音楽メディア・フリーマガジン

内田雄一郎

円熟した濃厚な音に浸り、魅惑と困惑の世界を堪能した

“Shinjuku Loft Presents BorderLine Syndrome 11”
2017/1/25@新宿LOFT
W/新宿ゲバルト / ADAPTER。

筋肉少女帯のベーシストとして、またNESSやFoo-Shah-Zoo等の活動でも知られる内田雄一郎が1/25に自身初のソロアルバムをリリースし、同日に発売記念ライブを新宿LOFTで行った。筋肉少女帯の楽曲にキッチュなモンド・ミュージックのアレンジを施した、今回の初ソロ音源『SWITCHED ON KING-SHOW』。そのリリース後初めてのライブ、また1人きりのステージは2回目ということもあり、詰めかけた多数のファンで会場は熱気に溢れている。
縁の深い新宿ゲバルト、ADAPTER。との3マンライブにトップバッターで現れた内田が用意していたのは機材プラス、謎の赤い蛍光灯。曰く「1人だと、こんなにステージが広いとは!」ということで、会場中から集まる視線を分散させる目的があるらしい…。“ジャン・ポール”という名前まで付けて愛でる相棒を片手にステージ上を動き回り、飄々とメロディを歌い上げる。「イワンのばか」では筋肉少女帯のライブでおなじみのフリをやってみたり、やってみなかったりという自由さで、思うままに不思議な音の世界を生み出していった。
普段は寡黙ながらもエネルギッシュなプレイでバンドサウンドの屋台骨を支える内田が解釈し、再構築した楽曲はポップさの中にもドゥームで濃密な空気を醸し出す。ステージを照らすサイケデリックな映像と謎の赤い蛍光灯の電子的な輝きも相まって、目の前に広がっていくのは幻想的な世界だ。
内田ならではの解釈により、ミニマムで軽やかさを含んだ「星の夜のボート」に続いては、イントロで感づいたオーディエンスに騒然とした空気すら生じさせたカバー曲「魅せられて」(ジュディ・オング)。過去にも渋谷La.mamaのステージでカラオケを歌ったという思い出を語りながら、歌謡史に残る名曲を朗々と歌い上げた内田の顔はこの日一番の充足を覚えているようにも見えた。
作品ではあえて軽やかな音色を押し出しているようにも感じられたが、実際にライブで体験してみると“サイケデリック”ともいえる色鮮やかさを併せ持っている。そんな奇妙な音の洪水の中を、聴き覚えのあるメロディが横切っていくのだ。その後に出演したADAPTER。や新宿ゲバルトとも異なる電子音系のサウンドには、クールなケレン味と大胆さが同居していた。
記念すべき初ソロ音源のリリースイベントにもかかわらず、ライブハウスをのんびりとした自分のペースに巻き込んでしまう内田の奔放な姿勢。それに乗せられ、オーディエンスも思い思いにリズムを味わいながら身体全体で音の塊を感じたことだろう。円熟した濃厚な音に浸り、魅惑と困惑の世界を堪能した時間だった。

TEXT:古川うなぎ
PHOTO:Yoshifumi oogushi

 

 

 

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