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それでも世界が続くなら

それでも世界が続くなら ALL TIME BEST ALBUM 2011-2018『僕は音楽で殴り返したい』 セルフライナーノーツ

 

まえがき:

ジャングルライフの今井くんに、ライナーノーツをお願いされて、悩んでいる。
僕は、自分の曲の内容について話すのは野暮だと思っている。歌うだけじゃ伝わらないなら、補足しなきゃ伝わらないなら、自分のせいだ。ただそれだけ。
それが自分だとしたら、無理に伝わらなくて構わないと思ってる。
言い訳もいらない、誤解なんてされてするのが当たり前、僕の音楽を聴いてくれた人が思ったことが、君が思ったことが、僕の全部です。
って思ってるから、野暮にならない程度に、自分を振り返る為の日記程度に文章を書こうと思うので、それで許してほしい。

1、参加賞
この日のレコーディング、なんか体調が悪かったんですけど、翌日、病院行ったらインフルエンザでした。話しても歌っても、俺は空っぽの感覚で、せめてここにいたって参加賞くらい欲しかった。でも、そうやって待ってても、誰も何もくれないよ。俺も君も、もう充分です、優しくなるのは。

2、水色の反撃
あんなに辛いことがあったのに、君が今日も泣かないでバイトに行く。誰にも言わずに笑っている。それが悔しくて泣いてしまった。いやおかしいだろ、代わりに俺が泣いてどうすんだ。お前が泣けよ。30分で、殴り書きの手紙みたいに書いた曲です。

3、弱者の行進
誰が「強い」とか「弱い」とか、僕はあんまり好きじゃない判断基準で。「だからなんなんだ」と。どんなレッテルを貼られても、それで君や俺の中身が変わるわけじゃない。「弱者」だとか「辞めろ」とか「死ね」と言われた僕らが、生きて、今日も家を出て、駅まで歩き出す。先生、あんた偉そうに語るけど、あんただってびびってる。強くなれって、強くなってどうすんだ、戦争でもすんのかよ。弱いなんて、誰だってそうだろ。あんただって。

4、狐と葡萄
久しぶりに読んだ童話の中で、「あの葡萄はどうせ酸っぱかったんだ 」って。まるで「俺はダメだ」とか「どうせ上手くいかないよ」って、知ったように人生を語る僕らみたいだ。「死にたい」と言った君が、まるで「生きていたい」と言っている様に泣いていた。欲しいなら欲しいって言えよ。それは「死にたい」んじゃなくて、「うまく生きたかった」んだろ、だったら「生きたい」って言えよ。

5、響かない部屋
僕、自分の話するの嫌いなんです。苦手っていうか。人間って、基本的に他人の話にあまり興味ないものだと思っていて、つまんない俺の話するのは相手に迷惑だと無意識に思ってしまうんですけど、この曲を自宅で歌った時、涙が止まらなくて、これを人前で歌わないのは嘘になっちゃう気がしたんです。

6、スローダウン
「もう少しだけ頑張って生きるから、来年の誕生日には死なせて」って言われた時、「ダメだろ」って言ったんですけど。そんなこと言える俺はやっぱり何もわかってなくて、だからみんな遠いんだなと。後でこんな曲にするんじゃなくて、あの時のこと、謝りたかったですよ俺は。

7、一般意味論とアリストテレス
「愛してる」も「死ね」も、結局はただのあいうえおの羅列のはずなのに。例えば、「僕は嘘つきだ」って僕が言ったとして、その言葉が嘘なら、僕は嘘つきじゃないことになるじゃないですか。僕は、言葉よりも行動を信じたいんです。

8、優先席
電車に優先席ってあるじゃないですか。誰かに言われてルールがないと、人に言われないと、僕らって譲り合えないんですかね。法律がどうとかいう人いますけど、法律になかったらなにしてもいいんですかね。

9、自殺志願者とプラットホーム
いまのところ、俺が作った曲の中で、たぶん一番美しい曲で、一番ハードコアな曲です。ライブに来てくれて手紙を渡してくれた君、俺はきれいだと思ったんだよマジで。

10、奇跡
「人には2通りいて『奇跡なんてない』って思う人と、『全てが奇跡』って思う人がいるんだ」と誰かが言ってて。俺は、なんとなく「奇跡なんてない」と思ってたんですけど、僕の歌を名前も知らない人が聴いてくれる、もうそれは俺にとって奇跡みたいなもんで、俺は奇跡を目撃してるじゃないですか。俺、バカなんですよたぶん。

11、正常
この曲の意味がわからないなら正常です。解ってもらう気がなかったので。「伝わらないのは、そもそも言わないからだよ」を地で行く感じの。作った時、泣きながら一人で爆笑しました。なんだよこれ、こんなんで俺バンドやる気かよ、嫌ならちゃんと言えよって。

12、この世界と僕の話
何が正しいとか、何が間違ってるとか、俺にはわかんないんですけど、ただ俺は嫌いだな、って思ったんです。好き嫌いって、いいですよね。それ正しいとか言われないんで。俺はこの世界が嫌いです。

13、シーソーと消えない歌
「終わらないでほしい」「死なないでほしい」「辞めないでほしい」。僕のバンド、活動中止するんですけど、そりゃまだ歌いたいですよ。でも表裏一体ですよね。なにもかも終わるからこそ、君の痛みも終わるわけで。理不尽さだけが僕らの平等。思い通りにはいかないですね。君の癖の、その悪い想像ですら。「よかったじゃん」って、泣かないで言えるようになりたい。

14、11月10日
僕のおじいちゃんが、誕生日直前に亡くなった。柄じゃないけど、誕生日には祝いに帰るよって俺と約束をしたまま。父親がいない僕の父親代わりみたいな人だった。葬儀の日、同じ約束をしたまま死んだ友人のことを思い出した。歌にするんじゃなくて、俺はもう一回、話したかったな。

15、成長痛
「痛いけど、成長痛」僕の中学時代の暗示でした。ジャンプの読みすぎかよ。歌になって、CDになって、中古ショップに売られたりするわけで。出会いと別れ、と呼ぶにはあまりにも陳腐だけど、なんていうか、あの時は聞いてくれて、ありがとね。

16、Re:僕がバンドを辞めない理由
自分が歌おうと思った時、音楽のことだけ考えてなかったんです。俺の曲を聴いた人のその後のこと、その後の俺のこと。「もう終わりだ」、「俺にできるはずなかったんだ」、なんて何言ってるんすかね俺。アホかよ。まだ、始めてもいないくせに。

あとがき:
ごめん、長くなった。書いてみて思ったんだけど、やっぱ野暮だなと。ジャングルライフ今井くん、誘ってくれてすごい嬉しかったんだけど、やっぱ俺こういう自分語りするみたいの苦手だわ。読み返すの辛い。全部消したい。でも、誘われて嬉しかったよ。今井くん、読んでくれたみんな、ありがとう。俺的にはワーストアルバムっていうか黒歴史みたいなもんだけど、俺なんかでもベストアルバム出たので、「こんなやつもいるんだ」位の感覚で聴いてもらえたら嬉しいです。8月には新しいアルバムだすから。その時まで、またね。

Vo./G. 篠塚 将行

 

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