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ABSTRACT MASH
7年の間、色褪せずにずっと輝き続けてきた4人の想いが、音楽として再び鳴り始める。村松・梨本・榊巻の3人に話を訊いた。

色褪せずに輝き続けてきた4人の想い

今年1月、自身のTwitterにてNext Liveを発表したABSTRACT MASH。2004年に地元千葉で結成後、心象風景を鮮やかに描き出すエバーグリーンなロックを鳴らし、2枚の作品をリリースした後、2011年5月に活動を休止した彼ら。そんな彼らが、この7年間どのような想いを抱いていたか。どのような経緯で活動再開に至ったのか。彼らが大切にしているものは何か、鳴らす音楽にはどのような想いと衝動が込められているのか。7年の間、色褪せずにずっと輝き続けてきた4人の想いが、音楽として再び鳴り始める。村松・梨本・榊巻の3人に話を訊いた。

 

「4人で音を出してライブを出来ることがどれだけ素晴らしいことなのかって。その部分を抜きにしたらこのバンドの存在はもともと無かった」

●今年の1/27にTwitterの“Next Live”というつぶやきで活動再開を発表したABSTRACT MASHですが、休止したのは2011年の5月でしたよね。そもそも、どういう経緯で休止したんですか?

村松:大阪でライブをやったときに俺が言い出しました。

梨本:2010年12月の大阪のライブのときでした。1stアルバム『Inside the running subway』を2010年3月にリリースして、ツアーはもう終わっていて次の準備をしようという段階だったんです。

村松:その頃、「今の実力だと観に来てくれるお客さんの期待に応えられるものにならない」という話を散々していたんです。ライブの魅せ方や演奏力とか。要するに、もうちょっとストイックにやりたいと。そこで「それぞれ成長して、お互いに“出来るね”というタイミングが来たらまたやろう」という約束で休止したんです。

梨本:続けられる方法をみんなで話し合って探したんですけど、最終的には「無理だね」と。

榊巻:確か1月くらいまで話し合っていた気がする。

●そうだったんですね。

村松:チグハグになってしまったんでしょうね。そもそもABSTRACT MASHは楽しくやるために集まったバンドだったんです。俺たちは雄剛(小林)が書く曲が大好きで、そこに俺たち3人がそれぞれ歌ったり演奏したり。良し悪しを誰かが決めるというわけでもなく、自己満足的なところでやっていて。“色んな人に観てもらいたい”という気持ちはあったけど、自己プロデュース的にバンドを大きくしていく作業もしてこなかったし、自主企画のイベントをやって自主で録ったCDを出すけど、次のライブは告知してないとか(笑)。

●ハハハ(笑)。そもそも、バンドのスタートが“楽しければいい”みたいなノリだったんですか?

村松:それもよく覚えてないくらいなんですけど(笑)。

梨本:俺と雄剛が女性ヴォーカルのバンドをやっていたんですけど、それが終わって。「次は男性ヴォーカルのバンド組みたいね」と言っていたときに、地元が同じ2人(村松と榊巻)を思い出してコピーバンドをやって「いいじゃん! ライブしようぜ!」みたいな感じで始まったんです。

榊巻:あれ何歳くらいだっけ?

村松:21歳くらいかな。俺はいちばん最初に就職していて、俺以外の3人はずーっとバンドをやっていたんです。雄太はハイキックスというパンクバンドをやっていて、雄剛とナッシー(梨本)がやっていたバンドもライブハウスに推されているバンドみたいになっていて、俺からしたらキラキラして見えて。そんな3人に誘ってもらったから“本気でバンドやってみようかな”という感じではあったんです。オリジナル作って何本目かのライブで千葉LOOKのオーディション受けて…それは本当に普通のことなんですけど…でも俺たちからしたら千葉LOOKは聖地だから、オーディション受かっただけで「俺たち世界一だな」っていう、バカみたいなノリで(笑)。

梨本:アハハハ(笑)。本当にそうだったね。

村松:そういうノリが最後までずっと抜けきれなかったなっていう感じはありましたね。

●そういうノリでやっていく中で、拓さんは別の世界(Nothing's Carved In Stone)を経験したことによって、比較したのかもしれないですね。

村松:比較しましたね。2つのバンドの活動を100%乖離させるのは絶対に不可能だと思ったし、Nothing's Carved In Stoneを始めたときに“俺がもともとやっていたABSTRACT MASHにいい影響が出るかもしれない”ということも当然考えるじゃないですか。

●はい。

村松:ABSTRACT MASHもNothing's Carved In Stoneもそれぞれのフィールドがあって、当然全くの別物なんですけど付随して一緒に動いてくれる仲間も周りにはいっぱい居て、その人たちの期待に応えられる活動もしなきゃいけない。Nothing's Carved In StoneをきっかけにしてABSTRACT MASHのライブに来てくれた人が居たとして、違うフィールドだったとしても同じくらいのクオリティは出さないとすぐに飽きられるだろうし、「こりゃダメだ」と思うだろうし。当時はそのバランスが取れなかったです。

梨本:ずっとそういう話をしていて、“どうしたらいいんだろう?”って悩んだ時期は結構長くて。でもこのバンドのすごくおもしろいところなんですけど、そういうことに関して誰も怒らないんですよ。拓がやっているNothing's Carved In Stoneからも刺激を受けるし、「休止したい」と言ったときも「ふざけんなよ!」とはならない。

村松:うん。みんな前向きだったよね。

榊巻:ネガティブな感情をバンドの中でぶつけるようなことはしなかったね。

●それは…榊巻さんと拓さんが中学からの知り合いで、榊巻さんが同じ高校の小林さんと梨本さんに紹介した、という4人の関係がまず最初にあったわけじゃないですか。“バンド仲間”というより、“仲間”から始まった関係だからなんでしょうか?

榊巻:うん。本当に毎日ほぼ一緒に居るような4人なんですよ。拓が一人暮らしを始めたらそこにみんなが入り浸る。俺、たしか1週間くらい居たことある。

●ええっ!!

村松:海外ドラマの『24 -TWENTY FOUR-』って実際に24時間かけないと1つのシーズン観れないじゃないですか。俺、雄太と一緒にシーズン2のケツまで観ましたもん(笑)。

梨本:アハハハハハ(笑)。

●そもそも仲がいいんですね(笑)。ところで2011年の活動休止以後、拓さん以外の3人はそれぞれ何をしていたんですか?

梨本:俺は別のバンドを組んだり、サポートでベースを弾いたりして、ずっとバンドマンをやってきました。

榊巻:僕も仕事はしながらずっとバンドマンをやっていて。“再び4人で集まって音をぶつけたときに、それにふさわしい男でいなきゃいけない”とずっと思っていて。だから“拓がやったことがないことをやってみよう”と思って、海外にライブをしに行ったりとか。

梨本:すごい本数まわってたね。

榊巻:人の力を借りてなんですけど、知り合いが海外でバンドをやっていて、そのサポートでアメリカやヨーロッパツアーに行ったりしていたんです。

●Nothing's Carved In Stoneの拓さんはずっと観ていたんですか?

榊巻:僕はしばらく観てないですね。悔しいので。

●お。悔しいですか?

榊巻:だってかっこいいんですもん。CDで聴く分には“かっこいい!”と思うんですけど、ライブは…“拓の後ろには俺が居るべきだ”とかは思わないんですけど…なんで悔しいんだろうな?

村松:わかる。俺と雄太は最初AGENT ORANGEっていうバンドを一緒にやっていて、全然大したバンドじゃなかったんですけど、「先輩に誘われたから」と言って雄太はハイキックスに加入して、突然全国レベルのツアーに行くようになるんです。そのとき俺はすごく嫉妬したんです。(榊巻がNothing's Carved In Stoneを観るときも)そういう気持ちだと思うんですよね。

榊巻:うん。なんか悔しい。

●なるほど。

村松:あと、ABSTRACT MASHでいちばん最初に作った「広げ拾って」(デモ音源『re...』収録)という曲があるんですけど、雄剛とナッシー(梨本)の2人が当時やっていたバンドで「広げ拾って」に似たようなコード進行とギターフレーズの曲があって、ライブを観に行ったらその曲を超楽しそうにやっていて。“ABSTRACT MASHの「広げ拾って」じゃねえかよ!”と思って、俺はキレて帰ったんです。

一同:アハハハハハハ(爆笑)。

村松:そういう気持ちはずっとあるんだろうなと思います。

●梨本さんは?

梨本:関東のライブはだいたい観に行ってるんですけど、“悔しい”とか嫉妬は無かったんですね。一緒にバンドやりたいし一緒にライブをやりたいという気持ちはずーっとあるので…。どちらかと言うと、自分がやっているバンドが上手くいかなかったり、もらっていた仕事が無くなったりするたびに、音楽に対するモチベーションがどうしても下がってしまう。そうすると逆にNothing's Carved In Stoneのライブを観に行って“やってやるぜ!”となりますね。

●なるほど。そしていよいよ来月に活動再開をするわけですが、再開まではどういう経緯だったんでしょうか?

村松:前提として、誰が言い出しても良かったんですけどやっぱり休止したきっかけは俺だから、再開も俺が言わないといけないだろうなと思っていて。みんなの“やりたい”という気持ちはわかっていたし、俺もやりたかったし。やらないと出来ないし、続けなかったことを後悔している気持ちも半分くらいあるし。俺がずっとやりたかったABSTRACT MASHについて、アイデンティティがどこにあるかずっと考えてきたんです。その結論としては、もっと自由でよかったのかもなっていうところで。

●もっと自由でよかった?

村松:4人で“このラインまで成長したらABSTRACT MASHをやりましょう”と約束して休止しましたけど、その考え方もずいぶん変わったんですよね。自信も付いてきたし、自分が出来ることの幅も広がった。メンバーに求めていることとメンバーから求められることのバランスも、その時々によって変えることが出来るなと思ったし。それに、観に来てくれる人たちの気持ちに応えるというのはどういうことなんだろう? というところの考え方も変わってきたんです。

●うんうん。

村松:クオリティの高さはもちろん自分たちの中で上げるべきだし、自分たちの中で曲を好きになれるラインをより高く持ち続けるべきですけど、ABSTRACT MASHに関しては、俺たちは幼馴染なので“幼馴染でバンドをやっている”ということがいちばん大事なんですよね。俺たち以外のメンバーでは絶対に出来ないっていうこと。4人で音を出してライブを出来ることがどれだけ素晴らしいことなのかって。その部分を抜きにしたらこのバンドの存在はもともと無かったということに気づいて、“だったらもう今すぐやった方がいいな”と思って、正直に3人に「やりたいんだけど」と言いました。

梨本:去年の秋頃だったね。拓がそう言って、みんな「いいね」「やろう!」って。

●活動休止前と同じ鮮度で、4人が“やりたい”と思えること自体が素晴らしいですね。

梨本:それが簡単なことじゃないなということは、最近周りのバンドとかを見ていて気づくんです。

●今回の取材にあたって過去2作を改めて聴いたんですけど、ABSTRACT MASHの音楽には時代とか関係なく色褪せないものがありますね。

榊巻:僕はナッシーが活動休止するときに言っていたことをずっと覚えてるんですけど、「俺たちがやっている音楽は40歳になっても50歳になっても出来るから、このタイミングで止めてもいいんじゃない」って。それがずっと印象に残ってる。

●エバーグリーンな感じもあるし、エモーショナルなんだけど音楽に乗せてケセラセラを歌うというか。

村松:雄剛が書く曲はそうなんですよ。俺たちが影響を受けているのは、ヘヴィロックとかに影響を受けているような複雑なエモじゃなくて、Copelandや当時のピアノエモだったりとか、ギターロックのLast Days of AprilとかJack's Mannequinのような、明るいエモっていうか。あとはUK、シューゲイザー、轟音であり歌メロありみたいなバンドとか。最近はそれぞれ幅が広がってますけど。手本にするのも、どっちかと言うとステージの中で完結するようなバンドの方が多かったんです。熱くなっていることは見せるけど、お客さんを煽って引っ張っていくようなタイプではない。
 
 
 
 

 
 
 
 
●こういう音楽をやっているバンド、あまり他に居ないですよね。

梨本:それ、つい最近ライブハウスの人にも言われました。「結局、後輩が育たなかったね」って。

一同:ハハハハハ(笑)。

村松:結局、俺たちは小林雄剛が作る曲が好きなんです。それを細かくアレンジして、こねくり回して作るのも好きじゃない。

榊巻:“雄剛が作ったものだから間違いはない”みたいなところはあるかもね(笑)。

梨本:更に、拓が歌詞を書けばかっこいいし、雄太が叩けばかっこいい。音楽以外の部分でも、例えば俺がツアーを組んだら誰も文句言わないし。そういう信用と信頼が異常なまでに強いバンドだと思います。

●そういうことですか。

梨本:俺は今ライブハウスで働いているんですけど、バンドがメンバー全員で一緒に入ってきて、楽屋ではメンバー全員が固まって居て、打ち上げではメンバー全員が固まって座って…そんなバンド居ないからね(笑)。

村松:フフフ(笑)。

梨本:それが普通ではないことに気づいていなかった。

村松:うん。本当に全然気づいてなかったね(笑)。

●再開に際して、久々にスタジオに入ったのはいつ頃なんですか?

梨本:昨年末くらいですね。拓から「やろう」という話があって、1回みんなで飲みながら話をして。その翌月くらいにスタジオ入って。すげぇ楽しかった。

村松:楽しかったね。

榊巻:7年ぶりくらいかな。最初は“合わねえな”と思ったんです。それは各々が感じてたと思うんだけど。

梨本:それぞれ違うメンバーでやっていたからね。でも2〜3時間で合っていくという。

村松:やっぱりそれぞれのクセも変わってないんですよ(笑)。でも“これがよかったな”と思い出していく感じ。俺は歌いづらいのが気になっちゃう時があったり、ちょっとクセを感じると「変えてくれよ」って強く出たりしちゃうことがあって、当時はそれがよくなかった。お互いのいいところを伸ばしていくというか、“それがABSTRACT MASHのいいところだよな”と思って。その方がバンドしてて楽しいなと。ストイックに削って削って、洗練させていくっていう作業のやり方…要するに否定していく方向だと、このバンドは伸びないということがわかった。それがこのバンドで音楽を作るということかなと。

●5月の2本のライブ、楽しみですね〜。

3人:めちゃくちゃ楽しみですね〜。

村松:千葉LOOKはさっきも言ってたように俺たちにとっては聖地で、O-WESTはABSTRACT MASH史上最大キャパのライブハウスで。自分たちの足元をちゃんと見て活動を再開したくて、その2箇所にしたんです。

●こんな話を聞いた後でライブを観たら泣いてしまうな〜。

一同:フフフ(笑)。

村松:周りにも思わぬ理由で活動休止しちゃったバンドがいっぱい居て、俺も再開を待ってる1人なんですよね。だから…これはナッシーのアイディアなんですけど…今でもTwitterでABSTRACT MASHをフォローして待っててくれた人たちにまず伝えたかったんです。そこからまた始めようって。

Interview:Takeshi.Yamanaka

 

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