音楽メディア・フリーマガジン

バレーボウイズ

いつまでも終わらない夏休みが、この音の中では在り続けている。

ノスタルジックで歌謡ライクなメロディと歌のハーモニー、哀愁を帯びたギターで青春の響きを“合唱”のスタイルで聴かせる男女混成グループ、バレーボウイズ。メンバーの内5人が京都精華大学出身で、自由でハッピーな独自の空気を持つ彼らが、新作をリリースする。2017年夏に発表した完全自主制作盤『なつやすみEP』をバージョンアップさせ、新曲も加えたものが今回の『なつやすみ’18 猛暑』だ。どこかで聴いたようでいて、他に類を見ない不思議な音を奏でるメンバーの源泉に迫る1stインタビュー。

 

「時間の流れ方が全然違うし、使い方も全然違うから。でも自分たちにはこれが“日常”やから、違いはよくわからないんですよ」

●音楽性とあまり直結していない気もするのですが、そもそもバンド名を“バレーボウイズ”にした由来とは…?

流星:まだバンドを始める前に僕とネギちゃんが一緒に遊んでいた中で、リサイクルショップを巡っていたことがあったんですよ。そこで『工業哀歌バレーボーイズ』(※原作・村田ひろゆき)のDVDを見つけて、“(主人公たちが)こいつら、全然バレーをやってないやん!”みたいな話ですごく盛り上がって…そこから付けた感じです(笑)。

●元ネタは『工業哀歌バレーボーイズ』なんですね。

流星:バレーをやっているわけでもなく、ただエロいことばかり考えているような学生のお話なんですけど、そういうノリみたいな部分が自分たちにも通じるところがちょっとあるんじゃないかなと思って。

ネギ:僕らとやっていることが一緒というか…。別にあの“バレーボーイズ”と同じことをやっているというわけではなくて、登場人物の人間性や作品の雰囲気が自分たちに近いなと思ったんです。

●M-7「卒業」でも“いつまでたっても 大人になれやしねぇぇえええ!!!”と歌っていますが、“大人になりきれない”感覚は『工業哀歌バレーボーイズ』の登場人物に近い気がします。

流星:後付けで、そういう意味合いも含まれているのかなと。語呂も良かったし、自分たち的にしっくりきたんですよね。だから当時は本当に軽いノリで付けたんですけど、そのまま今に至っているんだと思います。

ネギ:ホンマに嫌やったら、バンド名にしないですからね(笑)。

●確かに(笑)。気の合う仲間と一緒に楽しみながら音楽をやっている感じが、バンド名にも表れているのかなと。

流星:本当にそれでしかないというか。そういう感覚のまま、今に至っています。だから、僕らはいまだにわからないことが多いんです。

●わからないこと?

ネギ:“バンドとはこういうものだ”といった考えが、僕らの中では通用しないんです。元々が“バンドマン”じゃないから。やっていく中で“ここはこうしたほうが良い”ということは気付いてきたんですけど、他のバンドを参考にすることはあまりないですね。それぞれが気付いて、今の体制を作ってきたという感じで。最初は練習日もバラバラやったんですよ。

流星:元々は、スタジオに入ることすらも嫌がっていたから。スタジオへ集まっても1時間ずっと喋っていて、なかなか練習が始まらないっていう(笑)。だから“もう全部、家でやっちゃおう”みたいな感じだったところから、徐々に変わってきましたね。

●M-8「タイトルコール(チャッキーの家ver.)」には、メンバー同士でいる時の雰囲気が出ているのかなと思ったんですが。

ネギ:僕らの中では、あれが“ありのまま”やから。初期は本当にチャッキー(※G.高山)の家で練習していたので、その時の雰囲気を閉じ込められてはいるかなと思います。その時の“僕ら”を今やったら、こうなるという感じですね。

流星:(過去の作品でも)ボーナストラックを色んなところで録っているのは、そういうものを形に残しておきたいという気持ちもあるからで。チャッキーと僕は一緒に住んでいるので、僕の家でもあるんですけどね(笑)。ほぼ一発録りなんですけど、そこの空気感を上手く入れられたなと思います。録っている時は、すごくテンションが上がっていました。

●たとえば大学時代のような、楽しかった時代の記憶を呼び覚ますような音楽になっているのかなと思います。

ネギ:そういう部分もあると思います。大体が大学に在籍している時に作った曲やから。“何回目の4回生やねん!”っていう生活をしている時に作った曲が多いです(笑)。

●ネギくんは学生時代が長かった?

ネギ:長かったです。全部で7年間、大学にいましたね。

オオムラ:私が大学に入った時にネギちゃんは4回生やったんですけど、その次の年も“また4回生なんや!?”っていう(笑)。

流星:僕が大学に入った時も、(ネギは)4回生でしたからね。

●何度も留年を繰り返していたと(笑)。お互いに学生同士だったからこそ、歳が多少離れていても友だちのような関係になれたところもあるのでは?

オオムラ:確かにそうですね。

流星:僕がネギちゃんに“先輩”という感じで接していた時期は、1ヶ月くらいで終わった気がします(笑)。

ネギ:その1ヶ月の間でも数回しか会っていないんですけどね(笑)。

●あっという間に、ただの友だちになった。

ネギ:たぶん、みんなで僕の家に泊まりに来て、一緒に呑んだところからじゃないかな?

流星:その当時よくネギちゃんの家に遊びに行っていて、みんなの“たまり場”みたいになっていたんです。一時期、僕はネギちゃんの家に住んでいるくらいの状況になっていて。自分以外にも住んでいる人がいたんですけど、ネギちゃん自身は家に帰ってこなかったりするっていう(笑)。

●もはや誰の家かわからない(笑)。

ネギ:人生の中で、大学生活が一番特殊やったと思います。“いつでも家に来ていいよ”とか“鍵は開いているから、勝手に入っていいよ”と自分から言っていて。みんなは当たり前のように思っていたかもしれないけど、そういうのって実はあんまりないことですからね。

●特殊な状況ですよね。

流星:でも当時は、それが普通やと思っていて。ネギちゃんの家の冷蔵庫を勝手に開けて飯を食ったり、勝手にネギちゃんのTシャツを着て帰ったりしていましたね(笑)。

ネギ:自分的には、それでも良かったんですよね。でも実はああいう生活をするのは、あの時が初めてやったんです。

●ずっとそういう生活をしてきたわけではないと。

ネギ:高校までは普通の生活をしていたし、大学の1〜2回生の時もまだ普通で。ああいう感じになったのは、後輩ができた3回生以降のことですね。それまでも友だちが家に来たりはしていたけど、僕の服を勝手に着て帰ったりはしていなかったし…。

流星:そういうのが“(自分たちが在籍していた)精華大学っぽい”のかもしれない。ネギちゃんの家だけじゃなくて、色んな人の家がたまり場になっていて。要は居酒屋とかで呑めるお金がないから、そういう場所に集まって呑んでいただけなんですけどね。

オオムラ:確かにそういう学生文化みたいなものはありました。

●人や学校にもよりますが、確かに大学生活にはそういう面もありますよね。大学生活自体が長い“夏休み”的な感覚もあるというか…。

ネギ:そうかもしれない。自分の思い出の中でも大学時代が一番、色濃く残っている時期なんですよ。高校まではホンマに面白くなかったのもあって、大学ではもうメチャクチャしていたから(笑)。大学に入ってから初めてみんなで川へ遊びに行くようなこともして、そういうところでも“夏休み”感はすごくありましたね。

●そういう“夏休み”感は、どの曲にも共通してある気がします。

オオムラ:なるほど〜。

ネギ:そう言われて、初めて気付きましたね。

流星:確かに“夏休み”を一緒に過ごしていたから、すごく共感を持って歌えているのかなと思います。バレーボウイズで今やっている曲は全部、自分のことのように歌えるんですよ。

●楽しい時間や記憶を共有している人たちが一緒に生み出している音楽なのかなと。

ネギ:そういうところはありますね。僕1人では絶対にできないことだから。

●実際に曲はみんなで形にしていっている?

ネギ:曲に関して大まかなイメージは最初に僕から提示するんですけど、メンバーからの意見も取り入れているので、みんなで作っている感じはしますね。最近はそれぞれのメンバーがこのバンドでの表現の仕方を覚えてきたのか、“ここはこうしようや”みたいアイデアが出るようになったんです。そういうものによって、たとえばM-3「マツリ〜猛暑〜」やM-4「ミラーボウル」はアレンジが変わったので、原曲とはイメージが大分違うものになったと思います。

●「マツリ〜猛暑〜」と「ミラーボウル」はレゲエやダブの要素もあって、ちょっとサイケな感じがしました。

流星:僕はダブとかが好きなんです。G.九鬼くんもそういうものが好きなので、この曲にはそういう要素を取り入れていて。

ネギ:最初のイメージがそもそもサイケな感じやったから、そこをもっと突き詰められたんじゃないかなと思っています。

●元々、サイケなイメージはあったんですね。

流星:自分が好きな“祭り”の要素を入れたいなと思って。僕らが学生時代に参加していた“木野祭”(※精華大学の学園祭)って、すごくドロドロしていてサイケな感じやったんですよ。たとえば祇園祭みたいな“祭り”のイメージとは違っていて…。

オオムラ:もっと“異空間”なんです。

ネギ:“非日常”でしかない。それが自分たちのやりたい“祭り”なのかな。右を見ているのか、左を見ているのかもわからなくなるような感じの“祭り”をやりたかった。僕らは“そこにいたい”と思うんです。

●“非日常”という話も出ましたが、バレーボウイズの音楽には世の中の流れとは異なる時間が流れている気がして。

ネギ:そうやと思います。時間の流れ方が全然違うし、使い方も全然違うから。でも自分たちにはこれが“日常”やから、違いはよくわからないんですよ。

オオムラ:私たちは大分ユルめの日常を送っているから…。

流星:いまだにそこから抜け出せていないっていう(笑)。

●今作の収録曲は昨年の夏に自主制作でリリースした『なつやすみ EP』から再録したものも多いですが、時間が経ってもそこの感覚は変わっていない?

ネギ:ライブの本数は多くなりましたけど、生活自体はあまり変わっていなくて。それぞれが今までと変わらずやるべきことをやって、自分のやりたいこともやりながら生活している感じは一緒やから。

流星:でも1年前に録った時は、本当にまだ何も理解できていなくて。バレーボウイズが始まった当初の勢いを全部詰め込んだのが『なつやすみ EP』やったんです。そこから1年経って、今作は“今の自分たちの考えとかを曲にどれだけ込められるか”といったことを考えながら作ったので、そういうところではグレードアップできているんじゃないかな。

オオムラ:“見直した”感が強いですね。今作を作りながら“1年間を振り返れた”という感覚はあります。

●この1年間での進化も閉じ込められている。

流星:その当時、“この感じを形に残したい”みたいな気持ちで作ったのが『なつやすみ EP』だったんです。それを1年経ってから振り返った上で、今の感じをプラスしたものが今作ですね。

●今も学生時代とあまり変わらない生活をしているとのことですが、たとえば就職したりして生活環境に変化があってもバンドの音が変わることはない…?

ネギ:変わらなさそうやな〜…。

流星:今でもメンバーみんなでいる時は、友だち同士で集まっている感じやから。その時の感じさえ変わらなければ良いのかなって思います。そもそも普段からそんなによく会っているわけではなくて、練習とライブの時だけで…。

オオムラ:だから最近、週4回くらいは会っているんですけどね(笑)。

ネギ:わりと会っている…。

流星:最近はね(笑)。

●ハハハ(笑)。

流星:でもメンバーと会っても別に音楽の話ばかりするわけでもないし、そういう感じが続いていれば、この空気のままやれるのかなって。もし就職したら、その時はその時でパリっとした曲ができるかもしれないですし…。

オオムラ:幅が広がるかも!?

ネギ:それも自分たちやから、それはそれで良いんですよね。自分たちで選んでいれば、何をやっても良いんです。

Interview:IMAI

 

 

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