“メロディーはPOPに。演奏はLOUDに。精神はPUNKに。”を合言葉に2016年から始動した4人組バンド、MAY BEE REACH。2017年3月に1stアルバム『be alive』をリリースして全43本のツアーを敢行した彼らが、そこでの経験も昇華して生み出したのが今回の新作『LET IT BEE E.P.』だ。自分たちが今目指すべきところを明確に見据え、メンバーの気持ちを1つにして生み出した楽曲はポジティブなエネルギーに満ち溢れている。スタートラインから大いなる一歩を踏み出した“四位一体”バンドの旅は、果てしなく続いていく。
●前作の1stフルアルバム『be alive』を去年3月にリリースしてから、全43本のツアーをまわられたそうですね。
TAKUMA:どちらかと言えば前作はこのバンドのために作った楽曲というよりは、僕がこれまで色んな活動を通じて作ってきた曲の中からMAY BEE REACH用に作り直したものが多くて。前にやっていたバンドでもmihoとは一緒だったんですけど、その時に作った曲が主だったんですよ。まず僕の人生の集大成的なアルバムを1枚作って、“MAY BEE REACH”というバンドをちゃんと確立させるためにツアーをガッツリ43本まわったんです。
●作品を出してツアーをまわる中で、バンドを確立させていった?
TAKUMA:ツアーバンドをやったことがあるのはメンバー内で僕だけで、他の3人はまだ“バンド”というものの本当の楽しみ方を知らなかったから。そういうことをツアーで色んな出会いをしていく中で、身に沁みてわかって欲しいなと思っていたんです。“素敵だな”とか“楽しいな”と感じる時の景色が同じであって欲しいというか、みんなが同じ目線を持てたら良いなと思いながらまわったツアーでしたね。
●そこで得た経験が今回の『LET IT BEE E.P.』に活かされているんでしょうか?
TAKUMA:今作に入っているオリジナルの4曲は、去年1年間でツアーをまわってきた中で見えた“MAY BEE REACHは今後こういう方向に行くのかな”という新たな形を表したものなんです。特にM-1「レインボーローズ」はツアーの途中で合宿に入って作った曲なので、みんなの想いを強く入れられましたね。歌詞を書く時もメンバーみんなにインタビューして、“バンドとして大事にしていきたいこと”をテーマに作ったんですよ。みんなの思い入れが詰まった曲にするために“こういう時はどう思う? 何を大事にしているの?”ということを1人1人に訊いて、全員の気持ちに嘘がないようなものになるように意識しました。
●「レインボーローズ」のMVではmihoさんが髪をバッサリ切られていて、前作のイメージからガラッと印象が変わりました。
miho:「レインボーローズ」は特にそうですけど、自分たちとしてもガラッと変えたかったんです。この曲に関しては髪を短くしたほうがイメージに合うのかなと思っていたので、MVを撮るために切りました。
KANEKO:えっ、それがキッカケで切ったんだ…?
miho:そうだよ。
TA2HIRO:今、知るって…(笑)。
●ハハハ(笑)。自分たちでもイメージを変えたいという意識があったと。
TAKUMA:「レインボーローズ」は楽曲のイメージ的に(ボーカルが)長い髪を振り乱して歌うというよりは、ショートカットで清楚で可憐なビジュアルのほうが合うと思って。だから、服装もあえてセミフォーマル的な感じにしたんです。“新しいMAY BEE REACHのど真ん中”みたいな曲なので、それを中心にして今回のEPは作っていきました。
●女性にとって大事な髪をMV撮影のために切るということは、それだけバンドに対する想いが強くなったという表れでは?
TAKUMA:そうなったんですよね。バンドを始めたばかりの頃は「髪を巻いてフワフワにしたい」とか言っていたんですけど、“ライブバンドとしてやっていくからにはこうしなきゃいけない”というイメージがmihoの中でできたんだと思います。
miho:…今も髪を巻いたりするのは諦めていないですけどね。
一同:ハハハ(笑)。
●ツアーを通じて、メンバーの意識も変わったんでしょうか?
KANEKO:変わりましたね。僕は元々、人と接するのがすごく苦手で…。でもツアー先で地方の人たちが一緒に盛り上がってくれているのを見て、すごく楽しかったんです。まだ苦手ではあるんですけど、少しずつ楽しさを覚えてこられたので次回も楽しみですね。
TA2HIRO:僕は加入して2ヶ月くらいでツアーに出ることになったので、最初はまだ心の準備もできていない状態でまわっていたんです。でもみんなと一緒にやっていく中でツアーが楽しいという気持ちもわかってきたし、自分の中でもMAY BEE REACHがすごく大切なものだという気持ちが芽生えてきて。今回は新しい作品を出してツアーをまわることが今から楽しみで、すごく前向きな気持ちでいます。
●ツアーを経て、メンバー同士の関係性も深まったのでは?
KANEKO:そこは“近すぎず”というところを意識しています。
miho:“近すぎず遠すぎず”じゃなくて、“近すぎず”だけを意識しているんだ…。
一同:ハハハ(笑)。
TAKUMA:でも良い距離感でやれているバンドだなとは思いますね。
●年齢もバラバラだそうですが、そこが壁にはなっていない?
TAKUMA:それが逆に役割分担につながっている部分もあって。“この人はこの年齢までこういうことをやって生きてきたからこそ、こういうことをやる”というか。普段のライフスタイルに合わせて、“これはこの人がやれるな”という認識が自然にできているんです。年齢がバラバラだったり、育ってきた環境や聴いてきた音楽が違っていたりすることも全部、良い意味で“裏目”に出ている気がしますね。
●お互いの違いが逆に、良い方向に出ている。
TAKUMA:狙わずして、役割分担ができているようなところがあります。だから、本人たちはよくわかっていないんですよ。僕が裏で考えていることを何となく理解して、1人1人が動けるようになってきている感じがあって。バンドの“脳みそ”は僕の役割だとみんなわかってくれているし、ライブでも“こういう空気の時には誰が前に出たほうが場が盛り上がるか”というのは直感的にわかってきていると思いますね。バカなので、ちゃんと理屈で考えられるような人間たちじゃないんです。
TA2HIRO&miho:そんなことないです(笑)。
KANEKO:そんなことは…あります。
●1人だけ否定せず…(笑)。
TAKUMA:特にKANEKOは“なるほど!”と今、思っていたでしょうね(笑)。自分にとってはメンバーのことを“愛おしいな”と、初めて思えているバンドかもしれないです。そこは歳が離れていることが、逆に功を奏したというか。僕が本気で思ったことを言えば信じてくれるし、逆にメンバーが何か変なことを言ってきても“しょうがねぇな”と思えるような歳の差というか。
●歳が離れているからこそ、お互いをスムーズに受け入れられるんですね。
KANEKO:僕らも尊敬の気持ちを持って、付き合えていますね。同い年のメンバーだけでやっていると、刺激が少なかったりナアナアになっちゃうところもあると思うんですよ。でもTAKUMAさんは叱ってくれたり色々と導いてくれたりするので、そこはすごく勉強になっているなと感じています。
TA2HIRO:自分には見えていないものまで、TAKUMAさんには見えている感じがして。一緒にいて発見することも多いし、すごく楽しいですね。
●女子1人だけですが、変に気を遣ったりもしない?
miho:全然、気を遣われないですね。
TA2HIRO:必要ないもんね(笑)。
●ハハハ(笑)。お互いに気を遣わなくて良いくらいの関係性になれたのも、前作のツアーが大きかったのでは?
TAKUMA:そうですね。僕が20代だった頃はまだ“普段は社会人をやっていて、土日だけバンドをやっている”みたいなのはクソだと思っていたんですけど、今はそういうことが当たり前になってきて。自分たちもそんなスタンスでやらざるを得ない中で、そういうバンドに中指を立てるような人たちにも“あいつらはちゃんとやることをやっているな”と思われて、肩を並べられるバンドでいたかったんです。そのためにやらなきゃいけないことをやってきたので、前回のツアーファイナルを終えた時にはそういう人たちに対しても“どうだい?”って言えるバンドになれたと思ったし、やっとスタートラインに立てたなという気が今はしています。
●そんなバンドの武器としてmihoさんの声はすごく大きな役割を果たしているなと、今作を聴いて思ったんです。どの曲も印象が違うくらい、色んな表情を見せる歌というか。
TAKUMA:そこは意識して作りましたね。
miho:「レインボーローズ」という曲名にもあるように、今回は“レインボー”な感じにしたかったんです。だから、全部の曲で違う印象を与えられるようにしました。
●一方で歌詞に関しては今回「レインボーローズ」とカバー以外の3曲はmihoさんによるものですが、内容的にはどれも通じるところがあるように感じました。
TAKUMA:miho自身は元々、伝えたいことや歌いたいことが明確にはないタイプなんですよ。そういうところもあって、僕が大事にしていることやバンドとして伝えていきたいことを彼女なりの言葉で歌詞にしていくという形で今回は書いていったんです。「レインボーローズ」やM-3「糸」(※中島みゆきのカバー)みたいな歌詞がまず中心にあって、それらにリンクするような歌詞を書いてもらいました。
●mihoさん自身はあまり伝えたいことがない?
miho:ないですね…。今までもそういうことを思って歌うことがなかったんです。自分で作った曲でも、いまいち気持ちが入りきらないというか。ライブで何回か歌っていく中でその都度の景色みたいなものを重ねていって、やっと曲に入れるんですよ。
TAKUMA:こういうことを言っちゃう女性ボーカルって大体は薄っぺらくてキャピキャピしているだけの人が多いと思うんですけど、彼女はそういう生易しい生き方をしてきていないんですよ。実は、この4人の中でも根性が一番据わっているんです。
●生易しい生き方をしてきていないって…。
miho:本能で生きてきちゃいました(笑)。
TAKUMA:具体的には言えないんですけど(笑)、生き方に一番パンチが効いているんです。そういう部分をあまり出していないだけで、きっと腹の中はすごいと思うんですよね。それを言葉にする術(すべ)を持っていないから、“伝えたいことって言われても…?”みたいになってしまうというか。でも“これはダサい。これはカッコ良い”というものは確実にある人なので、そこが面白いですね。
●そういう人だから一緒にやろうと思えたのでは?
TAKUMA:そうですね。前のバンドを解散した時に、僕は「もうバンドはやらない」と言って辞めたんですよ。その後は一切会っていなかったんですけど、久しぶりに一緒に呑みに行った時にmihoが「もう1回、一緒にやりたいです」と言ってくれたところからMAY BEE REACHは始まっていて。「もうやらない」と言っていた僕に対して彼女も相当な覚悟を持って言ってきたんだろうし、自分も“だったら、やるか”という気持ちになれたんです。
●mihoさんの本気を感じたところから、このバンドは始まっているわけですね。
TAKUMA:だから、“死ぬまで続くのかな”と思っていて。他の2人が入る時にもどういう音楽をやりたいかという話じゃなく、“一生続けられるバンドがやりたい”という話をしたんです。さっきKANEKOが“近すぎず遠すぎず”ということを言ったのも、きっとそういうところを大事にしているからこそだと思うんですよ。
●そこまで深い考えがあって言った言葉だと。
KANEKO:そうなんです(笑)。
TAKUMA:みんな、どこかでそういうことは意識していると思います。5年後とかの話もしていますし、良いスタンスでやれているバンドだなと思いますね。
●一生続けることを意識して活動している。
TAKUMA:そのためにはお客さんがずっと0人では続けられないし、他のバンドが追いかけているものはもちろん自分たちも追っていきたいと思っています。でも今からメジャーデビューしてタイアップを取って…みたいなことは望んでいなくて。そうじゃないところで、一生続けられるものを作っていきたいなと。誰か天才が1人いるようなバンドではないので、“四位一体”感が出せれば良いのかなと今は思っていますね。
Interview:IMAI