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みそっかす

最高のフルスイングを求める旅は終わらない。

みそっかすが、通算7枚目のミニアルバム『東洋の神秘』をリリースする。インディーズ復帰後はバンド名をカタカナ表記から元に戻し、着物姿で“原点回帰”をテーマに活動してきた彼ら。それが具現化できていることは、今作を聴けば明らかだ。謎の中毒性を持つグッドメロディとダンスビートは健在でありつつ、10年のキャリアで会得してきたスキルや経験がさらなるフックをもたらしている。どこか新しさも漂わせる“みそっかす”らしい自信作を手に、彼らはまた一歩先へと踏み出していく。

 

「“どうやったらストッパーが外れるのか?”という方法を探すのが今後の課題であり、楽しみでもありますね。とりあえず今作は1stミニアルバム以降で一番、ストッパーがかかっていない作品ができたなと思っています」

●去年7月に名古屋CLUB QUATTROでやったライブのアンコールでメジャーを卒業して、着物姿の“みそっかす”に戻すことを発表したんですよね。そこには原点回帰するという意味もあったんでしょうか?

マイケル:原点回帰するっていうのは決めていたけど、実感は全然湧いていなかったですね。

はるきち:当時は“原点回帰するんだ”という気持ちはありながらも、まだフィルター越しに違う自分を見ている感じというか…。最近になって、ようやく実感が出てきました。

●その後で9月に“メジャー卒業記念! みそっかす インディーズお帰りワンマン!”を開催しましたが、その頃もまだ実感がなかった?

はるきち:その時にようやく戻ってきた感じがありましたね。外からは“ガラッと変わるんだろうな”っていう見方をされていたんでしょうけど、自分たち的には衣装が変わって名前の表記が変わっただけで、気持ち的には何も変わらなくて。

●“原点回帰”をそこまで強く意識していたわけではないんですね。

はるきち:一応、“原点回帰”というテーマを打ち出してはいるんですけど、何なら僕らはずっと1stミニアルバム(『三次元からの離脱』/2011年)が好きで。これまでのアルバムも常に、あれを目指して作っていたんです。だからメジャーに行ってから作ったアルバムについてのインタビューでは、毎回“原点回帰です”と言っていた気がしますね(笑)。

●前作の『ダンシングモンスター』(2ndフルアルバム/2017年)のインタビューでも言っていました(笑)。

はるきち:前作もそうでしたね(笑)。曲の作り方や歌詞の雰囲気だったり、色々と1stミニアルバムを作っていた頃のことを思い出してはみるんですけど、やっぱりあの初期衝動感は出せないというか。あそこをメジャーの間もずっと求めていた気がして…、そういう意味ではブレていなかったのかな。

●目指すところはずっと変わっていない。

はるきち:でも今回は自分たちが言い張っているだけじゃなく、着物に戻ったし、名前もひらがなに戻ったし、MVも当時の監督と一緒に作ったし、音的にもここ最近で一番“原点回帰”しているんじゃないかな。

●音的に原点回帰している部分とは?

マイケル:たとえばファズとか、エフェクターをまた色々と使うようになりましたね。

はるきち:前作でもキーボードを1stミニアルバムの制作当時に使っていた音色にしたら、ピンときたところがあって。歌詞もメッセージ性を追い求めてみたり、カッコ良い歌詞を書いてみたり、色々やっていたんですよね。でも一番しっくりきたのはある程度テーマを決めて、“語り部”的な感じで物語調に書く方法で。やっぱり僕は自分のパーソナルを歌詞に映すっていうことが苦手なんだなって、よくわかりました。

●主観で歌詞を書くのが苦手だとわかった。

はるきち:それよりも第三者的な目線で書いたほうが、逆に自分の感情が素直に出せるんだろうなって気付きましたね。そういうのは前作からやっているんですけど、今作はそこに加えて昔みたいにみんなでスタジオに入って曲作りをしたり、ファズを多用したりして。あとは、ノブリル(G./Cho.)にあんまりギターを弾かせないっていうこともやりましたね(笑)。

●それはどういう理由で?

はるきち:メジャー期は、ノブリルがバンドをすごく引っ張ってくれていたんです。彼の求めているものって、わりとストレートなんですよ。そういう要素も必要なんですけど、そこがあんまりメインになってくるとカッコつけすぎちゃっている感じがして、ちょっと違うなと思って。

●今の自分たちが求めているものと違っていた?

はるきち:ノブリルのギターって、ポップなんですよ。でも僕ら的に今回は、ソリッドで破滅的な音が良いなと思っていて。だからノブリルに頼んで、ハーモナイザーやファズやトレモロとか、色んなエフェクターを使ってもらったんです。

●ソリッドで破滅的な音を求めていたんですね。

マイケル:“破滅的な音を!”とよく言っていましたね。あとは“どっちがカッコ良いか?”っていう話も今回は多かったです。

はるきち:メジャー期は“どっちが良い曲か?”とか“どうしたら良い曲になるか?”という考え方だったんですけど、今回は“どっちがカッコ良いか?”ということを基準に考えました。“良い曲”と“カッコ良い曲”って、ちょっと違うと思うんです。以前は“どっちのほうが曲としてまとまるのか?”と言って、整合性ばかり求めていた気がして。でも今回はそうじゃなくて、“どっちのほうがカッコ良いか?”で選べたなって思います。

●“カッコ良いほうを選ぶ”というのも、ある意味では初期衝動的なのかなと。

はるきち:そうですよね。でも理詰めでやってきた経験も、マイナスっていうわけではなくて。今は無意識のうちに整えるようになっていると思うんですよ。昔、直感的に作ったものなんて、もう崩壊していたから(笑)。今回の曲がそんな無茶苦茶なものにならなかったのは、理詰めの部分と衝動的な部分のバランスが良かったからという気がしています。

●色んな経験を経ての今だから、こういうバランスの作品が作れた。

はるきち:名前をひらがなに戻したり、着物をまた着たりって、周りから見たら大きなことかもしれないですけど、僕ら的にはあまり大きくない気がしていて。でも自分にとっての小さいことも、意外と楽曲には反映されていたりするのかなって思うんですよ。たとえばM-1「切り札はスペードのエース」は1stミニアルバムに入っていた「切り札はハートのエース」の続編みたいな曲なんですけど、これはインディーズに戻ってからの第1作目(※シングルを除く)だからこそやれたのかなと思うんです。

●というのは?

はるきち:この曲をもし私服のままやっていたら、しっくりこないのかなという感覚はあって。他にも今作は、元に戻ったからこその曲が結構ありますね。M-7「都会のクリスマス」も、2ndミニアルバム『異次元からの来訪者』収録の「都会のシンデレラ」の主人公のその後を描いた感じで、アンサーソング的な部分もあるんです。

●初期の曲の続編やアンサーソングをやれているのは、本当に原点回帰できているからこそというか。

はるきち:そうですね。原点回帰できていない時って、必要以上に“原点回帰”と言っていた気がして。今は本当に原点回帰できているから、自分ではあまり言わないんだと思います。名前をひらがなに戻して1作目のミニアルバムですけど、あんまり肩に力を入れずに作れたような気がしているし、本当にいつも通りというか。

●肩に力が入っていない?

はるきち:良い意味で、力が抜けているなという感じで。自分としては“この1枚に懸ける”というよりも、ここから“その先”を見ている気がしています。

マイケル:これは個人的なことなんですけど…、今までメインコンポーザーだったノブリルがインディーズに戻った時に落ち込んでいたんですよ。だから“今、潰すしかない”と思って(笑)。そういう力の入れ方はしましたね。

●“今、潰すしかない”って(笑)。

はるきち:マイケルはノブリルに対するライバル心がすごくて。でもノブリルにはこれまで全然、相手にしてもらえていなかったんですよ。

マイケル:良い意味で、ライバルというか。全く相手にされていなかったけど…。

●今回は相手にしてもらえたんですか?

はるきち:最終的に曲を採用するか決めるのは僕なんですよ。そういう意味で今回はマイケルが作った「都会のクリスマス」が採用されたので、本人は満足していると思います。あと、M-5「ディスコエクスプロージョン」はノブリルが半分以上書いているんですけど、イントロのリフとかはマイケルが中心になって考えていて。…これはマイケル的には勝っているの? 負けているの?

マイケル:負けたとは思っていますけど…、ちょっとノブリルが悔しそうなのが良かった。

●何ですか、それ(笑)。

マイケル:そういう競い合いみたいなものも、メジャー期にはあんまりなくて。昔は“このフレーズを消しましょう”という意見が出たり、“これは俺がこういう曲にしたいんだー!”と言ってブルマン藤井(Ba.)が急にメタルに変えちゃったりということもあったんですよ。今はその頃に戻った感じがしますね。

●それは心境的な部分で?

マイケル:気持ち的なところで、どこか子どもに戻った感じというか…。

はるきち:学生ノリ?

マイケル:そう! そんな感じです。

●学生ノリに戻ったんですか?

はるきち:初期のみそっかすって、学生ノリがすごく強くて。今もわりと強いほうだと思うんですけど、そこに戻そうっていうのはありました。年甲斐もなくはしゃぎたいというか。今回はちょっとそういう感じを出せたかなって思います。

●良い意味での学生ノリを出せたのが良かった。

はるきち:学生ノリってたぶん悪い部分のほうが多いと思うんですけど、僕らに限っては良い部分のほうが多かったんですよね。“歳も食ったし、ちゃんとしよう”っていう想いよりは、“歳を食ったからこそ、ノリで行こう”みたいな気持ちのほうが今は強くて。今作でいうと学生ノリが一番出たのは「切り札はスペードのエース」かなって思います。一番、何も考えずに作りました。

●学生ノリが一番良い方向に出ている曲だと。

はるきち:今作で一番最後に作った曲なんですけど、「切り札はスペードのエース」っていうタイトルもちょっと前なら付けていなかったかもしれないですね。

マイケル:“安直だ”とか言ってね。

はるきち:“こんなのはアートじゃない!”とか言って(笑)。でも自分たちの曲は“アート”じゃないですからね。

●自分たちの音楽がアートじゃないと言えるようになったのも大きいのかなと思います。

はるきち:そうですね。アートを追い求めていたところはちょっとあったから。アートとして音楽を出せているアーティストを見て“カッコ良いな”って憧れながらも、どこかで“俺らには向いていないし、無理だな”って諦めていた部分もあって。諦めたからこそ逆張りでいくというか、“アーティスト感なしでいこうぜ!”と言えるようになったんだと思います。

●逆に振り切れている?

はるきち:でも“フルスイングできたか?”って言われたら、まだできていないですね。今回は“どこまで調節しながらフルスイングできるか?”っていうところを考えていて。きっとフルスイングありきでアルバムを作るのって、もうできないんですよ。調整しちゃう理性がありながら、どこまでフルスイングできるかの勝負になってくると思うんです。

●無意識にバランスを取ってしまうので、フルスイングしきれない。

はるきち:だから、次はどこまで理性を取っ払えるかの勝負というところがあって。そういう意味では、最後に書いた「切り札はスペードのエース」は一番ストッパーがかかっていないんです。〆切直前だったのもあって、個人的には良い意味でフルスイングできたなって思うし、そこに次へのヒントをもらえているかなっていう気がしますね。

●全曲その感じで作れたら、次作はもっとすごいものになるという予感もあるのでは?

はるきち:そうですね。毎回アルバムを作る度に、そこからヒントをもらっていて。今回は“次はもうちょっと理性を外していこう”みたいなところでした。1stミニアルバムに憧れてはいるんですけど、あんなフルスイングは一生にあと1回できるかできないかだと思うんですよ。でもどこまでそこに近づけるかっていうところで、“どうやったらストッパーが外れるのか?”という方法を探すのが今後の課題であり、楽しみでもありますね。とりあえず今作は1stミニアルバム以降で一番、ストッパーがかかっていない作品ができたなと思っています。

●よくわかりました。マイケルも最後に何か言っておきますか?

マイケル:では未来の子どもたちに向けて…、“夢を持て”ってテレビや世の中は言うんですけど、持ったら持ったでつらいので堅実に生きて欲しいなっていうことだけを伝えられたらと思います。

●…うん。じゃあ、カットしておきますね(笑)。

一同:ハハハハハ(爆笑)。

はるきち:ひどいな(笑)。でもマイケルはフルスイングできるんですよ。今のも絶対にスベるって、言う前からわかるじゃないですか。

●確かに。普通はスベるのが怖くて言えないですよね。

はるきち:でもマイケルは言えるんですよ。だから、彼にも毎回ヒントをもらっていますね。

Interview:IMAI
Assistant:平井駿也

 

 
 
 
 

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