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I-RabBits

自分たちが愛し続けたピアノロックを「美しく汚す」。 過去を全て飲み込んで再出発する4人の最新進化形。

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自分たちが愛し続けたピアノロックを「美しく汚す」。I-RabBitsのニューアルバム『アイクロニクル』は、そんなテーマのもとで制作された作品だ。ピアノが持つ美しい音色や歌メロの良さを損なうことなく、激しくダンサブルなロック感を“これでもか!”とばかりに注入。現代におけるロック楽器としてのピアノの可能性を追求するため、邪道と言われることすらも恐れず挑戦した結果、今作ではこれまでにない化学反応を生み出すことに成功した。長年連れ添ったメンバーの脱退後にウサギドラマー・アイラビ君を迎えるなど、紆余曲折を経てきた彼ら。2016年前半からDr./Cho.山田祐大が新たに正式メンバーとして加入し、“4人”という完全体の状態でいよいよ再出発を果たす。真骨頂であるライブで磨き上げてきた代表的な2曲に、いずれも強力な言葉とメロディを搭載した新曲が合わさり完成した今作は、過去最高の傑作であることは間違いない。これまでの軌跡を全て飲み込んだ上で大いなる進化を遂げた、最新形のI-RabBitsをぜひ体感して欲しい。

 

I-RabBits #1

「再出発ではあるんだけど、全く新しいものというよりは12年全部をひっくるめての“今の進化形”というものにしたかったので、過去も大事にしようと。そういうものの上で新しくするというのが、“美しく汚す”ことというか」

●今回はドラムがアイラビ君(※月からやってきたウサギドラマー)ではないわけですが、どのタイミングで変わったんですか?

祐大:今年の2月ですね。アイラビ君は、月に帰ったんですよ。彼は僕の師匠で、その時に「これからは弟子のお前が叩け」と言われたんです。

●師匠から弟子に引き継がれたと。

マイコ:アイラビ君になった経緯を話すと、元々は前任のみづき(Dr.)と8年間一緒に活動していて。しかもそのうち4年は同じ一軒家で生活していたくらいだったので、家族のように生活してきた人間がいなくなるというのはバンドにとって大きかったんです。自分たち的にも辞めることを考えたタイミングでもあったところで、一時的にアイラビ君というものに頼った部分はありますね。

●長年一緒にいたメンバーが脱退したところで、ワンクッション置いたというか。

マイコ:そうです。サポートで誰か人間を入れても、代わりが勤まらないんですよ。ファンのみんなの反応を見てもそうだし、自分たち的にもしっくり来ないというか。そこで“人間がダメならウサギだ”という気持ちで、アイラビ君というキャラクターに頼って。3年間は本当に助けられたんですけど、言ってしまえば自分たちの逃げ道にもなっていたし、そういうところともう一度向き合おうという姿勢になれたのが今年の頭だったんです。

●今年の頭に決断した。

マイコ:年頭に、人間4人でまっさらな気持ちで勝負したくなったんですよね。

イノ:ずっと葛藤はあったんですよ。アイラビ君はファンタジーな存在だから、どうしてもライブでのメッセージ性とは食い違う部分もあったりして。ライブですごく熱いことを話していても、その後ろにいるドラムはちょっとフザけた感じのキャラクターなわけじゃないですか。そこにギャップがどうしてもあったし、ずっと感じていた違和感にとうとう耐えきれなくなったのが今年の頭でした。

●そこで新たなメンバーに祐大君を誘ったわけですね。

マイコ:その時に色んな縁があって、3年間ずっと側にいてくれた祐大に正式なメンバーとしてのプロポーズをしました。

祐大:僕は師匠の付き人として、ずっと側で見ていたんです。

●アイラビ君から祐大君に変わるというのは、大きな決断だったのでは?

イノ:アイラビ君と積み上げてきた期間が3年もあったし、“このタイミングでドラムを変えるのか?”という部分でもすごく悩んだところではありました。

マイコ:本当にプロポーズをするような気持ちでしたね。単にウサギから人間になるという意味合いよりも、“この4人で人生を全部背負って走っていこう”っていう覚悟をその時点で決めたから。

祐大:メンバーになるというのは、恋愛で言ったら結婚みたいなものだと自分も思っていて。実はこれまで自分が“このバンドでメンバーとして本気でやっていこう”と思ったバンドが2回解散しているんですよ。それがあったからメンバーになることへの恐怖心もあったし、色んな感情がありましたね。でもやっぱり師匠の側でI-RabBitsを3年間見続けてきて、“今の人間界でI-RabBitsにとって一番良いドラムが叩けるのは自分だろう”っていう自信があったので、メンバーに加わらせてもらいました。

●バンドにとって今年が勝負の年というような気持ちもあったんでしょうか?

マイコ:すごくありました。元々同じレーベルだったBLUE ENCOUNTが今年1月のライブで、日本武道館でやることを発表したんです。その時のライブを観に行っていたんですけど、たぶん人生で一番悔しかったんですよ。自分たちのほうがずっと前に“武道館でやりたい”ということでバンドを結成しておきながら、後輩の彼らが先に武道館を決めたというのが本当に悔しくて。その時にいても立ってもいられなくなって、本当に“全力で挑戦したい!”って思ったんですよね。

●後輩の活躍に大きな刺激を受けた。

マイコ:身近な後輩の存在は、すごく大きかったですね。そこで“人間4人でちゃんと立ち向かおう”という気持ちになったというのもあって、ライブを観た帰り道で早速イノに「祐大にプロポーズしようと思うんだけど、どう思う?」って言ったんですよ。そこからは、あっという間でした。

●1月に決断して、2月には祐大君にチェンジしていたと。

祐大:4月にBLUE ENCOUNTとの2マンライブが決まっていたので、それまでにアイラビ君を卒業させたいと思って。

マイコ:勝負しに行くわけだから負けるわけにはいかないし、“完全体で行こう!”っていう感じでした。

●そこでバンドが完全体になったという意識もあったんですね。

マイコ:今年で12年目になりますけど、バンドの状態としては今が完全体だと思っていて。この4人で初めて出すのが今回のアルバムなので、本当に再出発という気持ちでいます。

●再出発のタイミングだからこそ、今作『アイクロニクル』のテーマを“自分たちが愛し続けたピアノロックを「美しく汚す」”ことにした?

マイコ:まずはピアノロックというところにもう一度立ち返ってみようというのがあって。それと『アイクロニクル』というタイトルの由来にもなるんですけど、“クロニクル(年代記)”のようなものにしたかったんです。再出発ではあるんだけど、全く新しいものというよりは12年全部をひっくるめての“今の進化形”というものにしたかったので、過去も大事にしようと。そういうものの上で新しくするというのが、“美しく汚す”ことというか。世の中に今まである“ピアノの入ったバンドって、こういうイメージだよね”っていうものをことごとく崩していこうという1枚になっています。

●最初からそういうことをやろうと思って、今作を作り始めたんですか?

イノ:ちょっとずつ固まっていった感じでしたね。前のアルバム(※『10DEARS』)からもう2年近く経つんですけど、その間も曲自体はずっと書き続けていたんです。

マイコ:今作は7曲入りなんですけど、たぶん50曲くらいは書いていて。そこから選抜した今回の7曲は、“ピアノロックを壊していこう”っていうことに沿っているものばかりだったんです。よりピアノロックらしいバラードもあったんですけど、そういうものはあえて今作には入れませんでした。

●ピアノロックを「美しく汚す」ような曲ばかりを選んだ。

イノ:I-RabBitsは旋律の良さも大事にしている部分があるので、1つ1つの音のきれいさはあまり汚しちゃいけないなと思っていて。だから、ただ汚すんじゃなく「美しく汚す」なんですよね。きれいな部分は大事にしたいなと。アルバムができあがってから聴き返してみて“ちゃんときれいにできたな”というのは感じられたので、それはすごく良かったです。

●ピアノのきれいな旋律は今作も活かしている。

マイコ:でも今回、ピアノのフレーズはハチャメチャなものが多いんですよ。普通はこんなピアノを弾きながら歌えないです(笑)。それくらい“普通”の範囲内からだいぶ逸脱したピアノのアレンジをしているので、ライブはどうなるんだろうっていう…。

●ライブでの再現が難しい。

マイコ:毎日、鬼のように練習しています(笑)。ただ、私が歌えばI-RabBitsですし、メロディやアレンジも基本的にはI-RabBitsらしさが残っちゃうんですよ。だからピアノというところだけをとにかく壊しまくって汚した部分と、I-RabBitsの年代記的な部分を融合できたら良いなとは考えていましたね。

●今作を聴いていると、すごく強い意志の力を感じます。特にM-1「TALALAN」の歌詞は顕著で、一見マイナスに感じるようなことを強引にプラスへ転換するようなパワーを感じたんです。

マイコ:どんな球が来てもプラスに打ち返すくらいのポジティブなパワーを、このアルバムには入れたくて。こう見えて、私たちは結構ネガティブなんですよ(笑)。

●バンドが良い状態だから、こういう歌も歌えるのかなと。

マイコ:腰を据えていないと歌えないような歌ばかり書いたので、浮ついた気持ちやカラ元気ではとても言えないような言葉ばかりですね。この4人になったから、やっと腰を据えてやりたいことができるという感覚はあります。

●M-4「I LOVE IT」は過去作品(※2011年の同名ミニアルバム収録)からの再録ですが、これを改めて録り直したのもそういうところから?

マイコ:この曲は、“I-RabBits”の語源なんですよ。今回のアレンジはイノが持ってきたんですけど、こだわりにこだわったピアノを駆使していて。何百回と歌ってきた歌なのに、リアレンジされたものを聴いた時に“曲が生まれ変わった。まだまだやれるな”と思って泣いたんですよね。それをあえてここに入れるのも年代記っぽいかなと。

イノ:バンド全体のアレンジ力が、最後の2ヶ月くらいで一気に上がった感じがしていて。元々は僕がざっとしたアレンジを作ってきて、そこからみんなで固めていくっていう流れがあったんです。そこからのメンバーのレスポンス力が、今回はすごく上がったというか。

●メンバーのレスポンス力が上がったんですね。

トモ:僕と祐大もDTMをやっているので、データ上でそれぞれのアレンジをつなげるというのがやっとできるようになったという感じです。

マイコ:私は機械が一切使えないので、曲と歌詞とピアノの弾き語りと歌だけでまずイノに送るんですよ。それにイノがざっと定番のドラムやベース、ギターを付けてから他のメンバーに投げて。ドラムの部分は祐大が、ギターの部分はトモちゃんが考え直して、最終的に戻ってきた時に聴くと“おぉっ!”となるんです。

イノ:そこでまた美味しいフレーズが入ってくるから、“これがあるならこれは要らないな”とか“ここにはこれを足したいな”というイメージがどんどん掻き立てられるんですよ。アレンジの作業がすごくスムーズに回るようになったというか。

●今回のアレンジでは、それぞれのアイデアもより活かされている。

マイコ:今まで自分たちがやってきた音楽を存分に出せるような環境で、アレンジができたと思います。I-RabBitsとしてというより、祐大が祐大として、トモちゃんがトモちゃんとして、それぞれの全てが入ったような感じで音源ができたのは初めてだったのですごく感動しているんです。本当に“あぁ、良いメンバーだな”って。

●今作が一番、この4人であることの意味が出ている?

イノ:それは間違いないです。

マイコ:個々のフルネーム感があるよね。

●だから、メンバー名の表記を全員フルネームに変えたというのもあるんでしょうか?

マイコ:表記を変えたのが先ではあるんですけど、結果的に音楽としてもフルネーム感というか、生まれてから今までの感じが全て出ている気がしますね。

祐大:マイコさんの表記をフルネームに変える時は、やっぱり決意がありました。でも“1人1人の”っていうところをフィーチャーしたい気持ちもあったから、そこにベクトルは向かっていたんだと思います。

●だから今回は1曲1曲が強いものになっているのかなと。どれがリード曲になってもおかしくないものが揃っている。

マイコ:本当にそう思います。何なら全曲、一度はリード曲候補になっていますからね(笑)。曲ができた瞬間に「これがメインになるじゃない?」って言われて、アレンジを詰めていく時点で脚光を浴びた7曲が集まっているから。本当に主役級ばかりです。

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I-RabBits #2

「すごくI-RabBitsっぽいものがやっと見つかったような気がしているんです。初めてこの4人で作り上げたアルバムっていう感じがすごくするから、そういう意味では今回のレコ発やツアーはまさにこの4人の“出発”なのかなと」

●タイトルも独特なものが多いですが、M-2「100MG」は何と読むんですか?

マイコ:これは“ひゃくもじ”ですね。

●Twitterの140文字制限のことだったり、歌詞の内容的にはSNSのことを歌っているのかなと思いました。

マイコ:そうです。今はメールやLINEも総じて、だいたい100文字くらいの言葉でやりとりするじゃないですか。きちんと会って1時間以上かけて話をしたりすることって、もう古いと思われているような気がしていて。そうなっている中で、私たちが絶対に譲れないのがライブなんです。わざわざ地方までツアーに行ったりもするし、簡単にネットだけで済まされるようなものではないから。“mg”には“ミリグラム”という意味もあるんですけど、あえて大文字にしているのは“大きそうで小さい”という意味を込めているんですよ。

●というのは?

マイコ:たった100文字っていうと少ないので“ミリグラム”に近いものなんですけど、大文字にすると大きくも感じてしまう。その“100文字”をフィーチャーしつつ、最終的にI-RabBitsは“それをブチ破って会いにいくよ”っていうことなんです。そういうことをテーマに曲が書きたかったんですよね。私はSNSがすごく苦手で…。

●確かに今もブログをメインにされていますよね。

マイコ:100文字に収まらないんですよね。ブログのほうが性に合っているんですけど、“100文字だけでも伝えられなかったらダメじゃん”っていう気持ちもあって。その葛藤を曲にしようと思ったんです。

●“ワンタッチ式の承認より ハイタッチ君としてたいよ”という歌詞が特に伝えたい部分なのかなと思いました。

マイコ:そうですね。300回の“いいね!”が付くより、ライブをやって誰か1人に「良かったよ!」って言われるほうが救われるので自分はそうだなっていう。そこはI-RabBitsが活動を続けていく中で、ライブバンドとして絶対に譲れないところなんです。1ヶ月ライブがないだけで、本当に頭が狂いそうですからね(笑)。私たちはライブで救われるし、誰かのライブを観に行って影響を受けたりもする。だから今作を聴いた人にも、ライブに来て欲しいなって思います。

●「100MG」の次のM-3「9%」は、どんなことを歌っているんですか?

マイコ:iPhoneの充電が残り9%になった時って、焦りません?

●あ、そういう意味だったんだ…。

マイコ:しかも電車の中で9%になった時は、特に焦るんですよね。この“9%の恐怖”を感じたことのある若者は多いと思うんです。12%くらいならまだ余裕があるんですけど、9%になった途端に余裕がなくなる感じを書こうかなと。

●そういう実体験に基づいている。

マイコ:9%になると、徐々に減っていくのをずっとリアルに目で追っていくんですよ。そのくらいの気持ちで、100%の時から気にしておけば良かったのになっていう。

●歌詞にもあるように、“砂時計はいつも 知らぬうちに”減ってしまっているわけですね(笑)。

マイコ:実は今回、私の中で“砂時計”というのが全体のテーマでもあって。砂時計は英語で“サンドクロニクル”というんですけど、それが今回のタイトルにもつながっているんです。I-RabBitsの12年間は、果たして砂時計でいうとどれくらいなのか? もしかしたら最後の一粒という状態かもしれないし、まだまだ余裕があるかもしれない。そんなの誰にもわからないですけど、“これが最後で良いやと思えるくらいの今があるなら、それで良い”っていうのが、アルバム全体のテーマなんですよ。

●この「9%」の歌詞がアルバム全体につながっている。

マイコ:“消えてしまいそうだから、やっておかなきゃ!”じゃなくて、いずれ消えることをシュミレーションして“だったら今、何をやれば良いんだろう?”と考えたことを、消える前からやろうよっていう想いはありますね。

●M-5「二卵性双生論」も初めて聴く言葉ですが、これはラブソング?

マイコ:この曲は、私の中では究極的なラブソングを書けたなっていう感覚があって。“好きだから一緒にいたい!”っていう若い感じのラブソングとはちょっと違って、“(好きだからこそ)隣にいなくても良いよ”っていうくらいの感じで…ねじ曲がっているかな?

イノ:それはわからないけど…(笑)。

●マイコさんなりの究極のラブソングだと(笑)。

マイコ:自分の中で何か煮え切らないなと思って、9割くらい書いたところでずっと止まっていたんです。そんな時に映画『君の名は。』を観に行って。『君の名は。』は時空を超えて(主人公の2人が)会えたり会えなかったりするという物語なんですけど、“今ここに彼がいる気配で、私は頑張れる”っていうシーンを観て“これだ!”と思ったんですよ。そこから最後まで一気に書き上がりましたね。

●『君の名は。』がキッカケで完成した。

マイコ:だから『君の名は。』の続編があれば、この曲をぜひ主題歌にして欲しいです(笑)。

●ハハハ(笑)。M-6「ユニオン」の歌詞には“ディアーマイエンジェル”と出てきますが、これもラブソング?

マイコ:そこは、死んだおじいちゃんをイメージしていましたね。空に旅立ったから…。

●そういう意味だったんだ…。

マイコ:おじいちゃんでも親友でも誰でもそうなんですけど、自分が苦しんでいる時にふわっと降りてくる存在ってエンジェルっぽくないですか? 苦しい時に相応しい言葉をかけてくれたり、側にいてくれたり、思い出すことで元気になれたりする存在がエンジェルっぽいなと思っていて。キッカケはおじいちゃんだったんですけど、ここではそういう存在を総じて“エンジェル”と呼んでいます。

●なるほど。この曲も過去作品からの再録ですよね。

マイコ:ライブでも定番の曲を、あえてピアノロックにリアレンジしているんです。ファンの方たちからすごく支持されていてライブ曲の中でも一番くらいの人気なので、この『アイクロニクル』という年代記には絶対に欠かせないなと思って入れました。

●“イッツ・アワー・ユニオン”とも歌っているし、お客さんも含めてみんなで一体になる画が浮かぶというか。

マイコ:これをやっている時の、ライブの景色がすごく好きですね。ライブでは本当に定番の曲なので、これを機にもっと広まったら良いなと思います。

●「I LOVE IT」もそうですが、ライブで定番の代表曲的な2曲を今回は再録している。

マイコ:この2曲に関しては、あえてそういうものを入れようというところでした。祐大と一緒に録ったというのもありますからね。この曲を作った時は、まだ祐大がいなかったから。

●この4人の“ユニオン”という意味もあるんじゃないですか?

マイコ:それもありますね。

●最後のM-7「ヨコハマラプソディー」は、バンドが始まった場所である横浜を思って作ったんですよね?

マイコ:はい。私は大学時代に横浜近辺に住んでいたというのもあって、サークルの先輩が「外でライブをしたいなら紹介するよ」と言って初めて連れて行ってくれたのが新横浜BeLL'sっていうライブハウスだったんです。横浜駅で路上ライブを3年間やっていたというのもあるし、やっぱり横浜にはお世話になった部分がたくさんあるので、錦を飾りたいなという気持ちもあって。いつか横浜で野外フェスとかデカいことをやりたいと思っているんですけど、その時にみんなで歌って号泣している画を頭に浮かべながら書きました。

●この曲はラストに持ってくることを想定して書いたんでしょうか?

マイコ:実は前作のメインを張るかもしれなかったくらいの曲で、その頃から温めていたんです。

トモ:ちゃんとレコーディングまでしましたからね。でも最後に曲を絞っていった結果、外れちゃったんですよ。

●それを今回収録するに至ったのは?

マイコ:実は今、横浜でデカいことをやろうと思っていて。水面下で色々と計画を練り始めたのは、最近のことなんですよ。そうなった時に“絶対にこれが良いじゃん!”となって、結果的に今回のアルバムの最後を飾る曲になったという。これも何かの縁かなと思いますね。

●前回収録されなかったことで、ちょうど良いタイミングで出せることになった。

マイコ:たとえば最初は“この人とは合わないな”と思った相手が、2年後に会ってみたら人生のパートナーくらいの存在になる可能性ってあるんじゃないかなって思うんです。そのタイミングだからたまたま合わなかっただけで、後に再び会ってすごいことになったりすることもあるから出会いとか縁っていうのは面白いなと、この曲で思いました。

●当初の印象とは変わったんでしょうか?

マイコ:あの時はとてもじゃないけど、こうなるとは思わなかったですね。歌詞も横浜に特化しすぎていたから…。

イノ:何なら、その当時は「この歌詞を変えようか」と言っていたくらいでした。前作から漏れちゃったのは偶然なんですけど、それが回り回って今のタイミングじゃないと表現できない歌詞がそのまま乗っかっているという感じですね。

●今だからこそハマるものになっている。

マイコ:曲を書いた時点では“メインを張るくらいの曲が書けたな”という実感があった曲だから、大事にしていたというのもあるんです。でもこのタイミングでここに入るというのは、自分としてもすごく嬉しいですね。

●今作はどの曲も思い入れが深いんじゃないですか?

マイコ:本当にそうなんですよ。

●ある意味、現時点でのベストアルバム的な作品にもなっている気がします。

マイコ:よくバンドが自分たちのバンド名をこれっていうタイミングでアルバムタイトルにしますけど、『アイクロニクル』っていうタイトルにはそれに近い意味合いと想いがこもっていると思います。

●“I-RabBitsの年代記”という意味ですからね。満足のいくものができたという感覚があるのでは?

マイコ:メチャメチャあります。特に今回の1〜2曲目に関しては、ピアノロックでやりたかったことの理想型が1つ叶ったというか。そういうことができたので“次はどうしよう?”っていうくらい、ここでいったん出し尽くした感があるアルバムになりました。

●そのくらいの充実感がある。

トモ:アレンジが速くなったというのもあるんですけど、今までは各々が持ってきたものに対して“ピアノやギターをどう弾こうか?”という試行錯誤をレコーディング直前までやっていたんです。でも今回は“ピアノがこうなったから、次はギターをこう変えてみよう”っていうのがすごくスムーズにできたんですよ。歌詞もポイントがわかっているものが多かったのでイメージもしやすかったし、事前準備がすごく良くできました。

マイコ:満を持した感がありますね。今まではバタバタなことも多かったけど、今回は完全な状態ですごく良い制作ができたから。

●自分たちなりの作り方が確立したという部分もあるんじゃないですか?

マイコ:うん、ありますね。

トモ:それを見つけられた感じがしました。

イノ:今回はアレンジしている過程で、それぞれが“何か変なことをやってやろう”っていうものを常に考えてきて。でも今できあがったものを聴き返してみると、すごくI-RabBitsっぽいものがやっと見つかったような気がしているんです。初めてこの4人で作り上げたアルバムっていう感じがすごくするから、そういう意味では今回のレコ発やツアーはまさにこの4人の“出発”なのかなと。それが自分自身も楽しみなので、新しく見えてきたI-RabBitsをぜひ感じにきて欲しいなと思います。

●レコ発ワンマンとツアーでは、新しいI-RabBitsを感じられる。

マイコ:今回はピアノが本当におかしなことになっているので、私はこれをどれだけライブで表現できるんだろう…っていう(笑)。挑戦でもあるし、新しいI-RabBitsの形が1つ見えるような気がしているので、みんなも超楽しみに来て欲しいです。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

 

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