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PAN

酸いも甘いもおもろいもサブいも 全部飲み込んだPANの最高傑作

2015年11月リリースのシングル『想像だけで素晴らしいんだ』で感動させ、2016年8月リリースのミニアルバム『具GOODグー』では餃子の王将コラボで我々の度肝を抜き、ライブをやれば会場を興奮と笑顔で埋め尽くし、東京で初の開催となったSABOTENとの共催イベント“MASTER COLISEUM”を大成功させ、20周年を経てますます勢いを加速させるPANが7枚目となるアルバム『PANJOY!!!』を完成させた。笑いあり、感動あり、異色コラボあり、現在進行系で最高到達地点を更新し続けるPANのすべてが凝縮された今作を聴いて、ライブハウスで暴れよう。

 

INTERVIEW #1

「東京でやったマスコロも、どこを切り取ってもめっちゃいい空気で、 “これをもっと続けていきたい”と直感的に思いました」

 
●“MASTER COLISEUM ’17”(以下マスコロ)初の東京開催はいかがでしたか? (※インタビューは“MASTER COLISEUM ’17”が開催された次の日に実施)

川さん:やってよかった。マスコロは大阪で10年やってきたけど、まだ関東で知らない人も多いだろうと思って一発やったところもあるから、ダイレクトに“マスコロ感”を出せたし、東京の人が来やすかったかな。今回、東京でマスコロを観て“今度は大阪でマスコロ観たい!”って思ってくれた人もいただろうし。関西から全バンドが揃ったというのもよかったし、何より“マスコロ感”を出せたことがよかった。

ゴッチ:頭からケツまでずっとワクワクしていたんですよ。マスコロは10回やってきたけど、初心にかえった感じで、いい意味で緊張感はずっとありましたね。いざ始まってみたら、初っ端のガガガSPからもう泣きそうになったんです。すごく感動して。みんな仲がいいからこそ色々仕掛けてくるし、その相乗効果もあって“すげぇいい雰囲気だな”と思って。どこを切り取ってもめっちゃいい空気で、“これをもっと続けていきたい”と直感的に思いました。

ダイスケ:終わった時に“来年もやりたいな”ってホンマに思いました。そう思えたのは内容の濃さもあるし、大阪で初めてやったマスコロがソールドアウトにならなかったのと同じように、今回の初の東京開催もソールドアウトにできなかったので、“次は売り切ってやる!”って思いました。あと“関西しばりっていうイベントもおもろいな”と思ってくれた人もいっぱいいただろうし、ライブで緊張したのも自分的には大きかったですね。

●え? 緊張していたんですか?

ダイスケ:普段もライブをやる時は緊張しているんですけど、あそこまで緊張したのは久しぶりですね。自分たちのワンマンライブより緊張しました。

●そうだったんですね。よこしんは?

よこしん:出演者が関西のバンドばかりなので楽屋とかでもワイワイしていて、最終的にアンコールでみんなに出てきてもらって…アンコールは無茶苦茶になっていましたけど(笑)…マスコロってずっとワイワイやっていればいいんじゃないかなと思っていて。ライブを観ているとみんな仕掛けてくる感じとか、いつも以上に気合いが入ったパフォーマンスをしているバンドばかりで、バトンがどんどん重くなっているのが分かりましたね。“生半可なライブをしたら負けてしまう!”みたいな。“繋いできたものを壊してしまう!”と思って緊張していたんですけど、それでも最終的にみんなでワイワイとなって。お客さんも最初から楽しんでくれている感が出ていたので、東京でやれて大成功だったんじゃないかなと思いました。

●それとマスコロで初披露した新曲M-1「オリジナル」ですが、めっちゃ盛り上がっていましたね。カッチョええ曲だった。

川さん:新曲を初めてやる時って、ペース配分とか難しくて。ライブで何回もやっていけば分かってくるんやけど、マスコロで初披露して「盛り上がっていた」と聞いて、“あ! そうなんや!”って感じ。

●ということは、客席の雰囲気はわかっていなかった?

川さん:お客さんの反応を見るほどの余裕はなかったかな。1回目というのもあって、歌詞とかも覚えてはいたけど、探りながらやってたというか。動きとかも勝手に出てくるわけではないから。でも傍から観てくれた人に「新曲よかったな!」って言ってもらえると、“ホンマ?”みたいな感じ(笑)。

●「想像だけで素晴らしいんだ」を2年前のマスコロで初めてやった時も、すごく反応がよかったじゃないですか。自分たちのお客さんだけじゃないライブで、初めて披露してお客さんの心を掴むという新曲の発表の仕方は、例え本人たちに余裕がなかったとしても、すごくいいと思って。

川さん:確かに感触はよかったかな。“これはライブでもやっていけるな”って思った。

●川さんって、昔からライブで変な動きをするなと思っていたんです。他のバンドにはないというか、ロックバンドのボーカリストっぽい動き方ではなくて。でもマスコロで「オリジナル」をやった時、川さんの動きがお客さんのガイドになっていたんですよね。もちろんみんな初めて聴く曲だけど、川さんの動きを見ていれば自然にノレるというか。そういうところを計算して狙ってやっていたのならすごいなと。

川さん:おっ、長年たくらんでいた計算がここで遂に暴かれる!

●お。

川さん:振り付けっていう感じじゃないけど。

●うん。振り付けというか、川さんの動きを完全にお客さんが真似しているという感じではないんですけど、川さんが先に変な動きをしてお客さんの体をほぐすみたいな。

川さん:“ここは手を上げてくれ!”っていう気持ちはあるかな。そういう時にみんながやってくれる。

●昔から変な動きですけど、意識していたんですか?

川さん:よく言われていたけど、“そんなに?”っていう感じで自覚はあまりないかな。思うがままに動いているだけなんやけど。

●そう、思うがままに動いている感じがする。

川さん:“ちょっと先で曲が止まるから、そこまで止まったろ!”とか思って意図的にやることはあるけど、ライブをしながらだんだんそういう動きになっていく感じかな。だから、この曲ではこういう動き方をするっていうのがパターンとしては出てくるけど、決まっていないこともいっぱいあるから、全く同じことをやることはなくて、むしろ動いている方が歌いやすいから動いているだけかもしれない。

●なるほどね。

川さん:みんなに動いてほしいところは俺も動いているから、単純に真似してくれているんでしょうね。“ここは真似せんでええ”ってところは複雑に動いているかもしれないけど、“変な動きをしよう”と思ってやっているわけじゃなくて。その方が歌いやすい。リズムをとる、みたいな感覚。

●観ている人からすると、自然に引き込まれるのかもしれないですね。楽しそうにしている人を見たら楽しくなるのと同じで。

川さん:うん。楽しそうにしている人を見たら楽しくなる。

INTERVIEW #2

「芯がなかったらおもしろくないし笑われへんから。それがあった上でおもしろいことをするのがPANなので」

 
●3年ぶりのアルバム『PANJOY!!!』ですが、いつ頃から制作していたんですか?

川さん:今年の1月にレコーディングをしていたんやけど、昨年の春過ぎくらいからアルバムを出すというのは話に出ていて。

●前作のミニアルバム『具GOODグー』が出る前?

川さん:うん。でもいつも制作がカツカツになるから、早めにちょこちょこやっていきたいなという話をしていたけど、ツアーとかイベントでやることがいっぱいあって、だんだん後になっていって。“黙っていたらリリースがズレるのかな?”と思っていたら結局ズレることなく(笑)。

●計画はそのままやったと。

川さん:“まぁ、そうやろな”と思って。ツアー中の12月とかに一旦止まるタイミングがあったので、そこですぐに歌詞を書く作業とかをやって。曲作りは昨年の11月くらいからやってたかな。

●どんなアルバムにするとかのイメージはあったんですか?

川さん:俺らはライブ中心のバンドだから、ライブで表現して他のバンドに勝っていくための曲を入れたいというのと、PANが表現したい芯の部分とかを…。

●PANの芯ってどこやろ?

川さん:感じろよ!

一同:アハハハ(笑)。

●いいツッコミだったな〜。さすがだな〜。

川さん:芯がなかったらおもしろくないし笑われへんから。それがあった上でおもしろいことをするのがPANなので。『PANJOY!!!』というのは“楽しんでくれ!”ってことやから。

●タイトルが非常に分かりやすいですよね。ライブのスタンスがそのまま表れている。

川さん:やっぱり新しいことをやるっていうより、前作の『具GOODグー』の時とスピリッツは変わっていないし。

●あくまでも今までの延長線上だと。

川さん:「想像だけで素晴らしいんだ」も表現の仕方は違うけど、スタンスは一緒で。それも含めて長年やってきたからできた振り幅かなとも思うし、「想像だけで素晴らしいんだ」は20年やってきたからこそ歌えた曲かな。

●シングルで発表した「想像だけで素晴らしいんだ」を初めて聴いた時、感動したんです。だからその後も聴いている人の心をギュッと掴むような路線でくるのかと思いきや、ギュッと餃子の王将を掴みにいく方向にいって(※シングル『想像だけで素晴らしいんだ』を2015年11月にリリースした後、2016年8月に餃子の王将コラボ曲「ギョウザ食べチャイナ」収録のミニアルバム『具GOODグー』をリリースした)。せっかく感動して泣きそうになっていたのに、“もう!”と思ったんです。でも今作を聴いたら、なんか全部納得できたんですよね。色んな要素があるけど、“PANってこういうバンドやで!”ということが聴いたら理解できる。

川さん:どの歌もPANっぽい。

●そうそう。あと嬉しかったことがあって…。

ダイスケ:なんですか?

●ゴッチ作曲の曲(M-7「たまごのうた」)が入っていたことで。ゴッチの曲は今までずっと選曲会議でボツになっていて、ここ数年作曲者としての自信をなくしていたというか(笑)、インタビューで曲の話になったらゴッチは口数が減っていて。でも今回は採用されている! 1曲だけだけど!

ゴッチ:もう全然ありがたいです。デカいです。

●自分の人生においてデカい?

ゴッチ:うん。普通に自分の曲があるのとないのとでは全然違います。

●寂しかったの?

ゴッチ:寂しくはないけど、存在価値というかギタリストとしてその曲のいちばんいい彩りにはしようと思っているんですけど、でも1曲自分の作った曲があるだけでも想いが違う。だから今作は特にテンション高くできました。

●よかったね(笑)。

ゴッチ:うん。

●ゴッチが作った「たまごのうた」はJA全農たまごのコラボタイアップですよね。ちょっとカントリー調の曲ですけど、どういうイメージで作ってきたんですか?

ゴッチ:最初のイメージは草原でした。そういう広くて楽しい大きなイメージで、楽しく音楽が流れているというイメージで最後までいけたから、“この曲調だったらPANでやっておもしろくなるんじゃないか”と思って。

ダイスケ:今回、ゴッチは2曲持ってきていて、最初はもう1曲の方をやろうと言っていたんですけど、何回やってもアレンジがうまくいかなくて。みんなで「何か違うな〜」とずっともがいていて、「じゃあもう1曲の方をやってみようか」ってなった時、よこしんが「『みんなのうた』みたいな感じで子ども向けに歌詞を書くのはどうですか?」と川さんに言ってて。

●よこしんのひと言から膨らんだ。

よこしん:子連れのお客さんとかもライブで見かけていたので、“子どもとかが好きそうな感じにしてみたらおもしろいかな”と思って。

ダイスケ:その時は川さんがめっちゃ歌詞に悩んでいたんですけど、その『みんなのうた』っていうヒントを得てからはすぐに書き上げていました。

●“たまご”というキーワードはどこから出てきたんですか?

川さん:子ども向けの歌ということになったので、初めはとうもろこしだったんですけど。

●とうもろこし?

川さん:とうもろこしだったらポップコーンにもできるし、ライブのイメージで“弾ける”みたいな感じで作ろうと思ったんですけど、“それだけでは無理だな”と行き詰まって。他の食材を色々考えて“あれも違う”、“これも違う”となって、最終的に卵が残って。卵って意味合いが深いなと。みんな最初は卵やん。

●確かに。

川さん:でも“白菜”とかだと難しいやん。

●白菜の歌って想像がつかないな…。

川さん:卵って変化するし、丸いっていうのもいいし、語呂もいいし。それがキーワードでハマってからは早かった。

INTERVIEW #3

「1週間くらいおしりにフタをして寝かせて、違うモードで曲作りをしていたんですけど、1週間後に開けたらやっぱりおしりは輝いていた」

 
●M-2「揺れるおしり」という曲がありますけど…川さんの書く歌詞の中からこういう男心というか、スケベ心が見え隠れするのは珍しいなと思ったんです。

川さん:スケベ心というのは、誰でも持っているのは当たり前のことだし、“それをも利用して前に進んでいこうぜ!”みたいな気持ちで作った。“そこに行く理由なんて何でもいいやん”っていう感じで、とにかく行きたいところに行くための理由なんて何でもよくて。

●動機は不純でもいい、と。

川さん:とにかく“前に進んでいくことのほうが大事やろ?”みたいな。そこに行くまでに何か楽しみを作っていったら近づいていくやん! と思って。ゴールだけを見ていたらしんどかったりするから、途中に給水ポイントみたいな感じで、“とりあえずあそこまで行こう”みたいな感じ。そういうことを考えてて、“おしり”というキーワードが出てきて、頭から離れなくなって。

●おしりフェチなんですか?

川さん:そんなことないけど、おしりって丸くてええやん。丸いものって何かええやん。

●丸いは正義。

川さん:そう。丸いものって何かよくて。三角よりは全然いい。三角のものって冷たい幾何学的なイメージがあるし、丸のほうが温かみがある。それでおしりが出てきて、1週間くらいおしりにフタをして寝かせて、違うモードで曲作りをしていたんですけど、1週間後に開けたらやっぱりおしりは輝いていたから。

●1週間経ってもおしりは輝いていたと。

川さん:“お前がそこまで言うんやったら、お前でいくわ!”と思っておしりをまた出して。この曲の中では「おしり」って言っているけど、言いたいことは要するに“自分で何か楽しみを作ってでも進んでいこうや!”みたいな。

●ダイスケが書いてきた曲調の楽しい感じがおしりを想起させたんですか?

川さん:サウンドにちょっとエロさはあった。その辺からきていたのかもしれない。俺が気づいていないだけで、布1枚隔てておしりはあったのかもしれない。

●おしりのぬくもりを感じていたと。

ゴッチ:この2人さっきからなに言うてんねん。

●ところで今回の問題作ですが…。

ダイスケ:あっ、きた。

●M-5「ヨコカワシンタロウの調べ 〜俺はタテじゃない、ヨコだ!〜」は問題作だと思いました。

ゴッチ:当然そうなりますよね。

よこしん:川さんが歌詞を書いてきて、“あれっ?”ってなって。カッコいいのを書いてくれるのかと思いきや、まさかの自分のいじられネタが書かれていてびっくりしました。

川さん:サビの歌詞を思いついて、“あぁ、これハマるな”と思って。よこしんいじりとして、バンドマン同士のノリというか、「おお! たてしん!」「たてじゃない! よこや!」みたいな、そういうやりとりは何度となく見てきて。それでも「俺はよこだ!」っていう強い意志を全面に打ち出そうと思って。

●スベっても動じなくて、その場の空気を凍らせるというか、時間を止められるよこしんのキャラクターを余すこと無く表現した曲ですよね。

川さん:山中さん(インタビュアー)はよこしんのホンマのキャラクターを知っているけど、知らん人もけっこういたりして。ステージではそんなことしていないから。

よこしん:ライブだけ観ている人は“本当はこんな人なんや…”って思うかも。

●あ、そうか。ワンマンとかホームな感じじゃないとよこしんがガッツリしゃべることもないですよね。これを聴いてポカンとしちゃう人もいるんだ。「イケメンで爽やかなあの子が…?」みたいな。

川さん:そう。“またあんなことさせられてる!”みたいに思う人もいると思う。

●よこしんはどう思いました?

よこしん:こういう風に見えているんだろうなって客観的に思いました。あまり認めたくなかったことが赤裸々に書いてある。

●ハハハ(笑)。ライブでやる時はよこしんが前に出てくるんですか?

川さん:まだやったことはないけど、ワンマンツアーもあるからその時はどうにか表現したいなと思っています。宙吊りになってるとか。

●この曲、鍵盤とかも入っていてアレンジがキラッキラしていて、ライブがおもしろくなりそうですよね。

川さん:鍵盤は本人の希望で。

よこしん:元々はボーナストラックとしての扱いにしようかという話になっていて。だからCメロとか考えずに1番と2番、ラストのサビで終わらせて、“ボーナストラックやから、ライブではせえへんやろ!”と思って、自分の頭の中にあるキーボードとかシンセサイザーとかの音を無理やりはめ込んでいったんです。

●アレンジのアイディアもよこしんが考えたと。

よこしん:わがままにやらせてもらって。みんなにも色々考えてもらったんですけど、“これは好き勝手にやらせてもらおう!”と思って。鍵盤を入れるのもメンバーは知らなかったし。

ダイスケ:よこしんのスイッチが入っていたから、「お好きにどうぞ」っていう感じで。

INTERVIEW #4

「“あぁそうなんや、俺も頑張ろう”と思う人がいてくれたら嬉しいし、PANに派手なサウンドだけを求めていなくて、こういう曲もPANとして認めて聴いてくれているのは嬉しい」

 
●今作のリード曲は「オリジナル」ですけど、この曲はすごくライブ映えするし、PANの芯の部分を表現できていて。この曲をリードにというのはすんなり決まったんですか?

ダイスケ:今回は3曲くらい候補があって悩みました。

川さん:「オリジナル」「揺れるおしり」M-3「サヨナラオサラバ」で悩んだな。

ダイスケ:まずメンバーの意見がバラバラで。それで、スタッフも含めたチームで話し合ってまとまった感じです。“PANは次にどうやって攻めていくか?”という方向性を考えた時に、それに合うのは「オリジナル」じゃないかなと。

●「オリジナル」はどういうきっかけでできたんですか?

ダイスケ:いつも通りなんですけど、PANのライブに合うような明るくてキャッチーな曲を作ろうと。ライブでやってもお客さんが楽しめてノレるような感じで、いいメロディを付けることも意識して。

●確かにメロディとか、PANのど真ん中かもしれないですね。

ダイスケ:そうですね。みんなが聴きやすい曲を作りたかったんです。

●歌詞はどういう感じで?

川さん:ダイスケが持ってきたサウンドを最初に聴いた時、ロック調という印象があって。そのテンションに合うようなキーワードを考えて、突拍子もないおもしろい言葉ではなさそうだなと。

●ふむふむ。

川さん:色々探してたら、ある時に“オリジナル”という言葉が出てきて。昔コピーバンドをやっていて、たまにオリジナルの曲を作ったりしていた時に、ライブで「ここはコピーの曲をやります」「ここはオリジナルの曲をやります」とか言っていた思い出もあって。

●ほう。

川さん:“オリジナル”は“自分なりの”という意味だから、その方向性でいくのはいいなと思っていて。言葉自体はそんなにおもしろい言葉ではないけど、それをこの曲調にハメればテンション感は合ってくるのかなと。あとはサビの“カッチョええ”っていう言い方とか。

●“カッチョええ”ってなかなか言いませんよね。

川さん:“カッコいい”ではないなと思って。スマート感が出るから。

●確かに。“カッチョええ”には中二感がありますね。

川さん:単に「カッコいい」って言うよりは、「カッチョええな!」って言った方が表情が出るような言葉やから、そういうのと結びついたのがよかったのかな。

●一方で、リード曲の候補でもあった「サヨナラオサラバ」は、ヘヴィでミクスチャーっぽいというか。

川さん:ドラムとかレコーディングで上がってきた時に“えらいやっとんな!”と思った。

●音が分厚くなっているな、と。

川さん:多分ライブではウケるなと思って。展開がしっかりとあるから、こういう曲もあったらええやろうなと。

●この曲、別々の曲を1つにしたような印象を受けたんですが。

川さん:作っていて展開の中で“どうしたらいいかな?”っていうのをみんなに相談して、「こんなんがいいんちゃう?」みたいな。それでハメていって、元から持っていた音を間に入れて作った感じ。

●なるほど。だから展開がダイナミックなのか。

川さん:くっきりとさせたいなと思っていて。これがイントロとか、こうなったらAメロとか。

ダイスケ:だから違う要素のものをハメていったという感じです。

●おもしろい曲ですね。あとM-6「大事な言葉」に感動したんです。川さんはいつも飄々としていて、バンドとしてもワチャワチャした曲が多い中で、こういう曲がたまに入ってくるのがしびれる。川さんの裏側というか、心の奥底にこういう想いがあるっていうのがいいですよね。これこそPANの芯の部分というか。

川さん:昔は分からなかったけど今になったら“そうなんやな…”とか素直に思うことやし、こういう曲を出すことで“あぁそうなんや、俺も頑張ろう”と思う人がいてくれたら嬉しいし、PANに派手なサウンドだけを求めていなくて、こういう曲もPANとして認めて聴いてくれているのは嬉しい。

●うんうん。

川さん:それこそ芯の部分をちゃんと見てくれているなと。この曲を聴いて“あんまおもろくないな”じゃなくて、“こういうこともあるよな”となってくれると、より熱くなれるというか。生きていくとか続けていくことって楽なことばかりではないので、こういうことを出せたら、よりホンマの意味で“楽しい”と思える。笑うだけじゃなくて、“なんか生きてるって楽しいことやねんな”みたいな気持ち。そんな風に変換できたらいいなと思う。

●歌詞に“オトンが言ってた言葉が今頃響く”とありますが、なぜ川さんのお父さんがおっしゃった言葉がキーワードになったんですか?

川さん:本当に昔から「なにくそ なにくそ それで行け」とよく言っていて。当時は“分かった分かった”って感じで聞いてたけど、今になってもまだ残っているってことは、それだけシンプルな言葉だったんじゃないかな。

●昔から言っていた?

川さん:そう。「なにくそやで!」って。でもそういう言い方だから分からなかったけど、ホンマはこういう意味だったんだなと今になって思って。

●当時のお父さんと近い年になって分かる、みたいな。

川さん:その時の親父は、俺がバンドをしてこんなことをやるなんて思ってもいなかったやろうけど、言いたかったのはそういう意味だったのかな、と。

●お父さんに聴かせるんですか?

川さん:「聴いてくれ!」と言ってCD渡したりはしないけど、ゴッチの親父には聴かそうかなと思ってる。

ゴッチ:なんで? 俺そんなこと言われた思い出ないし!

●ハハハ(笑)。「大事な言葉」とか「オリジナル」、M-10「あと味」からも感じたんですけど、“自分らしさ”というのが共通のテーマになっている気がして。PANのライブはここ最近すごくよくなっていると思うんですけど、それは“○○っぽい”とかじゃなくて、“自分たちにしかできないこと”をバンド全体で表現しているからだと思うんです。ライブ中の川さんの独特な動きも含めて。

川さん:昔から「動き変やで」と言われても「えっ、そう?」くらいの感じだったけど、それでも貫くことの大事さとか続けていっていたら、それがいいものに変わっていたり。「変や!」と言われようがその方が自分はやりやと。この曲を聴いて“あんまおもろくないな”じゃなくて、“こういうこともあるよな”となってくれると、より熱くなれるというか。生きていくとか続けていくことって楽なことばかりではないので、こういうことを出せたら、よりホンマの意味で“楽しい”と思える。笑うだけじゃなくて、“なんか生きてるって楽しいことやねんな”みたいな気持ち。そんな風に変換できたらいいなと思う。

●歌詞に“オトンが言ってた言葉が今頃響く”とありますが、なぜ川さんのお父さんがおっしゃった言葉がキーワードになったんですか?

川さん:本当に昔から「なにくそ なにくそ それで行け」とよく言っていて。当時は“分かった分かった”って感じで聞いてたけど、今になってもまだ残っているってことは、それだけシンプルな言葉だったんじゃないかな。

●昔から言っていた?

川さん:そう。「なにくそやで!」って。でもそういう言い方だから分からなかったけど、ホンマはこういう意味だったんだなと今になって思って。

●当時のお父さんと近い年になって分かる、みたいな。

川さん:その時の親父は、俺がバンドをしてこんなことをやるなんて思ってもいなかったやろうけど、言いたかったのはそういう意味だったのかな、と。

●お父さんに聴かせるんですか?

川さん:「聴いてくれ!」と言ってCD渡したりはしないけど、ゴッチの親父には聴かそうかなと思ってる。

ゴッチ:なんで? 俺そんなこと言われた思い出ないし!

●ハハハ(笑)。「大事な言葉」とか「オリジナル」、M-10「あと味」からも感じたんですけど、“自分らしさ”というのが共通のテーマになっている気がして。PANのライブはここ最近すごくよくなっていると思うんですけど、それは“○○っぽい”とかじゃなくて、“自分たちにしかできないこと”をバンド全体で表現しているからだと思うんです。ライブ中の川さんの独特な動きも含めて。

川さん:昔から「動き変やで」と言われても「えっ、そう?」くらいの感じだったけど、それでも貫くことの大事さとか続けていっていたら、それがいいものに変わっていたり。「変や!」と言われようがその方が自分はやりやすいし、それがスタイルになっていくと思うから。あとやっぱり自分の中で変換したいというのはある。

●何かから刺激を受けたり吸収したら、そのまま表現するのではなく、一旦自分なりに変換したいということ?

川さん:そう。色んなものを吸収して、そのまま自分のものとして出しても“それはちゃうやろ!”と思って。そこは意地でも何か自分の言葉を入れて変えたい。人がやっているものがいいからって自分がそれをやっても、絶対いいものにはならなくて。意地でも自分のフィルターはかけたい。

●それが“PANらしさ”になっているのか。

川さん:それは自信にも繋がるし、気持ちを乗せて言えたりとか。演奏しているみんなもそうだけど、そこにポリシーを持ってやるかどうかで全然違うから、4人の考えが1つになれば強くなるだろうし、違う方向を向いていたらバラけるだろうし。今そういう意識が4人の中でチームとして一致してきたのかなと思って。

INTERVIEW #5

「PANは20周年を過ぎても今がいちばんバリバリ現役だと思うし、そのスタンスでまだまだ色んなことを生み出していきたい」

 
●さっき「4人の考えが1つになってきた」という話がありましたけど、実際のところ自分たち的にもライブの手応えはどんどんよくなってきているんじゃないですか?

ゴッチ:うーん、上がってはきているけど…。

ダイスケ:満足はしていないです。

ゴッチ:うん。満足はしていない。

よこしん:できあがっていくと、“またこのパターンだ!”と思って逆におもしろくはなくなるんですよね。完成形に近づくと“もういいかな”ってなるので、まだまだ全然満足できないですね。

●なるほど。“ゴールがない”ということか。

よこしん:ゴールは一生ないんじゃないですか? 僕ら飽き性なので同じことをするのが嫌なんです。

●最近はMCも完璧だし。スキがない。

ダイスケ:それをコントロールしているのは全部川さんですよ。

●MCは考えているんですか?

川さん:一応“今日はこんなこと言えるな”とかそういうことはライブの前に思い浮かべるけど、“なにを言うか”っていうのは直前で決めます。だからミスる場合もある。

●ミスる場合もあるのか。

川さん:そんなんめっちゃあるわ!

●なんか怒ってる。

川さん:逆に“あぁ、これ言えばよかったな〜”とかもあるし。別に言わなあかんことなんてないんだけど、“これを言ったらもっとおもろかったな”とかはよくある。

●でも現場での対応力というか、さすがにこれだけたくさんライブを経験しているからというか、何が起きても平気な感じがする。

川さん:でもMCがいちばん難しい。MCひとつでライブの雰囲気もガラッと変わるし。

●変わりますよね。

川さん:“うまいこと持っていくな!”と思うバンドはいっぱいいて、そこに対抗心もありつつ、でも同じこと言ってもあかんから、“自分なりの何かをやらないと”と思う。もちろん、例えば対バンとかのイベントとかだと被せるおもしろさもあるけど、それだけじゃなくて。

●うんうん。

川さん:組み立てたものを壊すというよりは、何かを作っていきたい。そっちの方がカッコいいしおもしろい。誰かが作ったものを崩すのってすごく簡単だし、そういう笑いもあるのかもしれないけど、それはあまり好きじゃなくて。それより、どうなるか分からないけど自分で踏み出してやった方がおもしろい。

●そう考えたら毎回が勝負ですね。

川さん:それでスベったとしても自分は納得がいくし、“俺は今踏み出したんや!”っていう結果だけがあるから、そっちの方が気持ちよくできる。

●なるほど。今度そういう視点でPANのライブを観てみよう。

川さん:だからそういう言葉はMCで出せるようにしたいなと思って。他の出演者のMCとかも気にかけてて。ちゃんと観ていなくて、誰かが使っていた言葉を間違えて使ってもうたらサムいし。自分らより年上のバンドでもおもしろいMCをやっている人たちもいるし、若いバンドでもMCでおもしろかったりしっかりしたことを言っていたり。色んな意味でMCをしている人はすごいなと思う。

●MCってただ単に笑いをとるだけじゃなくて、ライブの持っていき方みたいな要素もありますからね。

川さん:ある事柄を“そういう風に捉えたんや”とか“そう持っていったんや”とかそういうことはすごく大事。

●リリース後はワンマンツアーが決定していますが、今回はなぜ全部ワンマンにしようと思ったんですか?

川さん:アルバムも3年ぶりだし、できるだけワンマンでPANを観てもらいたくて。今回のツアー、岡山CRAZYMAMA KINGDOMと渋谷CLUB QUATTRO、名古屋CLUB QUATTROはワンマンをやるのは初めてやけど、全部キャパを上げて。これも挑戦で“どうなるんやろ”と思うけど、絶対どうにかはするし、そういう姿勢は発信していたい。“PAN進んでるな!”みたいな。

●PANはここ最近毎年攻めてますね。だからこそ見ていて楽しい。

川さん:“俺らはこういう姿勢でやっている”というのを、色んなところに放っていたい。多分見ている人は見ていると思うし、それがどこかに繋がるかもしれないから。PANは20周年を過ぎても今がいちばんバリバリ現役だと思うし、そのスタンスでまだまだ色んなことを生み出していきたい。

●なんばHatchでやったパンの早食い競争みたいな、特別なことはするんですか?

川さん:よこしんが宙吊りになるとか。

●心斎橋BIGCATとかなら天井高いからできるかも。

よこしん:ジャニーズばりのやつやるか!

川さん:逆に福岡Queblickとかがいいんちゃうかな。天井低いからすぐぶつかるけど(笑)。みんなのスレスレのところを飛ぶ(笑)。

●ハハハ(笑)。例えば「想像だけで素晴らしいんだ」と「大事な言葉」って、セットリスト的には続けてやるんですか? アンコールかな?

川さん:うーん、新譜からの曲だらけだと“うわぁ、新曲ばっかりだな”ってなっちゃうので。例えば『PANJOY!!!』の中で「ギョウザ食べチャイナ」と「想像だけで素晴らしいんだ」とリード曲の「オリジナル」を除いて、あと4曲やるとしたら何を選びます?

●ダントツで「大事な言葉」は絶対に聴きたい。

川さん:「ヨコカワシンタロウの調べ 〜俺はタテじゃない、ヨコだ!〜」は?

●それはCDだけで結構です。CDだけでも満足度は高い。

よこしん:高いんやったらええわ。

●あとは「サヨナラオサラバ」も聴きたいですね。難しいなぁ…。「あと味」も好きなんですよ。あっ、でもそうなるとライブが偏りますね。「想像だけで素晴らしいんだ」はやめとく?

川さん:それもありやな。

●いやそれはあかんわ! 名曲やもん!

一同:ハハハ(笑)。

川さん:まぁそんな感じで悩みつつ、バラエティに富んだセットリストになると思うし、そうやってチョイスしていけば、10ヶ所あるし色んな組み合わせがあるから、凝り固まったセットリストにはならないと思う。

●なるほど。ということは、基本全部変えていく?

川さん:同じってことはないと思う。でも「想像だけで素晴らしいんだ」と「大事な言葉」はキーになってくるだろうな。

●なかなかこういうタイプの曲は少ないですもんね。

川さん:だから逆に映えると思うし。

●そして9月には“MASTER COLISEUM '17 NEO 〜I'll be back ダダンダンダダン〜”も開催されますよね。

川さん:大阪では野外やったのが東京では屋内に変わったりもしたけど、“MASTER COLISEUM”っていう名前がつけば“やっぱマスコロなんやな”と思う。

ゴッチ:“屋内になったら雰囲気が変わるかな”と思って不安だったけど、実際やってみたらすぐその不安は払拭できましたね。

●今後も続けていくつもりなんですよね?

川さん:マスコロっていうイベントはやっぱり続けたいし、バンドとバンドが繋がっていって想いをぶつけてくれるっていうのは、どんなイベントでもそうそうあることではないと思うし。

●そうですね。バンドの想いが見えるイベントって、案外限られていると思う。

川さん:だから最後はああいう雰囲気になるし、そういうところがバンドをやっている醍醐味なのかな。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:室井健吾

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