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ミソッカス

フロアを燃え上がらせる変幻自在のダンスロック。 爆発の予兆を示す圧倒的熱量がここから放たれる。


原点回帰しつつもさらなる進化を遂げた、ミソッカスらしさ全開のメジャー2ndフルアルバム『ダンシングモンスター』が遂に完成した。地元・名古屋で自らが主催するイベント“ミソフェス2017”も最高の仲間たちと共に大成功に収めるなど、バンドのコンディションが非常に良いのは誰の目にも明らかだろう。去年9月にリリースしたメジャー2ndミニアルバム『深き森の迷路』から半年も空けずに放たれる今回の新作は、今の状態の良さを明確に物語っている。中でもリード曲である「ダンシングモンスター」はex.電気グルーヴのCMJKがプロデュースした、フロアが燃え上がること間違いなしの高速ダンスチューンだ。もちろん他の楽曲も抜群のグッドメロディと、幅広い音楽ジャンルを横断した多彩な展開を共に搭載した、ミソッカスならではの名曲揃い。斬新でありながら懐かしさも感じさせる変幻自在のダンスロックに触れたなら、もう踊り騒がずにはいられない。

Cover & Interview:ミソッカス#1

「メンバーがどんどん良くなっていくのを見ていて、僕も楽しかったですね。2016年は本当に良い1年だったと思うし、ここで培ったものが2017年に爆発して欲しいなと」

●はるきちくんがTwitterで“2016年はずっと時限爆弾作ってました。2017年はそれを爆発させたいと思います”と書いていたのを見たんです。今回の『ダンシングモンスター』は2016年で蓄積したものを爆発させることで、ここまで粒ぞろいの作品になったのかなと思ったんですが。

はるきち:正確には2016年だけではなくて、2015年も含めてなんですよね。今までもその時々で良いものを作ろうとして頑張ってきたんですけど、もちろん反省点もあって。それらを全部踏まえた上で、今回は作れたなと。2015年はメジャーデビューしたばかりでスケジュール感にまだ慣れていなくて、振りまわされてしまった部分もあったんです。でも2016年に関しては“次のアルバムをここで発売するということは、このあたりでこういうことをやれば良いんだろうな”とだいたいの予想がつく中で、自分の心持ちをしっかり整えることができたから。“今のうちに本を読んだり音楽を聴いたりしてインプットしておかないとな”っていう感じで、色々と準備もできましたね。

●メジャーデビューして2年目でスケジュール感にも慣れたことで、アルバムに向けた準備がしっかりとできた。

はるきち:2016年は、イベントで対バンを見る時のポイントも変わったんですよ。前は演奏力を中心に見ていたんですけど、2016年はMCやパフォーマンスを見るようになって。演奏力が高くて音作りが良くても、何か微妙なライブってあるじゃないですか。その原因が何なのか考えつつ、“最初から最後までどういう流れで行けばカッコ良いのかな?”といったことも考えながらやっていました。

●ライブ全体の流れでどう見せるかを意識するようになったんですね。

はるきち:あとは“歌をもっと聴かせなくちゃな”という意識もありましたね。歌に対しては今までも精一杯頑張っていたつもりだったんですけど、“まだまだできることがあるな”というのが色々わかってきて。単純に歌も練習したし、ギターの練習をすることで歌により集中できるんですよね。“このライブがあれば、音源を聴いてライブに来てくれたお客さんがちゃんと根付いてくれるだろうな”というところまで持って来ていたので、そのことを“時限爆弾を作ってました”と表現したんです。

●自分たちの技術やライブ力を向上させるための努力を、この2年間で意識的にやっていた。

はるきち:それは僕だけじゃなくて、メンバーもみんなそうだと思うんです。実際に演奏力がすごく上がっていて、アレンジの引き出しも増えたし、やっと少しはプロっぽくなってきたのかなと(笑)。他のメンバーの演奏力や佇まいも良くなってきているし、僕自身も色々と吸収して良くなってきているというのを肌で感じつつ、それが周りに伝わっているなというのも2016年は感じましたね。今回のアルバムがみんなに届いて、ライブに来て僕らを好きになってくれるだろうなと思ったので、ああいうツイートをしたんですよ。

●メンバーのモチベーションも上がっている?

はるきち:みんなの“学ぼう”という姿勢がすごかったなと思います。

マイケル:昔は1年のスパンでそれぞれにインプットしたものを形にしていたんですけど、メジャーデビュー後はそのスパンが半年になったことで2倍やらないといけない感じになって。

ノブリル:そういうスパンで作品を作っていく中で毎回同じことをしていると自分でも飽きてしまうし、違うスイッチを押していかないといけないなと思いました。

●制作のスパンが短くなったことも大きかったんですね。

はるきち:前は1年で6曲くらいだったものが倍になって。でもみんな“今のままじゃいけない”と思っているので、こういうスパンでも腐ることはなかったんです。やっぱり根底に音楽好きだというのがあるので、“学ぼう”という姿勢がすごくあるんですよ。メンバーがどんどん良くなっていくのを見ていて、僕も楽しかったですね。2016年は本当に良い1年だったと思うし、ここで培ったものが2017年に爆発して欲しいなと。

 

Cover & Interview:ミソッカス#2

「4つ打ちバンドが曲名に“ダンス”というワードを入れるのは自分の中で“絶対にキラーチューンになるだろう”という確信があるからで。絶対にこれでいけるだろうという確信があるからこそ、つけることができたタイトルですね」

●そういう爆発力を持った作品が作れたという感覚もあるのでは?

はるきち:そうですね。今回はM-1「ダンシングモンスター」がリード曲なんですけど、この曲はすごくミソッカスにハマっているというか。もちろん他の曲が好きという人もいるでしょうけど、僕としてはミソッカスのフィルタを通した時に一番カッコ良くなるものこそが本当にカッコ良い曲だと思っていて。「ダンシングモンスター」はミソッカスがやるからこそカッコ良いと思えるので、そこのハマり具合が良いなと感じています。

●自分たちの中でも確信を持てる曲というか。

はるきち:“これはきたぞ!”という感覚はありましたね。僕らは昔からよく4つ打ちの曲をやってきたんですけど、そういうバンドがわざわざ曲のタイトルに「ダンシング〜」というタイトルを付けるのは相当な自信の現れだと思うんですよ。「さくら」というタイトルの曲にほぼハズレがないように、4つ打ちバンドが曲名に“ダンス”というワードを入れるのは自分の中で“絶対にキラーチューンになるだろう”という確信があるからで。そんなに踊れない曲に「ダンシングモンスター」なんていうタイトルが付いていたら、リスナーも「えっ?」ってなるじゃないですか。

●意味がわからないですよね(笑)。

はるきち:絶対にこれでいけるだろうという確信があるからこそ、つけることができたタイトルですね。

●曲ができた時点で、この曲が今作の軸になるという確信もあったんでしょうか?

ノブリル:デモの段階ではまだフワッとしていたので、「ダンシングモンスター」はすごく悩んだ記憶があります。不思議なことに「まだピークはここじゃないな。まだいけそうだな」という感覚があって。それだけのポテンシャルを備えていたのかもしれない。

はるきち:最初は着地点がどこになるのか見えていなかったんですけど、“ボン! ボン! ボン!”とジャンプアップする感じで良くなりましたね。デモの段階では他の曲も良いところまで行っていたので、「リード曲はどれになるだろうね?」と話していたんですよ。でも「ダンシングモンスター」を録り終えた段階で、「これだ!」となりました。

●録り終わった時に確信したと。

ノブリル:僕の中では「ダンシングモンスター」の歌詞のコンセプトは、フランク・ザッパの「Dancin' Fool」だったんです。

はるきち:そのコンセプトを聞いた時に、この曲が完成したと思いました。“こんな言葉を歌ってもどうせお前らには聞こえていないんだろう?”っていうシニカルなスタンスが、フランク・ザッパの「Dancin' Fool」と同じで。ライブハウスで曲を聴いている時って、いくつか耳に残る言葉があったり、歌っている内容が何となくはわかったとしても、全ては絶対にわからないじゃないですか。それはCDを買って、歌詞カードを見ないとわからない。昔はCDを買って聴いた人の何%かがライブに来るような文化だったのが今は真逆で、ライブに来てくれた人の何%かがCDを買ってくれる時代になっていて。この曲の歌詞は、そういう状況に対するアンチテーゼになったら面白いなと思ったんです。

●というのは?

はるきち:ライブで「ダンシングモンスター」をやったら、お客さんはみんな笑顔で踊るじゃないですか。実際にこの歌詞の中には“頭を空っぽにして踊りやがって”みたいなディスも入っているんですけど、それも知らずに踊るわけで。

●歌詞の内容に関係なく、ただ音に身を任せて踊っていることへの皮肉なんですね。

はるきち:本当はCDを買って聴き込んで、歌詞カードを読んで一語一語の意味を汲み取って欲しいなと思っているんですよ。だからこの曲がキッカケになってCDを買ってくれた人が歌詞カードを読み込んでくれて、他の曲についても“こういうことを歌っていたんだ”とわかってくれたら良いなっていう。そういう“入口”の曲になって欲しいなと思います。

●他の曲もそういうメッセージ性が込められている?

はるきち:他の曲に関しては、あまりないですね。「ダンシングモンスター」は“こういうことを言いたいな”という想いがあって歌詞を書いたんですけど、他の曲に関しては逆にメッセージ性とかはあまり乗せずに書いています。

ノブリル:だから、読み手によって解釈がだいぶ変わってきますね。

●あえて色んな解釈ができるものにしているんでしょうか?

はるきち:それぞれの曲に物語があって主人公がいるんですけど、ライブだけで聴いてもそこまでは世界観に入り込めないと思うんですよね。ライブで聴いたら、“何を歌っているんだろう?”みたいな感じにきっとなるだろうなと。「ダンシングモンスター」は聴いていて“踊る感じの曲なんだろうな”と想像がつくでしょうけど、他の曲に関しては逆に何を言っているのかわからない感じにしています。

●意図的に、何を言っているのかわからない感じにしているんですね。

はるきち:CDを買って歌詞カードを読んでもらった時に一歩入り込んで、主人公になったつもりで聴いてもらえたらすごく色んな景色が見えるような歌詞にしました。わかる人にしかわからない歌詞になっていますね。

●一見よくわからないけれど、一歩入り込んだら色んな情景が見える。

はるきち:だから一歩、奥へと踏み込んで欲しいなとは思いますね。もしかしたら「ダンシングモンスター」以外は「全然わからない」って言われるかもしれないですけど…(笑)。

●ハハハ(笑)。でもわかる人には深く味わえるような工夫はしていると。

はるきち:そうですね。ただ単に意味のない言葉ではなくて、主人公の心情の変化や情景についてもすごく細かく書いていたりするから。物語の中で主人公の心情が最後のサビに向けて、どんどん変わっていったりするんですよ。だから歌詞は全く同じでも主人公の心情が違うから、また違う気持ちで聴けたりもする。そういう感じにした曲が多いので、ちゃんと入り込んで聴いてくれたら嬉しいなと思います。

●そういった歌詞の深みをメンバーも感じている?

ノブリル:メッセージ性がないと言っていましたけど、ドラマチックな場面や情景作りに関しては本当に細かいんですよ。それがM-11「罪人のセレナーデ」には特に出ていて。主人公の性格にも色々あると思うんですけど、人によって見え方が違うので、そこも変わってくるのがまた良いんですよね。

はるきち:サビで“ただかなしくて”と歌っているんですけど、最後のサビのほうがより悲しいんです。

●とはいえ最後の最後に“朝焼けを待ちながら”と歌っているように、希望はあるというか。

はるきち:完全なバッドエンドにはしていないですね。全体的にダウナーな流れで進みつつ、最後にちょっとだけ上を向いて終わるみたいな感じにはしたいなと思っていて。あと、自分は言い切りたくないタイプなので、どの曲も最後に何か余白を残すようにしています。

ノブリル:言い切られちゃったら、もう自分を主人公に重ねられないですからね。“こういう結末にならないといけないんだ”っていう考えになっちゃう。それは嫌だと思っているので、こういう書き方が僕はすごく好きなんです。

マイケル:見ている側も考えることができて、小説を読んでいるような感じになるかなと思います…M-4「セニョリータ」以外は。

一同:ハハハ(笑)。

●「セニョリータ」は主人公に自分を投影できない?

マイケル:全くできないです。

ノブリル:「セニョリータ」は半分くらいマイケルが歌詞を書いたんですよ。“君の悩みはディフィカルト”とか、Bメロの部分はマイケルが書いてきたもので。

はるきち:Bメロはマイケルの書いた歌詞をそのまま使いました。“意味わかんねぇな”って思いましたけど(笑)。

●メンバーでも意味がわからない(笑)。

はるきち:“サルセーロ”って何?

マイケル:サルサを歌う歌手のことなんですけど…。

はるきち:“陽気な音楽サルセーロ”って、ちょっと意味がわからないよね?

マイケル:意味はよくわらないけど、何となく語呂が良かったので…。

●言葉の響きで選んだと。

マイケル:できるだけ中身のない感じにしたら本当に意味がわからなくなってしまって、そこをはるきちさんに修正してもらったんです。

はるきち:ほとんど修正しなかったですけどね。“エンジョイサルサ 何とかなるさ”で韻を踏んでいたりするので、これは直せないなって(笑)。

ノブリル:言葉のハマりが良すぎて直せないんです。

●ある意味、完成されていると。この曲にもメッセージ性はない?

はるきち:これはもう完全にメッセージ性ゼロです。“僕はフリーのアドバイザー”って、「どの立場で言ってるの?」ってツッコミを入れたいですよ。“フリーのアドバイザー”って、要は無職ですからね(笑)。

●自宅警備員的な(笑)。

はるきち:サビもよくわからなくて。自宅警備員であまり経験もないので、たいしたアドバイスもできないんですよ。なのに“たまには外に出るがいい”とか、“僕はなんとかなるから”って…。

ノブリル:むしろ「お前が外に出ろ」っていう感じですよ(笑)。

マイケル:ちょっと電波系なBメロですよね…。

●確かに電波っぽいですね。

はるきち:曲調も電波だったんで、歌詞も電波で良いかなと思いました。この曲に関しては嫌いな人は嫌いだろうし、好きな人はめちゃくちゃ好きだと思う。好き嫌いがはっきり分かれちゃう曲ではあると思うんですけど、僕らはみんな好きですね。作った本人はどうか知らないですけど(笑)。

マイケル:うちの弟に聴かせたら、「嫌い」って言われました。

一同:ハハハ(笑)。

●身内に否定されたと(笑)。

マイケル:身内に不評なんですよ…。心が折れましたね。

●クセが強いけれども、良い曲だと思います。

はるきち:特にノブリルや僕なんかは、海外のアーティストの中でもちょっとマイナーなものが好きだったりするんですよ。刺激に飢えているのかな(笑)。ちょっとコアなものに刺激を受けることが多いんですけど、それをなるべくポップに寄せるようにはしていますね。

●M-2「名城線」もマイナー調ではあるけれど、メロディはすごくポップでキャッチーな感じがします。

マイケル:この曲の歌詞はノブリルが書いたんですけど、人によって全然違うように見えるんですよね。

はるきち:最初にノブリルが書いた歌詞は本当に細かく情景描写をしていたんですけど、アルバム全体のバランスを考えた時に僕はもう少しぼんやりさせたくて。だから歌詞を書き直してもらって、ターゲット層を広くしました。

ノブリル:レミオロメンの「3月9日」って元々は結婚式の曲なんですけど、今では卒業ソングとしても歌われていて。そんな感じのニュアンスを目指して書いてみました。

●元々はどういう歌詞だったんですか?

ノブリル:元々の歌詞は、すごく限定されていたんですよ。晴れ男と晴れ女のただのナヨナヨした恋愛ソングだったんです。

はるきち:僕はあまり恋愛に興味がないので、そういうところには共感できなくて。でもたとえば電車の中ですれ違った人を見て青春時代を思い出したり、昔の友人のことを思い出したりするというのには共感できるということをノブリルに言ったんです。

●そうすれば、男女の恋愛だけに限定されない歌詞になる。

ノブリル:そう言われると、自分でも確かにもったいないなと思って。

はるきち:僕は基本的に恋愛ソングに共感できないので、そういうものを自分の作品では出したくなかったんです。でもせっかくだから、どちらの意味でも取れるようなものをノブリルにお願いしたら良い感じで書き下ろしてくれたので、これで行こうとなりました。

●結果的に広がりのあるものになった。

ノブリル:この歌詞を読んで異性を想像する人には、もちろん想像してもらって良いんです。誰かが当てはまってくれたら、僕は幸せですね。

●この曲もそうですが、今回は夜をイメージさせる曲が多いように感じました。

はるきち:それは毎回かな。絶対に夜からは逃げられないですね。僕らの歌詞を全部洗い出してみたら、“夜”とか“闇”という言葉が死ぬほど出てくると思いますよ。M-12「夜に潜む鬼」もそうなんですけど、夜ってメンタルがおかしくなりませんか?

●夜中に書いたラブレターがヤバいというのも、そういうところからですよね。

ノブリル:夜って、本音とかが表れやすくなるんですかね。セーブできなくなってしまう…。

はるきち:夜中に自分がつぶやいたツイートを朝になってから見て、消したりもよくしますね。夜って、何か不思議な感じがするんですよ。逆に朝ってポップじゃないですか? パンをくわえながら学校に走っていく感じというか。

マイケル:「みんな、おはよう!」みたいな元気な感じがする。性格的にいざ中身を出そうとすると、そっちじゃないんですよね。本質的なところは、どちらかというと悩んでいる夜のほうに近いところがあるのかもしれない。

●だから、夜の描写が多くなると。

はるきち:僕は人間がおかしくなる瞬間が好きなんだと思います。自分もそうなるので、夜がテーマになりやすいのかなと。

Cover & Interview:ミソッカス#3

「僕らが一生懸命にカッコつけてようやく“ダサカッコ良く”なるんですよね。僕らがダサカッコ良いことをしようとするとたぶんダサくなるので、今回は精一杯カッコつけさせてもらいました」

●やはり夜には鬼が潜んでいるということなんでしょうか…?

はるきち:そうですね! 夜中におかしくなるのは、鬼がいるからだろうと僕は思っていて。「夜に潜む鬼」の歌詞は主人公が島流しにあって“俺はもうダメなんだ”と覚悟を決めて船に乗るんですけど、船頭が櫂を漕いで島に近づくにつれて夜が深くなっていくんです。すると覚悟を決めたはずなのに、どんどん不安になっていくっていう…。歌詞に結末は書いていないので、最終的にどうなるかは僕にもわからないんですけどね。

●DVD付きCDのほうでは、この曲がラストになるわけですが。

はるきち:勢いのある曲で始まって、最後はしっとり締めたいなと思って。僕はこういう曲が好きなので、最後に選びました。すごく勢いがあって良い感じだったのに最後だけダウナーに終わるっていう、後味の悪いアルバムにしたかったんです(笑)。

●後味の悪さを狙ったんだ(笑)。

はるきち:CDのみのほうではその後にM-13「放課後ねじまきダンス」が入っているので、もっと意味がわからない感じになっていますけどね(笑)。この曲は「夜に潜む鬼」とすごく似ているというか、どこか狂っているんですよ。人間のおかしな部分がいっぱい入っているんです。それを「夜に潜む鬼」では真面目に切り取り、「放課後ねじまきダンス」ではポップに切り取ったというか。だから結局、言っていることはほとんど変わらないんです。

●「放課後ねじまきダンス」はTVアニメ『ヘボット!』のオープニングテーマですが、何か指定はあったんでしょうか?

はるきち:曲調に関しては「朝からステーキを食べている感じ」と言われましたね。でも歌詞は、ほぼ縛りがなかったです。第1話のあらすじしかもらっていない段階で書いたので“地球の平和は守るよ”と歌っているんですけど、実際に(アニメの中で主人公が)守るかどうかはわからないっていう(笑)。無駄に壮大な感じにしてみました。

●サビの“ねーうしとらうーたつみーたつみー”は、子どもが歌いたくなるキャッチーさがあるなと。

はるきち:“たつみーたつみー”と2回繰り返すのがポイントですね。僕らは元々アニソンっぽいバンドだったのでこういう曲は得意ジャンルというか、勝手にできちゃうんですよ。そして最終的にちょっと感動的なメロディに行って、謎の感動で終わらせたかったんです。コード進行もクリシェを使ってどんどん落ちていく感じで、無駄に感動的にしました。無駄な労力を使いたいんですよね。

●あえて無駄な労力を使いたい?

ノブリル:そういうところはありますね。「セニョリータ」も無駄な労力を使っていて。和声学的にはすごいコードになっているんですけど、もうわかる人だけわかれば良いやっていうレベルで(笑)。

はるきち:今回の13曲中では、「セニョリータ」を歌うのがダントツで難しいんですよ。無駄な労力を使って良かったなと思っています。

●マニアックな仕掛けも仕込まれている。

ノブリル:そうですね。マイケル先生が仕込んでくれました。

マイケル:そういうものは全曲にあると思います。

はるきち:でも今回はシンプルですね。難しいことをしつつも、聴き手に難しさが伝わらないようにしました。以前は全パートの主張が強すぎて“あからさまに難しいことをしているぜ”という感じを出していたんですけど、さすがに複雑になりすぎていたのでいったん取っ払ってシンプルにしてみたら今回はすごく良いバランスになって。

●シンプルに聞こえるように意識した。

はるきち:M-6「オテントサマ」は2ndミニアルバム(『異次元からの来訪者』)からの再録なんですけど、今作にもすごく馴染んでいるんです。当時はすごくシンプルにやっていたので、その時の曲が違和感なく入るということは“今回はそういうバランスのアルバムになってるんだな”と思って安心しました。

●狙いどおりにできたことの証明というか。

はるきち:実際「オテントサマ」は雰囲気が違いすぎて、前作にも前々作にも入れられなかった曲なんです。“今だからこそ入れられたのかな”という感覚はありますね。2nd(『異次元からの来訪者』)を作った時は、意図せずにこういうバランスになっていて。そこから4年かかってやっと、このバランスに意図的に持ってくることができるようになったんだなと。“このバランスが一番、ミソッカスがカッコ良く見えるのかな”と思います。

●バンドにとって一番良いバランスになっている?

はるきち:ミソッカスのパブリックイメージというところで“ダサカッコ良い”というのをわざわざ意識した時もありましたけど、僕らが一生懸命にカッコつけてようやく“ダサカッコ良く”なるんですよね。僕らがダサカッコ良いことをしようとするとたぶんダサくなるので、今回は精一杯カッコつけさせてもらいました。だから僕らはカッコ良いアルバムができたと思っているんですけど、結局は「ダサカッコ良いミソッカスが戻ってきた」って言われるんだろうなって(笑)。

●ある意味、“らしい”ものになっているということですよね。

はるきち:リリース前に関係者の人に色々聴いてもらっているんですけど、「ミソッカスらしいアルバムができたね」ってよく言われます。あと、いつもアルバムができても何も言わないマイケルが「今回はすごくしっくり来るんですよね」と言ったのにはビックリしました。

●何か特別な感覚があった?

マイケル:本当に感覚的なことなんですけど、特にメジャーデビュー以降の作品には模索している感じがすごくあって。“この機会に色々と吸収して、どんどん変わらないといけない”という想いもあったと思うんですよ。そういう中で肩の力が抜けた今作ができた時に、また帰ってきた感じがしたんです。でもそれは別に退化したわけじゃなくて、すごくしっくり来ているんですよね。

はるきち:模索した分すごく吸収して、力強くなって帰って来られた感じがします。

●原点回帰しつつも、ちゃんと力強く進化している姿も見せられる作品になっている。

はるきち:歌詞についても“もうメッセージなんてなくて良いや”くらいの感じで、初期の1st〜3rdミニアルバムと同じくらいのスタンスで書いているんですけど、その時よりもよりドラマチックになっているんじゃないかと思っています。情景描写だけで終わっていない感じがあるので、歌詞的にも色々と模索しただけのことはあったなと。今までの流れがなかったら作ることができなかったアルバムだなと思うし、次に作るアルバムもすごく楽しみになりましたね。とりあえずはまず今作が広がって欲しいと思っています。

●ライブで盛り上がる画の浮かぶ楽曲が多いので、ツアーも楽しみですね。

ノブリル:そこは制作中にもすごくイメージしていましたね。自分がお客さんになったつもりで今回は作ったんです。

はるきち:お客さんを意識しながらも、自分たちが楽しめるような曲にしました。「ダンシングモンスター」について言ったようにライブで言葉は伝わらないんですけど、非言語コミュニケーションというか、動作や雰囲気はすごく伝わるんですよ。楽しんで演奏している僕らを観て、お客さんも楽しんでくれているだろうなという想いで作れたので、本当に良かったなと思います。

Interview:IMAI
Assistant:Fukushima Tetsuya
LIVE PHOTO:ヤオタケシ

 

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