOODWARP

リアリティのある妄想は僕らの人生を塗り替える

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2016年3月に初の全国流通ミニアルバム『FOCUS』をリリースし、渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブを大成功させたダンサブルポップの旗手・GOODWARP。父親から貰った言葉を胸に刻み、10代の妄想を音楽の原動力に変換し、メンバーそれぞれのルーツを融合させ、バンドの音楽性とアイデンティティを確立させた彼らが、ダブルA面EPを完成させた。JUNGLE☆LIFE初登場となる今回は、新作はもちろんのこと、バンドとしての生い立ちとキャラクターについてインタビューを敢行した。

 

「楽しいから笑うんじゃない。笑うから楽しくなるんだ」

●今年3月に初の全国流通となるミニアルバム『FOCUS』をリリースし、渋谷CLUB QUATTROでのワンマンは大成功したということで。

吉崎:おかげさまで!

●現在の実感はどうですか?

吉崎:結成したのが2012年なのでちょうど4年くらいになるんですが、今年初めて全国流通盤を出させてもらって、そこからこの半年くらい…イベントや、自分たちのツアーに限らずいろんなところに行かせてもらう機会が増えたんです。あとこれまでの対バン相手に、どんどんすごいバンドが増えてきて。数年前から知り合いだったけど、僕ら以上のペースで成長を遂げた結果、ゼロが1個違うフォロワーが付いていたりとか。

●なるほど。

吉崎:だから、ようやく全国に向けてリリースした実感を噛みしめるというより、そいつらに追いつけ追い越せっていう気持ちの方が強くなっていますね。

●東京湾からより波の高い太平洋に出た感じですね。

吉崎:どちらかというと自分たちに足りない部分がどんどん目についてくる感じで、別にネガティブな雰囲気では全然ないんですよ。遠征しているときはやっぱり楽しいし。

有安:そうだね。

吉崎:楽曲には僕らなりに手応えを感じているし。でも気持ちの面では、今年に入ってやればやるほど「まだ足りない!」「まだ足りない!」ということが出てきます。

●4年前に結成したとき、バンドとしての行く先は描いていたんですか?

吉崎:いちおう描いてはいたんですけど、今から考えたら全然具体的ではなかったですね。「ダンスミュージックをやろう」という話も特に当時していたわけではなく。

●え?

吉崎:もともと僕とチャーは別のバンドをやっていたんですけどそれが解散して、「もう1回やろう」と言って始めたのがGOODWARPの最初だったんです。

●はい。

吉崎:宅録でデモ音源を作ったんですけど、それがすごくダンサブルなもので、それを聴いてもらって出会ったのが藤田と有安なんです。だから自然にサウンドの方向もそうなっていったというか。

●意図してダンスミュージックになったわけではないのか。

荻原:思ってなかったですね。

吉崎:藤田と有安は元々ブラックミュージックが好きだったんですよ。僕とチャーも好きで聴きますけど、特に参考にするような存在も意識せず、手探りで作っていった感じです。

●そうだったんですね。

吉崎:それにチャーと前にやっていたバンドで、僕はヴォーカルじゃなくてサイドギターだったんですよ。そのバンドが解散して、まだバンドを諦められなかったから「自分が歌うバンドをやりたい」と相談して結成したのがこのバンドなんです。だから何から何まで初めてで。ライブをやることも最初は特に考えてなくて…当然いつかはやるんですけど…スタジオに入ったら藤田と有安に「そんなこと言ってたらいつまで経ってもライブやれねぇだろ」と言われて「はい」ってライブをやり。そこからなんだかんだで月1本くらいのペースからライブが決まり、少しずつ友達のバンドや応援してくれるお客さんが増えていった感じなんです。

●積み重ねがあった上でのCDデビューなんですね。ダンスミュージックという大きな括りでみても、GOODWARPのようなブラックミュージック寄りの音楽はシーンも言うほど無いじゃないですか。

有安:そうですね。

●もっとクラブ寄りのバンドは多いかもしれないけど。

吉崎:そうですね。「ダンサブルポップ」と僕らは呼んでるんですけど、もともとブラックミュージックが好きだというのと、僕がいちばん音楽に目覚めたのは90年代のいちばんJ-POPのチャートにバンドがたくさんいた時期なんです。あの時代って、すごくメロディが綺麗だったなと思っていて。鼻歌性があるというか。

●はい。

吉崎:それが自分の中での音楽の初期衝動だったんです。それを活かしつつ、ビートには隙間があって身体が動くようなものをイメージしてたんです。それってどうなるかというと、ギターロックでもないし、シティポップでもない。真ん中になるんですよね。だからおっしゃっていただいたように、何も考えずに自然にやっていると群れる相手が見つからない感じがずっとあるんです。

●GOODWARPを聴いた印象としては、キラキラした世界観なんですけど、青春の儚さというか、かならず終りがある青春感みたいなものを感じるんですけど、こういう音楽はなかなか他にないなと思って。

吉崎:そうなんですよ。それこそ来てくれたお客さんが他にどんなバンドを聴いているかをたまに訊いてみると、星野源さんとかシティポップが好きな人もいれば、ゴリゴリのギターロックやラウドロックを聴いている人もいて。考えれば考えるほど、僕らは円と円が重なる部分にいるのかなって。だから、それを如何にどっちつかずでやれるかが重要なんだろうと思っているんです。そうならないためには、やっぱりメロディや歌のようなシンプルな根幹が大切だと思うし、ダンサブルだからといって細かい楽譜の部分でアイデンティティを見出さないようにするというか。

●より体感的に、感覚的に。

吉崎:藤田と有安はバンドマンというよりミュージシャン寄りの気質があって、バンドマンって“かっこよさ”と“排他性”が結びつきやすい世界だと思っているんですけど、この2人はそういう部分が全くないんです。超マイナーな音楽でもJ-POPでも“自分にピンとくるかどうか”で判断するというか。それはリスナーとしてだけではなくて、このバンドの4年間の活動にもすごく反映されていて。単純に対バンも「テイストが違うからやめとこう」とか言って断ることなんてほぼないですし。

●藤田さんと有安さんももともとバンドをやっていたんですか?

有安:僕はもともとバンドをやりつつサポートを10個くらいやっていて。でもGOODWARPを始めてサポートをやる時間がなくなったので、今はこのバンド1本でやってます。

藤田:僕は昔からバンドに憧れてギターを始めたし、バンドがいちばんだと思っていたからずっとやっていたんですけど、どんどんギターをやっていくうちに古い音楽とかを掘っていくじゃないですか。そうすると、次第にバンドからかけ離れていっちゃう世界に入っていって。具体的にいうとブルースが好きになって、そうすると日本の場合はセッションギタリストで誰かのレコーディングに参加している、みたいな人がほとんどで。でも当時はそういうのは自分に向いてないなと思って、それでバンドを探していくうちにようやくGOODWARPに出会えたんです。

●なるほど。そういう4人の考え方というか音楽への姿勢が、今のGOODWARPの立ち位置や音楽性にもすごく出ているんですね。

4人:そうです。

●ところで今回のダブルA面EPですが、このリード2曲は全然タイプが違いますけど、なぜダブルA面になったんですか?

吉崎:もともとそういう話ではなかったんですけど、先に「Sweet Darwin」という曲ができたんです。今回アニメ『うどんの国の金色毛鞠』のエンディングテーマのオファーをいただきまして、「スローでバラードな感じで」というオーダーでして。

●はい。

吉崎:僕ら的には今までダンサブルなことをやってきましたけど、今回はまずバラードがあると。だからバンドが持つ違う側面として、今までやってきたダンサブルな方向で、思い切り振り切ったアッパーな曲を入れてダブルA面にしようと。

●なるほど。

吉崎:だから「bravo!bravo!bravo!」はドラムから作ったんです。BPMやビートを先に決めてから。だから意識的に、両端に振った作品ですね。

●今回の4曲全部から感じることなんですが、ポップさやキャッチーさだけじゃなくて、ノスタルジーというか哀愁というか、そういう要素が必ず入っていると思うんです。サウンド的にも、歌詞としても。しかもそれは、“リアル”というより“リアリティのある妄想”というか。

吉崎:それ本当にそうですね。

有安:おっしゃる通りです。

吉崎:今回4曲入っていて、4曲とも夜のことを歌っているんです。もともとウチは夜の曲が多いんですけど、やっぱりそれは妄想癖からくるところだと思うんです。夜って妄想がほとばしるじゃないですか。僕はそれを作曲の原動力にしている部分があるんです。

●夜の妄想が作曲の原動力。

吉崎:だからリアルなことを書こうとしても、どうしても妄想のベールが1枚かかっちゃうんでしょうね。

●それは意識的にやっているというより、吉崎さんの性格的に?

吉崎:そうだと思います。自分としてはリアルなものを書こうと思っているんですよ。実際に書いているつもりでいるんですけど、最終的に仕上がってくるとどうしても世界観がそうなるというか。メロディでいうと、アッパーで明るい曲だったとしても、底抜けに陽気なものはほぼなくて、どこか1滴2滴“憂い”が垂れているようなメロディやコード進行が多くて、そういうメロディに歌詞が引っ張られたりもするし、逆もしかりだし。

●吉崎さん、10代の頃は悶々としていたんですか?

吉崎:悶々としてました。めっちゃ悶々としてました。

●例えば「bravo!bravo!bravo!」はまさに10代の妄想のことを歌っていますけど、この甘酸っぱい感じは岡村靖幸に通じるものだと感じたんですよね。

吉崎:ああ〜、嬉しいですね。結局10代の頃から変わんないですよね。ずーっと描いてきたしょうもない妄想とかささいな夢って、数年経てば現実になっていたりするし、そういう積み重ねが日常になって、日常の積み重ねが自分にとっての幸せになったりするから、「bravo!bravo!bravo!」は大げさですけど人生賛歌だと思っているんです。

●だからこのタイトルなのか。

吉崎:そうなんです。ビートが賑やかで爽やかだからちょっとエロいことを歌っても許されると思って、10代の頃の妄想とか性に対する衝動をラブソングにしてみました。

●それと今回「bravo!bravo!bravo!」のリミックストラックも収録されていますよね。松田“CHABE”岳二さんとTGMX(FRONTIER BACKYARD)の共同リミックスということですが、これはどういう経緯で?

吉崎:前作の『FOCUS』でコメントをいただいたLOW IQ 01さんのライブにお邪魔する機会があったんですけど、そのときに共演されていたのがTGMXさんだったんです。当然僕は学生の頃から聴いていたし憧れの人だったので、できたてほやほやの音源を渡して「よろしくお願いします!」とご挨拶して。

●はい。

吉崎:そしたらTGMXさんが本当に聴いてくださったみたいで、「いいね」と言ってくださって。それだけで本当に嬉しかったんですけど、今回リミックスを1曲入れられるということになって、ちょっと調子に乗ってお願いしたら(笑)、快諾していただいて。

●お。

吉崎:CHABEさんもそのとき楽屋にいらっしゃってご挨拶したんですけど、もともとCHABEさんとTGMXさんはMASTER LOWのサポートメンバーですし、バンド活動でも繋がりのあるお二人なので。

●実際に聴いてみてどうでした?

吉崎:感動しました。本当に何度も踊ってきた人たちによるリミックスだなって。最初、メンバー4人で聴かせてもらったんですけど、「か、かっけぇ!」ってため息が出ました。

●そしてリリース後は東京都大阪でのレコ発企画がありますが、楽しみですね。

4人:楽しみです!

吉崎:ライブ中のMCでも必ず言っていることなんですけど、楽しくて踊るのもいいんですけど、踊ってれば楽しくなる魔法ってあると思うんですよ。

●わかります。

吉崎:僕の親父が昔、「いいか、拓也。楽しいから笑うんじゃない。笑うから楽しくなるんだ」って、ベロベロに酔っ払いながら真顔で言ってたのをめちゃくちゃ覚えていて。

●お、いいですね。

吉崎:それは僕がやりたい音楽とすごくリンクする言葉だから、大人になってからよく思い出すんです。例えば遠征に行くときとか、夜に東京を出て7時間かけて大阪に入ってとかすると、絶対にライブまでに1回MPがゼロになる瞬間があるんですよ。

●MPはマジックポイントのことですね。

吉崎:でもライブやらなきゃいけないし、なんとかテンション上げていこうっていう感じなんですけど、やっぱりいちばんテンションが上がるのは、ステージに出ることなんですよね。お客さんがいて、演奏するしかなくて、踊るしかなくて。それに心がついてきて、自分がそれによって元気になって、お客さんの顔に励まされる。ポップスやダンサブルな音楽にはそういう問答無用なパワーがあると思うんです。

●うんうん。

吉崎:それがやめられないし、お客さんももしかしたらそれを感じてくれているかもしれない。初めて観てくれた人だとしても、なんかよくわかんないけど踊らせることができたら、それが僕たちがいちばんやりたいことだし、それはライブハウスでしかできないことだと思うんです。

Interview:Takeshi.Yamanaka

 

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