音楽メディア・フリーマガジン

SiM

ライブハウスでしのぎを削ってきたライブバンドの横浜アリーナワンマン

SPECIAL LIVE REPORT
THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR 2016 GRAND FiNAL

"DEAD MAN WALKiNG" ※ワイヤーアクションはありません
2016/10/16@横浜アリーナ

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武道館よりもひとまわりほど大きなフロア。3階のスタンド席が遠く霞んで見える。昨年秋、最初で最後の武道館ワンマンを大成功させたSiMが、今度は地元神奈川の横浜アリーナでワンマンライブを開催する。数多くのオーディエンスが詰めかけた同会場、入ってまず驚いた。ステージのセットがものすごい。巨大スクリーン、墓場などの凝ったセット、巨大な2体のガーゴイル像。いったいこれから何が始まるのだろう? と息を呑む。開演前から会場は異様な興奮に包まれていた。

照明が消え、ステージの巨大スクリーンにはアニメーションが映し出され、ライブの開始を告げられる。ゾンビと化したメンバー1人1人の紹介映像の後、ステージ後方の床からせり上がって来る4人。「THE KiNG」でライブをスタートしたかと思えばいきなり無数の火柱。Vo.MAHが叫び、G.SHOW-HATEがギターをかき鳴らし、Ba.SINがベースをうならせ、Dr.GODRiが重くて太いリズムを繰り出し、オーディエンスはダイブする。横浜アリーナが揺れる。

ガーゴイルの眼から放たれたレーザービームが宙を切り裂く「NO FUTURE」、MAHが「伝家の宝刀!」と言って曲名を告げるとフロアに巨大サークルが生まれた「T×H×C」。最初から4人は本気で我々を潰しにかかってきている。ステージから伝わってくる気迫の量がえげつない。

MAHが広い会場を見渡して「湘南善行Zから来ましたSiMです。今日はでっかいアトラクションに入ったと思って最後まで楽しんでください」と言ったように、そう、まさにこれはこの巨大な空間がないとできないライブという名のアトラクション。会場の大きさをフルに活用し、火柱は出るわレーザーは飛び交うわ、客席とステージの距離を一切感じさせないSiM流のライブエンターテインメント。

しかも起こることの規模がいちいち桁外れ。「JACK.B」では肩車からのダイバーが数え切れないし、ダイバーも無数だし、コール&レスポンスの大きさがありえないし、SHOW-HATEとSINはGODRi後方の高台の上で音をぶつけ合い、MAHはステージ横の墓場の前で歌い、広いステージを所狭しと駆け回り、「FUCK iT ALL」ではこの曲のみ撮影OKで「SNSで全世界にばら撒いてください!」というサービス精神旺盛だし、「I DUB U」では男女の物語の映像をスクリーンに映し出して楽曲の世界をふくらませるし。次から次へと披露される楽曲が、聴覚と視覚をフルで楽しませ続ける。

かと思えばMAHが「美しい生き方ならだいたいのことはわかっている。わかっちゃいるけどなかなかそうは生きられない」と感情を爆発させ、巨大な会場にふさわしいエモーショナルなロックナンバー「Life is Beautiful」で観ている者たちの心を鷲掴みにする。音楽というエンターテインメントで感じることができるすべての事象が詰まったような、目まぐるしい時間。なんて贅沢なんだ。

しかし、ただのエンターテインメントで済ませないところが、ライブハウスでしのぎを削ってきたSiMのらしいところ。「我々みたいな者が、こんなところでワンマンをできるなんて…ざまーみろ! ですよ! “やり続けたら夢は叶う”っていう言葉はすごく無責任だと思う。でも、夢を叶えた奴はやり続けてきた奴でしかない。だからやっていて良かったです。バンドやっている奴、次はあなたの番ですか? 楽しみに待ってます。SiMを潰しに来るときを」というMAHの言葉は、いったい何人のバンドマンの…いや、何人の夢を持つ者たちの胸に突き刺さったことだろう。この言葉を力に変えた者が、いったいこれからどんな流れを起こすのだろう。気持ちをむき出しにして全力でライブをするSiMの人間臭さに胸が震える。

スクリーンに再び先ほどの男女の物語の続きが映し出された後は、打って変わってアコースティックブロック。「If I Die」「Paradox」そしてライブでやるのは2〜3回目というレアな「Misery」と、4人の息遣いをダイレクトに感じるアコースティックバージョンのライブは、会場の広さを忘れさせた。激しいだけでもなく、エモいだけでもなく、楽しくて、メッセージがあって、聴かせて、観ているこっちの魂に火を点ける。SiMの、バンドとしての表現の幅がどんどん拡がっていることを実感する。

その後は武道館でも行った席替えタイム(3階席のお客さんにいい席をプレゼントするというサプライズ)を経て、イベントのサブタイトルに「※ワイヤーアクションはありません」と入れているにも関わらずのワイヤーアクションを経て、「たった4人の音に負けんじゃねーぞ!!」を牙をむき出して吠え、「EXiSTENCE」で1万人にヘドバンさせ、「Same Sky」の大合唱で会場を震えさせ、えげつない数のダイバーが舞う「Blah Blah Blah」、そして本編最後は「f.a.i.t.h」でウォールオブデスで客席をカオス状態に落とし込む。

様々な演出で散々楽しませ、最後は横浜アリーナをライブハウスにしたSiM。アンコールの後、MAHが「ライブハウスへ帰ります。ありがとうございました」と言ったように、普段はライブハウスで汗だくになり、ステージの上も下も揉みくちゃになっているライブバンドが、この大きな会場でワンマンをするということの痛快さ。彼らの心意気と意地とマインドと生き様を強く感じる横浜アリーナでのSiMワンマン、大満足だった。

TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:半田安政(Showcase)/vizkage

 

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